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       57 て使用した課題が1個あったが、他は正確に、すみやかに反応した。

10才以上の発達段階である。

 (8) 空間概念についての発達検査

 「3つの山の検査」、 「地図の検査」においても、全課題に、す みやかに反応し、正答した。

 本児は、ピァジェのいっているトポロジー的空間が、射影空間と ユークリッド空間の中に続合した1つの包抱的な空間構造を獲得で

きており、脱中心的思考も可能な発達を示している。

 (9) 症例2についてのまとめ

 症例2は、知的水準が正常で、学習効果も上がっているが、心理・

社会・教育的に不利な環境のため、一次的な情緒障害が認められ、

生活面での適応行動に問題をもつ子供であると考えられる。

 知能検査や発達神経心理学検:査や発達検査に認められるように、

認知面での発達は正常な水準にある。

 集団生活での問題行動も、施設内の生活に慣れるに従って減少し てきているし、問題行動を起こした後では、反省文も書いている。

   58

 第3節 症例3 (Y.K.7:4男児)について

 知能に遅れが認められ、主訴、 「言語及び情緒的発達促進のため 特別の治療的処遇を必要とする」で、現在、情緒障害短期治療施設

に入所している児童である。

 (1) 発育歴及び輝輝歴

 胎生期・出生期・新生児期中に異常は認められない。

 乳幼児期での、発育歴。既応歴について、特に医学的な異常は、

認められなかった。

 (2) 家族および遺伝歴

 本児の1才時に、母親は、蒸発し、その後父親も、本児を父方、

叔母に預けて、行方不明となっている。従って、本児は、叔母に養 育されていた。本児1才5ケ月時、乳児院に、 f母から、預けられ その後、養護施設に入所し、養育された。

 しかし、養護施設での集団生活において、夜泣き,遺尿,手づか みでの飲食,言語遅滞などの問題行動があるため、現在の施設に、

6才時に、入所した。

 日時の叔母との面談では、父方・母方共に遺伝負因は、認められ

ない。

 ㈲ 集団生活での問題行動

 本児は、衣服の着脱が遅く、遺尿があった場合に、下着を取り替

       59 えずにいることがあり、周囲の子供に嫌がられる。また、言葉が、

幼稚で発音が友だちにはっきり聴きとれず、意志の疎通が困難な場

合がある。

 他は、問題行動はなく、目立たない、落ちついた生活を送ってい る。心理治療中に、女子セラピストの乳房に触れたり、舐めた.りし て、甘えることがある。

 (4) 学習場面での問題行動

 読むこと、書くこと、計算することなど全般に、学業は遅れてい る。入所当時、書けなかった「ひらがな」も、今年になって書ける ようになったが、漢字はまだ書けない。本も、1年生の教科書は、

読める。たし算、ひき算は、繰り上がりや繰り下がりのある計算は できない。工作では、 「折る」, 「切る」などの作業は遅く、他の 児童のペースについていけない。しかし、教師の指導や、指示には 素直に従がうことができる。

 (5) 神経学的検査

 一般神経学的検査で、異常は認められない。脳波検査も正常であ る。微細な運動機能検査では、右側の片目をつぶることができない とか、頬を片方ずつふくらますことができない。また、指対立テス トや指鼻テストでも、正確さ・円滑さに欠けている。手首の内旋・

外旋では、左手で行なう場合、に、右手に、随伴運動が認められる。

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       61 利き手は、鉛筆,ハサミ,キャップをはずすのに、右手を使用し、

右のようである。

 利き目、利き足は、確立していない』

 ⑥ 知能検査

WISC−R知能検査では、言語性IQ67、動作性IQ66で、両者の

差は、少ない。

 下位検査項目間のバラツキも、少ない。

 (7) 発達神経心理学検査

 a・描画テスト(4−6才児用描画検査)

 直線や円孤が、歪みがちであったり.、線分が、接合点で、閉じて いなかったり、重複したりする。三角形や四角形の角が正しく描け

ない。図形が回転しているものが1個みられた1・(口→[.)。

 このテストでの発達段階は5才半である。

 b. ピァジェ・ヘッドのく右一左〉のテスト

 自分の左右の手を示すのにもちゅうちよし、検者の左右の手や、

3つの物の相対的位置については、当てずっぽうで答えている。

 〈手一目一耳〉テストでは、右手と右目、・右耳,左手と左目・左 耳というように、同側に反応することが、検者の模倣で も多く、口 頭命令による動作の模倣では、全て同側である。図による模倣では 全て鏡像反応であった。この検査での発達段階は、6才である。

   62

 c. リズムの3つの検査

 「自発性のテンポ」では、速く打ったり、遅く打ったりして、同 じ速さで長く打つことはできない。 「リズムの模倣は、単純で、短 いリズムのみ成功した。符を見てリズムを打つことは、説明しても 打つ数や長短の区別をして、打つことができなかった。この検査で の発達段階は6才である。

 d.人物画テスト

 幼児ぽい絵ではあるが、奇妙な歪みはなく、身体各部の位置関係 は、正しく描かれている。耳・鼻・指など身体の細部まで、身体像 をイメージで描く段階には至っていなし・.このテストでの発達段階 は、5:7である。

 e・身振りの模倣テスト

 反応は、全て鏡像反応であった。 「単純な身振りの模倣」では、

片手・片腕の課題は、反応をすみやかに行なうが、両手、両腕を使 う課題では、ちゅうちょした。片方ずつ、つぎ足して、模倣を完成 したりした。 「反対の検査」においても、検者と同側の腕を使い、

鏡像反応になってしまった。検者が本児の横に並んで、説明したが 理解できなかった。 「複雑な身振りの模倣」では、上下・前後の方 向がまちがっていたり、曲げるべき指が中途半端に伸びたままであ

った。

       63

 (8) 空間概念についての発達検査

 「3つの山の検査」では、自分の見た景色は表現できる。そして 別の観点があることには、気づいているが、それがどんなものであ るかは想像できなく、間違った図を選択する。課題lTt M共に失敗

した。

 「地図の検査」では、課題1には、全問正解し、自分の位置から の視点では、対象を正しくとらえている。課題且では、A,Bのみ 成功した。つまり視点を変えての対象を関係づけるという空間での 位置関係が獲得されていない。これらの発達の検査でも、発達段階 は、6才未満を示し、発達神経心理学検査の結果と一致している。

 (9) 症例3についてのまとめ

 症例3は、知的水準は、正常範囲より少し遅れ、器質的障害が認 められないが、発達に不利な生育環境の為に、情緒障害や学業面で の遅滞が認められる子供である。日常生活での、臨床観察で見られ る幼稚さや遅れが、どの検査においても、全て、低い発達段階であ ることが観察された。全体に平均的に遅れた発達を、症例3の発達 神経心理学検査プロフィールは、よく表わしている。

 本児の空間認識の発達が、未熟であることは、ここに紹介したピ ァジェの発達検査でも裏づけられた。本論文では紹介できなかった       〔2轟)

ピァジェの他の発達検査(例えば、 「棒の系列」 「垂直r水平面の

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保存」, 「量の保存」)でも6才未満であった。また、マッチ棒で 図形を構成させても、1対1対応ができなかった。

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