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2005 年マスタープランの進捗と現状分析

マナグア市の水道整備は、JICA2005年マスタープランの策定以来、それに沿って多くのドナー の支援の下、提案された施策の実施が続けられてきた。表 5-1にそれらの進捗について、その 概要を示す。

表 5-1 2005 年マスタープランからの進捗状況概要

出典:JICA

MPで提案された施策 実施状況 備考

1.水源の改修及び保全に必要な施策

1-1.マナグアⅠ井戸郡の設計生産能力回復 実施済 取水能力は2005年当時から約2.8%の回復が見られているが、建設当時の 取水量には届いていない。

1-2.マナグアⅡ井戸郡の設計生産能力回復 実施中 取水能力は2005年当時から横ばいの状態であり、建設当時の取水量にも 届いていない。JICAフォローアップも実施中。

1-3.老朽井戸の段階的改修・更新 実施済

既存井戸の診断と改修対象井戸の選定を行い、IDB資金を活用して50本の 改修・更新計画を立案した。井戸自体の老朽化が著しいため、井戸洗 浄・ポンプ更新ができたものは26本にとどまっている。

1-4.窒素濃度が比較的高い井戸への対策 実施済 マナグア湖に近い井戸は比較的亜硝酸性窒素の濃度が高い傾向にあるた め、継続してモニタリングを行っている。

1-5.ヒ素濃度が比較的高い井戸への対策 実施済 4本の既存井戸からヒ素濃度の問題が指摘されていたが、そのうち特に高 い値を示していた1本は供用停止とされている。

1-6.アソソスカ湖の水質保全 実施中 水位の大幅な低下を防ぐため、2005年当時より取水量は削減されてお り、水質保全の観点からのモニタリングは続けられている。

1-7.民間セクターによる地下水の利用・開発の規則 実施中 民間業者とはコンセッション契約で水使用量に基づき収入を得ている。

1-8.ガソリンスタンド等の建築・営業の規則 実施中

1-9.ENACALによる水道水源水質の継続的なモニタリング及び評価 実施済 ENACALの水質分析室による定期的な水源水質のモニタリングが続けられ ている。

1-10.ENACAL水質試験室の分析能力向上 実施済 飲料水の水質管理に必要な分析資機材が整備されている。

2.漏水及び無駄水の削減に必要な施策

2-1.配水網のマイクロセクター化及びマイクロセクターにおける漏水・

無収水削減対策の実施 実施中

2006年以降スペイン政府、世銀、IDB、JICA第3国専門家派遣等の支援に より、106ヶ所のミクロセクターが構築された。これらはマナグア市全接 続数約のおよそ45%をカバーするもので、106のミクロセクターのうち15 のミクロセクターで夜間最少流量を継続的に監視できるようになった。

今後はこれらを実際に如何に効果的に削減対策に活用していけるかが課 題である。

2-2.老朽メーターの更新 実施中

2006年当時計画的なメーター更新は0であったが、2011年よりマナグア市 の74%にあたる約20万台のメーターを交換した。ニカラグア全体では約35 万台を交換した。

2-3.漏水、違法接続、貧困層居住区改善、検針・請求等の問題に対して

包括的な対応可能な組織の設立 実施中

無収水部(課)が漏水探知、ミクロセクター構築・管理を担当し、商業 部が違法接続・検針・請求を担当する。また、漏水修理は、主に運転部 の所掌であり、関連部署間の無収水対策上の連携強化が求められる。

2-4.料金体系の見直し・改定 実施中 2007年~2015年の間に4回の料金値上げを行ってきている。

2-5.給水条例の見直し・改定 ペンディング

2013年からINAAがサービス基準を見直し、改訂版を作成中である。特に 顧客へのサービス向上、顧客の保護の視点も考えられている。

また、M/Pで提案された水道メータの宅地内設置については受け入れられ ていない(文化・習慣的理由とのこと)。

2-6.検針・請求・徴収能力の強化 実施中

現在のサービス状況から問題点を確認し、携帯の利用や検針データを サーバに蓄積することを検討しているが、作業中。

料金徴収強化のために、金融機関や外部委託窓口を増強している。

2-7.住民意識の啓蒙 実施中

商業部にコミュニティ活動家ができ、水の適正な使用や料金支払いにつ いての啓蒙を行っている。また、マナグア市役所との連携で漏水通知や 違法接続防止のキャンペーンも行っている。

2-8.住民参加型手法による貧困層居住区の給水改善と衛生環境保全 不明 3.送配水システムの効率化に必要な施策

3-1.配水網のマクロセクター化 実施中

19のマクロセクターが提案されたが、2地区でのマクロセクター化が設 定されたのみである。マクロセクターの無収水対策上の役割の再認識 し、本技プロで策定される実施基本計画の中での再設定が必要である。

3-2.3地区の給水不良改善及び新興住宅地域への給水拡張 実施中 IDBや世銀の資金を活用して新規水源開発と送配水施設の整備が進められ ている。

3-3.ベラクルス地区及びマサヤ街道周辺地域の給水強化 実施中 同上 3-4.チクアテペ及びニンディリ地区の給水強化 実施中 同上

3-5.低地の給水補強 実施中 新規水源開発ではなく、送配水の運用の工夫による。

3-6.老朽送水ポンプ場の改修 実施中 主要なポンプ場の設備更新は実施されている。

3-7.将来の給水人口増大に対応するための給配水施設整備 実施中 2005年以降、他ドナー資金を活用した施設整備が継続されている。

4.マナグア市上下道事業の経営基盤確立

4-1.マナグア市上下水道事業会計の他会計からの分離独立 ペンディング 上下水道会計は形式的には分離していないものの、ENACAL財務部内で上 水道収支と下水道収支を分けて管理している。

4-2.料金値上げ ペンディング

料金値上げはENACALが提案し、INAAがその提案を審査し、政治的影響を 考慮し、実際には大統領府が関与するとのことである。ただし、2007年

~2015年の間に4回の料金値上げを行っている。

4-3.本部費用の削減及び適正な費用配分ルールの設定 不明

4-4.職員のトレーニング ペンディング

IBDでも現行のコンポーネントで取り組んだものの、特段の成果は出てい ない。

GIZがマナグア市を含む主要都市の職員に対して、無収水対策の研修を1 度行っているが、その後の無収水に関する研修は予定されていない。

マナグア市中長期上水道施設改善計画調査における施策(2006~2015年)の進捗

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5-1 水源の改修と保全

5-1-1 既存水源の機能低下

2005 年にJICAが実施したマスタープラン調査を通じて提示された上水道システムの整備の 方向性とアクションプランに基づいて、ENACALは各ドナーと連携して、地下水源の開発、既 存井戸の改修、送配水施設の拡張を進めてきた。

し か し 、 マ ナ グ ア 市 の 発 展 と 南 部 の 新 規 開 発 に 伴 う 水 需 要 量 の 増 加 に 対 応 す る た め 、

ENACALは新規開発地域に対する給水システムの整備を優先的に進めてきた。

一方、1990 年以前に整備された施設の多くは老朽化し、特に既存施設の改修/能力回復に関 する取組みが遅れており、既存井戸の老朽化による機能低下という課題に直面している。

5-1-2 水源改修の取り組み

ENACALはIDBの資金を活用して、新規井戸の建設だけでなく、既存井戸の改修にも取り組

んでいる。2010年には民間コンサルタントの調査により、既存井戸のインベントリー調査が実 施されたこともあり、リハビリによる井戸能力の回復に向けた取り組みを進めている。

しかしながら、既存水源の改修はなかなか思い通りに進んでいない。既存井戸の多くは老朽 化が著しく、中には井戸本体そのものがリハビリに耐えられないようなケースも見られ、こう した場合は、近隣サイトに新規井戸の建設が求められている。

5-1-3 2005 年マスタープランにおける提案とその進捗 (1) マナグアI井戸群及びマナグアII井戸群の生産能力回復

マスタープランでは、アソソスカ湖の揚水量を低減するため、マナグアI井戸群の生産能 力 53,000m3/日を 71,000m3/日まで、マナグア II 井戸群の生産能力 44,000m3/日を 56,000m3/ 日まで回復させることが提案されている。

2005年から2015年にかけての両井戸群の生産量の推移を以下に示す。

マナグアI井戸群の2015年の生産量は 60,019m3/日であり、2005年当時から約 2.8%の増 加となっているが、建設当時(1996年)の計画揚水量71,000m3/日の84.5%にとどまってい る。

マナグアII井戸群の2015年の生産量は43,462 m3/日であり、2005年当時からほぼ横ばい の状態である。建設当時(2000年)の計画揚水量57,996m3/日の74.9%にとどまっている。

マナグアIの場合、建設から20年が経過しており、井戸本体の老朽化が進んだ結果、揚 水量の低下を招いている可能性が高い。ただし、帯水層や水質に大きな変化が見られないと いう意見がある一方、近年の気候変動や雨量の減少などが地下水賦存量にも影響していると の指摘もある。これまでもいくつかの井戸は使用を停止し、近隣に代替井戸の建設が行われ ている。

マナグア II の場合は、一部井戸の熱水化、帯水層の状況変化などが、揚水量の低下に影