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とができるようになったと示唆された。生徒の感想にも、休み時間から授業への 切り替えができたというものがあった。そして、音楽聴取の先行研究で、田所克 俊ら(2014)により、音楽聴取の際、前頭極の

oxy-Hb

濃度が減少するが、聴取 後、oxy-Hb濃度が増加に転じることが報告されている。絵本の読み聞かせにお いても、聴取中は前頭極(DMN)の活動は抑制されたが、読み聞かせ聴取後に 安静状態になると、前頭極にて

oxy-Hb

濃度の増加すなわち同部の活動性の上昇 を認めた。前頭極を含む内側前頭前野は、自己意識や、自己省察をつかさどる部 分である。つまり、読み聞かせを聴取した内容に関して、自己省察したり、自己 意識を確立したりすることができたのではないだろうか。絵本の読み聞かせを 聴取したことでお話に没入することで、

DMN

が抑制されることにより、それま での日常生活における雑多な思考(マインドワンダリング)などに含まれる負の 内省が一時的に抑制され、意識のスイッチング、つまり負の意識を抑制し、絵本 の内容にかかわる自己省察に切り替えが行われたと考えられる。また

DMN

の ある内側前頭前野は、共感や情動をつかさどる働きがあり、

DMN

が絵本の読み 聞かせにより、一度抑制され、読み聞かせ終了後に再び働き出せば、物語の内容 に対しての共感が生じるのではないだろうか。共感が生じるということは、物語 の登場人物の心情理解をはじめ、クラスの人や先生等、他人の心情が理解できる ようになり、対人関係力の向上も期待できるのではないか。前述したマインドフ ルネスの効果として、松木太郎(2018)は「言語的攻撃行動においてマインドフ ルネスと対人ストレッサーの交互作用が有意となった。」と報告している。絵本 の読み聞かせ聴取の際、前頭極の血流低下している状態が、

DMN

の一次的抑制 を表し、この状態がマインドフルネスの状態と類似の状態である可能性がある。

すなわち、絵本の読み聞かせを聴取した際、対人ストレスによる言語的攻撃行動 が抑えられることも考えられる。いじめなどの軽減につながる可能性があると も考えられる。

実際、「はじめに」でも述べたように、村中李衣(2000)において、養護施設 での読書療法において

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年半にわたり「絵本の読みあい」を行ったことで「明ら かに子どもたちの対人的関心度が高まってきた」と報告されていた。本研究にお いて、読み聞かせに没入することで、共感が引き出されるメカニズムの一端が示 唆されたと考えられる。

さらに、中学生の感想文からも、読み手(教師)への好印象が生じたことや、

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他人の心情が理解できたことなどが抽出され、対人関係力の向上が認められた。

現在、いじめ等、対人関係のトラブルで、不登校が発生しているが、先述した不 登校の引き金ともなる「学校ストレッサー」のうち、「教師との関係」、「友人と の関係」がよくなれば、不登校の生徒のストレス軽減にもなる可能性があると考 えられる。絵本の読み聞かせ聴取により、授業に集中できる体制が整い、集中力、

理解力が向上するという効果が発揮できれば、「学習に対する不安」も軽減され るのではないだろうか。

また、今回、音読、黙読との比較を行うことにより、読みの得意不得意といっ た読字能力と脳機能との関係も明らかになった。小枝達也ら(2010)によると、

発達性ディスレクシアなど読みに支援が必要な生徒には、「指導者や保護者が本 の読み聞かせを続けることの重要性を強調しておきたい。ディアスレクシア児 は音読の苦手さがあるが、物語を聞くことは好きな子が多い。自分で音読しなさ いと言われるので二次的に本が嫌いになっていく。したがって指導者や保護者 に物語や詩、短歌などを読み聞かせてもらって、ことばの語感や余韻を楽しんだ り、作品そのものの豊かさに触れさせたりする。ことばが好きな子、本が好きに な子に育てることも重要な指導である。」(小枝達也・関あゆみ・内山仁志

2010 p.52)というように、読み聞かせることの重要性が示されている。発達性ディス

レクシアなど読みに難しさを持つ生徒は、少しのつまづきでストレスを抱えた り、不登校を招いたりすることもある。発達性ディスレクシアを持つ生徒にとっ ても、教師や保護者による読み聞かせがより重要であると考えられる。

本研究の結果より、長期間継続的に絵本の読み聞かせを教員が行うことは、不 登校など、中学生の抱える心の問題に対する予防と解決に資すると考えられた。

【引用文献】

増田梨花・谷中広明(2010)「絵本の読み聞かせによる生理学的指標の変化-鼻部皮膚 温度の測定から-」『日本臨床生理学会雑誌』 40 :p.71

本間生夫(2016)『情動と呼吸-自律系と呼吸法-』朝倉書店

田所克俊・鈴木桂輔(2014)「音楽の歌唱や聴取の繰り返しパターンが脳機能の活性化 に与える影響」『ライフサポート』vol.26 No.3 pp.89-99

松木太郎(2018)「攻撃行動と対人ストレッサーの関連におけるマインドフルネスの調 整効果の検討」『パーソナリティー研究』26(3) pp.291-293

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村中李衣(2000)「読書療法の可能性―養護施設での読みあいを中心に―」『日本文学研 究』35 梅光学院大学 pp.61-71

小枝達也・関あゆみ・内山仁志「Ⅰ章 特異的読字障害 G治療的介入 2.鳥取大 学方式」 『特異的発達障害診断・治療のための実践ガイドライン』,pp.50-54.

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おわりに

先行実践で、石川晋(2013)では、中学校

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年生の問題のあったクラス運営 で悩んだ末、授業中に教科書を横において、絵本を読み聞かせたところ、教室外 に出ていた生徒が、一人二人と席に戻り集中して聞きはじめ、最後には拍手が生 まれ、生徒との間に初めて「対話」が生まれた。以来、「教室読み聞かせ」を通 じて、教師と生徒、生徒同士の「対話」や「学び」が生まれたという報告がなさ れている。絵本の読み聞かせを教師が継続的に行うことで、心のコミュニケーシ ョンが生まれ、クラス全体、学校全体で心がつながることができたのだと考える。

絵本の読み聞かせを通して、「学校ストレッサー」のうち、「教師との関係」「友 人との関係」「学業への不安」によるストレスが軽減されれば、不登校などの予 防と解決に有効であると考えられる。

今後、予防教育の一つとして、教師による継続的な絵本の読み聞かせを提案し ていきたい。

すべての子どもたちが、安心して過ごせる世界になり、未来への希望を持って 生きていってほしいと願っている

【引用文献】

石川晋(2013)『学び合うクラスをつくる!「教室読み聞かせ」読書活動アイデア38』

明治図書、初版第3刷.

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【巻末資料Ⅰ】脳の構造と機能について

脳は大脳・小脳・脳幹によって構成されている。大脳の表面は、大脳皮質とい い、さらに

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つの部屋に分かれている。この大脳皮質の

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つの部屋は、前頭葉、

頭頂葉、側頭葉、後頭葉といい、その中は、脳の働き方により、さらに細かな部 分に分けられている。

大脳皮質は、さまざまな感覚情報を統合して、認知(知覚・思考)し、運動の指 令を行う。人間の言語機能にも重要な役割を果たす。それぞれの機能に対応した 大脳皮質の区分を「領野」(area)と言い、大きく

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つに分かれる。視覚・聴覚・

味覚・体性感覚の

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種類の感覚が入力される感覚野(視覚野、聴覚野、味覚野、

体性感覚野)、それらの情報が統合されて処理される「連合野」(前頭連合野、頭 頂・側頭連合野、辺縁連合野)、そして運動の命令を出力する「運動野」である。

人間では、特に連合野が最も大きな領域を占め、認知、意思決定、言語機能、精 神機能などの高次脳機能を司っている。

1.前頭葉

前頭葉の前頭連合野は精神活動を司る場所である。計画を立てたり、論理的な 判断をしたり、思考したり、創造したり、喜怒哀楽などの情動発現のコントロー ルや、行動抑制に関与している部分である。前頭連合野は、側頭連合野や頭頂連 合野を始め脳の様々な領域から集まった情報をもとに認知し、実行する機能、情 動や、動機付けに関わる機能をもち、社会的な行動や論理的な判断など高度な精 神活動を司る脳の最高中枢であると考えられる。(池谷裕二 2015 p.58)

前頭連合野は、前頭前野ともよばれる。一般に前頭葉という場合、この前頭前 野をさしている場合がある。この前頭前野が人では最も発達しているところで ある。前頭前野の機能を調べるテストにストループテストというものがある。黄 色の文字で「緑」と書いてあり、これを「きいろ」と答えるためには、前頭前野 の働きが必要となる(『脳の教科書 こころ編』2013 p.16-17)。このように前 頭前野は、ストループテストにおいて、文字を学習したものにとって「緑」とい う文字を読もうとする反応や行動を抑制する機能がある。