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プロジェクト実施にあたっての全体の留意事項

本技術協力プロジェクトを実施するに当たり、留意すべき事項について、「ミニッツ記載関連 事項」と「プロジェクト成果、プロジェクト実施体制、IDBとの連携」、「その他の留意事項」に 分けて以下のとおり整理した。

8-1 ミニッツ記載関連事項

ミニッツには「その他の重要事項」が示されているが、その中から、プロジェクト実施にあた って留意すべき事項を選び、解説を加える。

(1) プロジェクト実施体制について

ENACAL組織の再編が進行中である。また、2016年11月に大統領選挙が実施される。そ

のため、プロジェクト開始時には、組織変更やENACAL幹部職員の異動が生じている可能 性がある。R/D(案)にプロジェクト実施体制(案)を添付しているが、組織変更が生じれば、

JCCメンバーやC/Pとして参加するENACAL職員の肩書きの修正が必要になる。したがっ て、プロジェクト開始時には、組織再編等の進捗状況を踏まえて、ENACAL と協議の上、

プロジェクト実施体制を確定する必要がある。また、プロジェクト実施期間中にも、組織変 更が行われる可能性があるので、必要が生じた際には、プロジェクトの実施体制を柔軟に変 更する必要がある。

なお、「2-2-6 プロジェクトの実施体制」の項で述べたように、プロジェクト・ダ イレクター、プロジェクト・マネージャー、副プロジェクト・マネージャーについては、

ENACAL側の要望を受けて、ENACALの誰を当てるか決定しなかった(詳細計画策定調査

時)。そのため、プロジェクト開始後に ENACAL と協議してプロジェクト・ダイレクター 等を決める必要がある。ちなみに、協議段階で想定していたのは、下表に示すようなアサイ ンである。

プロジェクト・ダイレクター ENACAL総裁

プロジェクト・マネージャー ENACALプロジェクト・投資部長 副プロジェクト・マネージャー ENACAL総裁室技術顧問

(2) 無収水削減へ向けたENACAL内の部署横断的な対応の必要性について

無収水の構成要素は、実損失水量(Real Losses)だけでなく、見掛け損失水量(Apparent Losses)や非請求認定水量(Unbilled Authorized Consumption)も存在する。日本側及びニカ ラグア側は、これらの構成要素のすべてに総合的に対応するためには、ENACAL 内で部署 横断的に対処する必要があることについて理解し、合意している。ENACAL における無収 水対策関連活動は、無収水部が地下漏水の探知と修復を担当し、地上に現れた漏水は運営部 が担当し、給水管からの漏水等(商業損失含む)は商業局が担当している。このように無収 水対策に関わる責任がENACAL組織内で分散しているという課題がある。そこで、プロジ ェクト実施体制としては、複数の部署が関わる体制案を提示している。プロジェクト実施体

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制案は、ENACAL幹部と協議して作成しているが、プロジェクト開始後には、ENACAL幹 部職員だけでなく、プロジェクトに参加するC/P全員に対し、部署横断的な対応の必要性・

重要性について説明し続けることがプロジェクト活動を円滑に進める上で肝要である。

(3) 他ドナー機関との連携について

本プロジェクトを実施するにあたり、現在ENACALに協力している国際機関等と協調し つつ、プロジェクトの活動を行う必要があることを、ENACAL 側と合意している。具体的 には、ENACAL組織再編に係る支援を実施したGIZの知見・経験は、成果1の活動に含ま れる「マナグア市の無収水削減対策を効果的・効率的に進めるための方法・手順を実施する ために必要な組織・制度面の改革」について検討するうえで有用であると考えられる。また、

水道施設税措置整備面ではIDBとの連携も重要になってくる。さらにまた、ENACALは、

本技術協力プロジェクトを通じて C/P に移転される技術を、地方の職員にも普及させたい との意向を持っている。地方の職員への研修等を他ドナーが支援することも考えられる。以 上の観点から、GIZ、IDB等のドナー機関と協調しつつ、プロジェクト活動を進めることが、

本プロジェクトの成果をより高めるうえで重要である。

(4) 顧客台帳と配水管網台帳の整備に必要な支援の検討

詳細計画策定調査中にENACAL側から詳細計画調査団に対し、顧客台帳と配水管網台帳 の整備に必要な技術支援とソフトウェア(Arc GIS及びWater CAD)の供与についての要望 があがった。調査団からは、現段階ではENACALの顧客管理及び配水管網管理にかかる課 題を具体的に把握できていないため、ENACAL 側が要望する支援の妥当性を判断すること が困難である点を説明した。そして、本プロジェクト開始後に、ENACAL 側の要請内容に ついて再検討することについて、ENACALとJICA間で合意した。

(5) PDM ver. 1の策定について

詳細計画策定調査で提案したPDM ver.0は、プロジェクト活動全体の概要を示すものであ る。プロジェクト開始後3カ月以内にベースライン調査を実施し、その結果を踏まえ、より 具体的な活動内容を双方で協議し、PDM ver.1として策定することとなっている。

(6) 機材調達における免税措置について

本邦調達機材については、受け取り先をENACALにすることで、免税措置に関わる手続 きを行うことが可能である。また、ニカラグア国内で調達する機材については、JICA 事務 所と相談しつつ、免税措置に係る手続きを行う必要がある。

8-2 プロジェクト成果、プロジェクト実施体制、IDBとの連携に係る留意事項

(1) 成果1:ENACALの無収水削減に係る計画策定能力が向上する。

成果 1 では、マナグア市の無収水を削減するための対策を効果的かつ効率的に進めるた めの具体的な方法・手順を取り纏め、その実施に必要な施設の整備および組織・制度面の改 革を含む無収水削減の実施基本計画を策定するものである。

その計画の中で必要となる施設の整備計画の策定にあたっては、IDBをはじめとする国際 機 関 等 か ら の 融 資 の 可 能 性 も 念 頭 に お き 、 優 先 順 位 の 高 い 施 設 整 備 か ら 順 に 、 実 際 に

ENACAL が実施できる現実的な整備内容とする必要がある。また、施設整備に並行して、

組織・制度面で必要となる改革については、現在、ENACAL 全体の組織改編の検討が行わ れていることから、その動向・内容を確認しつつ、場合によっては調整を行いつつ実施基本 計画に反映させていく必要がある。

(2) 成果2:ENACALの無収水削減に係る対策実施能力が向上する。

本調査により、無収水削減に係る対策は、現在、無収水部、運営局、商業局の各部署に より進められているが、それらの活動が必ずしも一元的に管理され連携して行われているの ではないことが判明した。結果として、活動後に無収水量自体がどれだけ削減されたかが目 に見える形で評価されてきていない。成果2では、パイロットプロジェクトの実施を通して、

無収水対策活動の費用対効果や実際の無収水の低減率や低減量などを数値化して報告し、

ENACAL内に広く周知することが必要である。これにより、無収水削減の重要性がENACAL

内でより理解され、対策を継続して推進するための動機づけにもなり、実施能力の向上に繋 がるものとなる。

また調査結果によると、これまで、世銀、IDB、スペイン政府等の多くの支援により構築 された約100のミクロセクターがあるが、これらが無収水対策に十分活用されていないこと が明らかになった。ミクロセクターは、無収水の調査・管理を行う上で、配水ネットワーク 内に定義される無収水管理区画であるが、ENACAL では、ミクロセクターの境界バルブを 常時閉止し、ミクロセクターに流入する流量を24時間常時監視する計画である。しかし、

実際にすべてのミクロセクターを常時水理的に独立させ、周辺の給水条件に悪影響を与えず にミクロセクターを利用できるかについては十分な水理的検証を行う必要があり、場合によ っては複数のマイクロセクターを統合するなどの再整備が必要となる可能性もある。

成果 2 では、こうした事情も考慮した上で、パイロットプロジェクトの実施により既存 のミクロセクターの活用の手法を示し、パイロットプロジェクト終了後は、ENACAL 自身 がその手法を引き続き他のミクロセクターへと展開できるよう、ENACAL 内で共有する必 要がある。

(3) 成果3:給水装置(給水管及び水道メーター)の設置に係るENACALの品質管理能力 が向上する。

成果 3 では、漏水の発生率が特に高いとされている給水装置周りの改善のため、給水装 置の設置に係る品質管理能力の向上を目指すものである。具体的には、適切な管材や水道メ ーターの選定から始まり、設置工事の品質管理能力等の向上を目指すものであるが、マナグ ア市の特殊な事情を十分考慮して検討されなければならない。本調査で明らかになったよう に、①水道メーターが宅地外の歩道等に設置されている、②水道メーターとメーターボック スの材質を盗難防止のために金属製からプラスチック製に移行している、③水道料金未払い 者に対して、ENACAL がメーターの取り外しや給水管の切断等を頻繁に行っている、④宅 地内の無駄水の発生が多い、といった点を踏まえた上で、現地に受け入れられるマナグア市 の給水装置の品質管理はどうあるべきかについて、ENACAL とよく協議・検討した上で、

その向上策をENACAL職員と共有することが大事である。