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9.1 PRAの適用の範囲が動的リスク管理に焦点を当てる場合には、ヘッジを通じての

リスク軽減が行われていない純額オープン・リスク・ポジションの再評価から生 じる純損益におけるボラティリティにつながる可能性がある。この情報は潜在的 には有用であるが、IASBは、これによる純損益におけるボラティリティが、この 情報を最も目的適合性の高い方法で表示するのかどうかを検討した。多くの作成 者が、動的リスク管理は、再評価リスクではなく正味金利収益キャッシュ・フロ ーの管理に焦点を当てることが多いと指摘している。その結果、これらの作成者 は、再評価に基づく会計処理アプローチが動的リスク管理を適切に描写しないお それがあることを懸念している。また、動的リスク管理を行わないことを選択す る企業との比較可能性の欠如に関して一部の人々が表明している懸念もある。

9.2 このセクションでは、PRAに対する代替的アプローチを検討する。この代替案で は、再評価は本 DP で示されているとおりに発生するが、管理対象ポートフォリ オの再評価の影響とリスク管理金融商品の公正価値の変動は、純損益ではなく OCIに認識されることになる。PRAをOCIを通じて適用することを考慮する場 合、実際正味金利収益表示アプローチだけが適用できる(セクション 6.1 参照)。 OCI を通じての PRA の適用は、安定的正味金利収益表示の代替案とは両立しな い。この表示代替案では、純損益は常に完全にヘッジされているポジションを表 示することになるが、必ずしもそうではない場合があるからである。

9.3 OCIアプローチを使用すると、管理対象ポートフォリオからの将来キャッシュ・

フローの管理対象リスクについての再評価と、リスク管理金融商品の再評価との 正味の影響が、OCIに認識されることになる。当期の正味金利収益は、動的リス ク管理の後に表示されることになる。財政状態計算書には、リスク管理金融商品 の全部の公正価値と管理対象ポートフォリオの管理対象リスクについての再評価 が認識されることになる。リスク管理金融商品と管理対象エクスポージャーが満 期となるにつれて、OCIに認識される動的リスク管理活動からの再評価は、時と ともにゼロに向かう傾向となるであろう。

9.4 OCI を通じての PRA は、やはり同じ情報を財務諸表において提供することにな

る。しかし、純損益は、動的リスク管理活動が当報告期間に認識された正味金利 収益に与えた影響だけを反映することになり、将来の正味金利収益に対する影響 はOCIに認識されることになる(すなわち、動的リスク管理からの再評価の影響 は、純損益ではなくOCIに認識される)。仕訳は次のようになる。

管理対象ポートフォリオ

借方/貸方(a) 再評価 SFP(b) X+Y 貸方/借方 利息発生計上 NII(c) (X) 貸方/借方 クリーン再評価 OCI (Y) リスク管理金融商品

借方/貸方 公正価値の変動 SFP (A+B) 貸方/借方 正味利息発生計上 NII A 貸方/借方 クリーン公正価値変動 OCI B

(a) この仕訳は借方又は貸方のいずれの可能性もあるので、両方を反映している。

(b) SFPとは財政状態計算書を指す。

(c) 正味金利収益(NII)の一部として純損益に認識される。

9.5 主要な考慮事項は、この代替的アプローチが、将来の正味金利収益に関連する動 的リスク管理活動に関して、純損益を通じてのPRAに比べて幅広い情報を維持し つつ、銀行が当期の正味金利収益特性をどのくらい改変したのかに関して提供さ れる情報の有用性を向上させるのかどうかである。OCIを通じてのPRAは、OCI の使用によりPRAのより広い範囲の項目への適用が容易となるのならば、目的適 合性がある可能性がある(例えば、適用がリスク軽減への焦点ではなく動的リス ク管理への焦点に基づくとした場合)。この論点についての財務諸表利用者からの フィードバックは、IASBにとって特に価値が高いであろう。

9.6 DP「財務報告に関する概念フレームワークの見直し」(「『概念フレームワーク』

に関するDP」)は、項目をOCIに分類すべきかどうか、また、どのような場合に

それが企業が当期に達成したリターンに関する純損益における情報の有用性を高 めるのかを探求した。OCI を通じての PRA は、企業の動的リスク管理活動につ いて同じ情報を伝えることになるが、将来に向かっての動的リスク管理の考え方 との整合性がより高い方法で表示することになる。例えば、再評価の影響は、将 来の正味金利収益についての純額オープン・リスク・ポジションに関する情報を 提供するので、企業の当期における資源からのリターンには関連性がないと考え られるが、企業の将来のリスク特性を適切に示すので有用となるであろう。

9.7 このアプローチを追求できるようになる前に、いくつかの重要な考慮すべき実務 上及び概念上の論点がある。これには以下のものが含まれる。

(a) この代替案は、PRA を開発した際に適用された仮定(すなわち、すべての リスク管理金融商品が公正価値で測定され、公正価値の変動が純損益に認識 される)と不整合である。

(b) 内部デリバティブの取扱いの変更又は再検討が必要となる可能性がある。内 部デリバティブの総額表示が、純損益において純額でゼロとはならなくなる

からである41

(c) OCI から純損益へのリサイクリングは、管理対象エクスポージャーが売却

されたりリスク管理金融商品が終了したりした場合には行われない。

(d) このアプローチが、「概念フレームワーク」に関するDPにおけるOCIの目 的での提案と整合的かどうか。

9.8 セクションA5では、この代替案をさらに詳細に検討している。

質問26——OCIを通じてのPRA

9.1項から9.8項に記述した方法でのOCIの使用を織り込んだアプローチを検討 すべきだと考えるか。賛成又は反対の理由は何か。OCIの使用をPRAに組み込 むべきだと考える場合には、この代替案について識別されている概念上及び実務 上の困難をどのように克服できるのか。

41 内部デリバティブの総額表示は、財政状態計算書においては純額でゼロとなる(すなわち、純損益 に認識される公正価値変動とOCIに認識される変動の両方を考慮した場合)