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第 5 章 「奄美市飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例」施行に対する飼育者と

5.3 結果

5.3.3 飼いネコの飼育状況についての回答(飼育者のみ対象)

飼いネコの飼育状況についての回答結果を表5‐4にまとめた。飼育頭数では、「2-4 頭」を飼育していると回答した人が最も多く45.5%(25人、95%信頼区間: 33.2-57.8)、

続いて「1頭のみ」飼育の40.0%(22人, 95%信頼区間: 27.9-52.1)となった。「5頭 以上」飼育しているとの回答は9.1%(5人, 2.0-16.2)であった。その結果、飼育平均 頭数は2.2頭(SD±1.53)となった。飼いネコの登録状況についての質問に対しては、

「全頭登録済み」と回答したのは65.5%(36人, 95%信頼区間: 53.7-77.2)。「未登録」

と回答したのは、18.2%(10人, 95%信頼区間: 8.7-27.7)であった。

飼いネコの入手方法(複数回答可)は、「拾った」との回答が最も多く 33.3%(23 人, 95%信頼区間: 18.9-39.1)で、「貰った」の29.0%(20人, 95%信頼区間: 21.1-42.0)、

「いつの間にか住みついた」23.2%(16人, 95%信頼区間: 14.0-32.7)と続いた。一 方「買った」との回答は2.9%(2人, 95%信頼区間: 0-6.7)にとどまった。

飼いネコのすべてに避妊去勢の手術を「している」のは54.5%(30人, 95%信頼区 間: 42.2-66.8)、「していない」のは30.9%(17人, 95%信頼区間: 19.5-30.9)となっ た。またマイクロチップの挿入に関する質問では、「全頭装着」は21.8%(12人, 95%

表 5-3.本研究における「奄美市飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例」へ の認知に対する質問へのイエネコ飼育者と非飼育者の回答数とその割合(%)。

p

値は

χ²二乗検定により飼育者と非飼育者を比較した数値。

認知している 認知してしない 無回答

回答者(n) 回答数 % 回答数 % 回答数 % p値 全体(378) 260 68.8 107 28.3 11 2.9 飼育者(55) 40 72.7 15 27.3 0 0

0.13 非飼育者(323) 220 68.1 92 28.5 11 3.4

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信頼区間: 11.6-32.0)、「装着していない」は50.9%(28人, 95%信頼区間: 38.6-63.3)

であった。

次に、飼い猫条例の施行による飼育状況の変化を知るため、条例で義務化された「首 輪や鑑札の装着」と推奨された「室内飼育」に関して、条例前後の状況について質問 した。「首輪や鑑札の装着」の有無については、条例の前後で差はみられなかった

表 5-4.飼育回答者による飼いネコの飼育状況に対する回答とその割合(%)

および

95%信頼区間。

質問 回答数 割合(%) 95%信頼区間 飼育頭数

1頭 22 40.0 27.9-52.1

2-4頭 25 45.5 33.2-57.8

5頭以上 5 9.1 2.0-16.2

無回答 3 5.5 0-11.1

飼いネコの登録状況

全頭登録 36 65.5 53.7-77.2 一部のみ登録 6 10.9 3.2-18.6

未登録 10 18.2 8.7-27.7

無回答 3 5.5 0-11.1

飼いネコの入手方法*

買った 2 2.9 0-6.7

貰った 20 29.0 18.9-39.1

拾った 23 33.3 22.7-43.9

自宅で産まれた 6 8.7 2.4-15.0 いつの間にか住みついた 16 23.2 14.0-32.7

無回答 2 2.9 0-6.7

飼いネコへの避妊去勢の有無

全頭している 30 54.5 42.2-66.8 一部のみしている 5 9.1 2.0-16.2 していない 17 30.9 19.5-30.9

未回答 3 5.5 0-11.1

マイクロチップの装着

全頭装着している 12 21.8 11.6-32.0 一部のみ装着している 8 14.5 5.8-23.3 装着していない 28 50.9 38.6-63.3

無回答 7 12.7 4.5-20.9

*複数回答あり。

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(χ²=5.3, df=2, p=0.07)(表5‐5)。しかしながら、「装着している」と回答したのは

条例前の46.2%(18人)から条例後の61.8%(34人)と増加がみられた。また「飼

いネコの飼育環境」に関しては、

条例後「完全室内飼育」をしていると回答したのは 43.6%(24人)で、条例前の 30.8%

(12人)から倍増した(表5‐6)。しかし「放し飼い」をしているとの回答は、条例前の

2.6%(1人)から条例後の14.5%(8人)へとこちらも大きく増加する結果となり、条

例前後の飼育環境については有意な差がみられた。(χ²=16.3, df=3, p=0.0009)。

表 5-5.イエネコ飼育者による「奄美市飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条 例」施行前後の飼いネコへの首輪等の装着の有無に関する回答とその割合(%)。

p

値は装着の有無について条例の前後で割合を比較した数値。

回答数(%)

質問 総回答数* 装着している 装着していない 無回答 p値

首輪や鑑札装着の 有無について

条例前 44 18(46.2%) 18(46.2%) 3(7.7%)

0.07 条例後 55 34(61.8%) 17(30.9%) 4(7.3%)

*条例施行後に飼育を開始した回答者が存在したため、総回答数は条例前後で異なる。

表 5-6.イエネコ飼育者による「奄美市飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条 例」施行前後の飼いネコの飼育環境に関する回答とその割合(%)。

p

値は飼育 環境について条例の前後で割合を比較した数値。

回答数と(%)

質問 総回

答数* 放し飼い 主に室内飼育

(外出自由)

完全室内

飼育 無回答 p値 飼育環境

について

条例前 39 1 (2.6%) 24 (61.5%) 12 (30.8%) 2 (5.1%)

0.0009 条例後 55 8 (14.5%) 24 (38.2%) 24 (43.6%) 2 (3.6%)

*条例施行後に飼育を開始した回答者が存在したため、総回答数は条例前後で異なる。

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5.3.4

「飼い猫条例」と「イエネコ問題や飼養方法」についての質問項目を用

いた因子分析の結果

「飼い猫条例」に関する質問に対して因子分析を行った結果、2つの因子が抽出さ

れた(表5‐7)。各因子の大きな負荷量を持つ項目に注目し、第1因子を「飼いネコ

管理の必要性」因子、第2因子を「イエネコ問題解決効果」因子と名付けた。第1因 子の固有値は5.182、寄与率は64.78%。第2因子の固有値は1.091、寄与率は13.64%

となり、二つの因子による累積寄与率は78.42%であった。

また「イエネコ問題や飼養方法」に関する質問に対する因子分析においても、2つ の因子が抽出された(表5-8)。第1因子を「室内飼育」因子、第2因子を「野生生 物への被害問題」因子と名付けた。第1因子の固有値は4.326、寄与率は54.08%。第 2因子の固有値は1.476、寄与率は18.45%となり、二つの因子による累積寄与率は 72.53%であった。

項目 質問内容 Factor1 Factor2 共通性 問い19 飼い猫条例は必要 .908 -.037 .825 問い23 飼いネコの登録は必要 .890 -.021 .793 問い20 人の生活環境の改善に役立つ条例 .825 .050 .682 問い22 奄美の希少な野生生物の保護に役立つ条例 .718 .092 .524 問い25 飼い猫には首輪や鑑札をするべき .702 .065 .497 問い28 条例は放し飼いネコ問題の解決に効果がある -.030 .974 .950 問い29 条例はノラネコ問題の解決に効果がある .079 .855 .737 問い27 首輪など装着の義務化で放し飼いネコが減る .033 .736 .543

固有値 5.182 1.091

寄与率(%) 64.78 13.64 累積寄与率(%) 64.78 78.42

表 5-7.「飼い猫条例」についての質問項目を用いた因子分析の結果

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