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高齢者が語る生きがい

ドキュメント内 語りからみる高齢者の生きがい.doc (ページ 58-105)

4-1

  調査方法と調査グループ   

調査方法は、筆者の継続的なボランティア活動を通して、了解の得られた高齢者に関して、

生きがいについてのインタビュー調査および聞き取り調査を行った。

対象となる調査グループに関しては、新老人の会30会員、通所リハビリテーション・デイ ケア通所者、特定有料老人ホーム入居者、特別養護老人ホーム入所者の 4 グループである。

それぞれのグループについて若干説明を加えるとする。また高齢末期がん患者のグループに ついては、第5章に記した。

新老人の会は、聖路加国際病院理事長の日野原重明氏を会長として2000年 9月に発足し た。「たとえ 75 歳を過ぎても自立した老人でいて、そしてまた生産的な仕事もつづけられ、

これまでの長年の生活で獲得してきた知恵を社会に還元できる 健康老人 といわれる人が もっとふえていくと思います。そこで私はそのようなエリート(私のいうエリートとはお金 があるとか、地位が高いという意味ではなく、すがすがしい健康をもち、生産的な仕事もで きるという意味です)の老人に新しい呼び名を考えました。アメリカ合衆国では、65歳以上 をシニアシティズンと呼びますが、私もこのように心身の健やかな 75 歳以上の老人を 新 老人(New Elder Citizen) と呼びたいのです」(新老人の会のパンフレット)とある。特 に日本の過去の良き文化や習慣を社会や家庭に伝達、戦争体験を語り継ぐ、自らの健康情報

(身体、精神、及び生活習慣)をリサーチボランティアとして提供することを主として活動 を行っている。筆者は、2001年 5 月よりボランティアとして、新老人の会事務局の仕事を 手伝いながら、主として前述したリサーチボランティア参加者の中で了解の得られた対象者 に関して、約 1時間 30分の生きがいに関するインタビュー調査を行った。その際、対象者 の了解を得てインタビューを録音した。インタビュー調査は、こちらがあらかじめ詳細なイ ンタビュー項目を設定せず、生きがいについて自由に語ってもらう形式をとっている。新老 人の会会員になる時点で提出された簡単なプロフィールは事前に閲覧した。

通所リハビリテーション事業所で行われるデイケアは、通所介護(デイサービス)と比較 すると、理学療法士や作業療法士など専門家の人員配置が定められ、心身機能の維持回復に 力点がおかれている点や医師の管理下で実施される点が特徴である。また介護報酬は若干割 高となっている。今回の調査対象者が通う通所リハビリテーション事業所は、午前 10 時か ら午後3時頃まで、施設において入浴、食事、レクリエーション、個々のメニューにあわせ たリハビリを行っている。筆者は2002年3月から8月までの週1回、施設内でボランティ アとしてリハビリテーション以外の活動に加わった。具体的にはレクリエーション、入浴後 のお世話、食事の配膳、散歩、話し相手などである。介護度や痴呆の程度など多様であり、

特にインタビュー調査という形の場は設定していない。またそのような場を設定することに より、対象者が身構えてしまうということが予想されたので、継続的なかかわりを通して、

信頼を築きながら、了解の得られた対象者に生きがいに関して聞き取りを行った。その際、

対象者の了解を得てメモをとった。

特定有料老人ホームは、自立した60歳以上の高齢者が入居するところである。ここでは、

ホーム内で行われている園芸クラブのお茶会に、2001年9月より月2回の割合で参加した。

そこで了承の得られた対象者に約1時間30分のインタビュー調査を行い、それを録音した。

新老人の会対象者と同様に、生きがいに関して対象者に自由に語ってもらった。

特別養護老人ホームでは、2001年8月よりホーム内で行われるクラブ活動(書道、手芸、

囲碁、聖書)への参加を中心として、継続的なボランティア活動を行った。ここでは、通所 リハビリテーション事業所と同様に、面接場面は設定せず日常のかかわりの中から、生きが いについて聞き取りを行った。なお、対象者の了解を得てメモをとった。

調査対象者の年齢、性別などの基本的属性については4-2に示した。

4-2

  調査対象者の基本属性 

表2は対象者全体および、各グループの男女の数と平均年齢である。表3、表4、表5、表 6は各グループにおける対象者の基本属性である。

新 老 人 の会

通 所 リ ハ ビ リ テ ー ション

特 定 有 料 老 人ホーム

特 別 養 護 老 人 ホーム 合計

対象者数(名) 51 22 7 21 101 男性(名) 24 9 1 1 35 女性(名) 27 13 6 20 66 平均年齢(歳) 78.2 78.9 77.8 86.7 80.1  

表 2  対象者全体の基本属性 

  表3  新老人の会対象者基本属性 

事例 性別 年齢 家族構成 インタビュー日時

1 男 71 妻 娘 孫 2002/6/7

2 女 74 夫 2002/6/17

3 男 82 ひとり 2002/6/14

4 女 80 娘 2001/8/6

5 女 79 夫 2002/7/2

6 女 81 ひとり 2002/7/9

7 男 72 妻 娘 孫 2002/6/25

8 男 81 妻 娘 孫 2001/8/6

9 女 77 ひとり 2002/6/24

10 男 78 妻 息子 2001/8/9

11 女 79 夫 2002/6/24

12 男 77 妻 2002/6/3

13 女 79 息子夫婦 孫 2002/6/28

14 女 81 息子 2002/7/22

15 女 82 娘 2002/7/22

16 男 86 息子夫婦 孫 2002/6/7 17 男 74 息子夫婦 孫 2002/6/7 18 男 79 妻 息子夫婦 2002/6/3

19 女 79 ひとり 2002/6/24

20 女 83 夫 2002/5/13

21 女 75 ひとり 2002/6/24

22 男 84 妻 2002/6/14

23 女 77 息子夫婦 孫 2002/6/28

24 男 75 妻 2002/6/7

25 女 74 息子 2001/8/9

26 男 76 妻 娘  2001/8/9

27 女 82 ひとり 2002/5/24

28 男 75 妻 娘 2002/6/21

29 男 80 妻 2002/6/10

30 女 81 ひとり 2002/6/5

31 男 78 妻 息子 2002/6/18

32 女 79 夫 2002/6/17

33 男 75 妻 2002/6/21

34 男 77 妻 息子夫婦 孫 2002/6/3 35 女 77 息子夫婦 孫 2002/6/24

36 男 78 妻 息子 2002/6/5

37 女 77 ひとり 2001/9/19

38 女 72 ひとり 2002/7/2

39 男 78 妻 2002/6/21

40 女 90 息子夫婦 孫 2002/5/24

41 男 76 妻 2002/6/17

42 女 78 夫 2002/6/3

43 女 75 息子夫婦 2001/9/28 44 女 80 夫 息子 2002/5/13

45 女 84 息子 2002/6/17

46 男 77 ひとり 2002/6/21

47 女 73 ひとり 2002/6/18

48 女 75 ひとり 2002/6/25

49 男 83 妻 娘 孫 2001/8/7 50 男 80 妻 娘 孫 2002/6/5

表 4  通所リハビリテーション・デイケア対象者の基本属性 

事例 性別 年齢 介護度 通所頻度/週 通所歴 長谷川式 家族形態

52 男 84 要支援 2 1年4ヶ月 ― 妻 娘 孫

53 男 75 1 2 1年2ヶ月 21 息子夫婦 孫

54 女 84 4 3 3年3ヶ月 9 ひとり

55 男 68 3 1 8ヶ月 27 妻 息子夫婦 孫

56 男 82 1 2 1年2ヶ月 17 妻

57 女 83 3 2 1年2ヶ月 16 息子夫婦 孫

58 女 77 2 5 3年8ヶ月 ― 息子夫婦 孫

59 男 72 2 5 2年1ヶ月 12 妻

60 女 91 2 5 2年4ヶ月 ― 息子夫婦 孫

61 男 68 3 3 1年4ヶ月 ― 妻 息子夫婦 孫

62 男 77 2 4 1年1ヶ月 ― 妻 息子夫婦

63 女 88 1 4 3年8ヶ月 ― 嫁

64 女 80 1 6 2年11ヶ月 ― 息子

65 女 85 なし 1 3年6ヶ月 11 ケアハウス入所

66 男 73 1 3 3ヶ月 15 妻

67 女 78 2 1 3年3ヶ月 21 娘夫婦 孫

68 女 67 4 2 3ヶ月 20 娘

69 女 84 2 6 2年6ヶ月 13 息子夫婦 孫

70 女 73 3 3 1年3ヶ月 21 夫 息子

71 女 85 1 1 5ヶ月 24 ひとり

72 男 74 3 1 1年4ヶ月 ― 妻

73 女 88 要支援 2 3年1ヶ月 16 ケアハウス入所

表 5  特定有料老人ホーム対象者 

 

事例 性別 年齢 入居歴

74 女 81 7年

75 女 83 8年

76 女 71 6年

77 女 79 3年

78 男 71 4年

79 女 75 4年

80 女 85 7年

表 6  特別養護老人ホーム対象者の基本属性 

 

事例 性別 年齢 介護度 入所歴

81 女 84 1 8年5ヶ月

82 女 83 1 1年

83 女 88 2 2年3ヶ月

84 女 94 2 9ヶ月

85 女 92 1 7年

86 女 80 1 8年5ヶ月

87 女 83 1 6年3ヶ月

88 女 84 1 2年3ヶ月

89 女 94 1 7年4ヶ月

90 女 89 2 8ヶ月

91 女 73 2 8年9ヶ月

92 女 84 4 23年1ヶ月

93 女 89 3 9年1ヶ月

94 女 89 4 11ヶ月

95 女 88 1 2年5ヶ月

96 男 77 2 15年3ヶ月

97 女 92 4 6年7ヶ月

98 女 90 1 1年

99 女 90 1 10年8ヶ月

100 女 91 1 2年3ヶ月

101 女 88 2 3ヶ月

4-3

  事例

1-101

 

 

  

各グループの事例に関しては、事例集を参照。

新老人の会      事例1-51  (135-228ページ参照)

  通所リハビリテーション・デイケア  事例52-73 (229-243ページ参照)

  特定有料老人ホーム        事例74-80 (244-260ページ参照)

  特別養護老人ホーム        事例81-101 (261-274ページ参照)

4-4

  各グループの生きがいの特徴  4-4-1  新老人の会   

新老人の会対象者 51 名の生きがいについてまとめると次のような結果になった。参照さ れたい事例を明記し、女性については一重線で示した。なお、該当する事例の箇所には、事 例集の事例1-51(pp.135-228を参照)の中に二重線がひいてある。複数回答である。

① 自分の楽しみを追求すること(趣味活動・スポーツなど)---32人 事例(男)1・3・10・12・16・17・22・29・31・34・36・39・46・50・51

事例(女)4・5・11・14・15・19・20・25・32・37・38・40・43・44・45・47・48

② 人や社会との交流---21人 事例(男)3・8・16・17・18・26・34・46・49・50

事例(女)2・6・9・19・27・30・32・38・40・45・47

③ 自分の健康維持---19 人 事例(男)1・16・29・31・33・34・36・39・41・50

事例(女)11・15・20・27・30・35・40・43・47

④ 人生の指針・人生哲学---18人  事例(男)7・8・12・17・18・22・24・26・34・49

事例(女)2・5・15・20・27・38・43・47

⑤ 役に立つこと---17人 事例(男)12・18・22・28・49

事例(女)4・5・9・14・15・19・27・30・37・43・45・47

⑥ ボランティア活動---15人 事例(男)16・22・31・39

事例(女)2・5・6・9・23・27・32・38・42・44・47

⑦ 今までの人生の満足---14人 事例(男) 8・12・17・24・33・50・51

事例(女) 9・14・20・27・32・43・44

⑧ 仕事---11人 事例(男)1・3・7・18・39・41・49

⑨ 今の生活を大切に生きていく---10人 事例(男)50

事例(女)6・9・14・21・32・35・40・44・48

⑩ 家族の健康と幸せ---9人 事例(男)1・28・36・49

事例(女)4・9・11・35・44

新老人の会への参加---9人 事例(男)8

事例(女)9・14・20・21・30・43・45・47

⑪ 自分の人生の整理(自分史、遺言作成、遺品、財産など)---8人 事例(男)3・10・22・50

事例(女)4・5・27・38

チャレンジ精神をもつこと---8人 事例(男)10・22・31

事例(女)11・21・32・40・43

⑫ 孫の成長---6人 事例(男)12・26・28・33・36・50

勉強する・学ぶ---6人  事例(男)8・10・12・24・26

事例(女)47

信仰---6事例(男)8・17・18・34・50

事例(女)42

⑬ 自立すること---5人 事例(男)7・36

事例(女)6・35・38

  家族と暮らす---5 事例(男)1・17・49

事例(女)13・25

  創造的活動---5人  事例(男)3・29・39・51

事例(女)25

⑭ 近隣との交流---4人 事例(男)16

事例(女)6・32・38

若い人に自分の生き方を見せること---4人 事例(男)8・10

事例(女)6・20

⑮ 家庭生活の質の向上---3人 事例(女)2・4・11

⑯ 日野原先生との出会い---2人 事例(女)23・30

⑰ 生きがいがない---1人   事例(男)34

自然から力をもらう---1人 事例(女)21

死への準備---1人   事例(男)24

新老人の会の対象者の生きがいの第1位は「自分の楽しみを追求すること(趣味活動・ス ポーツ・娯楽など)」であった。具体的な内容は、マッチ棒のミニュチュア細工、歌、陶芸、

古代人の食の研究、合唱、社交ダンス、マジック、テニス、大正琴、古典文学の勉強、コー ラス、旅行、能の謡、創作玩具つくり、山登り、パソコン、英会話、声楽、マラソン、書道、

囲碁、映画、物をつくる、ピアノ、太極拳、手話、フラメンコ、俳句、鎌倉彫など多彩であ る。ほとんどの対象者は、趣味活動として自分なりの楽しみをもっていた。またそれらが複 数であることも多い。それらが生きがいのすべてではないが、生きがいの一つとして挙げら れている。個人的な趣味活動にとどまらず、集団での社会的な活動も見られた。

第 2 位は、「人や社会との交流」である。すでに人の交流が様々な形でなされている場合 が多い。例えば、各々がもっている趣味活動を通した人との触れ合いがある。それのみなら ず、個々がもっているパーソナルネットワークが豊富であることが示されている。また単に

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