(1)平成31
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令和元年度活動報告健康危機管理研究部は,健康危機をもたらす事象に関 する対策の立案とその科学的評価,健康危機に関する情 報の収集及び解析,疫学知見の応用及び疾病の集団発生 その他緊急の健康事象発生への対応に必要な疫学に関す る研究を担っている.主な研究テーマとして,新興・再 興感染症危機管理機能の強化に関する研究, 大規模イベ ント時の健康危機管理対応に資する研究, CBRNEテロ災 害に伴う公衆衛生対策に関する研究,健康危機に関わる 人材育成に関する研究, 災害時における健康危機情報の 収集・評価に関する研究等に取り組んでいる.また,令 和元年12月末に発生した新型コロナウイルス感染症への 対応として,中国からのチャーター便帰国者の受け入れ に関する対策本部の運営や,厚生労働省対策本部での活 動にも貢献した.
1 )健康危機管理研究部の構成と異動
平成31年 4 月 1 日から令和元年12月31日まで,健康危 機管理部長は曽根智史次長が併任し,令和 2 年 1 月 1 日 より,齋藤智也上席主任研究官が昇格した.ほか,健康 危機管理研究部は,奥田博子(上席主任研究官),江藤 亜紀子(上席主任研究官)で構成されている.
2 )研究活動
健康危機管理研究分野では,健康安全・危機管理対策 における調査研究を実施している.主な対象分野は,自 然災害,新興・再興感染症,CBRNE(化学剤,生物剤,
核_放射性物質)による特殊災害である.成果は,地方 自治体の実務や人材育成等への還元と実装や,調査・開 発ニーズや必要技術について国等に提案している.令和 元年度は,下記の研究を実施した.
①新興・再興感染症危機管理機能の強化に関する研究 新興・再興感染症に関する危機管理機能の強化が課題 となる中,国内の危機管理機能の脆弱性を評価する指標 が存在しなかった.我々は,その評価検証手法とその改 善に向けたガイダンスを示した「新興・再興感染症対策 と危機管理の脆弱性評価ガイダンス:地域の感染症危機 管理能力強化のためのガイドブック」を作成している.
また,この評価ツールを用いて,隣接する自治体が専門 家を交えて地域の感染症危機管理機能のピアレビューを 行い,課題とその解決法を共に検討するワークショップ を行うなど,この評価体系の実装を進めているところで ある.また,訓練・演習の実施手法について,研修ツー ルの開発を進めている.
②大規模イベント時の健康危機管理対応に資する研究 マスギャザリングイベント実施の公衆衛生対応の体系
的な記録と検証を目的として,東京オリンピック・パラ リンピック等,国内での主要な国際イベント実施時の公 衆衛生対応のアフターアクションレビューを実施し,国 内外で利用可能な,マスギャザリング計画時の公衆衛生 危機管理体制整備のあり方を明らかにすることを目的と している.本年度は,諸外国及び過去のマスギャザリン グと公衆衛生対応に関する文献収集を行うとともに,令 和元年 6 月に大阪で行われたG 20大阪サミットの公衆衛 生対応に関してヒアリング等を実施した.また,ラグビー W杯2019開催にあたっての健康危機管理に関する調査を 実施した.令和 2 年 1 月には,国際シンポジウム「マス ギャザリングと公衆衛生対応」を開催し,G 20大阪サミッ トおよびラグビーW杯における日本の準備と対応,そ して東京オリンピック・パラリンピックに向けた準備状 況について意見交換を行った.
③CBRNEテロ災害に伴う公衆衛生対策に関する研究 特殊な対応が要求されるCBRNE災害に対しては,自 治体独自で対策を検討することは困難である.このため,
CBRNE災害時における公衆衛生対策の検討と関連する 国内外の情報の収集を行うとともに,健康危機事案に対 する情報集約の場でもある健康危機管理ライブラリーシ ステム(H-CRISIS: https://h-crisis.niph.go.jp)を介して 情報提供を進めている.H-CRISISは地域における健康 危機情報共有のための情報基盤として保健所,地方衛生 研究所,大学,国研との連携によりコンテンツの充実を 進めている.
令和元年度は,生物テロを念頭に,特に地方自治体に おける公衆衛生部門と警察部門の連携強化を目的とした 研修ツールを作成し,机上演習型式の合同演習の機会を 提供した.また,「一類感染症の行政対応の手引き」作 成に向けて,対抗医薬品の現状等の情報を整理し,天然 痘発生時対応の検討を実施した.天然等対応の検討では,
国産天然痘ワクチンLC16m8により誘導される抗体プロ ファイルの分析を行い,他の天然痘ワクチンとの比較か らその効果を裏付けた.
東京オリンピック・パラリンピックに向けて,化学テ ロ災害について対策を検討し,医薬品事前準備の観点か ら備蓄や自動注射器の準備の有用性に関する知見をまと め,厚労省の化学災害・テロ対策に関する検討会に知見 を提供している.このような生物・化学テロ対応等機微 性の高い事項を含む研究は,国立研究機関ならではの研 究である.
④健康危機に関わる人材育成に関する研究
年々,多様化・複雑化する地域保健関連課題への適切 な対応が求められる中,地域保健行政従事者に対する系
統的人材育成体制の構築は,喫緊の課題となっている.
我々はこれまで,これらの課題に適切に対応できる人材 を育成するために必要となる項目について明らかにして きた.令和元年度は,「災害対策における地域保健活動 推進のための実務担当保健師の能力向上に係わる研修ガ イドラインの作成と検証」(厚生労働科学研究費補助金 健康安全・危機管理対策総合研究事業)において,分担 研究者として参画し,近年の被害の甚大化する災害時の 受援の実態を検証し,今後の大規模災害時の効果的な支 援・受援に向けた「保健師の災害時の応援派遣及び受援 のためのオリエンテーションガイド」を作成した.また,
実務保健師の災害時の対応能力育成のための研修ガイド ラインの作成に取り組み,モデル自治体においてガイド ラインを用い検証を図り,その有効性を確認した.
地域における広域災害時の健康危機管理対応能力の向 上に向けて体制が整備されつつある災害時健康危機管理 支援チーム(DHEAT: Disaster Health Emergency
Assis-tance Team)の人材育成に向けて, DHEAT研修・基礎編
及び高度編への研修カリキュラムの提供と研修を実施し たところである.
⑤災害時における健康危機情報の収集・評価に関する研 究
2011年から2018年の東日本大震災後の研究課題の文献 レビューを実施した.英語(PubMed (US National Library of Medicine, National Institute of Health), Web of Science (Clarivate Analytics))および日本語(JDream Ⅲ(JST), 医中 誌(医学中央雑誌刊行会))のデータベースより健康に 関する研究を抽出し,対象集団別に研究の動向を調査し ている.今年度は,データ収集方法などの項目を追加で 行い,妊婦等では大型研究事業,高齢者では既存の研究 事業の拡張などの傾向が認められた.
⑥地方衛生研究所の健康危機管理対応能力に関する研究 地方衛生研究所の現状の体制と対応能力について 5 年 に 1 度の調査として,平成30年度末調査を地方衛生研究 所全国協議会と共同で実施した.全国の地方衛生研究所 83箇所に質問表を送付し回収した.質問項目は,組織,
人員,予算,施設,業務全般,調査研究,試験検査,研 修指導,公衆衛生情報の収集・解析・提供,危機管理等 多岐に亘っており,データのまとめと解析を実施中であ る.
3 )研修報告
当部スタッフが研修主任,副主任,又は講師を担って いる研修には以下のものがある.
<長期研修>
〇専門課程I
・保健福祉行政管理分野分割前期(基礎)
〇専門課程III
・地域保健福祉専攻科
・地域保健臨床研修専攻科
<短期研修>
〇地域保健
・健康危機管理研修(DHEAT養成研修(高度編))
・感染症集団発生対策研修
・難病患者支援従事者研修(保健師等(指導者向け))
・ 難病患者支援従事者研修(難病相談・支援センター職 員研修)
〇情報統計に関する分野
地域保健支援のための保健情報処理技術研修 4 )社会貢献活動等
健康危機管理に関する国内外の活動に部員が専門家と して協力している.齋藤部長は,内閣官房「未承認薬の 海外提供に関する専門委員会」,同「新型インフルエン ザ等パンデミック発生時のコミュニケーションに関する 調査事業」有識者委員会,厚生労働省「一類感染症に関 する検討会」委員, 同化学災害・テロ対策に関する検討 会構成員を務めるほか,厚生労働省が行う新型インフル エンザ等対策ワークショップの監修,東京都感染症対策 アドバイザー,WHOが実施する国際保健規則に基づく 合同外部評価(JEE)のパラオ評価ミッションリーダー を務めている.令和元年10月に岡山で開催されたG20保 健大臣会合で実施された公衆衛生危機シミュレーション 演習では,東京大学・国立感染症研究所の研究者ととも にシナリオ作成を行なった.また,同年12月より,世界 健康安全保障行動グループバイオロジカルワーキンググ ループ共同議長を務めている.奥田博子上席主任研究官 は,厚生労働省健康局地域保健室主催「DHEAT研修企 画運営会議」の委員を務め健康危機管理研修(DHEAT 研修)の基礎編,高度編,ファシリテーター編の総合企 画・運営・評価に務めている.また,令和元年度地域保 健総合推進事業「大規模災害における栄養・食生活支援 活動の連携体制と人材育成に関する研究班」において,
大規模災害時の管理栄養士の連携体制構築のためのガイ ドラインの作成,および人材育成に有効な教材の開発に,
専門家として参画している.日本公衆衛生学会「災害・
緊急時公衆衛生活動委員会」委員,日本集団災害医学 会「災害医学のあり方委員」,日本地域看護学会「災害 看護のあり方検討委員」など災害に関連する学術学会に おいても専門的立場から貢献している.江藤亜紀子上席 主任研究官は,「染色体線量評価手法の標準化にむけた 画像解析技術に係る検討委員会」の委員を務めた.また,
WHO神戸センターが開催したWKC Forum : Accelerate International Research Collaboration for Health Emergency and Disaster Risk Management (Health-EDRM) - Dialogue on Japan/Hyogo/Kobe Contribution to the Global Scientific Evidence Development- に専門家として参加した.