MYPにおいて、学習の文脈は、実世界の背景や出来事、状況などであるか、それらを モデルとするべきです。MYPにおける学習の文脈はグローバルな文脈から選択され、国 際的な視野の育成とプログラムの中でのグローバルな取り組みを促進します。
MYPが対象とする年齢の生徒は、学習経験が文脈をもって自分の生活や経験したこと がある世界と結びついたとき、もっとも良く学ぶことができます。学習が意味と関連性を もったとき、生徒はより意欲的に取り組むようになります。教師は、「IBの学習者像」
に描かれている人物像の発達に資する魅力的で刺激的なグローバルな文脈を提示すること によって、生徒の学習に影響を与えることができます。グローバルな文脈の中での学習に よって、生徒は概念を自分の生活と直接的に結びつけ、知識を行動に移すことができます
(Westera 2009)。こうした文脈に基づいた学習は、教師と生徒に対し、「なぜこれを学んで いるのか?」という重要な問いかけへの答えをくれます。往々にして生徒の学習意欲は、
教師がこの問いかけにうまく答えることができるかどうかによって決まるものです。
IBプログラムは国際的な視野をもつ人間の育成を目指しており、MYPの学習環境 は、世界を「最大の学びの文脈」として捉えています。21 世紀のグローバル社会で生徒が 生きていくための備えとして、教育者はさまざまなモデルと語彙を用います。広義におい て、グローバルな文脈に基づく指導と学習において、学校は次のことを発展させるよう努 めなければなりません。
我々が暮らす現代社会のマトリックスの中で ・・・ 出会う人々、物事、状況に 対して常に心が開かれているということ ・・・ 世界の文化、展望、産物との日 常的な出会いにうまく対応し、そうした出会いを広い視野をもって、あるい は現代らしいグローバルな手続きの解説的な枠組みの中で受け止め、その ような地球規模の文脈における自らの役割を見いだす包容力をもっている ということ。
(Boix-Mansilla and Gardner 2007)
文脈に根ざした学習には念入りな準備が必要です。生徒中心型アプローチに慣れていな い場合、文脈に基づいた学習を行うのに不安を伴うこともあります。継続的な理解のモニタ リング(形成的評価)が必要であり、なじみのない授業運営スキルを使うこともあります。
関係性や複雑さがますます増大する世界において、文脈に根ざした学習は、今日の世界 の若者の創造的な解決策と理解力を発展させ、有意義な挑戦の多面性を模索する機会を生 徒に与えます。MYPは教師に対しては、個人的、地域的、国家的、国際的、そしてグ ローバルな重要性のあるさまざまな考えや課題をとりまく単元を設計するよう働きかけ ます。
生徒はMYPを通して知的、社会的アイデンティティーを発達させながら、世界におけ る自分の立場についての認識を強めていきます。グローバルな文脈に取り組むためには、
グローバル人材になるための要素となる理解、実践的スキル、および個人の気質を高度に 組み合わせることが求められます(Boix-Mansilla and Jackson 2011)。グローバル人材にな るための要素を伸ばすためには、積極的に関わる深い学習が欠かせません。世界で成功す るために、生徒はグローバル化を理解するだけではなく、その可能性や危険性について批 判的に振り返り、自分たちと、そして自分たちが住んでいるコミュニティーの双方にとっ てよりよい世界をつくるために責任感をもって行動しなければなりません。
MYPは、指導と学習に対して6つのグローバルな文脈を特定しています。それらの文 脈はPYPの教科横断的な学習テーマに基づいて展開します。
文脈に基づいた「指導」と「学習」
PYPの教科横断的なテーマ MYPのグローバルな文脈
私たちは誰なのか
自己の本質、信念や価値観、個人的・身体 的・知的・社会的・精神的健康、家族や友 人、コミュニティー、文化などの人間関係、
権利と責任、人間であることの意味などに ついて探究します。
アイデンティティーと 関係性
私たちはどのような場所と時代にいるのか 場所と時間における位置づけ、個人の歴史、
ふるさとと旅、人類の発見・探査・移住、地 域的な観点とグローバルな観点から見た個 人と文明化との関係および相関性などにつ いて探究します。
空間的時間的位置づけ
私たちはどのように自分を表現するのか 考えや感情、性質、文化、信念、価値観を発 見し表現する方法、創造性を振り返り、広 げ、用いる方法、美的価値の鑑賞などにつ いて探究します。
個人的表現と文化的表現
世界はどのような仕組みになっているのか 自然界とその法則、(物理的、生物的)自 然界と人間社会との相互作用、人間は科学 的理論を理解しそれをどのように用いるの か、科学的、技術的進歩が社会や環境に及 ぼす影響などについて探究します。
科学技術の革新
私たちは自分たちをどう組織しているのか 人間がつくった組織とコミュニティーの結 びつき、組織の構造と機能、社会的意思決 定、経済活動とそれが人間と環境にもたら す影響などについて探究します。
グローバル化と持続可能性
この地球を共有するということ
限りある資源を他の人々や生物と共有する 取り組みの中での権利と責任、コミュニ ティーと、コミュニティー内あるいはコ ミュニティー同士の関係、平等な機会への アクセス、平和と紛争解決などについて探 究します。
公平性と発展
図3
生徒やコミュニティーのニーズを満たすため、学校はこの他にもグローバルな文脈を開 発することができます。