持つ輻輳ウィンドウサイズの推定を⾏う.そして以下の式で受信ウィンドウ(rwnd)を 決定する.
rwnd←λ× RT Tmin
RT Test ×cwndest (2.11) λはチューニングパラメータ(1より⼤きく設定する),RT Tminは最⼩のRTT,RT Testは 推定されたRTT,cwndestは推定された輻輳ウィンドウである.推定RTTが⼤きくなる場 合,TCPは過度にデータを送信しているとして,受信ウィンドウサイズによって徐々に送 信量を制限していく.推定RTTはRT Tmin×λの値に留まろうとする.[35]では3G/4G セルラーネットワークに適⽤され,有効に機能したとされている.
本⽅式は,TCPの受信機構に組み込む実装であり,受信者側が対応する必要がある.
てTCPは輻輳ウィンドウをパケットロスによって落とさなくなるものと考えられる.さ らに,他のフレームを先⾏させることができるようになったため遅延性能を要求するアプ リケーションにそれほど影響を与えず,Immediate Block Ackによる再送の回数そのもの も以前に⽐べて⼤きく設定することが可能になっている.
2.9 本研究の位置づけ
本研究では,IEEE 802.11n無線LAN上のアップリンクTCP通信におけるBufferbloat 問題に関して詳細に検討を⾏い,スループット性能を低下させることなく遅延性能の悪化 を抑制することを⽬的とする.
⼀般的なインターネットの利⽤者は,Webブラウジング,メール,ファイル転送などの 作業を⾏うが,これらの通信に⽤いられるプロトコルはTCPである.先に述べた通り,
TCPを⽤いることでアプリケーションソフトウェアは個々に輻輳制御を持つ必要がなく,
OSの共通のネットワークスタックの制御に任せることになる.OSのTCPの輻輳制御ア ルゴリズムは現時点においてもロスベース⽅式が多く利⽤されている.そのため,途中経 路で輻輳に起因するパケットロスが発⽣するまで,送信速度を拡⼤し続け,バッファをあ ふれさせる.前節で述べた通り,802.11n無線LANネットワークにおいてもBufferbloat 問題は発⽣しうると考えられる.本研究では,こうした無線LANを介したイントラネッ ト利⽤とインターネット利⽤の双⽅を考慮し,ネットワークに疑似的に遅延を追加した場 合の実験検討を⾏い,⾼遅延環境における性能の評価も⾏っていく.
有線LANやセルラーネットワークにおけるBufferbloat問題に関しては,すでに[8]や [35]などにおいて議論が⾏われている.しかしながら無線LANにおけるBufferbloat問題 の発⽣は[8]にて⽰唆されているがその議論は⼗分ではなく,802.11n無線LANにおける 詳細な検討はなされていない.本研究ではまず,3章にて802.11n無線LANネットワー クを構成し,そのネットワークにて実際にBufferbloat問題が発⽣するかどうか,どのよ うな性能低下を及ぼすのか,802.11n特有の事項について詳細に検討を⾏う.
続けて802.11nにおけるBufferbloat問題の解決⽅式について検討を⾏い,新⼿法の提 案を⾏う.802.11nにおけるBufferbloat問題の解決には,CoDelやTCP small queuesな どの先⾏研究の⼿法の適⽤が考えられるが,本研究では,802.11n特有の情報を⽤いるア
プローチを採⽤する.具体的にはIEEE 802.11n無線LANで導⼊された強⼒なフレーム 再送の機能をあえて抑制することで意図的にセグメントロスを発⽣させる⽅式を⽤いる.
さらにこの⽅式を送信者である無線LAN端末に実装する⽅法と,受信者であるアクセス ポイントに実装する⽅法を提案する.表2.1にて,Bufferbloat問題に対応する各アプロー チの実装箇所を⽐較する.
表 2.1: Bufferbloat問題に対するアプローチの実装箇所の⼀覧
アプローチ 実装箇所
CoDel ボトルネックリンクのキュー(AQM)
TCP small queues ボトルネックリンクを持つ送信者のTCP
TCP Vegas 送信者のTCP
DWRA 受信者のTCP
提案⽅式 送信者のMAC 受信者のMAC