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第 4 章 胎土

4.4 結果と考察

4.4.2 偏光顕微鏡を用いた観察結果

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49 表4-3 岩石・鉱物のサイズと名称

粘土 2 ㎛ シルト 2–50 ㎛ 極細砂 50–100 ㎛ 細砂 100–200 ㎛ 中砂 200–500 ㎛ 粗砂 500–1000 ㎛ 極粗砂 1000–2000 ㎛

図4-9 頻度

久馬・八木(監修) 1989, pp. 42–45, fig. 42を元に著者が手を加え作成

50 図4-10 球形度-円磨度

久馬・八木(監修) 1989, p. 49, fig. 49を元に著者が手を加え作成

51 表4-4 偏光顕微鏡観察結果

含有量の評価 1: 2%以下, 2: 2%, 3: 2–5%, 4: 5–10%, 5: 10–20%

R-4 1-1 1-4 1-5 1-13 1-27 3-8 3-9 4-4 4-5 3'-1

1 1 1 1 1 1 0 0 0 0 0

0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

2 0 1 1 1 1 0 0 0 0 0

0 0 0 0 0 0 1 1 1 2 2

3 3 3 4 3 4 3 4 5 4 4

斜長石 1 1 1 1 1 1 0 0 2 2 1

正長石 1 2 2 2 2 1 3 3 4 3 1

微斜長石 0 1 1 1 0 0 0 0 0 0 0

黒雲母 0 1 0 0 0 0 0 1 1 1 1

白雲母 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1

斜方輝石 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0

単斜輝石 0 2 1 1 1 1 1 0 1 1 1

ホルンブレンド 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0

玄武ホルンブレンド 1 1 0 1 2 1 1 1 1 1 1

0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

1 0 1 0 0 0 0 1 0 0 0

0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0

4 3 3 3 3 3 2 2 3 2 2

1 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2

不透明鉱物 赤褐色粒子 雲母族

輝石族

角閃石族

かんらん石 緑簾石 ジルコン

変成岩 堆積岩 粘土塊 炭酸塩

(微小結晶含む)

石英

長石族 火山岩

資料No.

鉱物・岩石

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はじめに赤色光沢土器(資料No. R-4)の観察結果について述べる(写真4-1)。資料No.

R-4で同定された鉱物・岩石片は石英、長石類、玄武ホルンブレンド、赤褐色粒子、不透明 鉱物、泥質ブロック、玄武岩–安山岩質のマフィック火山岩片などがあり、不透明鉱物や泥 質ブロックと思われる粒子は比較的多く認められる。しかし、全体的に同定可能な鉱物・

岩石の含有量は少なく、精製された材料を利用していると推測される。観察される無色鉱 物はほとんどがシルト以下からなり、極細砂–細砂を若干含み、頻度は5%程度と思われる。

円磨度は丸い–やや丸いに分類され、自然に堆積した砂土と推測される。

赤色光沢土器と化学組成の類似性が高いFayyumi 1に分類される資料No. 1-1(写真4-2)、 資料No. 1-4(写真4-3)、1-5(写真4-4)、1-13(写真4-5)、1-27(写真4-6)で同定され る鉱物・岩石片は石英、長石類、ホルンブレンド、玄武ホルンブレンド、オージャイト、

赤褐色粒子、不透明鉱物、泥質ブロック、玄武岩–安山岩質のマフィック火山岩片などがあ り、稀に雲母片が認められる。無色鉱物は細砂–中砂が中心でその他極細砂を含み、頻度は 15–25%程度である。円磨度は丸い–やや丸いに分類され、自然に堆積した砂土と推測され る。

赤色光沢土器とFayyumi 1を比較すると、赤色光沢土器が鉱物・岩石片をほとんど含ま ず、テクスチャー的視点から見ると両者は別グループと考えられる。しかし、赤色光沢土 器は観察したのが1点のみであり、今回薄片資料として供した赤色光沢土器とFayyumi 1 は出土後に劣化が著しく進行した、出土遺物の中でも特異な資料と言える。当時のフスタ ートで流通・消費されていた赤色光沢土器や最初期の施釉陶器の鉱物学的特徴を明らかに するためには、更なるデータの蓄積が必要といえる。

53 写真4-1

資料No. R-4 無色鉱物

粒径: シルト以下(極細砂–細砂)

頻度: 5%程度

円磨度: やや丸い–丸い

石英 斜長石 正長石

マフィック火山岩片 オージャイト ホルンブレンド?

玄武ホルンブレンド 泥質ブロック 赤褐色粒子

不透明鉱物 カンラン石

54 写真4-2

資料No. 1-1 無色鉱物

粒径: 細砂–中砂 頻度: 15–20%程度 円磨度: やや丸い–丸い

観察結果

石英 斜長石 正長石

マフィック火山岩片 オージャイト 玄武ホルンブレンド

カンラン石? 泥質ブロック 赤褐色粒子(左上)

不透明鉱物(中央)

55 写真4-3

資料No. 1-4 無色鉱物

粒径: 極細砂–中砂(まれに粗砂)

頻度: 15–20%程度 円磨度: やや丸い–丸い

観察結果

石英 斜長石 正長石

微長石 マフィック火山岩片 斜方輝石

カンラン石 玄武ホルンブレンド 緑簾石

56 赤褐色粒子(右下)

不透明鉱物(左上)

泥質ブロック

57 写真4-4

資料No. 1-5 無色鉱物

粒径: 細砂–中砂 頻度: 20–25%程度 円磨度: やや丸い–丸い

観察結果

石英 斜長石 微斜長石

正長石 マフィック火山岩片 オージャイト

玄武ホルンブレンド 泥質ブロック 赤褐色粒子(左)

不透明鉱物(右)

カンラン石

58 写真4-5

資料No. 1-13 無色鉱物

粒径: 極細砂–中砂 頻度: 20%程度

円磨度: やや丸い–丸い

観察結果

石英 斜長石 正長石

マフィック火山岩片 オージャイト 玄武ホルンブレンド

赤褐色粒子(中央やや下)

不透明鉱物(右上)

泥質ブロック

59 写真4-6

資料No. 1-27 無色鉱物

粒径: 細砂–中砂 頻度: 20%程度

円磨度: やや丸い–丸い

観察結果

石英 斜長石 微斜長石

正長石 マフィック火山岩片 オージャイト

玄武ホルンブレンド ホルンブレンド 雲母片

泥質ブロック 赤褐色粒子(中央)

不透明鉱物(中央やや左上)

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Fayyumi 2–4に分類される資料No. 3-8(写真4-7)、3-9(写真4-8)、4-4(写真4-9)、

4-5(写真4-10)で同定される鉱物・岩石片は石英、長石類、雲母片、玄武ホルンブレンド、

オージャイト、不透明鉱物、赤褐色粒子などである。観察される無色鉱物は、シルト以下–

細砂が中心で稀に中砂を含み、頻度は20–30%程度である。円磨度は丸い–やや丸いに分類 され、自然に堆積した砂土と推測される。X線回折では赤鉄鉱(Fe2O3)の回折ピークが認 められることから、不透明鉱物の多くは赤鉄鉱であると思われる。資料No. 4-4を除く資料 では、偏光顕微鏡では同定が行えない微小結晶が観察される(図4-11, 4-12, 4-13, 4-14,

4-15)。SEM-EDSによるマッピング分析の結果、微小結晶やその周辺はカルシウム濃度が

非常に高く、その他マグネシウムや硫黄も高い傾向にある。また、マッピングでは、胎土 中のカルシウムがマトリックス部分に不均質に分布し、カルシウム濃度が特に高い箇所は マグネシウムや硫黄も高い傾向にあることが確認できる。胎土中のカルシウムの分布状況 から、組成グループbは基礎となる粘土にカルシウム濃度の高い物質を加えており、観察 された微小結晶は、カルシウムを多く含む炭酸塩鉱物や硫酸塩鉱物が、焼成によって崩壊 したことに由来すると思われる。以上、偏光顕微鏡観察と組成分析の結果より、このグル ープの胎土は、ナイルシルトにマールクレイなどの高カルシウム粘土を加えて調合したと 思われる。この調合法はメイソンが定義するCa-Nile 2と一致する(Mason 2004)。Ca-Nile 2はファーティマ朝期にフスタートで流通していた粘土質胎土陶器では主流のタイプであ り、メイソンはこの胎土質の陶器についてフスタートやその周辺で製作されたと推測して いる。

唯一別グループとした資料No. 3'-1で同定される鉱物・岩石片は、石英のほか、長石類、

雲母、輝石類、不透明鉱物(赤鉄鉱または磁鉄鉱)、赤褐色粒子である(写真4-11)。玄武 ホルンブレンドと思われる粒子も観察されるが、そのサイズは小さく同定は行えなかった。

観察される無色鉱物は、シルト以下の微細な粒子で頻度は20%程度である。円磨度は丸い–

やや丸いに分類され、自然に堆積した砂土と推測される。全体的に観察可能な粒子数は少 なく、分級がよく揃っていることから、比較的丁寧に精製された材料を用いていると考え られる。また、微小結晶が周辺に集中した空隙を、Fayyumi 2–4資料より多くもつ。この 微小結晶やその周辺は、上述同様、炭酸塩鉱物や硫酸塩鉱物が焼成によって崩壊した痕跡 と推測される。また、他の資料には認められない炭酸塩鉱物が複数認められる。この炭酸 塩鉱物は、光学的特性と化学組成より、カルシウムイオンの一部がマグネシウムイオンで 置換されたマグネシアンカルサイトであると考えられる(図4-16)。マグネシアンカルサイ トは他の炭酸塩鉱物同様、比較的低い温度で焼失すると推測される。観察されたマグネシ

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アンカルサイトは光学的特性や自形(鉱物特有の形)を残していることから、熱の影響を あまり受けていないと推察される。資料中には炭酸塩鉱物や硝酸塩鉱物が熱によって構造 変化したと推測される、微小結晶が存在することから、マグネシアンカルサイトは廃棄(埋 没)後に生成された、二次鉱物の可能性がある。

62 写真4-7

資料No. 3-8 無色鉱物

粒径: シルト以下–細砂 頻度: 30%程度

円磨度: やや丸い–丸い

観察結果

石英 斜長石 正長石

オージャイト 玄武ホルンブレンド 雲母片

カンラン石? 微小結晶 赤褐色粒子

不透明鉱物

63 写真4-8

資料No. 3-9 無色鉱物

粒径: シルト以下–細砂 頻度: 25–30%

円磨度: やや丸い–丸い

観察結果

石英 斜長石 微斜長石

正長石 オージャイト 玄武ホルンブレンド

変質した雲母片 ジルコン

赤褐色粒子(中央やや上)

不透明鉱物(中央)

64 写真4-9

資料No. 4-4 無色鉱物

粒径: シルト以下–細砂 頻度: 30%程度

円磨度: やや丸い–丸い

観察結果

石英 斜長石 正長石

マフィック火山岩片 オージャイト 玄武ホルンブレンド

変質した雲母片 微小結晶 不透明鉱物(中央やや左上)

赤褐色粒子(右下)

65 写真4-10

資料No. 4-5 無色鉱物

粒径: シルト以下–細砂 頻度: 25–30%程度 円磨度: やや丸い–丸い

観察結果

石英 斜長石 正長石

オージャイト 玄武ホルンブレンド 変質した雲母片

赤褐色粒子 不透明鉱物 泥質ブロック

66 写真4-11

資料No. 3’-1 無色鉱物

粒径: シルト以下(まれに極細砂–細砂)

頻度: 30%程度

円磨度: やや丸い–丸い

観察結果

微小結晶

石英 斜長石 正長石

オージャイト 玄武ホルンブレンド?

雲母片 変質した雲母片 マグネシアンカルサイト

不透明鉱物(中央やや左)

赤褐色粒子(中央やや右)