• 検索結果がありません。

中小企業財務の自立化と

ドキュメント内 見る/開く (ページ 129-156)

      社債利用の意義

・121

第6章中小企業の私募債の金利への金融機関の影響

第1節 中小企業財務における社債の意義

 これまで中小企業財務における金融機関依存型の資金調達構造を分析し、「財務の機能」

の側面からその問題性を指摘した。金融機関に依存した資金調達では「利用可能性」を確 保するために、「収益性」・「流動性」とのトレードオフを実行することで、中小企業は資金 調達を行っていることが明らかになった。そして第5章の最後では、そのような金融機関 依存型の資金調達構造から自立するには、中小企業財務において「社債」を利用すること でその可能性があるのではないかと示唆した。そこで第3部では中小企業財務において社 債の有効性を論じ、続いて中小企業の社債の実態を明らかにしていく。

 まず、社債が中小企業にとって有効なのであるかという点について議論する。そのため に社債と株式の相違点を把握してみよう。株式はその性質が資本に分類されるが、社債は 債務、つまり借入金となる。そのため、株式は返済が不要であるが、社債は債権者に対し て期日に返済をしなくてはならない・。また、株式の場合は基本的に、利益に応じて株主 に配当を支払うが、社債は利益の有無に関係なく、社債権者に利子を支払わなければなら ない。しかし、社債を購入した社債権者には議決権はなく、株主と違い経営に参加するこ

とはできない。社債はこのような性格を有しているのである。

 この社債の性格を踏まえて、株式による調達や金融機関からの調達と比較して中小企業 の社債利用の有効性を考えると、①投資家からの資金調達が可能となること。これは金融 機関に依存してきた資金調達が金融機関以外からの直接金融による調達が可能となること を意味している。金融機関に限定された資金調達先から自立できる。②株式とは異なり経 営に関与されないこと。中小企業の株主は経営者である場合が多い。株式発行により経営 者以外から資金調達を行うことは株主を広範に広めることになり、結果的に議決権が分散

されることにより経営権の掌握が困難になることが懸念される。一方、社債には議決権が ないため上記のような懸念がないことは中小企業が社債を利用する誘因となる。③償還日 まで返済が繰り延べられることによる計画的なキャッシュフローの確保が可能となる。社 債は債務に分類されるため株式とは異なり元本返済の義務がある。しかし一般的な債務(銀 行からの借入など)の返済は翌月から始まる点と異なり、社債は償還日に満期一括返済す

・122・

るものが多い。償還目までにキャッシュアウトがない分、計画的に社債償還までの資金計 画が可能となる点は中小企業にとって社債利用の誘因となる。

 これを「財務の機能」に即して読み替えると、「利用可能性」としては投資家から資金調 達が可能となり資金調達の多様化を享受できることになり向上する。「流動性」としては、

社債は償還日に一括償還することが選択できるため、返済が繰り延べられることになるの で向上する。「収益性」にっいては、社債は市場型の取引となるため広範な投資家と交渉可 能となるため金利を低く抑えられる可能性が生じるために向上する。「経営権」については、

社債は議決権を有していないため経営に関与される懸念が少ないために経営権の問題は生 じる可能性が少ない(表6−1)。以上のように、中小企業財務において社債を利用すること は有効な手段であると指摘可能なのである。

表6−1 「財務の機能」から見た社債の有効性

 \    耀触

?p可能性

灘総灘 。灘...羅瀞麟灘糠乞門

投資家からの直接資金調達をするために向上 流動性 償還日まで繰り延べら得るので向上

収益性 直接金融であるために仲介する機関がないためにその分向上 経営権 株式と違い議決権がないため独立性維持

 また、大企業の社債と中小企業の社債との際は何であるかというと、大企業の社債は「転 換社債」および「新株引受権付社債」であったことがあげられる2。これは新株すなわち 証券市場で将来 株 を取得する権利が付されたものであり、株式市場が存在しているこ

とが前提となる。三浦(1992)が指摘しているように「転換社債を利用して低コストかつ 大量の調達額の確保が可能であったのは、上場会社の中でも優良な大会社(200社前後)

に限られており、社債財務においてはこのような転換社債を用いた資金調達が大企業の特 徴であった。しかし、中小企業の場合、そもそも株式市場が存在しておらず、現在の新株 予約権付社債を発行しても、投資家の立場からすれば投資する誘因がなく、調達する企業 の立場からも選択する意義がない。よって、中小企業の社債財務は普通社債によるものが 主流となり、この点が大企業との違いといえよう。

・123一

 このように中小企業財務において社債を利用することの有効性が明らかとなった。そこ でここからは、そのような有効性を有した社債が実際に中小企業ではどのような現状にな っているかを把握していくことにする。本章では中小企業の社債財務における金融機関の 関与を提示し、第7章では私募債を利用している中小企業の財務的側面を把握し、第8章 では中小企業財務における社債利用の課題を提示していく。

第2節 本章の目的

 本章の目的は、2000年に施行された「中小企業者に対する直接金融の途を開き、資金調  達の多様化・円滑化を図るために、信用保証協会が中小企業者の発行する社債(私募債)

に信用保証を付与する制度(以下、特定社債保証制度)」に基づいて発行された社債を対象 とした。中小企業の私募債の実態を把握することに加え、制度の特性上、年度、引受金融 機関、地域および業種ごとにその私募債に特徴、特に金利面での差異があるかを検証する

ことを本章の目的とした。本章では分析にあたり利用した社債のサンプルは、特定社債保 証制度に基づいて中小企業が発行した私募債のうち2000年度〜2005年度までに発行され た私募債とした(表6・2)3。

第3節 分析の方法

 本章においては次の2つの点を検証することにする。

  ①引受金融機関ごとに私募債の金利には差が存在し、一般的な貸出金利同様に都市     銀行が引受けている私募債の金利は低いか。

  ②企業数の多い関東や近畿地方で発行される私募債の金利は低くなるか。

 ①に関して、一般的な貸出については金融機関の業態別に見ると都市銀行の貸出金利が 最も低く、信用金庫の貸出金利が最も高くなっている。このような傾向が中小企業の私募 債にも当てはまるかを検証することにした4。②に関しては、企業数の多い地区では金融 機関同士の競争も激しく、金利面での競争が予想される。よって企業数の多い関東や近畿 では私募債の金利に影響があるのはないかと想定した。

 上記の項目を明らかにするために、発行された私募債を年度別、引受金融機関別、地域 別、業種別に検証することにする。

・124・

表6−2 中小企業特定社債保証制度の申込要件(2005年度改正、要件③設定)

項    目

要件① 要件② 要件③

A 純資産額 5億円以上

3億円以上 T億円以内

1億円以上 R億円未満

B 自己資本比率 15%以上 2096以上 20%以上

財務

w標 C 純資産倍率 1.5倍以上 1.5倍以上 2.0倍以上

D 使用総資本事業利益率 5%以上 10%以上 10%以上

収益

w標 E

インタレスト・カバレッジ

@ ・レーシオ

1.0倍以上 1.5倍以上 2.0倍以上

(注1)上記のAを満たし、BまたはCのいずれか1項目及びDまたはEのいずれか1項目を充足する中小企業者(株式会

社)。

(注2)2002年度改正で要件②が新要件として設定

(注3)2005年度改正(2006年1月10日施行)で要件③が新要件として設定、さらに下記の改正も行われた

 ・最低発行額5000万円→3000万円に減額

 ・期限一括償還のみであったが、定時償還(分割償還)も可能となる

〈各指標〉

・純資産額=資本の額(資本金を含む)

・自己資本比率=資本の額(資本金を含む)÷純資産x100

・純資産倍率=資本の額(資本金を含む)

?走{金

・使用総資本事業利益率=(営業利益+受取利息・受取配当金)÷資産の額×100

・インタレスト・カバレッジ・レーシオ=(営業利益+受取利息・受取配当金)÷(支払利息+割引料)

 本章では、日本証券業協会発行の『私募社債便覧』を利用し、2000年4月より2005年 3月までの期間で信用保証協会の保証を付した銘柄を抽出し中小企業が発行した社債であ ると認識しサンプルとして扱う。同制度は2000年より施行されているため、2005年3月

・125・

ドキュメント内 見る/開く (ページ 129-156)

関連したドキュメント