時間の科学的妥当性を確認した上で整合化させるべきである。
b
)各種紙験に関する事項
次に、実際に製造された圧力容器の安全性を確認するための各種獄験に関する 相違点について整合化の可能性を検討した。具体的な事項としては、溶接部の機 械賦験、水圧試験圧力、気体耐圧誤験圧力及び気密試験の 4 点である。
0 溶接部の機械試験
溶接の品質は溶接士の技量及び施工法により確保されるものであることか ら、機械的性質(引張り強度、曲げ特性)については、一般的に、一定の品質 管理システムが構築され問ーの施工法で溶接が行われる限り大きくばらつくも
句
,
規格では本体溶接部の機械試験としては衝撃試験のみを要求していると考えら れる。しかしながら、高圧ガス設備の技術基準においては、
A S M E規格のよ うな品質管理システムを確認する工場認定制度がないことから、引張試験及び 曲げ試験を不要とし衝撃試験だけを要求すると機械的性質の担保が不十分とい
うことになる。
ただし、国際整合化の観点からは、 A
S ME 規格の工場認定を受けているな ど、一定の品質管理能力を有する工場において、資格を有する溶接士が確認さ れた施工法により溶接をした場合には、 A
S ME 規格と閤様に衝撃試験だけに 限定しても良いと考えられる。
0 水圧試験圧力
水圧鼠験圧力について、 A
S ME 規格では、従来、温度補正をした上で設計 圧力の
1. 5倍以上で実施することが規定されていたが、
19 9 9年の改正に より設計圧力の
1. 3倍以上に変更された。これは、降伏点ベース(
1/1.5
)で設計マージンが決定された場合に水圧獄験圧力が降伏点に達し、圧力容 器が塑性変形を起こす可能性があることから、
;j(圧鼠験圧力を下げる必要があ
り、設計マージンの減少分(
3. 5 / 4)だけ見直したものである。
高圧ガス設備の技術基準においては、水圧誌験圧力は設計圧力の
1. 5倍以 上であるが、
A S M Eのように温度補正を要求しておらず、高圧ガス設備の使 用環境に応じた耐圧性能を確認しているとは言い難い。水圧試験圧力には温度 補正を要求する必要がある。
また、温度補正を要求し、かつ、設計マージンを整合化するのであれば、水 圧鼠験圧力を設計圧力の
1. 3倍以上とすることが必要である。
ただし、水圧鼠験は一般高圧ガス保安規則などにおいて高圧ガス設備の設置 後に行う完成検査及び保安検査においても要求されていることから、特定設備 の水圧鼠験圧力を変更することによる影響を精査する必要がある。
0 気体耐圧獄験圧力
気体献庄試験圧力について、 A
S ME 規格では、従来、温度補正をした上で 設計圧力の
1. 2 5倍以上で実施することを求めていたが、
19 9 9年の改正 によって設計圧力の
1. 1倍以上に引下げを行った。これは、水圧諒験圧力と 同様に設計マージンの減少分だけ圧力を下げたものである。
高圧ガス設備の技術基準においては、試験圧力は設計圧力の
1. 5倍以上で
あるが、
AS M E規格のように温度補正を要求しておらず、高圧ガス設備の使
用環境に応じた耐圧性能を確認しているとは言い難い。気体耐圧試験圧力には
温度補正を要求する必要がある。
また、温度補正を要求し、かつ設計マージンを整合化させるのであれば、気 体耐圧試験を設計圧力の 1. 1 倍以上とすることが必要である。
ただし、気体耐圧試験は一般高圧ガス保安規則などにおいて高圧ガス設備の 設置後に行う完成検査及び保安検査においても要求されていることから、特定 設備の気体耐圧試験圧力を変更することによる影響を精査する必要がある。
0 気密言式験
気密性能については、溶接技術の進歩により溶接部からの漏えいの可能性は 低くなっている。また、微少漏えいについても、検出能力が気密試験に比べや や劣るものの、耐圧試験により確認できる。国内外の基準・規格においても気 密獄験を要求しているものは極めて少数である(閣内の場合、労働安全衛生法 及び電気事業法(一部設備除く。)は気密獄験を要求していない。)ことを考 えると、微少瀦えいの確認は自主保安の中で必要に応じてユーザーがメーカー に要求すれば良いのであって、法令上義務付ける必要はないと考えられる。
ただし、気密試験は一般高圧ガス保安規則などにおいて高圧ガス設備の設置 後に行う完成検査及び保安検査において要求されていることから、特定設備の 気密獄験を廃止することによる影響を精査する必要がある。
c
)作業従事者等に関する事項
最後に、製造される圧力容器の品質を確保するために必要な作業従事者や製造 工場に関する条件の梧違点について整合化の可能性を検討した。具体的な事項と
しては、溶按士、非破壊試験員及び製造工場の 3 点である。
0 溶接士
A S M E
規格では、製造メーカーは資格を有する溶接土を用いることとされ ており、その資格は
A S M Eに規定された技量認定方法により製造工場の責任 者が自社内で付与する。
一方、高圧ガス設備の技術基準には、溶接士の資格に係る規定は存在しない ものの、一般的には
J I S等の公的資格(第三者の認定による資格)を有する 者が溶接を行っている。
両者間においては自己認証と第三者認証というシステムの違いは存在するも
のの、溶接士の技量を維持し、溶接部の品質を確保する観点からは同等のもの
と考えられる。したがって、高圧ガス設備の技術基準においても、 等一
0 非破壊試験員
A S M E
規格では、資格認定された試験員が要求される。資格認定は製造メー カー自らが米国非破壊検査協会の定める基準により行うことが一般的である。
一方、高圧ガス設備の技術基準の場合、 5 式験員の資格については規定してい ないが、一般的には日本非破壊検査協会により資格認定された試験員が実施し ている。
したがって、高圧ガス設備の技術基準においても、一般的に認められている 資格を有する獄験員が非破壊検査を行うことを規定する必要がある。
0 製造工場
特定設備については、検査機関が設計検査、材料検査、加工検査、溶接検査、
構造検査等の各製造工程の検査を行うことにより十分な安全性が確保されてき た。したがって、現行制度に加え、製造工場について品質管理システムに係る 第三者認定や厳しい溶接施工法確認を新たに義務付けることは必要ないと考え
られる。
ただし、国際整合化の観点から、
A S M E Section V1II Divis ion 1に整合化 し溶接部の機械誌験を衝撃獄験に限定する場合には、
Division 1と同等の溶接 施工法の確認及び品質管理システムの認定を求めるべきである。
(3) A S M E Sect ion V1II Division 2
及び整合
EN規格との整合化について
整合
EN規格は、
EU各国の規格を基礎としたものであり、高圧ガス設備の技術基 準や
A S M E規格と比較すると、材料規格が異なる、材料の許容応力値が高い、材料 や製造工程毎の品質管理が厳しいなど大きな相違があると考えられる。
また、
A S M E Section V1II Div i s ion 2は、「解析による設計(
Designby Analysis)」を採用しており、
Division 1や高圧ガス設備の技術基準が採用している「公式に よる設計(
Design by Rule)」とは設計思想が異なる。その上、
Division2の見直し 及び整合
EN規格の策定はまだ検討段階であり、その具体的な内容は確定していない。
したがって、現時点では内容に踏み込んだ整合化の可能性を検討することはできな
︒ ︑
a a ν
一方で、
A S M Eは
SectionV1II Division 2の見直しの中で
EUの整合
EN規格に
類似した規格を策定することとしており、国際的な規格の統一が急速に進む可能性も
否定できない。
4.
国際整合化の方向性
(1
)当面の見直し
A S M E
SectionV 1 I I
Divis i on1 については、技術的な観点から詳細に麓合化の可 能性を検討し、整合化しても基本的に安全上問題がないとの結論に遼した。このた め 、
3. (2)②の各事項について必要な検討を速やかに進め、今後
1年程度を目途に 高圧ガス設備の技術基準を見直し、整合化を図るべきである。
(2
)中期的な課題
A S M E
Sect i onV 1 I I
D i v i s i on2 及び整合 EN 規格との整合化については、見直し ゃ策定の作業が現在行われているということもあり、踏み込んだ検討はできなかった が、これらの規格が
2002年壌には策定される予定であることから、今後、見直し ゃ策定の動向を注視しつつ、整合化の可能性を検討していくことが必要である。
(3
)その他
高圧ガス設備の技術基準については、これまで、規制緩和要望などを踏まえた見 直しが行われてきたが、技街進歩や潜外の規格・基準の動向を踏まえた体系的な見 直しは必ずしも行われていない。したがって、今後は、高圧ガス設備の技術基準を 定期的にレビューし、技術進歩や国内外の規格・基準の動向、他法令との整合化の 必要性などを踏まえタイムリーに毘直しを実施していくべきである。
また、今回は高圧ガス設備を製造する際に適用する技術基準の国際整合化を検討 したが、高圧ガス設備を設置した後の維持・管理に係る技術基準についても可能な 限り国際整合化を函ることが望ましい。
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