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行動計画に基づき実施されている活動であり、それぞれの組織がそれぞれの方法、ツー ル、アプローチを採用している(MSBF,2011b)。また、彼らの中には、コミュニティヘ ルスワーカー(Agent santé communautaire ou Agent de santé à base communautaire)
と呼ばれる地域の住民ボランティアを、それぞれの組織の給与(日当)体系で雇用して活 動している組織も存在するが、教材や物品の不足、地元の看護職らのスーパービジョン の不足、そして、外部者からもたらされる報酬なしでは活動が継続されないなどの課題 を抱えており、必ずしも、住民の健康向上に結びついていない(MSBF,2011b)。
自国の予算が限られる中で、看護職者が独自に健康教育を展開することは容易ではな い。しかし、地域で活動する看護職者には、母子の健康の向上、健康格差の縮小という 目的に向かって、これら外部資源だけでなく、金融講などの地域に存在する様々な人的、
組織的、社会的資源の潜在能力を引き出していくことが必要になるだろう。そのために、
それぞれの組織の機能や運営状況、互酬性の性質、排斥の発現などの特性を分析し、異 なる組織間の協働体系を調整し、そして自らもその一員として協働することにより、コ ミュニティエンパワーメントに向け、リーダーシップを発揮していくことが望まれる。
2.本研究の限界
本研究の結果から、サンプリング、測定用具、そして分析方法に関する課題が示され た。
まず、サンプリングに関しては、調査時期が現地の農繁期であったため、各村におけ る対象者の選定を行う際に、対象となる女性が外出しているなどの状況もあり、無作為 抽出はできない状況であった。可能な限りばらつきが出るように抽出したが、ゲートキ ーパーから連絡が入りやすい女性や、調査に協力的な女性などが、偏って選定された可 能性は否定できない。
次に測定用具に関して、相互支援の測定には、既存の質問紙をもとに(Tsutsumi et al., 2000)、質的調査の結果を踏まえ、協働研究者と内容妥当性を検討したオリジナルの項 目を使用した。しかし、分析結果からは、相互支援量の操作上の定義と実際の支援量と の間に齟齬があった可能性が示された。
本研究では相互支援量として、夫、夫方の拡大家族などの社会システムの最小単位で ある家族の構成員を基本に、村人、講のメンバーなど、村内に暮らす家族以外のメンバ ーとどの程度つながっているのか、つながりの範囲を測定したものであった。このため、
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たとえば、講メンバーから 100CFA を 1 回借りた場合も、拡大家族のメンバーから多額 の送金を得ている場合も、それは同じ量の経済的支援として算出されていた。つまり、
本研究における相互支援量とは村内のネットワークの範囲を示すものであり、そこで交 わされる相互支援の量自体を示すものではなかった。
実際に、対象地域では、金融講の非加盟群は加盟群に比べ、相互支援量は少なかった が、定期的に送金を受けている人が有意に多かった。送金を受けているということは、
経済的支援の実額が多いことを指すだけでなく、送金者が暮らす国内外、ときにヨーロ ッパまで広がるネットワークを有していることを意味する。拡大家族の誰かしらが、出 稼ぎに出ている場合、その家族は、村内のネットワークからは得られない支援・資源を 得ていることが多い(堀井,2014)。こうしたネットワークの広がりとそこから得られて いる支援の量に関しては、本研究における相互支援量には反映されていない。
本調査の結果、金融講に非加盟群の女性は、相互支援量が少ないという結果が示され たが、それは村落内のネットワークの範囲が狭いということであって、その実量ではな かった可能性がある。そして、実際の相互支援量を反映していなかったために、相互支 援量と健康との間に関連が示されなかった可能性がある。今後に向けて、相互支援量の 概念を明確にし、測定用具の妥当性を高める必要がある。
加えて、本質問紙では、社会的支援の授受の経験や認知の測定のセルフレポート、つ まり主観に基づく回答であるため、実際量とのずれが生じていたことは否めない。とく に、情報的支援に関しては、本研究の対象者のようにヘルスリテラシーが低い集団の場 合、支援を獲得しても、していないと回答している可能性があることが示唆された。こ うした集団に対して、支援の獲得とその活用、そして、行動変容との関連が客観的に評 価できる質問紙を開発することも、今後必要になるだろう。
最後に、分析に関する課題である。本研究では、相互支援と母子の健康との関連を探 索するうえで、対象者に対し、誰とどのような支援のやり取りがあるか、つまり個人レ ベルの認知的ソーシャルキャピタルの特徴を明らかにしたが、分析の過程で、居住村ご とに健康状態や相互支援に違いがあることが明らかになった。つまり、ソーシャルキャ ピタルの集合的な特徴が、個々の健康にどのように寄与していたかを明らかする必要が あった。こうした地域レベルの要因が、個々の健康にどのような影響を与えるかを分析 するうえで、マルチレベル分析の有効性が議論されている(Subramanian et al.,2007 )。
本研究では、対象村別の特徴を分析したうえで、その結果をもとに、多変量解析におい
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て居住村を共変量として投入し分析した。しかし、マルチレベル分析は採用してはおら ず、地域レベルの健康への影響を検討することはできていない。ソーシャルキャピタル の特性を踏まえると今後、異なる分析方法を用いて、解析を重ねることで、金融講など の地域にある相互支援の仕組みと健康との関連について、個々の健康、そして地域の健 康格差にどのような影響を及ぼしているかを、さらに検討していく必要があると考える。
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Ⅷ.結論
本研究では、ブ国農村部において、相互支援を基盤とした母子保健向上のためのプロ グラム立案にかかる理論的基盤の構築と、看護職者の役割にかかる提言抽出に向け、ブ 国農村部における金融講を通じた相互支援の機能を質的に探索し、量的横断研究を用い て、金融講を通じた相互支援と母子の健康との関連について検討した。
ブ国 T 保健区の農村部に暮らす 20~45 歳の女性 563 人に対面式の質問紙調査を実施 した結果、対象地域における金融講の加盟率は 14.4%で、金融講加盟群では非加盟群 と比較し、相互支援量の平均値が、合計、獲得型、提供型のすべてで有意に高かった(そ れぞれp=0.007、0.022、0.033)。下位項目では、経済獲得経験、相談獲得経験、経済 提供経験、世話提供経験において非加盟群より有意に平均値が高かった(それぞれ、
p=0.009、0.034、0.047、0.001)。支援者のパターンの特徴では、金融講加盟群は、情 報提供などを除き、支援者なしの割合が全体と比べて少なく、支援の授受の対象の選択 肢が多様である傾向が示された。また、金融講加盟群は動物性蛋白質の摂取頻度が高く、
加えて、金融講加盟群のうち講メンバーから支援を獲得している女性は、家族計画を除 いて健康増進行動を採用している傾向が確認された。多変量解析では、実子の 5 歳未満 での死亡経験と家族計画のアンメットニーズを目的変数としたロジスティック回帰分 析を行いその結果、実子の 5 歳未満での死亡経験は、30 歳以下の群では、施設分娩の 実施、単婚と負の関連があった(それぞれ OR=0.050(95%CI ;0.005-0.519)、OR=0.387
(95%CI ;0.156-0.961 ))。31 歳以上の群では、夫の教育歴と負の関連があった
(OR=0.326(95%CI ;0.109-0.975))。家族計画のアンメットニーズは、産前健診の実施、
夫の出稼ぎと負の関連があった(それぞれ OR=0.470(95%CI;0.258-0.856) OR=0.332
(95%CI ;0.173-0.637 ))。いずれの分析においても、母子の健康アウトカムと、金融 講加盟および相互支援量との間に有意な関連は見られなかった。
以上から、現状では金融講を通じた相互支援と母子の健康アウトカムとの間に有意な 関連は示されなかったが、女性が金融講に加盟することにより、個人レベルの相互支援 やネットワークの広がり、経済的なエンパワー、そして母子保健に関する健康行動の採 用に寄与する可能性があることが示された。
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謝辞本研究は、協働研究者である KAM Alimata, KAM GOUBA Solange Esther, TAPSOBA Valérie そして MINOUNGOU Arsène の存在がなければ実現しなかった。ここに深く感謝 申し上げる。また、アンケーターをつとめてくださった国立公衆衛生院テンコドコ校の 皆様をはじめ、調査にご協力いただいたブルキナファソ国のすべての皆様に感謝すると ともに、ブルキナファソ国民の健康と安寧な暮らしを祈念する。
また、本研究をご指導くださった聖路加国際大学、田代順子先生、堀内成子先生、中 山和弘先生、そして国際協力機構、杉下智彦先生には、研究内容へのご指導のみならず、
研究の全プロセスを通じてあたたかい励ましとご支援をいただいた。深く感謝申し上げ る。
最後に本研究は、科学研究費助成事業若手研究(B)「ブルキナファソ国農村部におけ る協働による住民参加型母子保健向上プログラムの開発とその評価」および聖路加国際 大学学生国際奨学金学術調査活動支援の助成を受けて実施されたものである。また、聖 路加国際大学における学びは、小倉一春記念国際看護奨学基金の支援により実現したも のであり、ここに感謝申し上げる。