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食肉の生理活性物質

ドキュメント内 食肉の知識 (ページ 53-66)

第3章  食肉の栄養と健康

ビタミンB 1 が豊富な豚肉 48/注目したいビ

6. 食肉の生理活性物質

食品には、栄養特性(一次機能)や嗜好特性(二次機能)のほかに、

生理機能を調整するという大切な三次機能の特性があり、この生理調整 機能を持つ物質を生理活性物質といいます。食肉には、体内で分解され る過程で生じるペプチドに、血圧上昇を抑えたり、コレステロールをコ ントロールする働きのあることがわかっています。このほかにも、脂肪 の代謝に不可欠なカルチニンや抗酸化作用物質のほか、精神の安定に重 要な役割を持つ物質などがあいついで発見されています。

精神安定に不可欠な成分

動物は、ストレスにさらされると脳細胞のセロトニンの濃度を自動的 に調整して、その影響を和らげています。セロトニンは睡眠や体温の調 節にも関与しており、脳内のセロトニン濃度が低下すると、神経伝達に 不調をきたしてうつ病や自殺が増えるという統計結果があります。

セロトニンは、人体を縦横無尽に走っている複雑な神経細胞のネット ワークを形成している軸策と軸策の連絡を担っている神経伝達物質で、

必須アミノ酸のひとつであるトリプトファンを原料にして脳内で合成さ

れています。バランスのよい食事が大切ですが、精神の安定を保つには、

トリプトファンをたくさん含んでいる食肉の摂取がより効果的だという ことができます。

脂肪の燃焼に不可欠なカルニチンも豊富

食肉に多く含まれている脂肪の代謝に不可欠なカルニチンは、食品か ら摂取できるだけでなく、アミノ酸のリジンとメチオニンを前駆物質と して肝臓と腎臓で合成されるので、通常は不足することがありません。

しかし、激しい運動の後などには急速に減少してしまいます。

カルニチンは、細胞にあるミトコンドリアでつくられるエネルギーの もとであるATP(アデノシン三リン酸)の合成を助けて疲労物質の蓄 積を少なくするほか、食事で摂った脂肪や体内に蓄積されている余分な 脂肪の分解も促すので、腹部の脂肪分を燃焼させるなどのダイエット効 果も期待できます。ただし、カルニチンそのものは脂肪を燃焼させるき っかけをつくるだけで、エネルギーを消費することはないので、ダイエ ットには運動でエネルギーを使うことが大切です。

カルニチンは、植物性食品にはほとんど含まれていません。魚介類に も含まれていますが、なんといっても最大の供給源は食肉です。とくに、

牛肉の赤身部分に豊富です。

動物の内臓に多く含まれているタウリンの生理調整効果

滋養強壮や、現代人に多い動脈硬化や糖尿病、高脂血症、心不全など の予防に効果があるタウリンは、必須アミノ酸のメチオニンを原料に、

動物の体内で合成されています。人間は、1日に必要なタウリンの約半 分を食物から摂り、残り半分を体内合成しているとされます。

これまでタウリンは、貝やイカ、魚の血合いなどに多く含まれている とされ、食肉にはごく少量しか含まれていないと考えられていましたが、

動物の心筋や骨格筋、肝臓、腎臓、脳、とくに舌に多量に含まれている ことがわかりました。

タウリンの働き タウリンは、体内で様ざまな働きをしています。たと えば、心臓や血管の収縮を調整するほか、胆汁酸の排泄や肝細胞の再生 を促進し、膵臓ではインシュリンの分泌を促進しています。タウリンは、

脳の神経細胞密度や視覚、骨の形成にも関係しているのではないかとも 考えられています。

期待される食肉の生体調節機能に関する研究

動物性たんぱく質に多く含まれている成分には、優れた健康を守る生 理活性機能を持つ様ざまな物質が含まれています。たとえば、含硫アミ ノ酸の一種であるシスチンには、飲酒・喫煙などによって生じて細胞を

傷つけて病気を引き起こす活性酸素(フリーラジカル)から体を守る働 きがあり、筋肉や心臓、眼球に含まれている2つのアミノ酸が結合した カルノシンというペプチドにも、抗酸化作用があります。

このほかにも、動物性たんぱく質には成長に関係するバリンや、子ど もの成長に不可欠で神経機能を補完しているヒスチジンなどが豊富に含 まれています。食肉は複雑な物質で、研究素材としても扱いにくい対象 ですが、最近になって食肉に含まれている生理活性物質に関する研究領 域はますます広がり、新たな成果が期待されています。

7 食肉の病気予防効果

長寿と健康に大きな貢献をしている食肉には、最近になって心筋梗塞 や狭心症などの虚血性心疾患をはじめ、がん、ストレス、感染症などの リスクを軽減する効果がある様ざまな成分が含まれていることが、国内 外の研究、調査で明らかになりました。

循環器疾患予防効果

血管は全身の臓器をはじめ、からだの隅々に酸素や栄養素を運んでい ます。この血管に病変が起こるとダメージを受けやすいのが脳と心臓で、

これらはまとめて循環器疾患と呼んでいます。

一般に、食事内容が欧米風に傾くと、たとえば脂肪の摂取が多くなり 循環器疾患が増えると考えられがちです。しかし、高血圧や脳卒中にな りやすい遺伝素因があっても動物性たんぱく質を十分に摂ることで病変 を予防でき、心筋梗塞の予防にも大きな効果があります。

イギリスとフランスでは脂肪の摂取量が同じなのに心筋梗塞による死 亡率ははるかにフランスが低いという事実は、「フレンチパラドックス」

とよばれ、専門家の間でも不思議な現象とされていました。しかし、両 国の食習慣には赤ワインの消費量と動物の内臓料理のバラエティの豊富 さに大きな違いがあり、フランス人に心筋梗塞が少ないのは、赤ワイン に含まれている抗酸化物質ポリフェノールと、動物の内臓に含まれてい る微量元素の銅やタウリンなどのアミノ酸にある予防効果が原因だと指 摘されるようになりました。

1985年から世界的な規模で行われているWHOの疫学調査でも、食肉 類や魚介類などに多く含まれているタウリンの摂取量が多い地域では、

男女を問わず心臓病などによる死亡率が低いことがわかりました。

ストレス耐性を強化する食肉

生活習慣病を気にして肉を控える人がいますが、食肉のたんぱく質に

は、前述した情緒を安定させてうつ状態の改善に役立つといわれるセロ トニンのほかに、脳に健康的な影響を及ぼすドーパミンを代謝するチロ シンが含まれています。

ドーパミンは快感を得ることに関連する物質で、この不足はADHD

(注意欠陥多動障害)の原因ではないかと指摘されるなど、精神状態に 深く関わっていると考えられています。このほかに、最近では食肉や内 臓に含まれている、アラキドン酸という脂肪酸から生成されるアナンダ マイドという物質にも注目が集まっています。これは、幸福感や愉快な 気分をもたらし、痛みを和らげるといわれる物質です。

ストレスに負けそうになったら、ステーキやモツ鍋を食べて元気を出 すのは、脳の健康を守るためにもとても効果的といえるでしょう。

食肉と免疫力

生体防衛の要となる免疫反応では、「補体」とよばれる物質が、感染 症から生体を守る推進エンジンの役割を果たしています。

免疫システムに重要な動物性たんぱく質 補体は約20種類のたんぱく質 の集合体で、通常は血液中にばらばらに存在しています。補体は病原体 が侵入すると結合して、直接細菌に攻撃を仕掛けるだけでなく、好中球 やマクロファージを呼び寄せ、免疫システムの総帥役のT細胞にも働き

牛乳 ヨーグルト チーズ 大豆 ピーナッツ チョコレート 小麦 そば えび かに魚類 グミ その他

93 40

11 8

9 9

14 8 7 3

6 7 2

48

0 20 40 60 80 100

厚生省「食べ物と健康に関する検討委員会」(即時型アレルギー陽性時168名の複数回答)

報告書(1999年)より 図3-9 アレルギーを起こしやすい食品

1992〜96年にかけて厚生省が行った

「アレルギー疾患に関する研究」で、

乳幼児の28.3%、小・中学生の32.6%、

成人の30.6%になんらかのアレルギー 疾患があることが分かった。チョコレ ートや米がアレルギーを起こす物質

(アレルゲン)となることもある。

かけて抗体の産生を促します。

このような役割を果たす補体は、主に肝臓で生成されているのですが、

感染が起きると次第に消耗して、本来の役割を果たすことができなくな ることがあります。質のよいたんぱく質を十分に補給して肝臓を健康に 保たない限り、免疫力は低下してしまうのです。

元気な肝臓には、ビタミンやミネラルとともに、老化やがんの原因に 対抗できる抗酸化物質が大切です。そして、何よりも基礎体力をつける こともできる高たんぱく食としての動物性食品が重要になります。

高たんぱく食として定評のある食肉には、リンパ球を増やす脂肪酸の ほか、抗酸化物質のビタミンEを活性化させる成分も含まれています。

免疫力を高めるという点でも、食肉の果たす役割が見直されてよいとい えるでしょう。

乳幼児のアレルギーと食肉 食べ物の消化吸収器官である腸管は免疫系 を持ち、体に必要な栄養が入ると全身の免疫システムに働きかけて、ア レルギー反応が起きないようにしています。ところが、腸管の免疫シス テムが働かなくなると、食品のたんぱく質はアレルゲンと認識されてア

牛乳 ピーナッツ クルミ カシュー ヘーゼルナッツ アーモンド 大豆 甲殻類 りんご もも オレンジ セロリ にんじん 小麦

スイス 5 10

6

45 14

21

13 39 8 6

5

米国(A)

54 28 28

12 9

10 米国(B)

3 1

5

10

6 8

スウェーデン

(単位:%)

31

39

75 9

6

イスラエル

「食品アレルギーが乳幼児期に多い理由」上野川修一より 図3-10 いろいろな国のアレルゲン

どんな物質がアレルゲンとなるのか…

は、年齢、食習慣、生活環境などと複 雑に関わっており、それぞれの国によ る特徴がみられる。なお、大気汚染や 過大なストレスなどもアレルギー疾患 に関係していると考えられている。

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