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ボランティアによる中学生に対する絵本の読み聞かせ効果の分析

第5章 M-GTAによる絵本の読み聞かせの効果の分析

第3節 ボランティアによる中学生に対する絵本の読み聞かせ効果の分析

第1項 問題の所在と目的

本章の「問題と目的」の項に、不登校等の中学生の抱える社会的問題のことを 述べた。近年、子どもたちを取り巻く環境も、急速に変化している。多様なメデ ィアの発展により、メディア機器使用時間が多くなり、物語などの本に触れるこ とが少なくなっている。「第

2

回放課後の生活時間調査」(2013 年

11

月、ベネ ッセ教育総合研究所)によると、学習時間や、携帯電話・スマートフォン・パソ コンなどを使うという項目がすべての学校段階で増加し、「忙しい」「もっとゆっ くり過ごしたい」と感じる子どもが増加しており、学習時間の増加、SNS の普 及などが、子どもの生活時間に影響を与えていることが報告されている。心身の 疲れについて尋ねた結果、小学生

51.2%、中学生 64.8%、高校生 70.4%が「忙

しい」と回答。そして、「疲れやすい」という回答も小学生

52.8%、中学生 66.4%、

高校生

69.8%となっている

8

中学3年生は、受験を控えており、勉強や、友人関係などいろいろなストレス を持っていると考えられる。そのような中学3年生に、絵本の読み聞かせをする という取り組みを通して、ストレスが緩和するような効果が出るのではないか と考えられる。また、絵本の読み聞かせを聴取することで、自分の内面を見つめ、

情動の動きをとらえ、意欲を引き出すことができていたとすれば、中学生に対す る絵本の読み聞かせの有効性を明らかにできると考える。

また、この中学校においてボランティアによる読み聞かせが始まったきっか けは、受験を控えた中学

3

年生の「ストレス緩和」「心の落ち着き・リラックス」

という効果が得られるのではないかという保護者らの意識からだったようであ る9。そこで、絵本の読み聞かせを聴取することで「ストレス緩和」され「心の 落ち着き・リラックス」したという効果が得られる可能性の検討も行いたい。

8 ベネッセ教育総合研究所:第2回放課後の生活時間調査―子供たちの24時間-,2013.

http://berd.benesse.jp/up_images/textarea/shotouchutou/houkago_2014/201410_Press-release.pdf

(2015.8.28確認)

9 筆者が行ったボランティアグループメンバーへの聞き取りによる。

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第 2 項 研究の方法

1.対象

A

中学校

3

7

クラス、総数は

644

名(3年度分)、内訳は、次に示す。

2011

年度(208名)

2012

年度(219名)

2013

年度(217名)

2.期間

毎週金曜、朝始業前

10

分間で行った。

2011

年度(H23.1~H24.1)

2012

年度(H24.2~H24.12)

2013

年度(H25.1~H26.3)

3.実践者

ボランティアグループ(11名)により行った。ほとんどのメンバーが、10 年以上続けている。各クラスを、1週間交代で順番に回っている。

4.場所

絵本の読み聞かせは、各教室で行った。

5.データの収集方法

(1)ボランティアが、中学生に対し、絵本の読み聞かせを毎週金曜の朝の読 書の時間を利用して、各年度、約

1

年間継続して行っている。選書は、各ボ ランティアの任意である。行事や担任の意向により、実施期間は、多少の増 減はある。

(2)1年間継続して絵本の読み聞かせを聞いた後、中学生がボランティアに 対して感想文を毎年書いている。感想文は、各クラス担任の指示によって書 かれ、指示の文言は様々であるが、主にボランティアに対する感謝や感想を 述べることをその主旨としている。

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6.分析方法:1年間の終わりに、ボランティアに対して中学生に書いてもら った感想文を、M-GTAを使用して分析を行った。

7.M‐GTA分析の流れ

M-GTA

分析の流れの概要を次に示す。

(1)概念生成とそのカテゴリー生成

1

段階として、まず

2011

年度分に対して分析検討を行う。

1)概念生成:まず、1 文ごとに分け、年度-個人番号-文番号を付す。(必要 な時にデータに戻って解釈を検討できるようにするため。)

そのデータに密着して深い解釈をしながら、制限を設けず概念を生成(オ ープンコーディング10)していく。その際に、一つの概念が生成されるたび に

1

枚の分析ワークシート【図

20】を作成する。個々の感想文を読み、書

いてある文章にどのような思いや、様子が読み取れるかを「研究者(筆者)の 視点」より分析解釈し、一つの概念に当てはまる表現を一つの分析ワークシ ートの具体例欄(以下、ヴァリエーション欄)に抜出する。ある程度サンプ ルが集まれば、概念の定義を抽出し、定義欄に記す。その際、思考したこと や、疑問に思ったことは、理論的メモに残す。概念を生成する際、常に対極 の概念を比較しながら行う(継続的比較分析)。

10 オープンコーディング等の用語は、M-GTAの手法に欠かせない用語であるので、初出の際に定義 し、その後は木下(2003)の用語のまま使用した。

【図 21】分析ワークシートの例

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次に概念生成の例を示す。(概念生成の根拠となる文に筆者が下線を引い た。※( )内に年度-個人番号-文番号を示す。個人番号は、個人が特定できないように 筆者が、任意に割り振った。分類後にデータを確認する必要がある際の目印とした。

(例1)

「金曜日の朝いつも読み聞かせをしていただきありがとうございました。

読むときに私たちにわかりやすくしてくださったり、少しの時間ではあり ましたがとても感謝しています。(11-1-1、2)」

まず、メッセージ文の第1文を読み、①概念を生成する定義を決める。こ の文に含まれるのは、読み聞かせボランティアへの感謝が現れていると考え、

概念の定義を、「感謝慰労表明」とする。②ヴァリエーション欄に書き込む。

次の第2文を読んで、同じような概念であれば、同じシートのヴァリエーシ ョン欄に書き込んでいく。数個集まれば、③概念名をつける。④その際、悩 んだことや、迷ったこと,気づいたことがあれば、理論的メモ欄に残す。

(例2)

読み聞かせもとても面白くて本の話の中にも興味深い物がたくさんあり ました。(11-1-3)

この文に含まれる概念には、下線部が読み聞かせに対する好印象が現れて いると考え、先の概念とは異なるので、別のシートを用意し、定義を「読み 聞かせに対する好印象」とする。ここで、後半の波線部分は、多様な絵本聴 取への好印象が現れている概念が含まれていると考えられるので、理論的メ モに記録を残し、もう一枚の別のシートを作り、「多様な絵本聴取への好印 象」とし、同じ文をヴァリエーション欄に記入する。(このように同じ文で あっても、複数の概念が含まれていることがあれば、概念ごとにシートを作 るようにする。文は、意味が変わらないように、切り取らず、記入すること とする。)そして、同じような概念が複数集まり、一つの概念として成立す るようであったら、概念名をつける。

このような手順で、一文ずつ先に生成した概念と比較しながら、新たな概

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念を生成していく。その際に、似たような概念であるか、また全く違う概念 であるかという概念同士の関係性も考慮に入れて、カテゴリーに集約するた めの方向性も同時に考えながら行う。

2)カテゴリー生成:個々の概念との関係を丁寧に検討し、複数の関係する 概念からなるまとまり(以下、カテゴリー)を生成し、コアカテゴリーに収 束していく。概念生成とこれらのカテゴリー生成は、同時並行で行う。

これらの過程では複数の分析者による分析や、スーパーバイザーの指摘を 受け、概念の解釈の妥当性の検証を行う。

(2)理論的サンプリング:第

2

段階として、

2011

年度の概念生成を踏まえな がら、

2012

年度の分析を同様に行い、新たに増えた概念を追加する。第

3

段 階として、2013年度の分析を、同様に行う。

(3)理論的飽和化:データからそれ以上新しい重要な概念や、カテゴリーが 生成されなくなったことを以て、理論的飽和化と判断する。

(4)結果図の作成:さらに、分析の結果を収束化するために、カテゴリー、

コアカテゴリー間の関係性を考えて、結果図にまとめる。

(5)ストーリーラインの記述:結果図をもとに、分析の結果得られた概念・

カテゴリー、コアカテゴリーの関係を文章化する。

第 3 項 結果

1.概念生成とそのカテゴリー・コアカテゴリー生成

ボランティアが、中学生に対して長期間継続的に絵本の読み聞かせを行った 後、中学生によって書かれたメッセージ文を

M-GTA

による継続的比較分析を 行い、その結果生成された概念をカテゴリーに収束したものを次の【表9】に示 す。

オープンコーディングにより生成できた概念は⑴~⒅であり、それぞれの関

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係性を考えてA~Gのカテゴリーを生成した。さらに、それらのカテゴリーを収 束して、《Ⅰ 情動》、《Ⅱ 認知》、《Ⅲ 意欲》の三つのコアカテゴリーが生成され た。この概念生成、カテゴリー、コアカテゴリーの生成に関しては、複数の研究 者により、概念及びカテゴリー、コアカテゴリーが妥当であるかの検討を行った。

コアカテゴリーは《Ⅰ》~《Ⅲ》、カテゴリーはA~G、概念は⑴~⒅で表した。

【表9】

ボランティアによる中学生に対する絵本の読み聞かせにおける効果

(概念とそのカテゴリー)

コアカテゴリー カテゴリー 概念

《Ⅰ情動》 A 読み手に対する好印象 (1)感謝慰労表明

(2)読み方に対する好印象 B 絵本に対する好印象 (3)絵本に対する好印象

(4)「あらしのよるに」の好印象 C 絵本の読み聞かせ活動に対する

好印象

(5)絵本の読み聞かせ活動に対する好印象 (6)多様な絵本聴取に対する好印象 (7)絵本の読み聞かせの時間に対する期待 (8) 読み聞かせ終了に対する寂寥感生成

《Ⅱ認知》 D 自己内面のメタ認知 (9)絵本の読み聞かせの体験の懐古・好印象 (10)絵本の読み聞かせに対する意識変化の認知 (11)没入感・集中力の向上

(12)心の落ちつき・リラックス・息抜き

(13)心の豊かさ(思いやり・友情・いろいろな経験)

《Ⅲ意欲》 E 意欲喚起 (14)学習意欲表出

(15)学習への意識の切り替え F 読書意欲の喚起 (16)読書意欲喚起

(17)読書実践

G 未来志向 (18)未来志向・人に読んであげたい

メッセージ文の中から抽出した概念を分析すると、その文章の目的から基本 的にみられる概念は、「A 読み手に対する好印象」のカテゴリーに含まれる ものであった。これはほとんど全員に見られた。次に多かったのは、「B 絵