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飽和帯形成機構に関する考察

ドキュメント内 卒業論文 (ページ 94-97)

第 6 章 原位置計測結果

6.4 飽和帯形成機構に関する考察

一般的に降雨浸透に起因して斜面内部で飽和帯が形成され,間隙水圧が上昇することが 斜面崩壊発生の主要因と考えられている.本研究では,地質調査結果と各計測結果に基づ き,自然斜面における飽和帯の形成機構について図3-26に示すように風化度の観点から推 察し,これを原位置計測において検証した.

まず,図 6-16に比抵抗電気探査の結果と土壌水分計およびテンシオメータの埋設箇所の 位置関係,および計測結果を示す.

斜面中腹部に着目すると,深度 0.5m 付近で抵抗値境界面(黄緑色から濃緑色)が存在 する.すなわち,ここが地質境界に相当すると考えられ,体積含水率の変動範囲も GL-0.1m

~GL-0.4m と GL-0.6m~GL-1.0m で 大 き く 異 な っ て い る . ま た , 間 隙 圧 の 変 動 挙 動 も

GL-0.4m と GL-0.6m・GL-1.0m で異なっており,地質調査結果と良好な整合性を示してい

るといえる.中腹部においては,この地質境界を境に透水性が大きく変化するため,この 境界付近で飽和帯が形成されると推察される.

次に斜面法尻部に着目すると,深部にいくにつれて抵抗値が大きくなっていることがわ かる.すなわち,図 3-26に示すように深度方向に風化度が異なり,これが体積含水率の変 動範囲に表れていると考えられる.また,GL-0.1m~GL-1.0m の間にいくつか地質境界面 に相当する透水性が大きく異なる層が存在するため,各深度において飽和帯が形成される 可能性があると考えられる.6.2.2で前述した通りテンシオメータが一部破損している可能 性も考えられるが,GL-0.4m および GL-0.6m の間隙圧の値が 0kPa 付近で推移しているこ とが,この飽和帯に相当する可能性もある.

以上より,プーケットにおける斜面で体積含水率および間隙圧を計測している中腹部・

法尻部の 2地点において,地質調査結果(風化度の違い)と体積含水率・間隙圧の計測結 果の関連性を考察した.すなわち,図 3-26に示すように,風化度の相違による透水性の違 いにより,斜面内部のある深度において飽和帯が形成され,間隙水圧が発生する と推察さ

土壌水分計(GL-0.1m~1.0m) テンシオメータ(GL-0.4m,0.6m,1.0m)

土壌水分計(GL-0.1m~1.0m)

テンシオメータ(GL-0.4m,0.6m,1.0m) 土壌水分計(GL-0.1m~1.0m) テンシオメータ(GL-0.4m,0.6m,1.0m)

土壌水分計(GL-0.1m~1.0m)

テンシオメータ(GL-0.4m,0.6m,1.0m)

6-16 体積含水率・間隙圧と地質の関連

れる.しかしながら,当該斜面は図3-6,図3-7に示す通り,極めて不均質な地盤である.

よって,上述した現象が,斜面内部において局所的に発生し,その飽和帯が結びつくこと により,局所的な斜面安定性の崩壊が斜面全体の崩壊へとつながると推察される.さらに , 当該斜面における飽和帯形成面は,地質調査結果および原位置計測結果より,図3-26に示 すように風化度Ⅲ(Moderately Weathered, Rock 50% to 90%)と風化度Ⅳ(Highly Weathered)

の間であると推察される.

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