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ドキュメント内 2015 年度博士論文 (ページ 57-62)

図 2-18 PPD 平均値と空調エネルギー消費量の関係

53 2.5.考察

オフィスにおける内部発熱の発生状況は、照明や OA 機器の仕様やシステムの変化、ワー クプレイスでのワークスタイルの影響を大きく受ける。

照明システムに関しては、東日本大震災以降、基準照度の引き下げや不在部分での消灯 など運用方式の変化に加えて、タスク&アンビエント照明に代表されるシステムの変化、

HF 照明器具や LED といった高効率な器具の実用化等、大幅な省エネルギーが図られる傾向 にある。同時に、ワークプレイスでの在席状況等の使われ方に関しても、実測等が行われ、

その実態が徐々に明らかになってきている。

これらを総合的に考えるとワークプレイスで発生する内部発熱は、局所的には極小化へ、

全体的には偏在化する方向に進み、こうした特性を前提に快適性と省エネルギー性が両立 できる空調システムを構築する必要がある。

熱的快適性の面からは、顕熱処理に関係する室温や表面温度のみならず、特に夏期にお いては、潜熱処理に関係する室内湿度の影響が懸念される。これは、負荷の極小化により、

給気温度差が確保できない場合は、当然、除湿も進まなくなり、湿度が高くなる状況とな る。図 2-13-3からも除湿制御無しとなる、通常の本冷コイルシステムでは、在席率 50%で、

室内相対湿度 50%を超える発生頻度は約 50%であり、在席率が更に小さくなると相対湿度は 益々高くなる。

偏在化に対しては、内部負荷のバラツク空間スケールが現在の汎用的な空調システムの 温度制御単位である 50 ㎡より小さく、照明システムや PC、在不在は、凡そ 10 ㎡程度でも 大きな熱量偏差が生じる。従来の空調設計では、温度制御単位である 50 ㎡のスケール内は 均一に拡散するという仮定で熱環境等の評価を行ってきたが、より偏在化が進む状況では、

完全拡散による仮定には無理があり、室内熱環境側にも偏差が生じる状況を前提として、

空調システムの設計を行う必要が生じてきている。

本章で行ったシミュレーションによる検討では、在席率 50%以下では、内部発熱の偏在 化が大きく、結果、熱環境や空調のエネルギー消費量への影響も大きなことが把握できた。

特に、本章で取り上げた単一ダクト VAV 空調方式における設計上注意すべきポイントと して、顕熱処理の影響を受ける湿度のコントロール、制気口と VAV、AHU といったスケール 別に定義される給気量単位に関わる空気搬送システムの適正化が課題として把握できた。

これら 2 つの視点から、単一ダクト VAV 空調方式に対して、改善・改良を行い、適正化を 図ることが具体的な設計テーマと位置付けられる。

更に、VAV ゾーンスケールより小さい、スパンスケールでの偏在化に対しては、VAV によ る制御では対応できず、より小さなスケールでの熱環境制御の工夫が必要であり、いわゆ るタスク空調やパーソナル空調で対応が期待される領域と定義できる。図 2-18からも PPD 平均値が PMV 奨励範囲内に対応する 10%を超える発生頻度も全般的には大きく、これらの 手法への期待は大きいことが理解できる。

54 2.6.結論

事務所用途で採用の多い単一ダクト VAV 空調方式を対象にワークプレイスを想定し、発 生する内部発熱の偏在化の状況を推定した。これらの結果を基に、在不在の組み合わせを 想定した内部発熱偏在化を考慮したシミュレーションを行い室内熱環境および空調エネル ギー消費に与える影響に関して検討を行った。VAV ゾーン間の熱移動を考慮していないこ と、定常計算での熱収支モデルであることで、室温偏差が比較的大きく評価されており、

こうした限定された条件下での結果であるが、以下、得られた知見を示す。

① 既往の研究からスパンスケールでのモデル化により、執務者在不在に基づく内部発熱の 発生状況を推定し、在不在で大きな偏差が生じることを示した。

② 執務者の在不在の発生パターンから内部発熱の偏在化の状況を再現し、発生パターン数 分の PMV、PPD の発生頻度を評価する手法を提案し、偏在化が室内熱環境に与える影響の 評価方法を示した。

③ 完全拡散条件においても、在席人員が小さくなると、室内熱環境が悪化する頻度が高く なる。32 人在席(在席率 50%)で 10%が奨励範囲外であったものが、16 人(在席率 25%)

では 40%が奨励範囲外となる等、偏在化が室内熱環境に与える影響を定量的に示した。

④ スパンスケールでの偏在化を考慮した半拡散条件の場合(拡散係数

R

=0.5、0.0)、在席 人員が大きな場合でも室内熱環境が悪化する傾向に進み、在席人数の違いによる熱環境 への影響差が小さくなる傾向にあることを示した。

⑤ 在席人数が少なく給気温度が高めとなる場合、特に在席人数が少ないほど、室内熱環境 が大きく悪化する傾向にあり、夏期、外気が高湿の場合は、予冷コイルによる除湿等を 確実に行うことが熱環境の適正化には必須であることを示した。

⑥ 空調機給気風量に余裕があったとしても、末端の制気口では、負荷の偏在化により最小

~最大風量の要求があり、着目するスケールで必要な風量(設備容量)が異なることを 示した。

⑦ 在席人数が少ない場合、空気搬送にかかるエネルギーの占める割合が高くなり、この部 分で省エネルギー対策を行うことが有効であることを示した。

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【参考文献】

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第 3 章

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