第 3 節 要 約
本章では,MeHgの急性毒性に対する飼料中のタンパク質含量の影響について検討し,
その差異について組織障害の投与量依存性の面から考察した。それらの結果を以下に要約 する。
1)MeHg(40,80あるいはl20Umol/kg)を1回経口投与して生存率の変化を調べると,
両食餌群においてMeHg40Umol/kgの投与では死亡は確認されなかったが,80および120
Umol/kgの投与ではすべてのマウスがそれぞれ16および7日以内に死亡した。生存期間を 食餌群間で比較すると,l20Umol/kgの投与ではLPD群がNPD群よりも長いことから,
高投与量の場合にはMeHgに対する感受性はNPD群がLPD群よりも高いことが示唆さ
れる。
2)MeHg(40,80あるいはl20Umol/kg)経口投与24時間後の組織の水銀濃度および水銀
蓄積量を調べると,脳ではすべての投与量でLPD群がNPD群よりも高かったが,肝臓 および腎臓では食餌群間で差は見られなかった。MeHgl20Umol/kgを投与した場合,脳 の水銀濃度,生存期間ともNPD群くLPD群であることから,死因として中枢障害の寄 与は低いと考えられる。3)MeHg(40,80あるいはl20Umol/kg)経口投与24時間後の血紫のAST,ALT活性 およびクレアチニン濃度を指標として,肝臓および腎臓に対するMeHgの毒性を調べた。
ASTおよびALT活性は,NPD群ではMeHgl20Umol/kgの投与で上昇したが,LP D群では変化しなかった。肝臓の水銀濃度は食餌群間で差がないことから,高投与量の場 合にはMeHgに対する肝臓の感受性はNPD群がLPD群よりも高いと考えられ,これが 生存期間の差の原因の一つと考えられる。クレアチニンは両食餌群において80Umol/kg以 上の投与で上昇した。これらの投与量ではすべてのマウスが死亡することから,腎障害が 主な死因の一つと考えられる。
4)MeHg(40,80あるいはl20Umoykg)経口投与後24時間の水銀排池量を調べると,糞 中水銀排池量はMeHg80Umol/kg以下の投与では食餌群間で差は見られなかったが,l20 Umol/kgの投与ではNPD群がLPD群よりも低かった。尿中水銀排池量は40Umol/kgの 投与ではLPD群がNPD群よりも低かったが,80およびl20Umol/kgの投与では食餌群 間で差は見られなかった。従って,肝障害および腎障害がそれぞれ糞中および尿中水銀排 池量の変化に影響を与えていると考えられる。
5)MeHg(l20Umol/kg)経口投与24時間後の肝臓における無機水銀の蓄積量および総
水銀に対する割合はNPD群がLPD群よりも高かった。塩化第二水銀(2.5mgHg/kg)皮
下投与24時間後のNPD群の肝臓の水銀濃度はMeHgl20Umol/kg投与24時間後の無機水 銀濃度とほぼ同じであったが,血紫のASTおよびALT活性は変化しなかった。従って,MeHgl20Umol/kg投与後に観察されるNPD群の肝障害は無機水銀によるものではない
と考えられる。これらの結果から,MeHgの無機化に関与していることが示唆されている 活性酸素が肝臓の感受性の変化に影響を与えている可能性が考えられる。
6)以上の結果から,飼料中のタンパク質含量はMeHgに対する肝臓の感受性を変化さ
せる結果,MeHgの急性毒性に影響を与えることが示唆される。また,MeHgの亜急性毒 性と急性毒性に対する飼料中のタンパク質含量の影響は異なることが明らかとなった。‑41‑