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260大沼・前掲註201・9頁。

ある。261よってEUによるトルコとギリシャ系キプロスへのコンディショナリティーの内 容に一貫性がないことが分かる。262

その原因として3つの要素が挙げられる。第1にEUの立場がキプロス問題の原因はト ルコにあり、EU外部の国家が原因で他の国家の加盟が妨げられてはならないというものだ ったからである。第2にEU内部にギリシャが入っていたことにより、2つの国家の立場は 不平等になったと考えられる。ギリシャはギリシャ系キプロス政府の加盟交渉を円滑に行

うよう働きかける一方で、トルコ側についてはEUへのアクセスを拒否権の行使で妨げる ような行動が目立った。ギリシャは対トルコのみならず第四次拡大の3カ国や中・東欧諸 国への拒否権行使をほのめかして、ギリシャ系キプロス政府との交渉が有利に行われるよ

うにEUを操作してきたともいえる。263第3にギリシャ系キプロス人コミュニティーでは、

欧州連合条約第49条やコペンハーゲン基準が十分に満たされていたことが挙げられる。こ のことについてEUは加盟候補国としての地位を承認された1993年の時点で確認しており、

キプロス問題のみを盾にして加盟をブロックすることは出来ないという立場を取り続けて きた。以上の3つの要因から、ギリシャ系キプロスとトルコ双方に対する「近隣諸国との 良好な関係」のコンディショナリティーの重要性が異なることになった。最終的には解決 への協力の姿勢を示してきたトルコが加盟をまだ果たしておらず264、他方で解決策を拒否 したギリシャ系キプロス人が代表するキプロス共和国が加盟するという矛盾した結果にな った。以上の考察より、EUコンディショナリティーについて、第1にトルコとキプロス共 和国のコンディショナリティーの内容の相違から分かるように一貫性を欠くものであるこ

と、第2にトルコの遵守から分かるようにEU加盟というインセンティブのもと高い遵守 率を持つことが再確認される。以上の2点はⅠⅠの政治的性質の検証で既に明らかであった

ことであるが、更に第3点目として、遵守の確保のためには遵守されなければ加盟交渉か ら除外されるという十分なリスクが必要であることが指摘出来る。

よってキプロス問題においては紛争解決への有効性も低かったことになる。そもそもEU はキプロス問題に対して消極的であった。これはイギリスが自身のアイルランド問題を外 部からの解決案によっても解決することができず、キプロス問題についても同様の性質の ものとして位置づけているからである。265よってキプロスから加盟申請を受けた当初は、

加盟とキプロス問題の解決が連動するものであるとしていたが、次第に根本的解決をEU 加盟のための条件として掲げなくなったのである。266更にギリシャの政治的立場により、

紛争の性質からして両当事者による協力を必要とする紛争であるにもかかわらず、EUは一

261Schimmelfennlgetal.,軸mnote65,PP.215.

262K.E.Smith,軸mnotelO,PP.133.

263Schimmelfennlgetal.,Stpmnote65,PP.215.

264北キプロスはキプロス共和国として2004年5月に加盟し、EUの内部でアキ適用と経 済的発展のための支援プログラムを受けている。

265八谷・前掲註138・88頁。

266励qStpmnote48,Para.9(b).

方当事者にのみコンディショナリティーを厳格に課してきた。つまりキプロス問題はEU にとっては加盟候補国が加盟のために必要となる能力を持つか否かの判断の材料であり、

加盟交渉の段階で解決するべき問題ではなかった。結局キプロス問題についてのコンディ ショナリティーは、EUの加盟候補国に対する選好(preference)の表れるものであり、ま た紛争の根本的解決をEU加盟のための絶対的条件としているわけではないので、紛争解 決機能は弱かったと結論づけられる。

Ⅳ EUコンディショナリティーの性質と国際紛争解決機能

イントロダクションで「コストを負ってでも遵守されるという実効性はコンディショナ リティーのいかなる性質に基づくのか、遵守の範囲はどこまでなのか、遵守は加盟以外の 二次的効果(本論文では紛争解決機能)を持つのかという疑問」を提示した。267ⅠⅠにおいて

コンディショナリティーがいかなる性質を持つのかを考察したが、ⅠⅠⅠのキプロス問題を手 がかりにコンディショナリティーの遵守の範囲、紛争解決機能の限界についてどんなこと が言えるのだろうか。

A コンディショナリティーの遵守の範囲

ⅠⅠでまとめたように、コンディショナリティーの性質については政治的交渉の道具であり EU内部と外部の一貫性、または外部の間の一貫性が欠如したものであること、それでもEU 加盟がインセンティブとなり加盟候補国による遵守が促されることが指摘できる。ⅠⅠⅠのキ プロス問題への取り組みにおいても、トルコとギリシャ系キプロスに対するコンディショ ナリティーの内容は異なっていたが、より厳しく審査されていたトルコ側によって遵守が 確保された。よって加盟交渉においては、コンディショナリティーの正当性よりもEU加盟 の達成のほうが明らかに重要なのである。268

しかしながら、遵守の範囲も無限であるわけではない。コンディショナリティーが機能 しないパターンとしては2つ挙げられる。第1に、加盟候補国の決定は政策の変更に伴うコ ストとEU加盟によるベネフィットの間のバランスで決められるため、コストがベネフィッ

トを上回る際には当然のことながら遵守されない。1999年ヘルシンキ欧州理事会以前にト ルコが取ってきた立場は、EU加盟のベネフィットよりも北キプロスを独立させるもしくは

トルコに併合することのベネフィットのほうが上回っていたためである。第2に、コンディ ショナリティーが守られれば加盟できる、もしくは守られなければ加盟できないというデ

リケートバランスが崩れている場合である。キプロス問題におけるギリシャ系キプロスに 対するコンディショナリティーは守らなければ加盟交渉から排除されるというおそれ

(threatofexclusion)がなかったため、コンディショナリティーが有効に機能しなかった。

逆にトルコは1987年の加盟申請以来1999年に至るまで特に政治的基準を理由に正式に加盟

2675頁参照。

268Schimmelfennigetal.,Stpmnote134,PP.32・33.

候補国として認められてこなかったため、トルコの政策変更の1つ1つがEU加盟と密接に関 わっていた。1999年ヘルシンキ欧州理事会においてEU加盟が現実的になると、特に2002 年の政権交代後はコンディショナリティーを積極的に遵守してきた。

よってコンディショナリティーが機能するかは、EU加盟のベネフィットが政策変更のコ ストを上回るか否か、更にコンディショナリティーの遵守がEU加盟の絶対的条件であるか 否か、によって決まると考えられる。

B 紛争解決機能の限界

「近隣諸国との良好な関係」をコンディショナリティーとして課している以上、EU加盟 の段階における紛争解決効果は期待される。加盟候補国はEU加盟のために出されたコンデ ィショナリティーをその正当性にかかわらず遵守することに集中しているため、EU加盟の インセンティブを使っていかに紛争を解決していくかはEU次第である。よってコンディシ

ョナリティーの紛争解決機能はEUの紛争への姿勢と紛争の中で取る立場を反映するもの である。ⅠⅠとⅠⅠⅠで考察してきたように、コンディショナリティーが紛争解決のために有効 に機能した例とキプロス問題のように限界を露呈した例とが存在する。その分かれ目にな ったのは、第1にEUがもしくはEU加盟国が紛争の中で独自の政治的立場を取っているか、

第2にEUが紛争解決に消極的か、ということである。

まず、EUがもしくはEU加盟国が当該紛争の中で中立的ではない政治的立場を取ってい る時、EUの紛争解決機能には限界が生じる。つまり、チェコとスロバキア、またはハンガ リーとスロバキアのように両当事者が加盟候補国として平等に扱われている限りはコンデ ィショナリティーが紛争解決の手段として有効に機能する。しかしながら、トルコとギリ シャ系キプロスのように一方当事者が優遇されたり不利に扱われたりすると、その効果は 限界を示す。この点ではコンディショナリティーの性質と紛争解決機能が密接に関わって いる。つまり、EUの取る政治的立場を貫くために、「近隣諸国との良好な関係」というコ

ンディショナリティーを一方当事者にのみ課すことが出来るのである。しかし、キプロス 問題のように両当事者による協力が必要なときは、紛争解決機能が働かないことになる。

第2にEUが紛争の根本的解決に対して自らが役割を果たすことに消極的であると、当然 ながら紛争解決機能は限定されることになる。そもそもEUが「近隣諸国との良好な関係」

をコンディショナリティーとして課すのは、欧州安定化の達成のためというよりもEU内部 に紛争を持ち込ませないという目的のほうが強いと考えられる。269本論文で取り上げたキ プロス問題についても、イギリスが自国とアイルランドの問題とキプロス問題の性質が似 ており、国際的影響力がこのような紛争に与える影響が限定されるという経験から、キプ ロス問題の解決には余り積極的な姿勢を示してこなかった。270そしてキプロス問題につい

269例えばAgenda2000瑠加点卿eDtSbozLMBOtmeaBhZPOZib7gbotYhz・C皿此奴 とさ れている。

270八谷・前掲註138・88頁。

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