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M-GTAによる絵本の読み聞かせの分析の総合考察と 今後の課題

第5章 M-GTAによる絵本の読み聞かせの効果の分析

第5節 M-GTAによる絵本の読み聞かせの分析の総合考察と 今後の課題

以上のように、

M-GTA

という質的分析法を通して中学生の感想文を分析した ことで、ボランティアや、教師が中学生に長期間継続的に行う絵本の読み聞かせ がもたらす効果の出現するプロセスが明らかに出来たと考えられる。

ボランティアによる絵本の読み聞かせでは、1年間読み聞かせをしてくれた ボランティアに対するお礼の感想文であるということにより、感謝の意を表す ることが主であったが、その文章からは、絵本の読み聞かせを通して得られた 様々な効果を読み取ることができた。絵本の読み聞かせを継続的に聴取するこ とで、楽しいという情動に働きかけ、受験期である中学3年生のストレスを緩和 する時間を提供できたと考えられる。

教師による絵本の読み聞かせにおいても、読み手に対する好印象や、絵本に対 する好印象、絵本の読み聞かせに対する好印象等が表明され、情動に働きかけて いる様子が明らかになっている。そして、ストレスの緩和、精神の安定や、没入 感・集中力の向上などの効果が得られたとの認知がなされている。

このような、絵本の読み聞かせ聴取時にストレスが緩和され、リラックスした り、精神が安定したりするという効果は、ボランティアと教師の両方に共通して 見られた効果である。前半に記述した絵本の読み聞かせ聴取時の脳反応を計測 した際にみられた前頭前野における

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の減少がリラックスしている状態 を示すことが、実践においても、実際の中学生の反応として顕れたのではないだ ろうか。

また、両方の実践において見られた効果として、絵本に対する自己意識の変容 の認知、自己省察の喚起が挙げられる。物語を聴取することにより、登場人物の 心情理解が深まるとともに、その心情の動きを自己や他者にあてはめ、実生活へ 応用するという効果も見られた。まさに対人関係力が向上したと言えよう。

赤羽根直樹ら(2016)は不登校を未然に防ぐためには、「対人関係力」を高め ることも要因の一つであることを示唆している。松尾直博(2011)は、自分の内 面を見つめる私的自己意識は有能感と正の相関を示し、対人不安傾向と負の相 関を示すと述べている。

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教師による絵本の読み聞かせの場合、ボランティアによる絵本の読み聞かせ の際とほぼ同様の効果が見いだされたとともに、授業の中で、教師が行ったこと による効果がさらに付け加わったと考えられる。

それは、授業者が行うことにより、授業への意識の切り替えがなされ、学習に 向かう意欲が高まったと考えられることである。授業者の声による読み聞かせ を聞くことで、その後の授業を聞く姿勢ができ、そのまま授業内容へとスムーズ に移行できると考えられた。本研究の実践が国語科教員であったために、生徒は、

国語に関する知見を得ようという意欲が認められた。もし他教科の教師が行っ たのであれば、その教科の学習意欲が向上することが推測された。先行研究で、

家庭科、理科などの教科で絵本の読み聞かせが取り入れられ、その興味関心や、

理解の深化を図っている例が示されているが、多くは単発的であり、今回のよう に継続的な取り組みを行った時、意欲が継続し、興味関心が拡がるきっかけとな るのではないかとの期待ができる。

このように、絵本の読み聞かせの効果として、読み手である教師への好印象が 見られ、友人らとの対人関係力が向上し、自己の省察をし、自己意識が確立する という効果が認められたことは、岡安孝弘ら(1992)の示した不登校の要因で ある「学校ストレッサ―」のうち、「教師との関係」、「友人関係」というストレ スを軽減する効果となりえると考えられる。または、赤羽根ら(2016)の示した 不登校の要因である「対人関係力」を向上させることで、不登校の予防に役立つ と考えられる。

今後は、不登校等に対する予防教育への応用の可能性を視野に入れ、教師によ る絵本の読み聞かせをさらに長期的に継続した実践の効果について研究をして いきたい。

今回は、データの収集をしたもののうち、生徒の感想文の分析にとどまった。

今回の実践では、事前事後に、担当教員に教師本人の絵本に対する意識や、その 効果について、インタビューし、コメントをいただいている。また、読み聞かせ 実践の際、当該国語科担当教員により、読んだ本と、生徒の様子や言動など気づ いた点や、自身の感想などを感想シートに書き留めてもらっている。教師の事前 事後のインタビューや、教師の生徒観察による感想シートを分析し、生徒の感想 の分析と合わせ、教師による絵本の読み聞かせの効果を検討していきたいと考 えている。まだ詳細な分析はこれからの課題であるが、概観したところ、教師に

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よる観察記録からは、読み聞かせを待ち望む生徒の様子が見られ、筆者の観察か ら生徒の教師との関係性の向上の様子が認められている。また、教師の事後イン タビューでは、「この学年は、不登校の生徒が出ておらず、予防教育としてよい のではないか。」という感想をいただいている。

先行研究などの考察や、本研究の結果より、学校における絵本の読み聞かせの 実践は、読書活動を推進し、読解力を高めるだけでなく、近年増えている不登校・

別室登校に対して有効なのではないかと考えている。そこで、教師による絵本の 読み聞かせを継続的に実践するための提案を行い、実践し、さらなる効果の検討 を行いたい。

【引用文献】

赤羽根直樹、 宮崎英夫、小池守 、河崎雅人(2016)「中学校における不登校発生要因 の解明に関する実践的研究 : 不登校を未然に防ぐために」『帝京科学大学教職指導研 』: 帝京科学大学教職センター紀要 1(1)pp.1-8

松尾直博(2011)「中学生の読書と自己意識の関係:読書療法の観点から」『東京学芸大 学紀要 総合教育科学系』62(1)pp.205-213

岡安孝弘・嶋田洋徳・丹羽洋子・森俊夫・矢冨直美(1992)「中学生の学校ストレッ サ―の評価とストレス反応との関係」『心理学研究』63(5)pp.310-318

【参考文献】

渡辺弥生・山崎勝之・松尾直博・三宅幹子・門田雄治・安藤美華代・岡崎由美子・戸 ケ崎泰子・金丸美智代・神田裕之・嶋田洋徳 (2010)「日本になじむ予防教育の導 入 : 学校のホンネ(自主シンポジウム)」『日本教育心理学会総会発表論文集 』(52) pp.146-147

松尾直博・新井邦二郎(1998)「児童の対人不安傾向と公的自己意識, 対人的自己効 力感との関係」『教育心理学研究』 46(1) pp.21-30

桜井茂男 , 宮本正一 , 撫尾知信 , 岩立京子 , 嶋田洋徳 , 橋本治 , 松尾 直博 , 中野良顯(2001)「子どものストレスにどう対処すればよいのか」『日本教育心理学 会総会発表論文集』 (43) pp.22-23,

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