• 検索結果がありません。

衣服、首など)を症例1は描いており、数字的には、症例1は8才

8ケ月と高い発達段階を示してし ・:r.る。 しかし身体各部の全体との

釣合は、症例1は、頭や耳が異常に大きかったり、腕が短かすぎた りして、症例3よりも劣る面もみられる。この全体的な大きさと身 体各部の大きさとの関係づけは、先述の空間認識の描画における形

の関係づけが、遅れた段階を示したことと一致している。症例3は、

自己の身体各部についての認知が、他の検査でみられる発達段階に 相応して、遅れている。

 指による複雑な形態の模倣では、症例1も症例3も、指を随意に まげたり伸ばしたりすることが困難であり、使用すべき指を間違っ て使ったりしている。これは、指の認知と関係しており、症例1は、

指の認知テストでは、薬指が、単指の検査でも間違っていた。指の 随意運動のまずさは、微細な運動機能の検査での神経系の未熟さと

も関連していると考えられる。

 リズムの検査における自発性のテンポでは、症例3は、安定した 速さで打てないのに対して、症例1は打てる。リズムの模倣では、

どちらも、単純な短いリズムは、成功するが、症例1の方がより多 く成功している。記号の理解は、症例1は、説明すれば理解し、症 例3は、説明しても理解できない。症例1の方が、時間的構造の把 握へ、準備ができつつある段階と考えられる。

ケ3  症例1と症例3とを比較して、これらの発達神経心理学検査にお ける発達の遅れや偏りを考察した。

 症例3は、全体に、遅れを示すもので、知能も低い。

 症例1は、知能検査では、正常範囲にありながら、認知面で、特 に操作的側面での遅れから、空間認識が遅れており、発達段階が、

測定される側面の違いによって、偏りを示している。空間認識、つ まり、人と人、物と人、物と物との関係づけの面での遅れが認めら れ、その関係づけが、自己を中心とした視点からしかとらえられな いことから、対人関係も悪く、社会性認知障害をおこしている非言 語性学習障害児といえる。

74

 第2節 発達心理学から発達神経心理学へ

 症例1は、従来のMBDの診断からすれば、ノブロックやパサマ ニックが提唱した周産期の異常が認あられることから、微細脳損傷 を疑がわれるだろう。そして、症例1の、発達神経心理学検査で認 められる遅れは、成人の脳損傷患者の視空間失認の症状と結びつけ て考えられるだろう。例えば、ベンダーゲシタルトテストの結果に おいては、症例1が、サインカーブを6っ以上描いてきる「固執性」

を強調するだろう。人物画テストで、指が正しく描けていないこと は、手指失認症と結びつけて、考えられだろう。

 また、日常生活で、命令された動作の遂行障害は、成人の患者の 観念運動失行と結びつけて考えられだろう。仮に、症例1が成人で あれば、失認や失行と結びつけて考えるのは当然である。しかし、

症例1は、発達過程にある子供である。周産;期に認められる異状が あったとしても、そのことが、後になって問題行動をひき起こして       (3i)

いるという説は、近年になって否定されてきている。従って、症例 1を脳損傷と関連づけて、考えていくには、無理が生じる。

 症例1を、発生的尺度によって、発達段階に1位置づけて考えると、

空間認識の発達が最も遅れている。例えば、ピァジェ、ヘッドのテ ストにおいて、口頭命令による動作の模倣では、右手で右目、右耳、

左目、左耳に正しくふれることができるし、左手でも同様にできる。

       75 しかし、検者の模倣や、図による動作の模倣では、鏡像反応が多く

失敗する。

 症例1は、自分の身体についてのく右一左〉の概念を、外的空聞 のく右一左〉にあてはめて、動作を行なうほど強固に、獲得できて いない段階である。従って、ヘッドの検:査での、言語性の課題と動 作性の課題で、症例1を発生的尺度によって位置づけるならば、両 者の差は2才と大きい。

 子供の場合、健常児においても、〈右一左〉の概念の獲得は、検 査の紹介の所で、表に示した様に、発達に伴なって、連々に獲得さ.

.れてい{くものな一の/一である。

 一方、成人の失語症患者に用いられるヘッドの検査では、健常者 は、全ての課題に成功するのに対し、患者は、同側にだけ反応(右 手と右目、右耳)したり、目と耳をまちがって反応したりして失敗

するのである。

 症例1の動作性の発達の遅れをより端的に示しているのが、 「地 図の検査」である。

 検者の地図と本児の地図が、同じ方向に置かれていると、検者が 地図の上に人形を、1順次位置を変えて、置いていくと、三児も、自 分の地図の指定の位置にすぐに置くことができた。しかし、検者の 地図を180度転回しておいて、検者が順次、人形の位置を変え、本

   76

児も自分の地図上の同じ位置に人形をおくように指示しても、すぐ にはおけない。ちゅうちょしながらも正しく置けたのや、失敗から 訂正したのもあったが、半数は、失敗してしまった。地図の検査で の、発達段階を通常の子供においてみてみると、地図が同じ方向に 向いている場合は、3、4才でも成功することもあり、6才では、

失敗は、見られない。検者の地図が反対の方向を向いている場合、

4才でも、成功することがみられ、序々に成功率は年令と共に上昇 し、9才では、失敗することは、ほとんどない。こういつた空間概 念の発達心理学の応用分野での、発生的尺度によって、障害をもつ 子供を正しく発達段階に位置づける見方を、神経心理学にとり入れ ることがなされてきている。このことによって、従来、神経心理学 検査で問題が認められる子供を、すぐさま成人の症状と結びつけて 考えるのではなくて、子供の発達との関連で考えてゆぐのである。こ の様に発生的理論を応用してっくられた発達神経心理学検査を障害 児教育に活用することが発達神経心理学的観点である。

      77  第3節 発達神経心理学検査の有用性

 1、 スクリーニングテストとしての発達神経心理学検査

 これら5種の発達神経心理学検査のうち、早期に、わが国に紹介 された描画テスト(ベンダーゲシタルトテスト)や人物画テストは、

わが国でも、多くの追試研究がなされ、他の標準化された知能検査 との相関が確認されている。また、文化的水準を考慮し、わが国の 子供に適用しやすく、評価基準が一部改訂されたりしている。他の 検査については、発生的尺度として、わが国で用いられた研究が、

わずかしかない。

 今後、多くの症例について検査していくことによって、さらに改 善され、その有用性は増すと考えられる。筆者は、わずか40名あま りの被験児を対象に検査した結果では、ありますが、スクリーニン グテストとしての発達神経心理学検査の有用性を考察する。

「非言語性学習障害」をもつ子供を識別する目的で、今回これらの 検査を実施し、比較的知能の高い情緒障害児や、知能の低い精神遅 滞児と、学習障害児とが、どのように発美的に違うのかを比較した。

 WISC−R知能検査では、それぞれ3者3様に、バラついたプ

ロフィールであったが、発達神経心理学検査のプロフィールでは、

精神遅滞児や、情緒障害児が、比較的平均した発達段階を示した のに対し、 「非言語性学習障害児」は、バラついた発達段階を示し

関連したドキュメント