多くの患者では副腎皮質ステロイド薬によく反応する が,重症例には免疫抑制薬の併用が必要となることもあ る(クラスⅠ・Ⅱ
a
)266).まずステロイド薬の大量療法 が第一選択薬となる.プレドニゾロン(PSL
)換算で0.6
〜1.0mg/kg/
日の初期投与量を1
ヶ月以上続け,以後 病状に応じて漸減する.メチルプレドニゾロン0.5
〜1.0g/
日のパルス療法を3
日間施行してから上記の経口投与に移ることもある(クラスⅡ
b
).重症例や血管炎症 候群の著しい例にはシクロホスファミド大量静注療法(
IVCY
)0.5
〜0.75g/m
2またはシクロホスファミド(CY
)0.5
〜2.0mg/kg/
日の経口投与を開始し,併用療法を行う.IVCY
の投与間隔は1
回/3
〜4
週間とし,IVCY
投与2
週 間後の白血球数が3500/
μl
以上を保つように投与量を調 節する.CY
が用いられない場合にはアザチオプリンな どを経口投与する.寛解導入後は,CY
からアザチオプ リンに変更しても再発率は変わらない240).また難治例や免疫抑制薬が使用しにくい場合には,ガンマグロブリ ン製剤の大量静注療法が効果を出すことがある(クラス
Ⅱ
b
)267).ただこれらの免疫抑制薬やガンマグロブリン 療法は適用外であり,使用にあたっては十分なインフォ ームド・コンセントをとり,副作用にも十分注意する.気管支喘息に対しては,一般の気管支喘息治療に用いら れる薬剤を適宜使用する.
6 予後
主な死因は消化管出血,脳出血,心筋梗塞などである.
多発単神経炎による運動麻痺は長期にわたり持続する.
4 ヘノッホ・シェーンライン 紫斑病
1 疾患概念・定義・疫学
ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(
Henoch- Schönlein purpura: HSP
)は皮膚症状(出血斑,丘疹,局在性浮腫),関節症状(腫脹,疼痛),腹部症状(腹痛,下血)を三 主徴とする非血小板減少性紫斑病で,全身性の小血管炎 が本態である.重要な合併症として腎炎がある.同義語 としてアナフィラクトイド紫斑病,アレルギー性紫斑病 などがある.
小児では最も頻度の高い血管炎で,年間
10
万人当た り10
人程度の発症率である.好発年齢は4
歳から7
歳で,表 27 アレルギー性肉芽腫性血管炎(Churg-Strauss 症候群)の診断基準 概 念
Churg-Straussが古典的
PNから分離独立させた血管炎であり,気管支喘息,好酸球増加,血管炎による症状を示すものをChurg-Strauss症候群,典型的組織所見を伴うものをアレルギー性肉芽腫性血管炎とする 診断基準項目
1)主要臨床所見
(1)気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎
(2)好酸球増加
(3) 血管炎による症状(発熱〈38℃以上,2週間以上〉,体重減少〈6ヶ月以内に6㎏以上〉,多発性単神経炎,消化器出血,
紫斑,多関節痛〈炎〉,筋肉痛,筋力低下)
2)臨床経過の特徴
主要臨床所見(1),(2)が先行し,(3)が発症する 3)主要組織所見
(1)周囲組織に著明な好酸球浸潤を伴う細小血管の肉芽腫性,またはフィブリノイド壊死性血管炎の存在
(2)血管外肉芽腫の存在 判定基準
1)確実(definite)
(1) 主要臨床所見のうち気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎,好酸球増加および血管炎による症状のそれぞれ1つ以上を 示し同時に,主要組織所見の1項目以上を満たす場合(アレルギー性肉芽腫性血管炎)
(2)主要臨床項目3項目を満たし,臨床経過の特徴を示した場合(Churg-Strauss症候群)
2)疑い(probable)
(1)主要臨床所見1項目および主要組織所見の1項目を満たす場合(アレルギー性肉芽腫性血管炎)
(2)主要臨床所見3項目を満たすが,臨床経過の特徴を示さない場合(Churg-Strauss症候群)
参考となる検査所見
(1)白血球増加(1万/μℓ以上)
(2)血小板増加(40万/μℓ以上)
(3)血清IgE増加(600U/mℓ以上)
(4)MPO-ANCA陽性
(5)リウマトイド因子陽性
(6)肺浸潤陰影(これらの検査所見はすべての例に認められるとは限らない)
鑑別診断
肺好酸球増加症候群,他の血管炎症候群(ウェゲナー肉芽腫症,結節性多発動脈炎)との鑑別を要する 参考事項
(1)ステロイド未治療例では末梢血好酸球数は2,000μg/mℓ以上の高値を示すが,ステロイド投与後は速やかに正常化する
(2)気管支喘息はアトピー型とは限らず,重症例が多い.気管支喘息の発症から血管炎の発症までの期間は3年以内が多い
(3)胸部X線所見は結節性陰影,びまん性粒状陰影など,多様である
(4)肺出血,間質性肺炎を示す例もみられる
(5)血尿,蛋白尿,急速進行性腎炎を示す例もみられる
(6)血管炎症候寛解後にも,気管支喘息は持続する例がかなりある
(7)多発性単神経炎は後遺症が持続する例が多い
(厚生省難治性血管炎分科会,1998 年修正)
93
%は10
歳以下である268).若干男児に多く秋から冬に 多い.2 発症機序
明確な病因は不明であるが,病初期の血清
IgA
高値やIgA
型免疫複合体の存在,およびIgA
型自己抗体(抗血 管内皮細胞抗体など)の存在から「IgA
の関与する免疫 複合体病」と考えられる.また本症ではIgA
サブクラス・IgA1
の構造異常が指摘されている.食物・薬剤アレル ギーが関与した例も報告されている(表28).抗好中球 細胞質抗体(ANCA
)は,陰性とする報告が多い.3 病理所見
組織学的には小血管周囲の多核白血球を中心とした炎 症性細胞浸潤と血管壁の
IgA
沈着によって特徴づけられ る.4 臨床症状と検査所見
50
%の症例で先行感染として上気道炎の既往がある(先行感染から発症までの期間は
1
〜2
週間).皮膚症状,消化器症状,関節症状が三大主徽であるが,出現順位に 一定の傾向はなく,約
40
%で関節炎や腹痛が紫斑に先 行する.(
1
)皮膚症状:ほぼ全例に左右対称性の隆起性紫斑が下 肢や背部にみられる(図33).その他,血管神経性浮腫(
Quincke
の浮腫)が顔面,足背・手背や陰嚢に出現することもある.
(
2
)関節症状関節の疼痛と腫脹が
70
〜80
%にみられる.下肢の大 関節(足関節や膝関節)が侵されることが多いが,1/3
の例では手関節,肘関節も侵される.(
3
)消化器症状腹痛,嘔吐,血便,下血などが
50
〜70
%にみられる.血管炎による消化管壁の浮腫と出血による.その他,
腸重積症,腸閉塞,腸管穿礼,壊死性腸炎,腸管内大 量出血,蛋白漏出性胃腸症などもみられることがある.
(
4
)腎症状10
〜50
%に合併する.他の症状よりも遅れて出現す るが,80
%は1
ヶ月以内に出現する.一般に検尿での 顕微鏡的血尿や蛋白尿で発見される(血尿のみの例が90
%で,血尿と蛋白尿の両者を有するものは3
%程度269)
)が,ときに肉眼的血尿,腎機能低下やネフロー ゼ症候群を呈する.病理組織所見は腎機能予後によく 相関する(図34).
(
5
)その他の症状神経症状(けいれん,頭痛)や睾丸・陰嚢症状(腫脹,
疼痛)も少なからず(
<40
%)みられる.その他,虹 彩炎,ブドウ膜炎,心筋障害,心電図異常,尿管狭窄・閉塞の報告がある.
表 28 ヘノッホ・シェーンライン紫斑病の原因 病因 原因病原体および物質
感染症
ウイルス EBウイルス,アデノウイルス,パルボウイルス B19,水痘,麻疹,風疹
細菌 A群β溶連菌,マイコプラズマ,キャンピロバ クター・ピロリ,バルトネラ・ヘンセラ アレルギー
薬剤 ペニシリン,テトラサイクリン,エリスロマイ シン,アスピリン,サイアザイド
食物 ミルク,卵,魚肉,トマト,チョコレート,ジ ャガイモ,小麦
その他
虫刺症(ハチ,蚊),寒冷曝露
図 33 ヘノッホ・シェーンライン紫斑病の 典型的な下肢の紫斑(5 歳,女児)
図 34 ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(5 歳,女児)に合併 した腎炎(紫斑病性腎炎)の典型的な腎組織所見:糸 球体のメサンジウム細胞と基質の増生を認める(PAS 染色×100)