個人ローンが303%あるため貸出金の劔,7%、預金積金の39.12e/eしか 中小企業に還元されていない
(出所)r全国信用金庫概況』の2001年3月のデータをもとに作成
個人ローンを増加させることが有効な手段であることを意味する。すなわちこれは、中小 企業財務における「利用可能性」の低下になるのである。
確かに、信用金庫の歴史の中で、一般からの預金を受け入れることでその役割を拡大し、
中小企業専門 金融機関的側面に加え地域金融機関的側面を強めてきた。そして、信用 金庫を取り巻く環境が、銀行と同じ尺度、っまり健全性と収益性で評価するように変化し てきた。今回の破綻要因分析でも推察できるように、中小企業向け融資よりも個人向け融 資を行うことによって健全性や収益性を高め、リスク管理債権の増加を防ぐことで信用金 庫は破綻を避けられるかもしれない。しかし、信用金庫の有するもう一つの側面、大企業 への融資集中が行われていた中での中小企業の資金供給源であったという役割を想起する 必要がある。
中小企業はリスクの高い企業群であるがために資金不足になる。その状況を打開するた めに信用金庫制度は確立されてきた。このようなことからも、今回行った信用金庫自身の 収益性や健全性だけを追求することは信用金庫の本質ではなく、またそのような尺度だけ
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では信用金庫を分析することは不完全である。換言すれば、いかに地域の中小企業に貢献 しているかを示す指標の構築が必要なのであり、都市銀行などとは異なり収益性や健全性 だけではなく、貢献度を用いることによって議論することが望ましい38。そして、信用金 庫の有する役割とその財務指標を併せて分析することで、信用金庫の存在意義が判断でき
うると考える。
今回の分析では信用金庫の破綻要因の検証を試みた。信用金庫が破綻を避けるためにと り得る行動は、信用金庫自身の収益性を高めることや、中小企業向け融資から個人向け融 資へのシフトという、信用金庫の本来の意義に反するものであることが明らかになった。
中小企業専門金融機関という言葉は、信用金庫にとって法人の取引対象が中小企業のみと いう点を表現しているに過ぎない。 中小企業専門 を明記するのであれば、中小企業金融 への貢献度を鮮明にする必要があり、また中小企業専門から由来する他業態との差をも明
らかにする必要がある。
中小企業から見れば、融資の選択肢は都市銀行、地方銀行、信用組合など多く存在して いる。銀行が大企業への融資を中心に行っていたことで中小企業金融の担い手として信用 金庫の存在意義があったが、これは銀行の 補完的機能の側面 と言える。またその一方 で銀行と同じ担保主義という手法で融資を行ってきたという銀行との 同質的側面 も存 在する。これを極論すれば、融資対象は異なるが融資手法は変わらないということであり、
事業性融資先が中小企業である点にしかその差異を見出せない。競合する金融機関の中で、
他業態とは違う信用金庫の存在意義を再び構築することが必要なのであり、現在になって 地域金融機関の役割を強調するといったレトリックは必要ではない。信用金庫を取り巻く 環境が変化し、金融機関として収益性や健全性が要求されている事実と、信用金庫が持つ 中小企業金融の役割との間にジレンマが存在おり、もし後者を放棄するのであれば信用金 庫の存在意義が問われる。
信用金庫の役割を考えるならば、その1つは中小企業への円滑な資金供給である。健全 性や収益性追求という行動を採用するのではなく、積極的に中小企業への資金供給を行う
ことが信用金庫の役割である。そこで貸出金利を低位に維持するのではなく、安定的に資 金供給できるモデル構築が必要なのである39。これが中小企業財務の「利用可能性」を高
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めることにつながるのである。
また信用金庫が預金を高利で貸付する点に問題があるのであれば、信用金庫がファンド や基金を創設し、リスクマネーを中小企業に分配できるような中小企業と投資家との仲介 機能を担うシステムの開発や、後に議論する社債市場における信用金庫の役割などを検討 するべきであろう。形式だけの 銀行の補完的機能 を維持し、中小企業財務においてそ の積極的な役割を信用金庫が担わないのであれば、「利用可能性」を高める本当の意味での 中小企業に資金供給ができるシステムを新設しなくてはならない。
尚、本章ではいくっかの課題がある。まず、線形判別関数による2群の判別に際してで あるが、抽出した説明変数の吟味がより必要である。変数を増やし、また信用金庫という 特殊な業態であるため、その役割を明確にすることが可能な変数を用いることも必要とな
る。また、今回は破綻を予測するのではなく要因分析を試みたので本章では記載しなかっ たが、算出した判別式を用いて全国の信用金庫に当てはめ調査する必要もある。そして、
破綻した信用金庫が本業を遵守して破綻に陥ったのか、本業以外に投機的な行動で破綻に 陥ったのかは現段階の財務指標だけでは判断が困難である。このような点を把握するには 定量的分析だけではなく、各破綻信用金庫の状況を含めた定性的な分析が必要となる。以 上のようなことを、信用金庫の収益性の意義に関する議論を含め今後の研究課題とする。
1中小企業専門金融機関のほかに、中小金融機関などという用語も存在している。例えば 村本(1991)では、中小金融機関と中小企業専門金融機関、また、地域金融機関の概念規定を 試みており、中小企業金融に関する用語を整理している。そもそも、中小企業金融の議論 においては、信用金庫は中小企業 専門 金融機関として現在も扱われており、例えば、
中小企業白書の中でも中小企業専門金融機関として、信用金庫、信用組合が位置づけられ ている。しかし、この 専門 とは、信用金庫や信用組合の立場からして、事業性融資先 が中小企業に限られているという意味での 専門 であって、融資先の選択肢としては個 人もあるので、純粋な意味での中小企業 専門 ではないということを指摘したい。つま
り、日本には純粋に中小企業だけを対象とする民間金融機関は実際には存在しない(政府
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系金融機関では中小企業金融公庫が中小企業専門金融機関に該当するものと思われる)。
2村本(2002)p.17。村本によれば、「リレーションシップ・バンキングの重要性は広く知ら れているものの、研究の蓄積はほとんどない」としている。
3尚、金融審議会が2003年3月に提出した報告書は「リレーションシップ・バンキングの 機能強化にむけて」であり、地域金融機関の存在意義をリレーションシップ・バンキング の概念に依拠している。特に、協同組織金融機関(この場合信用金庫・信用組合を示すと 思われる)をリレーションシップ・バンキングのビジネスモデルに合致していると指摘し
ている。
4齋藤(1992)p.33。齋藤の主張は、信用金庫の擁i護iの姿勢ではなく、むしろ現状の信用金庫 を批判している点が特徴である。
5信用金庫の役割の形骸化という問題を遡れば1966年になる。森(1972)によれば、信 用金庫不要の立場をとる滝口、信用金庫や相互銀行を一本化して中小企業銀行の設立を唱 えた名古屋大学の末松、信用金庫(相互銀行、信用組合)が機能しているのであるから現 状維持を唱えた中央大学の川口の三者が議論し、結局信用金庫は継続することとなった。
6例えば、堀江(2001b)p.15。「役員陣の纏まり、ないし意思決定の迅速性、本部組織の効 率性、営業店段階の効率性」を組織の変数としてあげている。さらに詳細な記述は、堀江・
川向(1999)pp.206−209を参照されたい。
7宮村(1992)では合併した信用金庫を対象とした研究であり、合併に関する研究に分類す ることが妥当であるかも知れないが、合併によって規模の経済性追求による費用逓減を主 とした研究であるため、収益および費用に関する研究に分類した。また、宮村の議論の中 に、収益性を向上させるには「手数料収入を増強するべき」(同81ページ)であるという内 容もあり、この分類で問題はないと判断した。
8同上、p.81。
9井上(2003)p.1。
1。生澤(2001a)pp.5−8。京都みやこ信用金庫の破綻要因としては、バブル時の不動産融資 の不良債権化や情実による融資の慣習などがあげられている。
11生澤(2001b)pp.2−〜26。破綻の主な要因としては、「地場産業などの特定業種偏重融資
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