(1)平成31
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令和元年度活動報告研究情報支援研究センターでは,科学的根拠となる情 報を効率的・効果的に保健医療に活かすことを目的とし て,保健医療情報に係るすべてのプロセスに関連した研 究を行っている.そのテーマは,理論的研究,データ解 析,情報システム構築,疫学研究など幅広い範囲を包含 している.令和元年度においては,主に①保健医療に関 する情報基盤の確立,②科学的情報の評価と応用,③そ のための方法論の確立,などの観点から様々な研究を実 施した.
研修活動については,主に地方自治体の保健医療情報 担当者を対象として保健医療情報に関する研修を実施し ている.研修修了者は,地域の各職場において指導的役 割を果たし,地域の保健医療の情報化,科学的根拠に基 づく施策の実施などに貢献している.
情報通信技術(ICT)は絶えず進化し続けており,そ の進歩が今後の保健医療のあり方に大きな影響を与える ことは明らかである.さらに,これらのICTの進歩に伴 い膨大な量の情報を取り扱うことが可能になる一方,情 報セキュリティを確保したうえでデータを効果的・効率 的に保健医療施策に活かすことが大きな課題となってい る.研究情報支援研究センターでは,情報に関わる研究・
研修活動を通じて,今後の我が国の保健医療の発展に貢 献することを目標としている.
1 )センターの構成と移動について
令和 2 年 3 月31日現在,研究情報支援研究センターは,
水島洋(センター長),橘とも子(上席主任研究官),星 佳芳(上席主任研究官),上野悟(主任研究官),泉峰子
(併任;図書館サービス室長),足谷仁(併任;図書館 サービス室情報支援係長)ほか,客員研究員 6 名,研究 生 2 名で構成されている.
2 ) 保健医療に関する情報基盤の確立に関する研究(ICT を利用した情報収集システムの開発,様々な保健 医療情報に関わるデータベースの構築など)
現在の保健医療行政においては日常的に多様かつ膨大 な量のデータを取り扱っている.しかしながら,データ 処理の方法に関しては,情報技術の効果的活用という観 点からまだ多くの課題が残されている.例えば,データ を取り扱う多くの場面では実質的には手作業に近い方法 で処理が行われているケースも少なくない.また,様々 な情報システム導入の際も,相互接続ができないシステ ムが乱立することにより逆に効率が低下することもある.
本研究では,多様なデータからなる「情報」と保健医療 行政の「現場」とを効率的につなぐことを目標として,
本研究で構築したプロトタイプの情報基盤(「科学院ク ラウド」)の利用を通じて地域医療情報基盤のあり方に
ついて探索的な検討を行った.さらに,科学院クラウド の機能の整理を行い,重要度の高いファイル共有とスケ ジュール調整に関してはよりセキュリティの高いシステ ムの開発導入を行った.
3 )科学的情報の評価と応用に関する研究
①疾病分類に関する研究
国際統計分類ファミリーに属する統計分類について,
ICD-10からICD-11の改訂においては,改訂前にフィー ルドトライアルを行いICD-11の適用性,信頼性,有用性 などを検討する必要がある.我が国においてこのフィー ルドトライアルを実施するには,WHOのガイドドライ ンの適用において想定される諸課題を考慮しなければな らない.日本病院会および日本診療情報管理学会を通じ て約400名の診療情報管理士の方の協力を得て,昨年度 フィールドトライアルを実施し,令和元年度にはその回 答結果に関する分析を行って,WHOに報告している.
②臨床データベースの標準化に関する研究
日本における希少疾患・難病情報の普及をめざし,欧 州で構築されている希少疾患情報サービスと連携して日 本での情報提供システムの構築を行い,患者ニーズに答 えたシステム構築を進めている.また,希少疾患の共同 研究や国際治験推進のため,国内における患者データ ベースの構築を検討するとともに,海外の難病対策の研 究調査を行い,国際的な連携の推進にあたっている.
一方,臨床研究で用いられているCDISC標準の調査を 行い,疫学・公衆衛生学領域における活用に関する研究 を行っている.
③NCDに関わる疫学コホートのあり方に関する研究 医療水準が向上し,著しく救命率の改善した近年の日 本では,外傷後生存者の後遺症や障害に関する長期予後 の疫学情報は,質の高い一体的な保健・医療・福祉・介 護の政策を行う上でのエビデンスとして重要となってき ている.本研究では,外傷の中でも重症のTBI(外傷性 脳損傷)等により引き起こされる後遺症や障害の縦断的 疫学研究に注目し,予備調査に基づき,分野横断的な 予後情報を網羅的に把握することの重要性や重症TBI等 の外傷に関するコホート研究が必要を検討した.今後は,
福祉的介入評価の視点をふまえた外傷のコホート・デー タベース・モデルの構築を目指している.
④安全安心なインターネット医療情報検索に関する研究 インターネット上の医療情報は民間療法などの根拠の ない情報が氾濫している.各種ガイドラインやネットパ トロール事業による取り締まりが行われている一方で,
正しい情報のみをクローリングする検索サーバーの構 築・運用の検討をしている.推薦や苦情に基づいた運営 を行うことで,医療情報の検索で安心して使ってもらえ
るサービスの提供をめざしている.昨今研究が活発化し ている医療用人工知能研究や自然言語解析も併せての主 要な研究テーマの一つである.
⑤遠隔教育システムにおける動画コンテンツの質の向上 科学院における研修の在り方に関する議論の中で,遠 隔教育は重要になってきている.従来,研修の動画撮影 や,事前教材の作成などにおいては,スクリーンのみや 演者とスクリーンを低解像度で提供して,スライド教材 のハンドアウトとの併用で行っていた.令和元年度には,
動画コンテンツの品質向上を目指して,多カメラの切り 替えやオンラインでのスライド取り込み,画像合成やテ ロップの挿入などを可能とするシステムを構築し,高品 位な教育ビデオの作成を行える体制を構築した.
4 )保健医療情報に関する方法論的研究
①死因統計分類の変更がわが国の厚生統計に与える影響 に関する研究
本研究では,ICDなど疾病や死因分類の変更が厚生統 計に与える影響を定量的に把握することを目的として,
分類変更前後の変化を時系列的かつ統計学的に推定する ためのモデル及び方法論を検討・提案し,この方法に基 づき,分類変更が人口動態統計や患者調査などへ与える 影響を定量的に評価した.平成28年度に行われた分類変 更の基本的パターンに基づいて統計的モデルの構築を行 い,シミュレーションや実データの解析を通じて分類変 更時の不連続の検出,モデルの評価などを行い,本モデ ルの適用可能性を示した.実際の分類変更においては基 本的パターンの多様な組み合わせが存在しており,さら にモデルの一般化を目的とした研究を進める.
②ブロックチェーンに関する研究
ブロックチェーンとは,仮想通貨で使われている分散 共有・改竄防止システムである.これを医療分野に応用 した取り組みが始まっている.医薬品のサプライチェー ン(偽薬監視,リコール),薬事申請(治験のデータ認 証・電子申請),医療機器(データ認証・保守管理),患 者の研究参加(個人情報,同意の管理,遺伝情報の管理),
支払い(保険請求,Value Based Payment),医療提供者 認証(医師,保健医療機関リスト),論文の出版前共有 などの分野での利用が注目されている.
医療情報,トレーサビリティ,治験,健康ポイントへ の応用などの分野で国内外のパイロット事業が行われて いる.これらに関する国際調査を行い,特に,エストニ アでは電子政府基盤として活用されている.医療ブロッ クチェーン研究会(代表:水島)と連携し,テストベッ ドを構築し,国内実証に向けた検討を行っている.
③モバイル閉域網を用いた安全な通信インフラの開発 医療におけるセキュリティの確保は重要な課題であ る.医療専用のネットワークの構築のためには高額な専 用回線が必要となるが,この代替としてSSL-VPNが多 く用いられている.しかし,一旦インターネットに接続 したあとに同じ端末で内部ネットワークに接続すること
から,安全性が十分に確保できているとは言えない.そ こで,従来から検討していた,モバイル閉域網を用いた ネットワーク接続の有用性を活用し,科学院の院内ネッ トワーク環境へ外部から安全に接続できるシステムを導 入し,検討している.これを用いることによって,外部 における接続の安全性が確保され,出張時や在宅勤務な どにおけるセキュリティの向上が図られる.
5 )研修報告
主に地方自治体の保健医療情報担当者を対象として保 健医療情報に関して以下のような研修を実施している.
①専門課程・研究課程
情報処理法,保健統計概論,保健情報利用概論などの 科目責任者または副責任者を担当している.研究課程に は中野,西大、仁宮の 3 名が在籍し,研究発表の指導を 行っている.
②短期研修
「地域保健支援のための保健情報処理技術研修」,「地 域医療の情報化コーディネータ育成研修」,「疫学統計研 修」,「健康危機管理研修」,「薬事衛生管理研修」,など のコースの主任または副主任を担当している.
③研修全般
他のコースにおいても情報に関連した講義・演習を随 時担当している.また,研修生の特別研究に関して研究 指導および論文作成指導を随時担当している.さらに,
科学院内における教育・訓練の運営全般に関して,教務 会議,専門課程委員会,短期研修委員会,遠隔教育委員 会,などの各委員会に委員長,副委員長あるいは委員と して参画している.
6 )情報提供
国立保健医療科学院の大きな柱に「情報提供」がある.
研究情報支援研究センターでは,国や自治体の公衆衛生 従事者や一般国民に対する公衆衛生に関する情報の普及 に取り組んでいる.広報委員会や情報システム委員会で の議論に基づいて国立保健医療科学院のホームページに よる情報提供を支援している.特に,「特定健康診査・
特定保健指導データベース事業」では,特定健診・特定 保健指導の円滑な運営を進めるための情報を公開してい る.また,厚生労働科学研究の研究成果を広く国民に情 報公開するための方策の一つとして,厚生労働科学研究 費補助金等で実施された研究の成果をデータベース化し,
情報公開の促進に努めている.
一方で,院内向けには院内ポータルサイトやサイボウ ズを用いた情報共有の活用を進め,これを利用した,デ ジタルサイネージを玄関前において運用している.
7 )国際連携
研究情報支援研究センターは,WHO国際統計分類
(WHO-FIC)協力センターの 1 つに指定されており(令 和元年 9 月まで),国際疾病統計分類に関して,開発,