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第 7 章 総括

3 結果

ICP-AESとSEM-EDSでそれぞれ分析値が既知である標準岩石資料を用いて定量値の精

度を確認したところ、ICP-AESの方が推奨値に近い結果が出ている。そのため、本研究で

はICP-AESによって得られた定量値を基本として検量線を求め補正した。

SEM-EDSで得られた定量値をx軸に、ICP-AESで得られた定量値をy軸にプロットし

た図を示す(図 1–8)。ICP-AES は試料調製の段階でケイ素を揮発させるため、ICP-AES のSiO2値は100 からその他成分を差し引いた推定値である。ICP-AES による標準岩石試 料のSiO2推定値は推奨値と概ね一致する(表 1)。SEM-EDS とICP-AESの定量値間は、

ナトリウム以外は相関係数が0.9以上で、ほぼ直線関係が得られる。軽元素は値が一致しな い傾向にあり、特にナトリウムはSEM-EDS による定量値がICP-AESによる値の2倍近 い値である。こうした違いは試料調製法(試料の形状など)や測定条件(SEM-EDS は大 きな粒子を避けて測定している、これに対し、ICP-AESは粉末状に回収した資料を溶液化 して分析に供している)による影響も考えられる、また、機械の精度としてICP-AESは軽 元素を感度よく分析できるのに対し、SEM-EDS は軽元素の感度が低下する傾向がある。

加えてSEM-EDSではチャージアップを防ぐため、10Paの真空条件下(通常は10-3Pa程

度)で分析を行っているため、通常よりも軽元素の精度は落ちている。以上の要因により、

結果として測定値が一致しなかったと思われる。さらに、SEM-EDS の分析範囲は電子線 の侵入範囲である点もICP-AESとは異なる。

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本検量線は粘土質胎土、ストーンペースト胎土といった胎土の質に関わらず有効であり、

イスラーム陶器分析に適すると言える。本論文中で用いた胎土分析値はこの検量線を用い て補正している。

SEM-EDS値 (%) SEM-EDS値 (%)

ICP-AES値 (%) ICP-AES値 (%)

:IMF

●:標準岩石 試料

図1 SiO2値比較 図2 TiO2値比較

SEM-EDS値 (%)

ICP-AES値 (%)

SEM-EDS値 (%)

ICP-AES値 (%)

図3 Al2O3値比較 図4 FeO値比較

143 SEM-EDS値 (%)

ICP-AES値 (%)

SEM-EDS値 (%)

ICP-AES値 (%)

図7 Na2O値比較 図8 K2O値比較

〇:IMF

●:標準岩石 試料

SEM-EDS値 (%)

ICP-AES値 (%)

SEM-EDS値 (%)

ICP-AES値 (%)

図5 MgO値比較 図6 CaO値比較

144 表1 SEM-EDSとICP-AESにより得られた定量値の比較 SiO2TiO2Al2O3FeOMgOCaONa2OK2O JA-1SEM-EDS(補正計算前)62.90.814.56.21.65.47.80.8 SEM-EDS(補正計算後)67.60.913.46.61.05.44.10.9 ICP-AES64.70.816.16.91.65.53.60.8 推奨値64.00.915.26.61.65.73.80.8 JA-2SEM-EDS(補正計算前)55.60.815.56.96.56.36.82.2 SEM-EDS(補正計算後)60.40.814.57.25.96.13.52.1 ICP-AES58.50.716.36.17.66.12.91.8 推奨値56.40.715.45.97.66.33.11.8 JR-1SEM-EDS(補正計算前)74.60.111.71.00.60.76.74.7 SEM-EDS(補正計算後)79.00.110.51.10.11.33.54.2 ICP-AES76.80.113.30.90.10.73.84.2 推奨値75.50.112.80.80.10.74.04.4 *1 FeO is a total value of Fe

GSJ geochemical reference samplesOxide concentrations (% *1

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(付録 2)高エネルギー放射光蛍光X線分析法を用いた微量成分分析

1 緒言

文化財の調査は非破壊調査を原則とする。非破壊かつ、精度・信頼性の高い情報を如何 に得るかは、文化財を調査対象とする研究者が常に直面する課題である。

胎土の主原料となる粘土は、含まれる微量成分元素が地域によって分布に違いがあると 言われており、微量成元素を比較することは産地推定において有効な手法である。従来は、

微量成分元素の分析を行うためには一定量のサンプリングや前処理が必要であり、非破壊 調査では困難であった。しかし、近年では高輝度放射光を用いた蛍光X 線分析法がある。

本付録では、大型放射光施設(SPring-8)で行った胎土分析結果について報告する。継続 的な文化財調査のためにも、非破壊分析法による微量成分元素分析を検討したい。また、

高輝度放射光をイスラーム陶器の胎土分析に応用した例がないため、高輝度放射光を用い たイスラーム陶器研究の基礎としたい。