(1) 関係規定
下請取引において,本法第3条の書面に記載すべき事項を書面に代えて電磁的方法によって提供することや 下請取引の経緯を電磁的記録として作成・保存する場合には,親事業者は以下の規定等に沿って行う必要があ る。
○ 本法第3条,第5条
○ 下請代金支払遅延等防止法施行令(以下「施行令」という。)
○ 下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の記載事項等に関する規則(以下「3条規則」という。)
○ 下請代金支払遅延等防止法第5条の書類又は電磁的記録の作成及び保存に関する規則(以下「5条規 則」という。)
○ 下請取引における電磁的記録の提供に関する留意事項(以下「留意事項」という。)
(2) 書面の交付に代えることができる電磁的記録の提供の方法及びその留意点 ア 下請事業者の承諾
(ア) 承諾の方法
親事業者は,下請取引において,本法第3条の書面に記載するべき事項を電磁的方法によって提供 する場合には,あらかじめ,下請事業者に対して,使用する電磁的方法の種類(電子メール,ウェッ ブ等)及び内容(word2003,一太郎バージョン 10 以上などのファイルへの記録方法)を示して,書面 又は電磁的方法による承諾を得なければならない(法第3条第2項,施行令第2条第1項,3条規則 第3条)。
(イ) 承諾の撤回等
親事業者は,下請事業者の承諾を得た後であっても,下請事業者から,書面又は電磁的方法により,
電磁的方法による提供を受けない旨の申出があった場合には,親事業者は,下請事業者の申出以降の 下請取引においては,書面に記載すべき事項を電磁的方法によって提供してはならない。ただし,下 請事業者が,再び,電磁的方法による提供を受けることを承諾した場合には,親事業者は書面に記載 すべき事項を電磁的方法によって提供することができる(施行令第2条第2項)。
(ウ) 留意事項
親事業者が下請事業者に対して,承諾しない場合には,取引の数量を減じ,取引を停止し,取引の 条件又は実施について不利益な取扱いをすること等を示唆するなど承諾を余儀なくさせる場合には,
本法及び独占禁止法上の問題が生じ得ることから,下請事業者の承諾を得るに当たっては,費用負担 の内容,電磁的記録の提供を受けない旨の申出を行うことができることも併せて提示することが必要 となる。なお,親事業者が今後の下請取引について書面の交付に代えて電磁的記録の提供を行うこと を下請事業者から一括して承諾を得た場合には,製造委託等をする都度承諾を得る必要はない(留意 事項第 2-1)。
イ 書面の交付に代えることができる電磁的方法
(ア) 電磁的方法
下請取引において書面の交付に代えることができる電磁的方法は以下のとおりであり,いずれの方 法を用いる場合であっても,下請事業者が電磁的記録を出力して書面を作成できることが必要となる
(3条規則第2条)。
○ 電気通信回線を通じて送信し,下請事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイル(以下
「下請事業者のファイル」という)に記録する方法(例えば,電子メール,EDI等)
○ 電気通信回線を通じて下請事業者の閲覧に供し,当該下請事業者のファイルに記録する方法(例 えば,ウェブの利用等)
○ 下請事業者に磁気ディスク,CD-ROM 等を交付する方法 (イ) 留意事項
a 電子メールにより提供する場合
書面の交付に代えて電子メールにより電磁的記録の提供を行う場合は,下請事業者の使用に係る メールボックスに送信しただけでは提供したとはいえず,下請事業者がメールを自己の使用に係る 電子計算機に記録しなければ提供したことにはならない。例えば,通常の電子メールであれば,少 なくとも,下請事業者が当該メールを受信していることが必要となる(留意事項第 1-1-(2))。
なお,携帯電話に電子メールを送付する方法については,電子メールを記録する機能のない携帯 電話端末への送付は認められないが,携帯電話端末にメモリー機能が備わっており,下請事業者が 所有する特定の携帯電話端末のメールアドレスに必要事項を電子メールで送付することが予め合意 されているなど,下請事業者のファイルに記録する方法と認められる場合には,3条規則第2条 第1項第1号イに規定する電磁的方法に該当する。
b 書面の交付に代えてウェブのホームページを閲覧させる場合
書面の交付に代えてウェブのホームページを閲覧させる場合は,下請事業者がブラウザ等で閲覧 しただけでは,下請事業者のファイルに記録したことにはならず,下請事業者が閲覧した事項につ いて,別途,電子メールで送信するか,ホームページにダウンロード機能を持たせるなどして下請 事業者のファイルに記録できるような方策等の対応が必要となる(留意事項第 1-1-(2))。
c ファックスで提供する場合
受信と同時に書面により出力されるファックスへ送信する方法は,書面の交付に該当するが,電 磁的記録をファイルに記録する機能を有するファックスに送信する場合には,電磁的方法による提 供に該当する(留意事項第 1-1-(1))。
ウ 本法第4条及び独占禁止法上の留意事項
(ア) 費用負担
a 電磁的記録の提供に係るシステム開発費等
親事業者が下請事業者に電磁的記録の提供を行うため,システム開発費等親事業者が負担すべき 費用を下請事業者に負担させることは,本法第4条第2項第3号(不当な経済上の利益の提供要請 の禁止)又は独占禁止法第 19 条(優越的地位の濫用)に違反するおそれがある。ただし,「下請事 業者の利用に応じて追加的に発生する費用」については,下請事業者が得る利益の範囲内での負担 を求める場合は,例外的に認められる(留意事項第 2-2-(1))。
「下請事業者の利用に応じて追加的に発生する費用」とは,例えば,親事業者が電子受発注に利 用しているシステムにおいて,下請事業者に対して,統計情報,商品の需要予測等の情報も提供で きる仕組みとなっている場合,下請事業者が,このような情報を利用することによって発生する費 用などが該当する。
b 電子情報機器等の購入等
下請事業者が電磁的記録の提供を受けるために必要な通信機器,電子計算機等の機器,ソフトウ ェア等を購入することやインターネットプロバイダ,システムサービス事業者等からの役務の提供 を受けることがある。このような場合において,親事業者が下請事業者に対して,書面の交付に代 えて電磁的記録の提供を求めること自体は,直ちに,本法又は独占禁止法上問題となるものではな いが,例えば,次のような場合には,本法第4条第1項第6号(購入・利用強制の禁止)又は独占 禁止法第 19 条(優越的地位の濫用)に違反するおそれがある(留意事項第 2-2-(2))。
○ 正当な理由がないのに,自己の指定する通信機器,電子計算機等の機器,ソフトウェア等を購 入させ,又は自己の指定するインターネットプロバイダ,システムサービス事業者等からの役務 の提供を受けさせること。
○ 親事業者が提供するシステムの一部の機能しか下請事業者が利用しないにもかかわらず,その ほとんどの機能を利用することを前提とした費用の負担を求めること。
c 通信費用等の負担
電磁的方法による提供に伴う通信費用を下請代金から減額するなどして下請事業者に負担させる ことは,本法第4条第1項第3号(減額の禁止)又は独占禁止法第 19 条(優越的地位の濫用)に違 反するおそれがある。ただし,下請事業者が親事業者から送信された電磁的記録を受信するために 要する通信費用について,あらかじめ下請事業者の承諾を受けたときは,この限りではない(留意 事項第 2-2-(3))。
(イ) 電磁的方法による提供を承諾しない下請事業者等への不利益な取扱い
電磁的方法による提供を行うことを承諾しない下請事業者又は書面の交付に代えて電磁的記録の提 供を受けない旨の申出をした下請事業者に対し,不当に取引の条件又は実施について不利益な取扱い をすることは,独占禁止法第 19 条(優越的地位の濫用)に違反するおそれがある(留意事項第 2-3)。
(ウ) 電磁的記録の提供を行うことができなかったときの措置
親事業者がシステムの故障等により下請事業者に対して,直ちに書面の交付に代えて電磁的方法に より提供を行うことができない場合は,当該下請事業者に書面を交付する必要がある。また,電磁的 方法による提供を行うに当たって,電磁的記録を送信し又は下請事業者が閲覧した場合であっても,
下請事業者のファイルに記録されなかったときは,本法第3条に違反することとなるので,親事業者 において下請事業者のファイルに記録されたか否かを確認することが必要となる。また,電磁的方法 による提供を行うに当たって,当該電磁的記録が下請事業者のファイルに記録されなかった場合にお いて,下請事業者が納期までに納品できないこと等を理由に,受領を拒否したり,下請代金の額を減 じることは,本法第4条第1項第1号(受領拒否の禁止)及び第3号(減額の禁止)に違反する(留 意事項第 2-4)。
(3) 取引記録の作成・保存の要件(第5条関係)
下請取引の経緯に係る電磁的記録を作成・保存する場合には,公正取引委員会等の検査に当たって,その 内容が容易に確認できるようにするため,以下の要件を満たす必要がある(5条規則第2条第3項)。
○ 記録事項について訂正又は削除を行った場合には,これらの事実及び内容を確認できること。
○ 必要に応じて電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に出力することができること。
○ 下請事業者の名称等や範囲指定した発注日により,電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機 能を有していること。