第 6 章 アクセスポイント側によるデータ レートに応じて再送機能を制御す
6.6 評価実験
6.6.4 リトライアウトインデックスの影響
リトライアウトインデックスの値は第5章の表5.1のように定めた.5.4.1項にて6.5Mbps や13.5MbpsのMACデータレートにおいては制限値を2回とするのが適当なことを実験 的に確認し,⼀⽅,MACデータレートが100Mbpsにおいては最⼤再送回数として10を
⽤いている.この補間については,図5.11のように階段状の値を採⽤した.
しかし,図の直線補間とそれに基づく階段状の値の設定は,理論的な背景があるわけで はない.そこで,リトライアウトインデックスを表5.1の値から変更した場合の性能への 影響を評価した.
0 100 200 300 400 500 600 700
0 20 40 60 80 100
Average Ping RTT (ms)
Average Data Rate (Mbps)
index = 2 index = 5 index = 8
図 6.15: リトライアウトインデックスを変更した場合のPingの平均RTT
具体的な評価⽅法は次のとおりである.6.6.1項で⽰した実験環境において,APに提案
⽅式を導⼊し,リトライアウトインデックスを2,5,8の値で固定する.Bufferbloatに対 応していないLinux端末を異なる場所に設置し通信実験を⾏い,Ping通信のRTTとTCP
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45
0 20 40 60 80 100
Average Throughput (Mbps)
Average Data Rate (Mbps) index = 2
index = 5 index = 8
図 6.16: リトライアウトインデックスを変更した場合の平均TCPスループット
スループットを測定する.
図6.15と6.16に測定結果を⽰す.図の表記は6.6.2節に⽰したものと同様である.図 6.15では,平均MACデータレートが20Mbps以下かつリトライアウトインデックスが5 と8の場合,300ミリ秒から600ミリ秒とPing通信のRTTが増加している.30Mbpsから 60Mbpsの平均MACデータレートでは,リトライアウトインデックスが8の場合のPing RTTが他に⽐べて若⼲⼤きくなっている.
⼀⽅,図6.16では,30Mbps以上の平均MACデータレートの場合において,リトライ アウトインデックスが2の場合スループットが⼩さい.顕著な例では,リトライアウトイ ンデックスが2かつ平均データレート80Mbpsの場合,10Mbpsという著しく低いスルー プットを記録している.また平均MACデータレートが80Mbpsを超えると,リトライア ウトインデックスが5の場合も若⼲低いスループットを記録している.
以上の結果から,100MbpsまでのMACデータレートの範囲において,表5.1に⽰した ように階段状にリトライアウトインデックスを決定するのが有効であると考えられる.固 定的に値を設定する場合よりも,⾼いデータレートではスループットを落とさず,かつ低 いデータレートにおいて遅延を減少させることができる.
6.7 まとめ
本章では,アクセスポイント側による再送機能の制御のための設計を⾏い,評価を⾏っ た.その結果,端末側による⼿法と同様の効果を得られることを⽰した.また,Linux以 外のWindowsやMac OSなどについても実験を⾏いBufferbloat問題が発⽣していること を確認し,提案⼿法を⽤いることで,OS実装を変更することなしに遅延悪化を抑制でき ることを⽰した.さらに,リトライアウトインデックスの影響についても検討を⾏い,提 案⼿法に適⽤した設定が有効であることを⽰した.