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第4部 社債市場の創設と今後の研究課題
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第9章社債市場創設による中小企業の成長と地域活性化
第1節本章の目的
本章では中小企業が社債を利用し資金調達をすることで、中小企業自身の成長とその 企業が存立する地域の活性化を同時に実現する可能性を有する点について論じる。金融機 関を介さない社債による資金調達手法を中小企業に導入することで、①中小企業の資金調 達の多様化による「財務の機能」の向上、②地域からのモニタリングによる企業経営の意 識改善を促す側面、③地域が企業をチェックする意識や中小企業に地域へ企業利潤を反映
させるという意識を根付かせる側面という3つの側面から、疲弊している地方経済(地域)
の活1生化をも促進するものと考える。
ここまで議論してきたように中小企業の資金調達は金融機関からの借入、すなわち間接 金融に依存していることが特徴である。金融機関に依存する資金調達構造に依然として変 わりはないが、中小企業でも直接金融である社債を資金調達手法として利用する企業が増 加している点も事実である。しかし、その社債の多くは金融機関を仲介して資金が供給さ れる形態をとっており、従来からの金融機関依存型の資金調達という性格を有しているこ
とは否定できない。
中小企業の社債による資金調達の実態を分析すると、中小企業の社債を引受けているの は金融機関である。中小企業が社債を発行する場合には私募債を選択することが多く、そ の私募債を金融機関や信用保証協会が保全し、金融機関が引受ける手法が主流となってい る(私募については後述する)。このような形で社債を発行する場合には金融機関との取引 関係が前提となっており、社債を発行する以前の段階で金融機関による審査が行われ社債 発行の可否に金融機関の意思が反映されると推測する。つまり、直接金融というよりも金 融機関からの融資という性格が残存している資金調達と指摘できる。
しかし、中小企業が金融機関を介さず投資家から直接資金を調達しているケースがある。
たとえば、長野県の協和精工や群馬県の蔵前産業は金融機関を介さずに社債を発行し資金 調達を行った。これらのケースでは中小企業の経営者以外に従業員や地域の住民、取引先 が社債を購入している点に注目すべきである。金融機関を介さないこと、さらに社債とい う資金調達手法を中小企業分野に導入することにより、中小企業の資金調達手法の多様化
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など「財務の機能」の向上、地域が企業を育成する意識や地域に企業の利潤を反映させる という意識、地域からのモニタリングによる企業経営の意識改革を促す側面を有すること になる
そして、中小企業の社債による資金調達をより活発なものとするためには地域限定の中 小企業向け 社債市場 を創設し、地域に基盤を置く中小企業の成長を資金調達の面から 促進させ、企業利潤を投資家である住民へ還元できるシステムを構築することが必要であ
る。このような中小企業向け 社債市場 創設により地域の活性化を推進できるものと本 章では結論付けることにする。
第2節 地方経済における中小企業への制約
中小企業は地方において経済の担い手として重要な役割を担っている。しかし、中小企 業が経営基盤をなすその地方経済は疲弊し、大都市と地方との経済格差が拡大している。
特に人口の減少はその地方に大きな影響を与える。人口の減少は労働力の減少であり地方 経済には痛手となる。ここでは地方経済の疲弊と中小企業の資金調達の現状を検討する。
(1)地方経済における人口減少と中小企業への影響
2005年通商白書によれば、「我が国経済においては、労働投入よりも、資本や技術進歩 等による全要素生産性(TFP:Total Factor Productivity)の増減の方がその経済成長の説 明要因としては大きな影響を与えるものであり、労働力の増加よりもむしろ資本蓄積や知 的資産の活用等によるTFPの増加によって経済成長がもたらされている」としている。ま た、「国の経済成長の原動力が何であるかに依存する。例えば、労働集約的な経済であれば 少子高齢化・人口減少による労働投入量の減少は、経済成長に大きくマイナスの影響を与 え得るし、逆に資本集約的な経済では、労働投入量の減少ではなく資本ストックの形成阻 害の影響の方が大きな影響を出すかもしれない」とも指摘している。
確かに日本全体で考えたときは労働集約的な要素よりも資本やTFPといった要素が重 要であろう。では、この「国」を「地方」に置き換えて読んでみよう。地方経済において 重要な経済基盤をなすのは中小企業であり、中小企業は労働集約的な性格を有しているこ
とが特徴である1。労働集約的な性格を有する中小企業が影響を受ける要因の一つが 労
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働投入量の減少 、すなわち労働人口の減少といえる。っまり、地方経済を論じる場合、中 小企業を考慮する必要があり人口の増減も重要な要素となる。
そこで、人口を中心に都道府県の実態をいくっかの統計資料をもとに検証する。まず国 勢調査のデータを用いて各都道府県の増減を見てみよう。2000年と2005年の国勢調査の データをもとに人口の増減を都道府県別にみると、人口が増加している都道府県上位5つ は東京、神奈川、愛知、千葉、埼玉となり、一方で減少している都道府県上位5つは北海 道、新潟、秋田、青森、長崎となる。
さらに「住民基本台帳移動報告」を用いて、2006年3月〜2007年2月までの1年間に おける都道府県別の人口移動を調査した(図9−1)2。この1年間で都道府県間の移動によ る人口の増減を多い順に列挙すると、純増した都道府県は東京、神奈川、愛知、千葉、埼 玉、滋賀、福岡、三重の8県のみでそれ以外の都道府県は減少した。一方で流出のため人
口が減少した残る39都道府県を流出が多い順に列挙すると、北海道、青森、長崎、福島、
新潟の順となる3。
図9・1都道府県別人口の増減(2006年3月から2007年2月)
(人)
P00,000
W0,000
U0,000
S0,000
Q0,000
@ 0
│20,000
│40,000
蕪義醜董護難雲叢黎藝冨語算賭蟹鵠鑑孟嚢轟謡甕器羅唐吉甕荒叢瀦隻喬葉奏離轟 道県県県県県県県県県県県都川県県県県県県県県県県県府府県県山県県県県県県県県県県県県県県県島県 県 県 県
i出所)総務省発表「住民基本台帳人ロ移動報告月報」のデータをもとに作成
一189・
人口の減少は地方自治体の財政運営に影響を与えるだけではなく、労働力の減少につな がり特に労働集約的な性格を有する中小企業経営には影響を与える。また、人口の減少に よって「公共サービスの効率が低下するため生活の利便性が低下し、それによりますます 人口が減少すること」になり悪循環となる4。もう1つの例として人口の増減と所得の増 減との関係を見てみよう。各都道府県の人口の増減と県民所得の増減との相関関係を算出 した5。すると人口が増加している都道府県では県民所得が増加しているという正の相関 関係が見られる。このことから推測するに人口の流出が進んでいる地方(都市圏以外)で は逆に経済の疲弊が進行しているものと考えられる。
(2)中小企業の資金調達の制約
人口・労働力の問題と同様、中小企業の資金調達も重要な問題である。資金調達の制約 は地方の中小企業に限定されている問題ではなく日本全体における問題である。中小企業 の資金調達において借入依存度が高いことが特徴である。中小企業の借入依存度の推移を 見てみると1995年度では57.5%だったものが2005年度では59.0%とこの11年間で最高 の数値となっている(図9・2)。また、資本金1億円以上の企業は借入依存度を減少させて
図表9−2 中小企業の借入依存度
65.0%
60.0%
55.0%
50.0%
45.0%
40.0%
35.0%
30.0%
25.0%
20.0%
56.7% 56.9% 0 0 o .
0582%
57.6%57.6%轍
二鋭 磯魎 ㈱欝㌦懸晦
0 . 0 0
31.3%嚢声磁≒噸_
0 . 0
一難_−
@ 26.3% o
噸
22.8%
ぜ運紳ずヂボドドボド年度
+中小企業 一難一く参考〉資本金1億円以上
注(注)中小企業に関するデータは国民生活金融公庫総合研究所(2006)p.14参照。
1億円以上の企業については財務総合政策研究所のHPよりデータを抽出。
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いることも見てとれる。
しかし、その一方で中小企業が資金調達する際に主要な調達先である金融機関の中小企 業向け貸出の数値は、2001年度末に貸出残高が233兆3,757億円であったものが2007年 2月で185兆74億円となっており、約6年で48兆3,683億円減少した(表9−1)。金融機 関の貸出における中小企業向け貸出の割合の推移を見ると、2001年度末に49.73%だった ものが2007年2月には45.63%と4.10%減少している。このことから金融機関は貸出総 額を減少させているが、その減少率よりも中小企業向けの貸出を減少させている。中小企 業が資金調達をする上で主要な調達先である金融機関は中小企業向け貸出を減少させてお り、このことからも中小企業の資金調達における制約は依然として残存していると理解で きる。中小企業は外部がらの借入金に依存している度合いが大きいにも関わらず、中小企 業の資金調達に対する制約は大企業に比して大きいことが中小企業の資金調達における問 題点である。
地方経済における労働力の減少問題と日本経済全体に見られる中小企業の資金調達に
表9・1 金融機関の中小企業向け貸出残高 灘萎雛