第 4 章 実験結果 42
4.2 発光断面積
4.2.1 O 7+
標的にHe,H2,CH4を用いて分光測定を行った.標的によりイオン化エネルギーが異るこ とから,電子捕獲の準位が異なる.イオン化エネルギーが24.6 eVのHeは電子の捕獲準位が n=3またはn=4が主であるのに対して,H2,CH4はそれぞれ15.4 eV,13.6 eVであり,両 者の電子の捕獲準位はn=4または n=5となることが理論計算から予想される.電子の捕獲 準位による違いから,発光スペクトル違いを検証し,理論計算と比較を行った.
O7+-He
7-70 keVの衝突エネルギーで分光測定を行った.衝突エネルギー35 keVにおける発光スペ
クトルを図4.10に,スペクトルから発光断面積化したものを図4.11に示す.2p状態からの発 光が主として観測され,続いて3p,4p,5p状態の順に強く観測された.4p,5p状態かについ ては,4pと5p状態のエネルギーが近いこと,分解能が乏しいためにフィッティングには任意 性があることから,詳細な議論をするには及ばない.理論計算と比較するためにTC-AOCC 法による電荷移行断面積の理論計算をA係数の比から分岐比求め,発光断面積に計算し直した ものを図4.12に示す.ここではAOCC法では1重項状態と3重項状態を区別して計算する ことができないため,捕獲された電子の分布は統計重率に従うものとし,1P1と3P1=1 : 3と した.図4.12中の2p状態に関しては1P1と3P1 状態の和をとった.実験値の誤差が50パー
0 5x10-18 1x10-17 1.5x10-17
450 500 550 600 650 700 750 800
original total 2p 3p 4p 5p
Emission Cross Section/cm2 /eV
X-ray Energy/eV
図4.10 O7+-He 35 keV衝突における発光スペクトル
第4章 実験結果 57
10-19 10-18 10-17 10-16 10-15
10 20 30 40 50 60 70
total 2p 3p 4p 5p
Emission Cross Section/cm2
Collision Energy/keV Total
3p 4p
2p
5p
図4.11 O7+-He衝突における発光断面積
10-18 10-17 10-16 10-15
20 40 60 80 100 120 140 160
present total 21P1+23P1 31P1 41P1 51P1 Total
3p
4p 2p
2 Emission Cross Section/cm 5p
Collision Energy/keV
図4.12 AOCC法によるO7+-He衝突の発光断面積
セント程度であることを考慮しても,2p,3pおよび4p状態からの発光断面積は理論計算とは 比較的良く一致した.また,5p以外の状態からの発光に関してはエネルギー依存性はほとん どみられなかった.
第4章 実験結果 58
O7+-H2
衝突エネルギー 35 keV における発光スペクトルを図 4.13 に,スペクトルから発光断 面積化したものを図 4.14 に,理論計算を発光断面積に計算し直したものを図 4.15 に示 す.この系ではエネルギー依存性が見られ,衝突エネルギーが小さくなるに従い,断面積 が大きくなった.一方で AOCC 法による理論計算では,ほぼエネルギー依存性はない.
本実験のセットアップでは,衝突エネルギーが小さくなると,衝突セルを通過する時間が 長くなるため,23P1 状態からの発光が強く観測されると予想される.そのため,衝突エ ネルギーが低い領域で断面積の増加が見られたと考えることが出来る.5p 状態からの発 光に関しては理論計算ではおおよそ 2-4×10−17cm2 であるが,本研究では 10−18cm2 と一 桁以上も断面積が小さい.図 4.16 にAOCC 法による状態別の電荷移行断面積を示す.こ の計算によると,電子は n=4 または 5 に捕獲する断面積が大きい.5p へ直接捕獲する 断面積も 2×10−17cm2 と大きいため,統計重率を考慮しても 51P1 からの発光強度はそ れほど弱くないはずである.しかし.本測定においては鈴論計算と異なる結果がえらた.
0 2x10-18 4x10-18 6x10-18 8x10-18 1x10-17 1.2x10-17 1.4x10-17
450 500 550 600 650 700 750 800
original total 2p 3p 4p 5p
Emission Cross Section/cm2 /eV
X-ray Energy/eV
図4.13 O7+-H2 35 keV衝突における発光スペクトル
第4章 実験結果 59
10-18 10-17 10-16 10-15
10 20 30 40 50 60 70
total 2p 3p 4p 5p Total
4p 3p 2p
5p
Emission Cross Section/cm2
Collision Energy/keV
図4.14 O7+-H2衝突における発光断面積
10-17 10-16 10-15
40 60 80 100 120 140 160
present total 21P1+23P1 31P1 41P1 51P1 Total
3p 4p 2p
5p
Emission Cross Section/cm2
Collision Energy/keV
図4.15 AOCC法におけるO7+-H2衝突の発光断面積
第4章 実験結果 60
1x10-16 1x10-15
30 40 50 60 70
Total 1s 2s 2p 3s 3p 3d 4s 4p 4d 4f 5s 5p 5d 5f 5g Total
4s 5f 4f
4d
5p
2p 5d
5s 4p 5g
collision energy/keV
図4.16 AOCC法におけるO7+-H2衝突の状態別電荷移行断面積
O7+-CH4
衝突エネルギー35 keVにおける発光スペクトルを図4.17に,スペクトルから発光断面積化 したものを図4.18に示す.この系の発光断面積は衝突エネルギーの高い領域では一定であっ たが,エネルギーの低い領域でのみ断面積の増加が見られた.また,HeやH2 標的と比べる と,3p状態からの発光強度に比べ,4p状態からの発光強度極端に小さく,5p状態よりも発光 強度が少なくなる衝突エネルギーも存在した.CH4は,H2よりもさらにイオン化エネルギー が小さくまた,電子の捕獲主量子数もn=5であることからカスケード過程によって生じた変 化であると推察できる.
第4章 実験結果 61
0 5x10-18 1x10-17 1.5x10-17 2x10-17 2.5x10-17 3x10-17 3.5x10-17 4x10-17
450 500 550 600 650 700 750 800
original total 2p 3p 4p 5p
Emission Cross Section/cm2 /eV
X-ray Energy/eV
図4.17 O7+-CH4 35 keV衝突における発光スペクトル
10-17 10-16 10-15
10 20 30 40 50 60 70
total 2p 3p 4p 5p
Emission Cross Section/cm2
Collision Energy/keV Total
3p 4p
2p
5p
図4.18 O7+-CH4衝突における発光断面積
第4章 実験結果 62