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学校現場及び関係機関との行動連携の実状調査
A 学校現場及び関係機関との行動連携の実状調査
A.1 調査目的
本稿においても述べているが、近年、子どもが起こす凶悪犯罪や養育力に欠ける 保護者による児童虐待が全国的に多発しており,子どもを取り巻く環境は家庭や地 域の子育て機能の低下等大きく変化している。また,学校と地域や関係機関の連携 不足が大きな課題として指摘されている。
これらのことを受けて、国家レベルで様々な施策や答申がだされている(%b且e3.1 参照)が、十分な効果が出ているとはいい難い。
ところで、これらの施策が十分に効果が上がらないことの大きな原因として考え られる「学校現場及び関係機関との行動連携の実状に関しての調査研究」はこれま で皆無である。
このような点から、問題行動に対応していく学校側に焦点をあてた本調査は、青 少年問題の解決を図るための方策を検討していく上で、これまでにない新たな知見 を提示するものであると考える。
調査目的
●学校と地域、関係機関との行動連携の実状及び連携二一ズを明らかにする。
●問題行動への対応している教育現場の実状を明らかにする。
●教職員の関係機関の認知の程度を明らかにする。
A.2 調査方法
B県C市の公立小中学校に勤務する教員*aを調査対象にして、各学校長及び教育 委員会の許可を得て調査を実施した。
C市は、人口30万人を超える住宅都市であり、100万人都市と隣接しておりベッ トタウンとしても発展している地域でもある。近年急激な人口増加に伴って犯罪や 非行、特にシンナーなどの薬物問題などが深刻化している。また、家庭の養育力不 足が原因となった虐待事案*bが頻発している。
また、平成17年4月には中学校3年生女子がいじめを苦に校内で自殺を図るな どまさに学校と地域、関係機関との有効な連携が要請されている地域であり、C市 における本調査の実施は十分な意義が認められるといえる。調査対象の選定である が、無作為に抽出した小学校5校及び中学校6校である。なお、学校規模について は、すべての調査依頼校が市街地にあることから分析の対象から外した。
粗管理職及び臨時採用教員も含んでいる.
*b c市内の児童養護施設及び乳児院は定員オーバー状態である.
調査期間は2005年3月初旬から中旬にかけて行い、有効回収票は234票で回収率
は85。8%であった。
調査対象者の校種属性をTable1.1に示す*c。小学校教員95名、中学校教員139名 の計234名から回答をもらった。なお、男女比は(女性47.4%、男性52.6%)とほぼ 同比率である。
Tab且e1.1 調査対象者の校種属性
学校規模 校 種 女 性 男 性 総計(%)
28 23 51
小学校 小規模
(12.0) (9.8) (21.8)
8
13 21中学校
(3.5) (5.6) (9.1)27 17 44
小学校 大規模
(11.5) (7.4) (18.9)
60 58 ll8
中学校
(25.6) (24.8) (50.4)123 111 234
総 計 (%)
(52.6) (47.4) (100.0)
★カッコ内の数値は%を表す。
また、調査対象者に対する主要な質問内容は、以下に示すとおりである。
主要質問内容
L性別・校種・教員経験年数 2.学校規模(教職員人数)
3.生徒指導担当経験
4.関係機関業務内容認知程度
5.問題解決に対しての限界感及びその原因 6.連携及び解決有無とその機関
7。連携期待機関
*c 職員数30人未満を小規模校、31人以上を大規模校とした。
A.3 分析方法及び分析に用いた変数
本調査で分析に用いた関係機関認知度変数得点は、43の関係機関及び地域機関*dを あげ、その業務内容をr知っている」に3点、r少し知っている」に2点、rよく知
らない」に1点、「知らない」に0点を与え、合計得点を用いた。
関係機関及び地域機関の各カテゴリーへの属性を%b且e1.2に示すが、各カテゴリー
(教育関係機関、保健・衛生・医療関係機関、福祉関係機関、司法・保護・矯正関係 機関、防災・安全関係機関、その他の相談機関、地域の関係機関)ごとにも合計得 点を算出した。
また、既知、無知と大まかに認知の度合いを把握するために「知っている」、「少 し知っている」と答えた者には「既知」として「よく知らない」、「知らない」と答 えた者には「無知」としてグループ化して分析に用いた。
Table1.2 関係機関及び地域機関のカテゴリー属性
認知度変数カテゴリー 機 関 名
教 育 関 係 機 関 教 育 委 員 会 教 育 相 談 室
適応指導教室
保健・衛生・医療関係機関 保健福祉相談センター 精神保健福祉センター 医療機関・病院
福 祉 関 係 機 関 児 童 相 談 所 一 時 保 護 所 子ども家庭支援センター 福 祉 事 務 所 児童自立支援施設
児童養護施設
女性相談センター
司法・保護・矯正関係機関
警察署少年係
少年補導センター 家 庭 裁 判 所少 年 鑑 別 所 保 護 観 察 所
補導委託施設
少 年 院
防災・安全関係機関 消防署・防災センター
警察署交通課 警察署防犯課 その他の相談機関
公共職業安定所 労働基準監督署 消費者センター法務局人権擁護課 弁 護 士 △耳
地域 の 関 係機関 民 生 委 口貝 児 童 委 口貝 青 少 年 委 員 保 護 司 更生保護婦人会 少 年 補 導 員
人権擁護委員
防 犯 協 ム蓋 青少年健全育成協議会交 通 指 導 員 少 年 相 談 員 社会福祉協議会
こ ど も ム五 自 治 △云 公 民 館
*4嶋崎 政男(2003)「地域、関係機関との連携のために」『月刊生徒指導』6月号,pp.18−21,学事 出版・国立教育政策研究所生徒指導研究センター(2002)『問題行動等への地域における支援シ ステムについて』(調査研究報告書),p.4・犯罪対策閣僚会議(2004)「『犯罪に強い社会の実現の ための行動計画』一学校と連携を図りたい関係機関一」らを参考にして作成した。
B 調査結果の分析及び考察
B.1 調査対象者の属性
対象者の教員経験年数(臨時的採用時も含む)は、平均17.35年(小学校 18.2年、
中学校 16.6年)である.経験10年未満が22.6%、11〜20年が39.4%、21〜30年 が34.6%、30年以上が3.4%であり、幅広い経験年数から回答をもらっているといえ
る*e。
また、生徒指導担当経験の有無について、経験したことがある者は小学校におい ては32名(33.7%)、中学校では63名(66.3%)であり、そのうち、女性教員の経 験者は小学校においては4名、中学校では8名である。
なお、中学校の生徒指導担当経験者の割合が高いのは、中学校においては生徒指 導主事以外にも学年の生徒指導担当や学年教育の相談担当など小学校に比べて生徒 指導関係の校務分掌が細分化されているために経験する確立が高くなっていると考
えられる。
生徒指導担当経験有無と校種のクロス表をTab璽e2.1に示す。
Tab且e2.1 生徒指導担当経験有無と校種のクロス表
校 種 生徒指導担当経験
総計(%)
有り 無し
小 学 校 32
33.7)
63
66.3)
95 100)
中 学 校 58
41.7)
81
58.3)
139 100)
総 計(%) 90
38.5)
144
61.5)
234 100)
★カッコ内の数値は%を表す。
B.2 生徒指導上の問題解決上における経験
B.2.1 問題解決上における限界感
Tab且e2.2には、問題解決に取り組んでいるときに学校としての限界を感じたこと があるかを2件法で回答を求めた結果を、Tab且e2.3には、その原因について4件法
(多重回答可)で回答を求めた結果を示す。
*ε お、38年以上の回答者のすべては管理職で退職後に臨時採用で勤務している者である。
Tab且e2.2 問題解決上の限界感
校 種 限界を感じる
総計(%)
はい いいえ 小 学 校 93
97.9)
2︵2.1︶
95
100.0)
中 学 校 134
96。4)
5︵3︒6︶
139
100.0)
総 計 227
97.0)
7︵3.0︶
234
100。0)
★カッコ内の数値は%を表す。
Table2.2からは、小学校においては93名(97.9%)、中学校においても134名
(96.4%)とほとんどのものが問題解決を図っていく中で、学校として限界を感じた 経験をしていることがわかる。
Table2.3 限界感原因多重回答結果
校 種 質問項目 回 答
総計(%)
は い いいえ
小学校
子どもの問題 29
20.9)
64
79.1)
93
100.0)
家庭の問題 86
92.5)
7︵7.5︶
93
100.0)
地域の問題 1712,2) 87.8)76 93100.0)
その他の問題
7︵5.0︶
86
95.0)
93
100.0)
中学校
子どもの問題 52
25.4)
82
74。6)
134
100.0)
家庭の問題 128
95.6)
6︵4.4︶
134
100.0)
地域の問題 7.3)15 92.7)l l9 B4100.0)
その他の問題 10
4.9〉
124
95,1)
134
100,0)
★カッコ内の数値は%を表す。
また、Table2.3からは、限界を感じた理由として、小・中学校ともに、まず「家 庭の問題」(小学校92.5%、中学校95.6%)が挙げられ、つづいて「子どもの問題」、
「地域の問題」となっていることがわかる。その他の項目は自由記述で回答を求めた が、「教師の資質低下の問題」「学校組織の運営上の問題」などが挙がった。
B.2.2 連携経験
問題解決に向けて各地域・関係機関との連携を経験したことの有無について2件 法で回答を求めたものをTab且e2.4に示す。
Tab且e2.4 校種と連携経験のクロス表 校 種 連携経験
合計(%)
あ る な い 小学校
67
70。5)
28
29.5)
95 100)
中学校
92
66.2)
47
33.8)
139 100)
X2ニ0。488(ガ=1)η.8.
TaUe2.4から、小学校において連携経験ありと答えたものは67名(70.5%)で中 学校では92名(66.2%)であることがわかる。
校種と連携経験の有無に関して2×2のX2検定を行ったが人数の偏りには有意な
差が見られなかった・(X2=0,488(曜=1) η.5・)
つぎに連携経験があると答えた者の中で、問題解決に向かったケースの有無を示 したものをTab且e2.5に示す。
TaUe2.5 校種と解決ケースの有無 校 種 解決ケース
合計(%)
あ る な い 小学校
41
61.2)
26
38.8)
67 100)
中学校 56
60.9)
36
39.1)
92 100)
X2=0.002(4=1)η,8.
%ble2.5から、「連携経験がある」と答えた者の中で、その連携が問題解決につな がったケースが多くあったと回答したものは、小・中学校ともに約61%であったこ
とがわかる。
質問紙の問いが少し抽象的であり断言することはできないが、これらの値からr連 携をしてもあまり問題解決につながらない。」という教員の意識が少なからずとも あるのではないかということが推測できる。