牛山明
(1)平成31
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令和元年度活動報告1 )加熱式たばこの生体影響に関する研究(文部科学 省科研費,厚生労働科学科研費)
非燃焼加熱式たばこ(IQOS,glo,Ploom TECH)の 利用者が急増しているが,その健康影響について,加熱 式たばこが従来の燃焼式たばこより健康リスクが低いこ とを示したエビデンスは存在しない.そこで本研究では,
吸引した煙(エアロゾル)に直接晒される臓器である肺に 着目し動物実験を行い,加熱式たばこによる生体影響の 科学的なエビデンスを示すことを目的とする.目的達成 のために,加熱式たばこの煙を吸引した際の急性炎症反 応を,肺胞・肺血流の変化,血管内皮障害,及び肺胞マ クロファージの挙動に注目して明らかにする.同時に尿 等に含まれる喫煙関連物質・酸化ストレスマーカーを化 学分析し,加熱式たばこの生体への負荷を明らかにする.
本年度は.対照実験として,高濃度酸素をマウスに長時 間吸入し,酸化ストレス負荷をかけた場合の影響につい て検討を行い,高濃度酸素(95%以上)ばく露をマウス に対して24時間行った場合には影響は見られないが,36 時間,48時間となるにつれて肺胞洗浄液中の肺胞マクロ ファージの挙動に変化が見られることを明らかにした.
2 )非電離放射線(電磁波)の健康リスク評価に資す る研究(総務省生体電磁環境委託研究)
非電離放射線(電磁波)は,国民生活において通信機 器,医療機器,家電機器などに応用され利用されている.
科学技術革新により,今後は無線電力伝送によるEVへ の給電や,5Gと呼ばれる超高速通信の普及が予想されて おり,ヒトが晒される周波数の種類やばく露量も増加す る見込みである.電磁波ばく露に起因する健康リスクに ついて衛生学的観点から十分な科学的根拠を収集し,リ スク管理に適用するために,本年度は 2 つの課題につい て調査研究を進めた.
①中間周波における遺伝毒性等の生物学的ハザード同定 に関する調査
本研究は,自動車等の無線電力伝送システムで利用さ れる中間周波帯(85kHz)ばく露装置および既存のばく 露装置を使用して,中間周波磁界のマウスへのばく露実 験を実施した.化学物質における遺伝毒性を調べる際の 標準バッテリー試験のうち,in vivo(動物)で行う項目 である「げっ歯類を用いる造血組織の小核試験」を行う と共に,「トランスジェニック動物突然変異試験」「pig-a 突然変異試験」を平行して行った.実験に用いた条件で は健康影響に結びつくような影響は見られることはなく,
現行のガイドライン等の妥当性が支持される結果であっ た.
②電波の生体影響評価に必要な研究手法標準化に関する
調査・研究
本年度は,in vivoの神経毒性評価について文献的な検 討を行うとともに,世界各国の生体電磁環境研究に従事 する研究者,OECDガイドラインに精通する研究者,規 制担当者等を対象に「研究手法標準化に関する国際意識 調査」を実施した.その結果,超高周波に関して,研究 者の多くは,標準的な方法があるべきと答えたが,それ ぞれが考える標準的な方法については意見が重複する項 目と,意見が分かれる項目があることが明らかとなった.
3 )血管内皮傷害と微小循環動態の研究(文部科学省 科学研究費)
微小循環の恒常性・健全性が健康度と強い相関がある ことが知られている.また病態時には血管内皮内腔面の グリコカリックス層と呼ばれる層が崩壊し,血管の機能 傷害を引き起こすことが知られている.本年度は,微小 循環動態およびグリコカリックス層の挙動について,マ ウスの皮膚,肺を対象に検討を行った.その結果,敗血 症病態モデルにおいては,敗血症惹起後72時間程度から グリコカリックスおよび関連する生理指標の回復の開 始が起こり, 7 日後には概ね正常化することが明らかと なった.また,グリコカリックスの崩壊ないしは回復過 程にアスコルビン酸が寄与しているのではないかとの仮 説のもと,研究を進めた.
4 )養成訓練
専門課程において,専門課程委員会委員長として,本 院の専門課程の内容の充実に努めた.保健福祉行政管理 分野本科( 1 年コース)の参加が難しくなる中,高度養 成訓練を継続実施するため,分割後期担当の一員として 遠隔システムの拡大をはじめ活性化に務め,今年度分割 前期修了者から分割後期へ 2 名の在籍者を得た.一方で 分割後期の今年度修了生の 1 名の指導教官を担当した.
また,必修科目「環境保健概論」の科目責任者を担当し た.
短期研修では,「住まいと健康」,「地域保健支援の ための保健情報処理技術研修」,「健康危機管理研修
(DHEAT養成研修(高度編))」の副主任を担当した.い ずれも高い満足度で修了することが出来た.
5 )社会貢献活動等
厚生労働省の委員会を含め,総務省,経産省等の検討 会構成員,委員会委員に参画するなど,電磁界,たばこ 対策の課題対応に貢献するとともに,学会活動も積極的 に行っている.国際貢献として,「WHOたばこ規制枠組 み条約 9 条10条専門家検討会」の専門家としてWHO西
太平洋地域事務局が管轄する国の中から 2 名のみ指名 される重責を担った.また,たばこ煙の有害化学物質 分析に関して,WHO研究協力センター(Ref. No.: JPN-90)を務めている.さらに WHO電磁界プロジェクト国 際諮問委員会日本政府代表委員として,電磁界に関する WHOからの問い合わせ窓口として貢献をおこなった.
国立研究開発法人国立環境研究所エコチル調査コアセ ンターが主催した「エコチル調査研究デザイン検討会」
において,分野別コアメンバー 6 名のうちの 1 名に任命 され,グループメンバーを統括し,分野の報告書の取り まとめを行うとともに,コアメンバー会議を通じて他分 野との調整を行い,2020年 3 月に報告書を取りまとめた.
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(2)平成31/令和元年度研究業績目録 1 )学術誌に発表した論文(査読付きのもの)
原著/Original
Uzawa K, Ushiyama A, Mitsuda S, Ando T, Sawa M, Miyao H, Yorozu T. The protective effect of hydroxyethyl starch solution on the glycocalyx layer in an acute hemor-rhage mouse model. J Anesth. 2020;34(1):36-46.
Ochi H, Iijima T, Ushiyama A. Intra-vital observation of lung water retention following intravenous injection of anti-MHC-class I (H-2K) monoclonal antibody in mice. In Vivo.
2019;33(5):1477-1484.
Ohtani S, Ushiyama A, Maeda M, Wada K, Suzuki Y, Hat-tori K, et al. Global analysis of transcriptional expression in mice exposed to intermediate frequency magnetic fields utilized for wireless power transfer systems. Int J Environ Res Public Health. 2019;16(10):pii: E1851.
2 )学術誌に発表した論文(査読のつかないもの)
抄録のある学会報告/Proceedings with abstracts Ohtani S, Ushiyama A, Wada K, Suzuki Y,Ishii K, Hattori K. In vivo assessment of genotoxicity for high intensity intermediate-frequency magnetic fields exposure. Bio-EM2019 (Joint Meeting of The Bioelectromagnetics Soci-ety and the European Bio Electromagnetics Association);
2019.6.23-28; Montpellier, France. Abstract Book. p.467-469.
稲葉洋平,内山茂久,欅田尚樹,牛山明.加熱式た ばこIQOS互換機の主流煙に含まれる多環芳香族炭化水 素の分析.第28回環境化学討論会;2019.6.12-14;埼玉.
同プログラム集.P-059.
澤麻理恵,牛山明,服部研之,中舘和彦,石井一行.
高濃度酸素連続吸入による気管支肺胞洗浄液(BALF)
中の肺胞マクロファージの経時的変化.フォーラム2019 衛生薬学・環境トキシコロジー;2019.8.31-9.1;京都.
同講演要旨集.p.220.
服部研之,牛山明.WPT(無線電力伝送)に用いら れる中間周波帯(100kHz帯)磁界ばく露の酸化ストレ スを指標とする生体影響評価.フォーラム2019衛生薬 学・環境トキシコロジー;2019.8.31-9.1;京都.同講演 要旨集.p.160.
稲葉洋平,内山茂久,戸次加奈江,牛山明.加熱式 たばこから発生する有害化学物質の分析.フォーラム
2019衛生薬学・環境トキシコロジー;2019.8.31-9.1;京 都.同講演要旨集.p.286.
石塚美帆,内山茂久,佐藤綾菜,野口真由美,稲葉洋平,
牛山明,他.電子タバコに含まれるプロピレングリコー ル,グリセロールの熱分解物の分析.日本分析化学会第 68年会;2019.9.11-13;千葉.同講演プログラム集.p.492.
野口真由美,内山茂久,菱木麻祐,佐藤綾菜,石塚美 帆,牛山明,他.4種類の拡散サンプラーを用いる空気中 ガス状化学物質の一斉分析.日本分析化学会第68年会;
2019.9.11-13;千葉.同講演プログラム集.p.496.
大久保千代次,牛山明.我が国における生体電磁環境 に関する研究の取組み.第78回日本公衆衛生学会総会;
2019.10.24;高知.日本公衆衛生雑誌.2019;66(10特別附 録):193.
稲葉洋平,内山茂久,欅田尚樹,牛山明.加熱式た ばこ互換機および互換スティックを使用によって発生 する化学物質の分析.第78回日本公衆衛生学会総会;
2019.10.24;高知.日本公衆衛生雑誌.2019;66(10特別附 録):366.
牛山明.高強度の中間周波磁界ばく露の血液指標に 対する影響の検討.第78回日本公衆衛生学会総会;
2019.10.24;高知.日本公衆衛生雑誌.2019;66(10特別附 録):584.
遠田健一,牛山明,三上康弘,宮崎元伸.さいたま市 内の季節性インフルエンザ流行期における小学校学級閉 鎖と絶対湿度との関連.第78回日本公衆衛生学会総会;
2019.10.24;高知.日本公衆衛生雑誌.2019;66(10特別附 録):495.
奥田祐亮,和田安彦,奥田博子,牛山明,野尻孝 子.アレルギー性疾患を有する小児における災害に対す る自助の備えの現状.第78回日本公衆衛生学会総会;
2019.10.24;高知.日本公衆衛生雑誌.2019;66(10特別附 録):509.
石塚美帆,内山茂久,佐藤綾菜,野口真由美,稲葉 洋平,牛山明,他.非燃焼式タバコから発生する有害 物質の分析法の開発.第78回日本公衆衛生学会総会;
2019.10.24;高知.日本公衆衛生雑誌.2019;66(10特別附 録):581.
佐藤綾菜,内山茂久,野口真由美,石塚美帆,野口 真由美,牛山明,他.非燃焼式タバコから発生する有 害物質の分析結果.第78回日本公衆衛生学会総会;