第 3 章 研究方法
3.2 高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法
高 周 波 誘 導 結 合 プ ラ ズ マ発 光 分 光 分 析
(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy: 以下、ICP-AESとする)は、試料を採 取して酸などにより水に溶解させ、含まれている元 素の濃度を分析する方法である。ICPは高周波コイ ルとコンデンサーとの共振により生成されたプラ ズマ 3-1である。ICP を発生させるためには、トー チと呼ばれる放電管に誘導コイルを巻きつけ、コイ
3-1 プラズマとは、高温で電離した陽イオンと電子を含む電気伝導性をもった気体である。
胎土 釉薬(装飾)
高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法 一部資料
-偏光顕微鏡観察 一部資料
-走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析法 全資料 全資料
蛍光X線分析法 - 一部資料
X線回折法 一部資料 一部資料
分析法 測定対象
図3-1 ICP-AES装置内部 左 トーチ内
右 プラズマ点灯時
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ルに高周波電流(13.56MHz)を通すことによって誘導磁場を発生させる。このトーチ内に アルゴンガスを導入すると、アルゴンは自ら高温のプラズマ状態になる(図3-1)。
高温のプラズマ中に導入された元素は、励起されて元素固有の波長の光を放射する(原
子発光)。ICP-AESは、この放射された光の波長と発光強度から、含まれている元素の種類
(定性分析)とその濃度(定量分析)を測定する。検出法には、回折格子を用いて分光さ れた光を複数の検出器で測定するマルチ法と、1つの検出器で波長を走査して検出するシー ケンシャル法がある。本研究ではシーケンシャル法を用いている。
ICP は連続的に安定した高温の励起源が得られ、また共存する元素や試料溶液の液性や 共存物質の干渉作用などによる分析値への影響が少なく、主成分元素から ppb3-2 レベルに 至る多くの元素の濃度を迅速にかつ同時に分析可能であるという特長を有している。
3.2.2 試料調製法並びに分析方法
考古学的、美術史的に影響の少ないと思われる箇所を選択して、分析対象資料から胎 土を採取した。胎土採取にはPROXXONミニルーター28600-Sを使用した。ミニルーター を使用すると、切削しながら胎土が得られるので、粉末状態での試料採取が可能となる。
粉末状態で採取した試料を、テフロン製の容器に約50mg精秤し、王水3-3を0.6ml、フ ッ化水素酸(HF)を3ml加えた後、ステンレス・スチール製の密封分解容器に入れ、電気
乾燥器中 110℃で 80—90 分間加熱した。加熱後、室温まで冷却し、テフロン製の容器から
20mlほどの純水でテフロンビーカーに移し、150—160℃に熱したホットプレート上で蒸発 乾固し、フッ化水素を完全に除去した。蒸発乾固後、硝酸(HNO3)3.5ml と純水を加え、
再びホットプレート上で 10—15 分間ほど加熱して溶かし、最後に、メスフラスコに移し純 水を加えて100ml定容とした。
測定は 10元素(主成分元素であるチタン(Ti)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、マン ガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)
の8元素、微量成分元素であるストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)の2元素)を定量し た。プラズマの出力の大小により、測定は8元素(Ti, Al, Fe, Mn, Mg, Ca, Sr, Ba)を高出 力で(1.2kW)、2元素(Na, K)を低出力(0.6kW)で行った。分析機器はセイコー電子工
業(現SII・ナノテクノロジー株式会社)製SPS1200AとSeiko Instrument(現SII・ナ
ノテクノロジー株式会社)製SPS1700を併用した(図3-2、図3-3)。本研究で選択した波
3-2 parts per billion 10-9
3-3 硝酸(HNO3):塩酸(HCl)=1:3の混合溶液
27 長を表3-2に示す。
標 準 試 料 に は 日 本 工 業 技 術 院 地 質 調 査 所
(GSJ: Geological Survey of Japan)配布の標 準岩石試料JB-1a(玄武岩)、JG-1a(カコウ閃 緑岩)を用いた。定量方法は、ブランク溶液と 標準試料溶液により検量線を作成する 2 点法を 用いた。本研究での測定は、JB-1a を標準試料 とした分析を測定1、JG-1aを標準試料とした分 析を測定 2 とした。測定は、1 試料について測
定1と測定2、それぞれ5回行い、測定1と測
定2で算出した定量値の平均値を、最終的な定量値とした。
図3-2 セイコー電子工業製SPS1200A 図3-3 Seiko Instrument製SPS1700 表3-2 定量分析に用いた波長一覧
セイコー電子工業製
SPS1200A
Seiko Instrument製
SPS1700
波長(nm) 波長(nm)
Ti 323.5 334.9
Al 394.4 396.2
Fe 259.9 259.9
Mn 257.6 257.6
Mg 279.6 279.6
Ca 393.4 393.4
Na 589.0 589.6
K 766.5 769.9
Sr 216.6 407.8
Ba 230.4 455.4
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