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表 5 金融講のメンバーであるための条件金融講の メンバー であるた めの条件
金融講への加入資格とその 維持
金融講に加入するための条件を満たしている(加盟金を支払う 能力がある)
金融講のルールを守ることができている 病気から治癒した人のみが入会を勧誘される 金融講のメンバーからの信
頼の獲得
お金やものを借りたら返すことができる
勤勉に働いている(平時に働かない人間が有事に支援を得る権 利はない)
金融講メンバーとの協調行 動の実践
金融講のメンバーとそれ以外を区別している 喧嘩をしない
怒らないでいられる 人を笑わせることができる 素直に人に謝ることが出来る 他者の助言を受け入れる
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のサブカテゴリから形成されていた。つまり、A 村では、金融講という、地域の社会文 化的な特性を踏まえて築いてきた仕組みや、その仕組みの持つ相互支援が健康に寄与し ている可能性が示唆された。
A 村における金融講の相互支援の機能としては、[病気や商売を始めるときに借金で きる]という、本来地域金融の金融サービスが有する機能に加え、[冗談を言って楽しま せてくれる仲間がいる]、[仲間から家族計画の方法や効果について情報を得た]、[病院 に行くためのバイクを貸してくれる]という機能があった。また、他者に対し、[妊娠の 兆候に気づき産前健診の受診を勧奨している]、[小さい子どもを持つメンバーに予防接 種のプログラムを説明する]など、社会的支援を提供することも観察された。社会的支 援、つまりソーシャル・サポートには、物質的・手段的支援、情報的支援、情緒的支援、
評価的支援の側面があるとされる(畑&土井,2003)。本研究結果から、A 村の金融講には、
他者に提供される社会的支援として情報的支援が、獲得できる社会的支援として、物質 的・手段的支援、情報的支援、情緒的支援の機能があると考えられる。
A 村の金融講を通じた相互支援の機能を、第 2 章で行った「健康に関する地域金融の 相互支援」の概念分析の結果と比較すると、「物質的・情報的・情緒的支援の総体」と いう点で一致する。しかし、相互性については支援の内容で異なる。たとえば、情報的 支援に関しては提供も獲得もしているが、物質的支援、情緒的支援については、メンバ ーから獲得しているだけで、提供していないことが示唆された。また、概念分析に含め た先行研究の中には、地域金融に参加した女性が参加していない人を支援することが示 されていたが(Swendeman et al., 2009)、A 村での社会的支援は金融講のメンバー間に とどまっていた。
また、概念分析では、金融講のもつ相互支援の機能は、国や地域の社会経済的状況に よる影響を受けることが示されたが、A 村における物質的支援として、[病気の時に借 金できる]、[病院に行くためにバイクなどを貸してくれる]など、健康増進行動のうち、
有事における経済的支援と手段的支援(交通手段)が抽出された。これは、ブ国農村部 の経済レベル、つまり雇用など恒常的な所得獲得手段が得られない状況にあることに加 え、保健医療体制、制度の影響が表れていると考えられる。同国では、住民の半数近く が、一次医療施設から 5Km 以上離れたところに暮らしており、また、家族計画などのプ ライマリヘルスサービスさえも無料化されていない。こうした国においては、金融講の
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物質的支援の機能が、社会保障制度を代替する可能性を持つことを、本研究は示唆して いる。
また、情報的支援に関し[仲間から家族計画の方法や効果についての情報を得る]、[メ ンバーの妊娠の兆候に気づき産前健診の受診を勧奨している]などの項目が抽出された ように、妊娠や出産そして家族計画に関し高い関心を持っていることが示された。同国 では近代的避妊法による家族計画の普及率が 30%にも満たないが、今回調査の対象と なった女性の全員が、家族計画を実施しており、その多くがリズム法などを使用してい た。つまり家族計画そのものへのニーズが低いわけではなく、近代的避妊法に関するア ンメットニーズがあるとも考えられる。筆者が、家族計画の普及率が 5%に満たないブ 国の隣国ニジェール農村部で行った研究でも、女性たちは妊娠期間をコントロールする ことを望み、そのために、さまざまな家族計画の方法を取り入れていた。そして、夫や 年長の女性の反対を恐れ、黄体ホルモン注などの形跡が残らず他者に見つかりにくい方 法をとるなどの戦略を行使していた(堀井,2011)。このように、女性たちは、一般的な 家族計画の知識だけでなく、夫との関係性を踏まえたネゴシエーションに関する情報を 友人から得ることを、金融講の情報的支援の機能として期待している可能性がある。
ただし以上の結果は、村で営まれてきた金融講のメンバーを対象とした FGD の内容を もとにしており、金融講のメンバー以外の女性の声は反映されていない。
リンは、ソーシャルキャピタルの効果に関しては、その分析水準を考慮することの重 要性を指摘している(リン,2008)。例えば、ある集団にとっては集団内の相互援助効果 を高め、集団の目標を達成し、集団の成員に財を提供するためには、緊密なネットワー クが必要になるが、その集団が属している社会にとっては、そのような集団は決して好 ましくない。なぜなら緊密な集団が乱立すれば、他集団への排他性の増加や情報の秘匿 が生じ、集団間で利益を共有することが困難になるためである(リン,2008)。
実際に、FGD では、金融講の女性たちが金融講のメンバー資格を維持するために、【金 融講メンバーへの協調行動の実践】に努め、その一環として[自分たちの仲間以外を区 別する態度]をとっていることが明らかになった。これは、「結合型ソーシャルキャピタ ル」の負の側面として指摘されていた特徴に合致するものであり(カワチ et al.,2008)、
また、金融講のように利害関係が強いグループでは、社会的排斥を生みやすいという指 摘とも一致する(Schurmann & Johnston, 2009; 近藤 & 白井, 2013)。そして A 村の排 斥の特徴は、そもそも金融講に加盟するためには、加盟金を払う能力や病気がないこと
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など【金融講への加入と資格の維持】、返金能力を持つことで生まれる【金融講のメン バーからの信頼の獲得】、メンバー以外を区別するなどの【金融講メンバーとの協調行 動の実践】という条件を満たしている必要があり、それらを満たしていない人々が排斥 されるという点である。
また、金融講のメンバーの 5 歳未満死亡数は 35(出生 1000 対)と国や同地域の平均 よりはるかに低く、そして、産前健診受診率等、周産期にかかる健康行動の採用率も 100%で、国・地域平均よりも高かった。一方で、研究対象者によれば、組合のメンバ ー以外の健診等の受診率は悪く、子どもの栄養状態も悪いとされていた。この情報が事 実であるとするならば、A 村では、金融講メンバー間の相互支援の強化とそれによる凝 集性の高まりによって、健康になるものと、排斥により不健康になる者とがおり、彼ら の間に健康格差がすでに生じている可能性がある。
つまり、A 村における排斥のプロセスは、加盟金を払えないほどの貧困層は金融講に 入ることを許されず、有事に借金などができずに不健康になっている可能性があり、ま たその結果、金融講にとってリスキーな存在として排斥されるという、貧困との因果関 係があることが示されていた。これは、岩田(2008)の指摘した貧困と社会的排斥の因果 関係、あるいは入れ子の関係を示唆するものである。