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複合ポワソン過程

ドキュメント内 i (ページ 49-52)

客がランダムに到着して買い物に応じて金額を支払って行く、交通事故がランダムに発生し、

死者が出たり出なかったりする、というように、ランダムな事象の到着(支払い客の到着、事故 発生)と同時に別の確率変数(買い物金額、その事故による死亡者数)が観測される場合に、そ の確率変数を累計したものの確率変動を分析するためのモデルとして、複合ポワソン過程があ る。{N(t), t≥0}をポワソン過程、Y1, Y2, ...は独立同分布する確率変数列として、

Z(t) =Y1+Y2+...+YN(t), t≥0 (3.14) によってZ(t)を定義したとき、{Z(t), t≥0}を複合ポワソン過程compound Poisson process という。

ポワソン過程で事象が到着すると確率変数Y が観測されて、それを累積したものに興味があ る,という場合のモデルである。サンプルパスはポワソン過程で事象が到着するたびに、不定量 ジャンプし、それ以外は変化がないという、非減少とは限らない階段状の関数になる。

3.10 保険会社が支払う保険金はランダムに起きる事故によって、ランダムに決まる請求額に

よって支払われる。1週間の保険金支払額の合計は複合ポワソン過程にしたがって計算される 例 3.11 株価はランダムな取引によってランダムな価格変動を起こす。1時間後の株価の変化は 複合ポワソン過程によって計算される。ランダムウォーク仮説によれば、1回の取引によって引 き起こされる価格変動は独立同分布に従う。

命題3.3 複合ポワソン過程Z(t)の期待値は、時刻tまでに到着する事象の平均個数に、Y の期 待値を掛けたものに等しい。

期待値に関しては、条件付き期待値の公式から次の式が得られる。直感的に言えば、[0, t]の間 に起きるイベントの平均回数に、各イベントで観測されるランダムな量の期待値を掛けたもの、

とまとめることが出来る。

E(Z(t)) =E(E(Y1+Y2+...+YN(t)|N(t)) (3.15)

=

n=0

nE(Y)(λt)n

n! e−λt=E(Y)E(N(t))

練習3.18 管内の1週間の交通事故件数はほぼ100件、1件あたりの死亡者(24時間以内死者)

は0.1人だという。これからの1週間に交通事故で死ぬ人の数の平均はいくつか。

3.5.1 複合ポワソン過程の確率分布

一般には、N(t)に関して条件を付け、条件付き期待値の公式を適用することにより、Z(t) モーメント母関数を計算することが出来る。

MZ(t)(θ) =E(eθZ(t)) =E(E(eθ(Y1+Y2+...+YN(t))|N(t)) (3.16)

=∑

n=0

E(eθY)n×P(N(t) =n) (3.17)

Y のモーメント母関数をMY(θ) =E(eθY)と記すと、これはN(t)の確率母関数GN(t)(z)の式 で変数をMY(θ)と置いたものに他ならない。N(t)はパラメータatのポワソン分布に従うので、

その確率母関数は次式で与えられる。

GN(t)(z) =∑

n=0

zn(λt)n

n! e−λt= exp(−λt(1−z)) (3.18) 従って、Z(t)のモーメント母関数は

E(eθZ(t)) = exp(−λt(1−MY(θ))) (3.19) によって与えられる。

Y1, Y2, ...が非負の離散型確率変数ならば、Z(t)もそうなので、確率母関数を計算した方が分 かりやすい。計算の仕方はほとんど同じ、結果も記号を置き換えるだけの式が得られる。

E(zZ(t)) =E(E(z(Y1+Y2+...+YN(t))|N(t))

=

n=0

E(zY)n(λt)n

n! e−λt= exp(−λt(1−GY(z))) ただし、GY(z) =E(zY)とする。

練習3.19 Y1, Y2, ...をベルヌイ分布としたとき、Z(t)がパラメータλptのポワソン過程である ことを証明し、その理由を考えなさい。

モーメント母関数をn回微分してθ= 0を代入するとn次モーメントが計算できる。

d

dθMZ(t)(θ) =λt (d

dθMY(θ) )

exp(−λt(1−MY(θ)))

θ= 0を代入するとE(Z(t)) =λtE(Y)となり、これはE(Z(t)) =E(N(t))E(Y)とも書ける ので、さきに求めた結果と一致する。同様に、

d2

2MZ(t)(θ) = (

λt (d2

2MY(θ) )

+ (

λtd dθMY(θ)

)2)

MZ(t)(θ)

となるので、2次モーメントはθ= 0を代入してλtE(Y2) + (λtE(Y))2、したがって、分散は E(Z(t)2)(E(Z(t)))2=λtE(Y2)

分布を計算する場合は合成積を使う。Y の累積分布関数をH(x)とすると、Y1+Y2+· · ·+Yn の累積分布関数はH(x)n重合成積H(∗n)(x)で表されるので、

P(Z(t)< z) =E(P(Z(t)< z|N(t)) =

n=0

H(∗n)(z)(λt)n n! e−λt

3.12 ある機械装置は小故障によってランダムな劣化が起き、それらの累積がある閾値を超え ると使えなくなる。劣化の量が独立同分布に従うとすれば、その装置がt時間以上動き続ける確 率は複合ポワソン過程によって計算することが出来る。k回目の小故障の劣化量をYk とする。

装置の寿命(劣化の総量がaを初めて超えるとき)をT とすると、T > tZ(t)< aと同値。

G(y)n重合成積をG(∗n)(y)とすると

P(T > t) =P(Z(t)< a) =E(P(Z(t)< a|N(t))

=

n=0

G(∗n)(a)(λt)n n! e−λt したがって、期待寿命は

E(T) = 1 λ

n=0

G(∗n)(a)

特に、劣化の量がパラメータµの指数分布に従うとすれば、G(∗n)(y)はガンマ分布に従うので 簡単な形になる。

G(∗n)(y) = 1n−1

k=0

(µy)k

k! e−µy =∑

k=n

(µy)k k! e−µy E(T) = 1

λ

n=0

k=n

(µa)k

k! e−µa= 1

λ(1 +µa)

3.13 インターネットにアクセスすると、ログファイルなど、少しずつパソコンのメモリにゴ ミが溜まって行く。1回のアクセスに対して付加されるゴミの量をXkとする。X1, X2, ...は互

いに独立、インターネットにアクセスするのはポワソン過程N(t)に従うとすれば、t時間後の ゴミの総量はX1+X2+...+XN(t)という複合ポワソン過程になる。ゴミがある量αを超える と動作が不安定になり、初期化しなければいけないとすると、その初期化を行うまでの時間を調 べるためには

mint

{X1+X2+...+XN(t)> α}

を知らなければいけない。

3.14 コンピュータウィルスがポワソン過程で到着し、ある時間Y 経過するとほとんどは自 然消滅するが、確率pで致命的なエラーを引き起こす、という場合にも複合ポワソン過程による 分析が可能。

練習3.20 {N(t);t≥0}はパラメータλのポワソン過程、Y1, Y2, ...{N(t);t≥0}とは独立 で、平均µ分散σ2の独立同分布に従う確率変数の列とする。これらに対して新たな確率過程 {Z(t);t≥0}

Z(t) =Y1+Y2+...+YN(t) によって定義する。このとき、Z(t)の平均と分散を求めなさい。

練習3.21 ある生命保険会社には支払い請求が週平均12件の頻度で起き、そのうち実際に支払 われるのは約8割で、1件あたりの平均請求額は1000万円、標準偏差400万円だという。請求が ポワソン過程で到着するとして、この会社の1週間の現金支払額の平均と分散を計算しなさい。

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