練習7.11 j >0のとき、P(Xn=k|Xn−1=j) =P(Yn =k−j+ 1)が成り立つことを示し なさい。j= 0の場合はどうなりますか。(上のXnの式を参考にしなさい)
Xnの極限分布を
pk= lim
n→∞P(Xn=k) (7.19)
と置くと、離散時間のマルコフ連鎖の理論から、πkは平衡方程式を解くことによって得られる が、期待値を求めるだけならば、簡単な方法がある。
平均待ち行列長
Sを1人のサービス時間、平均をm、変動係数(標準偏差を平均で割ったもの、指数分布の場 合は1)をcとすると、Ynのモーメントは以下のように計算できる。
E(Yn) =E(E(Yn|S)) =
∫ ∞
0 E(Yn |S=x)dF(x) =
∫ ∞
0 λxdF(x) =λE(S) =ρ V(Yn) =V(E(Yn|S)) +E(V(Yn |S)) =c2ρ2+ρ
ここで、ρは平均サービス時間中に到着する客数の平均、すなわちトラフィック密度を意味する ので、定常条件としてρ <1と仮定する。
さて、あらたに、確率変数Znとして、Xnが0のとき0、さもなければ1という値を取るも のと定義すると、
Xn=Xn−1+Yn−Zn−1
と表わすことができる。
Xn, Znはn→ ∞のときそれぞれ X, Zに収束するとしよう。上の式の両辺の期待値を取り、
n→ ∞とすると
E(Y) =E(Z) =ρ
が成り立つ。Zの期待値はXが正の確率に等しく、これは窓口の稼働率なので、ここで得られ
た結果はM/G/1でもM/M/1でも、稼働率は同じということを意味する。
平均系内客数 また、
Xn=Xn−1+Yn−Zn−1
の両辺の2乗の期待値を取り、n→ ∞とすると
2E(X(Y −Z)) +E((Y −Z)2) = 0
となる。X, ZとY は互いに独立、XZはXに等しく、Zは0か1なのでE(Z2)はE(Z)に等 しい、ということを使って上の式を書き換えると、
E(X) =E(Y2)−2E(Y)E(Z) +E(Z)
2(1−E(Y)) =c2ρ2+ρ+ρ2−2ρ2+ρ 2(1−ρ)
= 1 +c2 2
ρ2 1−ρ+ρ
が得られる。
E(X)は客の退去直後の平均系内客数を表すが、これは到着直前の平均系内客数と言い換えて もよく、またポワソン到着を仮定しているので、PASTA特性を適用して、任意時点での平均系 内客数にもなっていることに注意しよう。
平均待ち行列長
また、リトルの公式から、ρはサービス中の客の平均となるので、平均待ち客数Lqは Lq=L−ρ=1 +c2
2 ρ2 1−ρ
で与えられる。指数分布の変動係数は1なので、それを上の式に代入すると、確かにM/M/1の 平均待ち行列長の公式が得られる。
平均待ち時間
平均待ち時間はリトルの公式から Wq= 1
λLq= 1 +c2 2
ρ 1−ρm となる。これはポラツェックヒンチンの公式と呼ばれる。この結果、
サービスのばらつきが大きくなれば平均待ち行列長(平均待ち時間)が増大し、その増え 方に上限がない、
ということが分かる。また、サービス時間が一定の場合、すなわちM/D/1モデルの場合でも、
到着の変動により待ち時間は無くならないこと、その長さはM/M/1モデルのちょうど半分にな ること、などが分かる。
練習7.12 M/G/1の平均滞在時間を計算しなしさい。
練習7.13 k−アーラン分布の変動係数を計算し、それをサービス時間とするM/G/1の平均待 ち時間が、平均サービス時間を同じにしたM/M/1の平均待ち時間の何倍になるかを計算しなさ い。ただし、k−アーラン分布の密度関数は以下で与えられるものとします。
f(x) = (kµ)kxk−1 (k−1)! e−kµx
定常確率分布
系内客数の定常分布が必要な場合、陽解を求めることはむつかしいので、確率母関数を使って 解くことを考える。
P(z) =
∑∞ k=0
pkzk, A(z) =
∑∞ k=0
akzk
と置くと、平衡方程式
pk =akp0+
k+1∑
i=1
ak−i+1pi
の両辺にzk+1を掛けてk= 0,1, ...について和を取ると、
zP(z) =p0zA(z) +A(z)(P(z)−p0)⇔P(z) =p0A(z) z−1 z−A(z) が得られる。
未知定数p0は、次のようにして計算できる。z= 1を代入すると左辺は1、右辺は不定形なの で、分母と分子を微分してロピタルの定理を使うと
p0A(z) z−1
z−A(z) →p0= 1
1−A′(1) ⇔p0= 1−A′(1) = 1−λm= 1−ρ
となる。ここで、平均サービス時間をmと置いている。ここで出てきたρはサービス時間中に 到着する客の平均なので、トラフィック密度という意味がある。結局、定常分布の確率母関数は 次の式で与えられることが分かる。
P(z) = (1−ρ)A(z) z−1 z−A(z) 特にM/M/1の場合は
A(z) = µ
µ+λ(1−z) なので、
P(z) = (1−ρ) µ µ+λ(1−z)
z−1
z−µ+λ(1−z)µ = 1−ρ 1−zρ =∑∞
n=0
(1−ρ)ρnzn
となる。これはパラメータρの幾何分布の確率母関数に他ならない。
練習7.14 確率母関数を微分することによって、平均系内客数が上で求めたものと一致すること を確かめなさい。また、分散を計算しなさい。
7.4.2 一般の単一窓口モデル、GI/G/1
到着間隔、サービス時間が一般の分布にしたがうような待ち行列モデルをGI/G/1と略記す る。到着がポワソン過程でないと、隠れマルコフ法も使えない。ここでは客の待ち時間に着目し て解析しよう。n−1番目の客とn番目の客の到着間隔をTn、n番目の客のサービス時間をSn
とする。TnとSnは互いに独立で、T1, T2, ...とS1, S2, ...はそれぞれ同じ分布にしたがっている ものとする。また、このモデルでも、定常条件として
ρ= E(S) E(T) <1 を仮定する。
さて、n番目の客の待ち時間をYnとすると、次のような関係が導かれる。
Yn+1= max(0, Yn+Sn−Tn+1)
Sn, Tn+1はYnとは独立なので、Yn+1はYn−1, Yn−2, ...とは独立となり、{Yn}がマルコフ性を 持つということが言える。
Zn+1を
Zn+1=−min(0, Yn+Sn−Tn+1) で定義すると
Yn+1−Zn+1=Yn+Sn−Tn+1
となる。これにたいして 、M/G/1と同じように、両辺の期待値を取ってn→ ∞として E(Z) =−E(S) +E(T) =E(T)(1−ρ)
が得られ、両辺を2乗して期待値を取り、n→ ∞として
−2E(Y Z) +E(Z2) = 2E(Y(S−T)) +E((S−T)2)
が得られる。Yn, Znはどちらかが必ず0であることと、YnとSn−Tn+1は互いに独立であるこ とを考慮すると、
E(Y) =E((S−T)2)−E(Z2)
2(E(T)−E(S)) = V(S) +V(T)−V(Z) 2E(T)(1−ρ) が得られ、さらに書き換えると
E(Y) =c2a/ρ2+c2s 2
ρ
1−ρE(S)− V(Z) 2E(T)(1−ρ) となる。ここでca, csは到着間隔、サービス時間の変動係数を表わす。
練習7.15 E(Y)の式が導かれることを確かめなさい。
Zの分散を求めるのは大変だが、分散は負にはならないので、平均待ち時間の上限として、結 局次の不等式が導かれる。
E(Y)≤ c2a/ρ2+c2s 2
ρ 1−ρE(S)
この上限値はρが1に近い(混雑している)ところで真の値に近く、近似式として有効である。
たとえば到着がポワソン過程の場合(M/G/1)は係数の分子c2a/ρ2+c2sを1 +c2sとしたものが 真の値に等しいので、上限値との差は極めて小さいことがわかる。
練習7.16 Excelを使って、サービス時間の変動係数が3であるようなM/G/1モデルの平均 待ち時間のグラフを描きなさい。また、ポラツェックヒンチンの公式と上の近似式との相対誤差 をいろいろなρの値に対して計算しなさい。