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電荷移行断面積

第 3 章 実験方法 24

3.2 測定方法

3.2.1 電荷移行断面積

電荷交換反応後の多価イオンには複数の価数が含まれている.そのため断面積をを求めるに は異なるイオンを選別して測定する必要がある.ここでは電荷移行断面積の測定方法として成 長率法と減衰法の2つの方法を紹介する.

減衰法(Attenuation method)

イオンの価数の違いを利用すれば,衝突領域直後に設置した電極にかける電圧をあげていく ことで,価数の高いイオンから順に追い返すことができる.この手法を用いて入射イオンの変 化量を測定するのがリターディング法(追い返し法)である.反応前後のイオンビームの変化 量について,

dI

dx =−σnl (3.4)

ここで,Iはビーム強度,σ は電荷移行断面積,nはターゲットガスの密度,lは衝突領域の長 さである.これを解くと,

I =I0exp(−σnl) (3.5)

1回衝突条件σnl1が成立していれば,

I ≈I0(1−σnI) (3.6)

σ 1

nl(1 I

I0) (3.7)

入射イオンの衝突前後のビームの変化量を見積もることにより,断面積を決定することが出 来る.

生成率法(Growth rate method)

減衰法とは逆に電荷交換反応によって新たに生成したイオンの量を測定することにより,断 面積を決定する手法である.衝突領域を抜けたイオンを価数選別することで容易に測定するこ とが可能である.1回衝突条件の下では生成したイオンと入射イオンに関して,

第3章 実験方法 32

i=I0σnl (3.8)

という関係があるので,

σ i

I0nl (3.9)

本研究では減衰法を用いて,電荷移行断面積の測定を行った.

電荷移行断面積測定方法

ECRISで生成された多価C, N及びOイオンを5-10 kVの電位差で引き出し,分析用電磁 石によって価数選別したのち,切り替え用電磁石によって衝突チェンバーに導く。衝突チェン バーを図3.9に,衝突チェンバーに設置された断面積測定系レンズ系を図3.10示す.

3.9 電荷移行断面積測定ビームライン

衝突チェンバーに入射した多価イオンは,まずφ2の2枚のコリメータで,平行成分のみ抽 出する.コリメータを抜けたイオンビームは,2枚のレンズを用いて,入り口径がφ3,全長

100 mmの衝突セルにうまく入るように電圧を調節する.衝突セルには電圧がかけられるよう

になっており,引き出したプラズマチェンバーとの電位差を利用して,太陽風速度(300-800

第3章 実験方法 33

` a

b c

d cb

e f

ghi

j

3.10 電荷移行断面積測定レンズ系

3.3 電荷移行断面積測定レンズ系の各種名称と中心径

番号 名称 径

1 2 コリメータ φ2 3 4 レンズ φ6

5 衝突セル 入口φ3,出口φ4 6 ガス導入 1/4インチパイプ 7 ガス圧測定 1/4インチパイプ

8 グラウンド φ6

9 イオン追い返し φ6 10 電子追い返し φ6 11 ファラデーカップ φ6

第3章 実験方法 34

km/s)まで減速することが可能であり,本研究ではイオンビームの速度が300-800 km/sに対

応する衝突エネルギーで実験を行った.衝突セルの下方から出ている足の一方からは,ター ゲットガスを導入する.典型的なターゲットガスの圧力は3×103 - 1×102 Pa程度とした が,これはイオンビームの平均自由行程が衝突セルよりも十分に長い単一衝突条件を満たすよ うにした.もう一方の足にはキャパシタンスマノメータ(バラトロン)が接続されており,圧 力の絶対値を測定することが可能である.これにより,反応断面積の絶対値を測定することが 可能となった.入射イオンは2枚のレンズと衝突セルにかけた電圧によって,衝突セルの中心 で十分にビームが絞られていることがわかる.十分にビームを絞ることで,発光中心を点と見 なすことが出来る.衝突セルを抜けたビームは,衝突セルの前方と同様の電圧がかけられた2 枚のレンズを通過することで再加速され,元の平行ビームへと戻る.その後追い返し電極を通 過した後,ファラデーカップへ到達する.2次電子を逃さないための工夫として,ファラデー カップの全長は125 mmと長くしてある.ファラデーカップの先端部分は,ボルトになって おり,取り外すことでビームラインのアライメントが可能である.衝突セル内部で電荷交換反 応したイオンは,1電子捕獲または2電子以上を捕獲し,追い返し電極の電圧をあげていくと,

高価数のイオンから追い返されていく.その様子を図3.11に,図3.12にSIMIONによるシ ミュレーション結果を示す. 図3.11に示したC5+ のエネルギーは7.5 kV/q であるため,リ

0 0.001 0.002 0.003 0.004 0.005 0.006 0.007 0.008

0 2 4 6 8 10

Cu rr e n t/u A

Rretarding Voltage/kV C

5+

, C

4+

C

4+

3.11 C5+(37.5 keV)-He衝突時のリターディングの様子

第3章 実験方法 35

3.12 SIMIONによるシミュレーション,上:通常時,下:リターディング時

ターディング電圧が7.5 kV で追い返されるはずであるが,φ6の穴のあいた電極の中心の電 位は,実際に印加した電圧よりも低くなっているため,追い返すにはより高い電圧が必要であ る.以上の手法を用いて,イオンビームの減衰量を見積もり,価数の異なるイオンの量を決定 することで 電荷移行断面積を求めた.

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