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セクション 6 表示及び開示

6.3 開 示

6.3.1 PRA に付随する開示は、企業の動的リスク管理及び PRA が財務諸表においてど

のように適用されたのかを財務諸表利用者が理解するのに役立つものとすべきで ある。IASBは、財務諸表の利用者及び作成者から、この目的を満たす開示に関し てのインプットを求めている。この情報を得ることの実行可能性及びコストにつ いての作成者からのインプットは重要である。IASBが財務諸表利用者のニーズを 作成者の商業的秘密保持と比較考量できるようにするためである。

6.3.2 財務諸表利用者は、これまで財務諸表に企業のリスク管理に関する情報を記載す

ることの重要さを強調してきた。彼らは、有用となるためには、開示は記述的で 企業固有である必要があり、単なる一般的な記述とすべきではないと述べてきた。

したがって、4つの考え得る開示テーマがPRAについて開発された。

動的リスク管理についての目的及び方針に関する定性的情報(エクスポージャーの中のリ スクの識別を含む)

6.3.3 これらの開示の目的は、次のことを理解できるようにする情報を財務諸表利用者

に提供することであろう。管理対象リスク、当該リスクについての企業の動的リ スク管理の目的、企業がリスク管理をどのように行っているのか、及びこうした 活動の財務上の結果についてである。これらの開示は、動的リスク管理が正味金 利収益に与えた影響及び事業に伴うリスクを財務諸表利用者がより適切に理解す ることも可能にすべきである。

6.3.4 動的リスク管理の中で考慮されたさまざまな種類のエクスポージャーと、企業が

こうしたエクスポージャーから生じるリスクをどのように察知しているのかにつ いて、定性的な記述が提供される。管理対象エクスポージャーがどのように決定 され、それを企業の動的リスク管理目的とどのように関連付けているのかを財務 諸表利用者が理解する助けとするための情報が提供される。

6.3.5 管理対象エクスポージャーの種類ごとに、リスクが測定され分析される基礎を財

務諸表利用者が理解できるようにするための情報が提供される。これには、管理 対象リスクがエクスポージャーの契約条件に基づいて監視されているのかどうか や、リスクが行動予測の観点などの別の方法で考慮されているのかどうかに関す る情報が含まれる可能性がある。

6.3.6 定性的情報は、企業の動的リスク管理の方針及び運用目的についても開示される。

これには、企業の動的リスク管理プロセスのハイレベルの記述や、リスク管理金 融商品が外部又は内部の相手方(例えば、トレーディング・ユニット)と取引さ れている程度などが含まれる。

純額オープン・リスク・ポジションとそれがPRAの適用に与える影響に関する定性的情報 及び定量的情報

6.3.7 これらの開示の論拠は、PRA適用の目的上、管理対象ポートフォリオからの純額 オープン・リスク・ポジションが測定される方法について、財務諸表利用者の理 解を高める情報を提供することであろう。さらに、財務諸表利用者は、企業の純 額オープン・リスク・ポジション(自然に発生するリスクがどこで生じ、どの程 度までヘッジされている(又はされていない)のか)についての洞察も得るはず である。

6.3.8 定性的開示が、純額オープン・リスク・ポジションがどのように決定されるのか

について提供され、これは動的リスク管理アプローチと整合的なものとすべきで ある。これには、管理対象ポートフォリオの中のリスクの測定に使用した方法の 記述や、PRA 適用時の再評価調整の計算に使用した方法論の説明(当期中の技法 の変更や変更の理由の説明を含む)が含まれる。さらに、動的リスク管理及び会 計処理の目的で使用している見積技法について情報が提供される。特に、主観的 又は判断によるインプットに対する依拠に関する情報は重要となる(例えば、期 限前償還カーブや他の非市場的な決定要因の役割など)。

6.3.9 定量的情報が、純額オープン・リスク・ポジション及び報告日に認識されたポー

トフォリオ再評価調整について提供される。企業のリスク・ポジションについて の一部の情報は、商業的に慎重な取扱いを要する場合がある。したがって、作成 者には、企業の商業的秘密保持を損なわずに財務諸表利用者に有用となる情報に 関する提案を示すことを要請している32

6.3.10 純額オープン・リスク・ポジションについての定量的開示は、純額オープン・リ

スク・ポジションが管理対象エクスポージャーの契約上の期間ではなく予想され る期間に基づいている程度を財務諸表利用者が理解するのに役立てるために要求 される。理想としては、これには、PRA に含めたエクスポージャーの契約上の特 性と行動予測上の特性の比較を含めることが考えられる。

6.3.11 財政状態計算書における適切な表示を決定する際の主要な要因は、ポートフォリ

オ再評価調整の内訳分析を金融商品のクラス別に行うことが有用かどうか、また、

その場合に、これを財政状態計算書と注記のどちらで提供すべきかである。動的 リスク管理は通常は純額ベースで行われるので、金融商品のクラス別の総額情報 は目的適合性があるとは考えられない可能性がある。代替的な見解は、財務諸表 利用者は、源泉別の金利リスクの集中を知ることに関心がある可能性が高いであ ろうというものである(特に、より主観的な要素(例えば、顧客行動のモデル化)

を含んだリスク・エクスポージャーからの重大なリスクの集中がある場合)。

32 一部の人々の考えでは、モデル化技法を使用する際(例えば、住宅ローン及びコア要求払預金につい て)に、純額オープン・リスク・ポジションの計算、実際の再評価あるいは感応度(金利リスクの場 合には、デュレーション)についての詳細な開示を提供することが必要となる。これは、主観的な要 因を含んだ主要なインプット(例えば、住宅ローンの予想デュレーション)の小さな変動が、再評価 に重大な影響を有し、したがって、会計上の結果に重大な影響を与える可能性があるからである。最 低限、計算に重要な影響を有する仮定の変更があった場合には、これらの仮定への依拠を理解するこ とが有用となる。また、仮定が変更された理由を知ることも有用であろう。

6.3.12 この情報は通常、報告日現在の純額オープン・リスク・ポジションを基礎とする。

しかし、報告日現在の純額オープン・リスク・ポジションが当年度全体を通じて のポジションを代表していない場合には、より代表的なポジションの指標を提供 する追加的な開示が、当期中の企業の動的リスク管理活動についての目的適合性 のある洞察を提供するかもしれない。

6.3.13 開示の多く(全部ではないが)が、企業が財務報告目的で現在使用している既存

のリスク情報を基礎とすることになるが、この情報を提供する結果としての運用 面での影響があり得る。したがって、IASBはこれらの開示の運用面での実行可能 性についての情報を求めている。

PRAの適用

6.3.14 これらの開示の目的は、会計処理が動的リスク管理をどの程度表現しているのか

や、動的リスク管理が財務諸表にどのように反映されているのかを説明する情報 を財務諸表利用者に提供することであろう。したがって、開示は、適用している 会計処理と動的リスク管理との間でのアプローチの相違点を理解することを可能 にする情報も財務諸表利用者に提供することになる。

6.3.15 PRAの適用に関する企業の会計方針の十分な記述が、IAS第1号「財務諸表の表

示」により要求されることになる。この記述は、PRAが財務諸表にどのように、

また、どの程度、影響を与えたのかを財務諸表利用者が理解するための十分な詳 細を提供すべきである。

6.3.16 最終基準に、動的リスク管理の中のどのエクスポージャーにPRAを適用するのか

に関する選択の要素を含める場合には、定性的開示が必要となる可能性がある(セ クション5参照)。これらの開示は、以下のことについての理解を財務諸表利用者 に提供することになる。含めるポートフォリオがどのように選択されているのか、

動的に管理しているエクスポージャーのすべてに当該アプローチを適用していな い理由、どのエクスポージャーを企業がPRAの範囲に含めるものとして選択しな かったのかについてである。

6.3.17 さらに、動的リスク管理の何らかの要素が最終的にPRAの範囲に含めるのに適格

でないとされる場合には、企業の動的リスク管理活動に関する情報を提供するた めに、それらの活動又はエクスポージャーについての追加的な開示が適切となる 可能性がある。

動的リスク管理が企業の現在及び将来の業績に与える影響に関する定性的情報及び定量的 情報

6.3.18 これらの開示の目的は、動的リスク管理が企業の報告する当期及び将来の期間の

業績に与える影響についてのより適切な理解を財務諸表利用者が得る助けとなる ことであろう。