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内部発熱の偏在化に対応した空調システム改善提案の検討

ドキュメント内 2015 年度博士論文 (ページ 63-89)

はじめに

本章では、第 2 章に引き続き、内部発熱の偏在化が進むワークプレイスを対象に、こう した偏在化に強い空調システムの構築に向けて、単一ダクト VAV 空調方式を取り上げ、改 善手法の各種提案とその効果に関して検討を行った。

3.1.内部発熱の偏在化傾向と空調計画上の問題点

オフィスのインテリア空間(以降、ワークプレイス、WP)における内部負荷に関しては、

その設計値が過大であることが、近年、様々な建物の実測を通じて問題提議されている。

(例えば、参考文献 2)~12))

これは、各フロアやゾーン・エリアにおいて入居する職種等により、在席率等の使われ 方の差異が内部発熱のバラツキに影響しているためであり、床面積当たりの消費量はどの 程度の範囲を対象に原単位化するかで、その数値の持つ意味は大きく変わってくる。筆者 が設計に関与した事務所ビルでの竣工後の実測値13)を用いて、コンセントおよび照明にお ける消費電力量の原単位と対象とする専有部床面積の関係を分析した結果を図 3-1に示す。

ここでは、一つの空調エリアが、300 と 600 ㎡の二種類、全部で 46 エリアを対象に消費 量原単位に関してスケール別に最大-最小値を並べたものである。床面積当たりの消費量原 単位は、対象とする床面積を大きくしていくと原単位のバラツキは小さくなる。最小面積

(600 ㎡)での原単位最小-最大は 10-47[W/㎡]であるが、46 エリア全体の平均は 23[W/㎡]

と収斂する。つまり、着目する面積を小さく、ローカル(局所)へ進むとエリアによる発 熱のバラツキが大きくなる。逆に面積を増やしていくと、原単位の大きいエリアと小さい エリアが相殺されて原単位は小さくなる。

0 100 200 300 400 500 600

10 15 20 25 30 35 40 45 50

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000

電力消費量累計[Kwh]

電力消費量原単位[W/㎡]

累計床面積[㎡]

10-17時の平均 単位床面積当りの原単位(最大値)

累計値(最小)

単位床面積当りの原単位(最小値) 累計値(最大)

原単位のバラツキ 47[W/㎡]

10[W/㎡]

23[W/㎡]

図 3-1 消費電力量原単位と対象とする床面積の関係

58

表 3-1 空間スケールと空調機器・システム、負荷率の関係

この傾向は、空調システムを設計する上で、必要となる各種容量決定にも強く影響を及 ぼす。前述した 300~600 ㎡のスケールは主に空調機(給気風量やコイル容量、主ダクト)

に関わる容量決定であり、更に小さなスケールである、例えば VAV(50~100 ㎡)、制気口

(10~20 ㎡)、これらを結ぶ枝ダクト等でも同様の傾向が予想されるが、残念ながら、こ うしたスケール別にバラツキを捉えた実測調査等の把握はほとんど行われていないのが実 情である。

更に、個人のブースを対象にパーソナル空調を想定すると在不在の二者択一となり、且 つ、個人差(着衣量や代謝量の多様性)なども考慮すれば、負荷率は 0 から 100%、それ以 上と極端に拡がる可能性も予想される。(表 3-1)

以上の考察からも空間スケールは、大きな方向では平均化により負荷率や同時使用率が 小さくなる傾向に進み、既往の研究で指摘されている過剰設計といった状態になっている が、逆に空間スケールが小さな方向では、むしろ定格値やそれ以上になる頻度や可能性が 考えられ、必ずしも過剰設計になっているわけではないことが判る。

空調システムの最適容量設計を実現させるためには、着目する空間スケールによって、

過剰となる場合と過剰とはならない場合が存在することに注意しつつ、特に、空調機より ローカル側である空間スケールの小さな部分に関係する VAV や制気口の容量設定には、内 部発熱の偏差を想定した上で、各機器の容量の設定を行うべきと考える。

以上の空調計画上の問題点も含め、制気口~VAV~AHU を対象とした空間スケールに対し、

偏在化に強い空調システムの構築に向けて、具体的な手法提案とシミュレーションによる その効果把握に関して検討を進める。

空調機器/システム要素 負荷率・稼働率の特徴

数㎡ パーソナル空調用吹出口 在不在(0か100%)※着衣量・代謝量(個人差)

への配慮が必要

約10㎡ 天井(床)制気口・枝ダクト 定員4人ブースに相当(0、25、50、75、100%)

50~75㎡ VAV・サブメインダクト 定員16~24人程度。着席率の概念が必要 200~400㎡ 空調機・メインダクト 定員50~100人程度。同上

数千㎡ 縦系統(PS単位)・縦配管 定員1000人程度。同上 数万㎡ 配管圧力区分・2次ポンプ 定員5000人程度。同上

延床面積 全体・熱源システム 定員10,000人程度。同上

空間スケール

大 小

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図 3-2 3.6m スパン、在席ブースの概要 3.2.シミュレーションによる検討概要

3.2.1 内部発熱偏在化の推定方法

第 2 章で示した手法と同様に、オフィス内の個人ブースが設置されたワークプレイス(以 下、WP)を想定し、在不在のパターン数分の計算を行い、偏在化に強い空調システムの検 討を行う。

対象とする WP および空調システムの概要を図 3-2、3-3に示す。WP は 3.6m×3.6m のス パン、4 名席を一つの単位と考え、0、1、2、3、4 名の在席バリエーションを想定する。4 スパンで、一つの VAV ゾーンを構成し、4 つの VAV ゾーン、合計 64 名が在席する WP を想 定する。

合わせて、照明発熱および OA 機器発熱、また自身による人員発熱である在席人員毎の 内部熱負荷を在席人数に応じて推定する。内部発熱の推定条件を表 3-2に示す。3.11 以降 の省エネ運用をイメージして、タスク&アンビエント照明の採用、不在時の消灯や PC 等の 機器電源 OFF を想定している。

図 3-3 検討の対象とする空調システムと空間スケールの関係

60 3.2.2 在席パターンの設定方法

在席パターンの設定に関しても第 2 章と同様、在席率や空間的分布の傾向等の実績情報 が不十分であることから、考えられる在席パターンの組み合わせを設定する。

着席率を 0~100%間で、9 つのパターンに離散化して、在席人数の設定を行う。(表 3-3) VAV ゾーンにおける 4 つのスパンにおける在不在の組み合わせ(1つのスパンにおける、0、

1、2、3、4 人の 5 つの在席パターン)は、式(3-1)に示す様、70 通りとなる。(5 種類の中 から重複を許して 4 つを選定する)

n+r-1Cr = 5+4-1C4 = 8C4 =(n+r-1)!/r!×(n-1)!=8!/4!×(5-1)!=70 通り ・・・・・式(3-1)

仕様 運用 引用

文献 人員 顕熱発熱量 SH:55[W/人]、事務所作業(室温28℃) - 1)

アンビエント Hf300[lux]、32[W]×8[本]、出力40[%]:7.7W/㎡、

放熱比(室内:天井内=50:50)

スパン不在時off、

0[W/㎡] 2)

タスク 20[W/人] 不在時off、0[W] 3)

ノートPC 36[W/人]、Vista搭載のノートPC。アプリケーショ

ン使用時 不在時off、0[W] 4)

大型モニター 25[W/人] 不在時off、0[W] 3)

周辺機器 10[W/人] 不在時off、0[W] 3)

項目

照明

機器

着席率 0.0% 12.5% 25.0% 37.5% 50.0% 62.5% 75.0% 87.5% 100.0%

着席数

[人] 0 8 16 24 32 40 48 56 64 人員密度

[人/㎡] 0 0.04 0.08 0.12 0.16 0.2 0.24 0.28 0.32 表 3-3 検討に用いる在席パターン

注 太枠内が本報の検討対象 1) H21 建築設備設計基準

2) 平成 25 年省エネルギー基準に準拠した算定・判断の方法および解説(WEB ツール 解説本)、照明制御装置による消費電力削減効果の評価手法(日本照明工業会技 術資料)

3) 建物の内部発熱・使われ方に関する実態調査と熱負荷・システムシミュレーション 報告書 H22.10.29 空気調和・衛生学会

4) WindowsPC 消費電力検証結果レポート、Microsoft の HP より (http://technet.microsoft.com/ja-jp/windows/hh146891)

表 3-2 内部発熱の想定条件一覧

61

前述した VAV ゾーンにおける 70 通りの 4 つのスパンの組み合わせ(スパンにおける、0、

1、2、3、4 人の 5 つの在席パターン)から、VAV ゾーン数である 4 つに関して、重複を許 して選ぶ組み合わせと考え、式(3-2)に示す様、全体で 1,088,430 通りとなる。

但し、式(3-2)も式(3-1)同様、各座席の位置関係の違いは考慮せず、スパンにおける人 数の組み合わせのみの違いを対象としている。

n+r-1Cr = 70+4-1C4 = 73C4 =(n+r-1)!/r!×(n-1)!

=73!/4!×(70-1)!=1,088,430 通り・・・・・・・・・式(3-2)

式(3-2)に示す全体組み合わせのうち、表 3-3に示す着席数に該当する組み合わせ数を計 算した結果を図 3-4に示す。

第 2 章での検討より、偏在化の影響が大きい着席率 50%、人員密度 0.16[人/㎡](着席 数 32 人)以下を対象に以降の検討を行う。

図 3-4 各在席人数における在席パターン組み合わせ数 1 153

4,788 32,771

60,802

32,771

4,788

153 0 1

10000 20000 30000 40000 50000 60000 70000

0 8 16 24 32 40 48 56 64

組み合わせ数[-]

在席人員合計[人]

62 3.2.3 計算モデルの概要

第 2 章と同様、スパンスケールごとに、室内空気温度および天井内空気温度、各表面温 度を節点とする熱回路網モデルにより計算を行う。(図 3-5)

3.2.4 拡散係数

R

の設定

第 2 章同様、VAV 内のスパン間の熱や空気の移動の程度を拡散係数という概念を用いて、

簡易的に評価を行い、完全に拡散する従来の仮定から、半拡散および拡散無の条件までを 視野に入れ、幅を持たせた評価を行い、その傾向を探ることとした。

なお、VAV ゾーン間での拡散は無いものと仮定した。拡散係数

R

は、VAV ゾーンを構成 する 4 つのスパンの内部発熱の拡散(均一化)の程度を示す係数であり、式(3-3)に定義す る。

R

=

R

m/

R

s ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(3-3) ここに、

R

m:隣接スパンに拡散する比率

R

s:該当スパンに留まる熱負荷の比率

図 3-5 計算モデルの概要 室内(スパン)

室内(スパン)

天井内

天井内

Fr:空調還気

TRs

TRc

TRSc

TRSf

TCSf

TCSc

TRSf

TCSf

Lc:天井内発熱

Lr:室内発熱 Fs:空調給気

上下方向:同様の“天井内+室内”が積層すると想定 左右方向:隣接スパンとの熱・空気のやり取りは無しと想定

(拡散係数R によるスパン間の熱の移動は、内部発熱の入力値で調整)

■境界条件

TRS,TCS :表面温度 TR :空気温度

■出力項目 F

s

:給気風量 F

r

:還気風量 TSA :給気温度 L

r

:室内発熱 L

c

:天井内発熱

■入力項目

63 3.3.改善提案とケース設定

内部発熱負荷の偏在化に強い空調システムを構築するため、表 3-4に示す改善手法を組 み込んだ空調システムおよび制御システムの条件設定を考案した。

内部発熱に関しては、表 3-2に示す省エネ運用を想定、拡散係数

R

に関しては、従来条 件となる完全拡散(

R

=1.0)および VAV ゾーン内での負荷偏在化を考慮した半拡散(

R

=0.5) の 2 パターン(ケース名称中の a、b)を想定した。

空調条件としては、内部発熱偏在化に対応するための工夫を盛り込んだケースを

C

2~

C

6 に設定した。

C

2 では、VAV 方式における給気温度設定に関して、投票式送風温度設定14)の際、標準で は各 VAV ゾーンの重みは均等(4 か所が同面積なので重みは 1/4)と設定したが、在席者数 に比例させて、在席者数が多い VAV ゾーンに有利な給気温度となるような重みを設定した 場合である。

C

3 では、不在となる VAV ゾーン(16 人定員に対し不在)で VAV を全閉させ、不在ゾー ンの冷え過ぎの影響を除外した場合である。(給気温度設定判断から除外する)

C

4 では、

C

3 の VAV 全閉に加えて、VAV 風量下限値を引き下げ、低負荷への追従性を改善 した場合である。

C

5 では、

C

4 とは逆に、負荷が大きなゾーンでの給気風量不足へ対処するため、VAV から 制気口での定格風量を増やして対応する場合である。但し、AHU の定格風量はそのままと している。

C

6 では、不在スパン(4 人定員で不在)で制気口を閉鎖させ、且つ AHU から VAV、制気 口へと定格容量(風量)を段階的に大きく、末広がりに設定した場合である。AHU の定格 容量を標準の 70%と絞った設定のため、送風温度差を拡大し(低温送風仕様)、最大負荷時

(負荷率 100%)での能力不足に配慮した設定とした。

内部発熱 拡散係数R 仕様 概要 VAV風量

C1a 1.0

C1b 0.5

C2a 1.0

C2b 0.5

C3a 1.0

C3b 0.5

C4a 1.0

C4b 0.5

C5a 1.0

C5b 0.5

C6a 1.0

C6b 省エネ運用 0.5 制気口全閉

+VAV風量改善

不在スパンの制気口閉鎖及びVAV最大風量 増(制気口×2倍、VAV最大1.5倍、AHU×

0.7)。給気温度差10[deg]→14[deg]

0、6-30[m3/(m2・h)]

(0、30-150%)

省エネ運用 VAV全閉+VAV

風量下限改善

VAV全閉(停止)に加え、VAV風量制御の下限 設定を定格風量の30%から10%へ改善

0、3-20[m3/(m2・h)]

(0、10-100%)

省エネ運用 VAV全閉+VAV

風量上限改善

VAV風量制御の上限設定を定格風量×2倍。

但し、AHU最大送風量は変更無。

0、6-40[m3/(m2・h)]

(0、30-200%)

省エネ運用 給気温度補正 投票式送風温度設定の際の重みをVAVゾーン

内の在席人数にて補正

6-20[m3/(m2・h)]

(30-100%)

省エネ運用 VAV全閉 不在となるVAVゾーンでVAV全閉(停止)にて

送風温度制御から除外

0、6-20[m3/(m2・h)]

(0、30-100%)

負荷条件 空調条件

省エネ運用 標準

在不在による内部発熱の偏差が大きな最近 の負荷条件。以下、ケーススタディの基準とな る条件

6-20[m3/(m2・h)]

(30-100%)

表 3-4 改善ケーススタディ条件一覧

注)C1~C5 に関しては、VAV ゾーン内 4 スパンの平均室温にて、給気温度設定制御を想定。C6 に 関しては、VAV ゾーン内不在スパン(制気口閉鎖)を除く、平均室温にて同制御を行うと想定。

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