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A5.1 セクション9は、PRAの適用についての代替的アプローチを導入している。この

代替的アプローチの含意のいくつかについての詳細を以下の各項に示している。

A5.2 この考え得る代替的アプローチは、本DP全体を通じて議論しているPRAに基づ

いている。議論しているPRAとの相違点は、管理対象リスクについての管理対象 ポートフォリオの再評価と、リスク管理金融商品の公正価値の両方が、純損益で はなくOCIに認識されることであろう。

A5.3 このOCIの使用が動的リスク管理活動についての有用な情報を提供すると考えら

れる場合であっても、それは単純な変更ではない。むしろ、いくつかの実務上及 び概念上の問題が生じる。

A5.4 OCIを通じての PRA は、リスク管理金融商品の会計処理を変えないままとする

という主要な前提を崩すものである。さらに、表示の目的上、OCIを通じてのPRA は、安定的な正味金利収益の表示とは両立しないので、実際の正味金利収益のア プローチだけが考慮する余地がある。これは、安定的な正味金利収益の表示では、

純損益は完全にヘッジされたポジションを常に表示することになるが、実際は必

46 この文脈における往復の外部化が創出されるのは、外部化を証明するために外部デリバティブの取引 を行うが、相殺効果を有する追加的な外部デリバティブの取引も行う場合である。

ずしもそうではないからである。

A5.1 実務上の困難

内部デリバティブとOCIを通じてのPRA

A5.1.1 セクション6.2では、ALMからトレーディング・ユニットへのリスクの移転を表

す内部デリバティブを、PRAの適用時に純損益においてグロスアップすべきかど うかを検討している。こうした取扱いは、2つの内部の事業単位(すなわち、ALM とトレーディング)の異なる活動についての有用な情報を提供するものと見られ るかもしれない。主要な考慮事項は、内部デリバティブのグロスアップは純損益 には影響がないということであった。しかし、動的リスク管理活動からの再評価 の影響をOCIに認識するとした場合には、この主要な考慮事項はもはや有効では なくなる(すなわち、内部デリバティブが報告利益に影響を与えることになる)。

これは、トレーディング・ユニットにおける内部デリバティブは依然として

FVTPLで会計処理されるのに対し、これに対応するALMにおける内部デリバテ

ィブの公正価値はOCIに認識されることになるからである。内部デリバティブか らの包括利益合計への正味の影響はないが、純損益とOCIの両方への影響がある。

A5.1.2 内部デリバティブ及びOCIを通じてのPRAの問題に対処するためのいくつかの

考え得るアプローチは、次のとおりである。

A5.1.3 アプローチ1――OCIを通じてのPRAの適用時に、内部デリバティブを包括利益

計算書においてグロスアップすることを認める。ただし、次のいずれかの場合に 限る。

(a) トレーディング・ユニットによる内部デリバティブの外部化が行われている。

(b) 「十分な」リスクが外部化され外部化のレベルが財務諸表注記で開示される。

A5.1.4 このアプローチでは、トレーディング・ユニットによる何らかの形での追跡ある

いは要求事項の充足が必要となる。IASB が内部デリバティブの総額処理を議論 した際に、これらの提案が取り上げられ、結局は、運用面で煩雑すぎるか又は意 味がないかのいずれかとして棄却された。この結論を変更するには、アプローチ のいずれかの実行可能性についての強い証拠が必要となる。あるいは、情報の有 用性の点でのOCI適用の便益が、運用面でのコストを上回るほど大きく、純損益 を使用するPRAよりも優れた正味の便益をもたらすことが必要となる。

A5.1.5 アプローチ 2――制限を含めず、したがって、内部デリバティブが純損益に影響

を与えることを認める。

A5.1.6 OCI を通じての PRA では、内部デリバティブからの再評価の影響に含められる

情報は、包括利益合計においては純額でゼロとなるが、純損益及びOCIに対する 影響を別々に見るとゼロにはならない。このアプローチを批判する人々は、純損 益における情報は重大なものであり、OCIにおける同額の反対方向の相殺に関係

なく、内部取引の影響を受けるべきではないと考えるであろう。

A5.1.7 アプローチ3――OCIを通じてのPRAの適用時に、内部デリバティブを純損益及

びOCIにおいてグロスアップすることを認めない。

A5.1.8 このアプローチの帰結は、OCIを外部デリバティブを通じて管理されているリス

クに限定することになる。これは、トレーディング勘定の中の外部デリバティブ の部分集合を、動的リスク管理活動に関連するものとして識別することが必要と なることを意味する。当該部分集合における識別された外部デリバティブは、他 のデリバティブとは異なり、OCIを通じて公正価値で再測定されることになる。

ALM から内部デリバティブを通じて移転されたリスクがトレーディング勘定に おいて完全に外部化されている場合を除き、外部デリバティブだけを考慮して測 定した動的リスク管理からの再評価の影響は、実際の動的リスク管理活動を表さ ない。これはおそらく、それによる動的リスク管理活動に関する財務諸表におけ る情報の有用性を低下させる。(外部化に焦点を当てることに関連した困難は全般 的にセクションA4.2に示しており、この議論に関連性がある。)

管理対象エクスポージャーの売却又はリスク管理金融商品の手仕舞

A5.1.9 管理対象エクスポージャーの再評価とリスク管理金融商品の公正価値変動をOCI

に認識する場合には、満期前に認識の中止を行う場合に困難が生じる可能性があ る。管理対象ポートフォリオの中に含めたエクスポージャー又はリスク管理金融 商品の認識の中止を満期前に行う場合には、帳簿価額(管理対象エクスポージャ ーについての再評価調整を含む)の認識の中止が財政状態計算書から行われ、認 識の中止の計算に係る利得又は損失を通じて包括利益計算書に含められる。しか し、再評価の影響(認識の中止を行う金融商品についての現在までの再評価金額 を含む)が純損益ではなくOCIに認識された場合には、リサイクリングの必要が 生じ、それにより動的リスク管理の会計処理の運用面での複雑性が増大する。さ らに、IASB が、リサイクリングの最も適切なパターンとそれが純損益に与える であろう影響を検討することが必要となる。

管理対象ポートフォリオに含めた非デリバティブ・エクスポージャー

A5.10 FVTPL で会計処理されるエクスポージャーが管理対象ポートフォリオに含まれ

る場合がある。動的リスク管理活動からの再評価の影響をOCIに認識する場合に は、IASBは、非デリバティブ金融商品について公正価値変動の全部をOCIに認 識すべきか、それとも管理対象リスク(例えば、金利リスク)に起因する価値の 変動だけをOCIに認識すべきかを検討することが必要となる。

A5.11 識別された実務上の問題が解決できたとした場合でも、OCI を通じての PRA の

運用面での複雑性は大きく増大する可能性が高い。したがって、この追加的な複 雑性を正当化するのに十分な便益の証拠が必要となるであろう。