一括決済方式は,手形の発行量の増大に伴い手形発行・受取に係る業務量が親事業者・下請事業者双方に とって大きな負担となってきたため,手形に代わる手段として考案されたもので,第4図のとおり,手形と 実質的に同じ機能を果たすものである。
(注) 一括決済方式とは,下請代金の支払につき,親事業者,下請事業者及び金融機関の間の約定に基づき,
下請事業者が債権譲渡担保方式(下請事業者が,下請代金の額に相当する下請代金債権を担保として,
金融機関から当該下請代金の額に相当する金銭の貸付けを受ける方式)又はファクタリング方式(下請 事業者が,下請代金の額に相当する下請代金債権を金融機関に譲渡することにより,当該金融機関から 当該下請代金の額に相当する金銭の支払を受ける方式)若しくは併存的債務引受方式(下請事業者が,
下請代金の額に相当する下請代金債務を親事業者と共に負った金融機関から,当該下請代金の額に相当 する金銭の支払を受ける方式)により金融機関から当該下請代金の額に相当する金銭の貸付け又は支払 を受けることができることとし,親事業者が当該下請代金債権又は当該下請代金債務の額に相当する金 銭を当該金融機関に支払うこととする方式をいう。
債権譲渡担保方式,ファクタリング方式及び併存的債務引受方式の概要は,以下のとおりである。
第1図 債権譲渡担保方式の概要
第2図 ファクタリング方式の概要
①納品
②下請代金債権発生
③債務確定通知
④下請代金債権譲渡
⑤代金支払
⑦残金支払
④下請代金債権の譲渡承諾
⑥下請代金債権の取立て
下 請 事 業 者
親 事 業 者
ファク タリ ング 会社
①納品
②下請代金債権発生
③債務確定通知
④下請代金債権担保の差し 入れ(譲渡担保)
⑤当座貸越貸付
⑦当座貸越貸付金の精算
④下請代金債権の譲渡承諾
⑥下請代金債権相当額を振込み
下 請 事 業 者
親 事 業 者 金
融
機
関
第3図 併存的債務引受方式の概要
第4図 手形と一括決済方式の対比
(1) 一括決済方式は,手形と実質的に同様の機能を果たすものであり,現金に準ずる支払手段として,下請 代金の支払手段として認められるものである。一括決済方式により下請代金を支払う場合の本法第3条の 書面及び本法第5条の書類の記載事項は,次のとおりである。
(本法第3条の書面)
① 金融機関の名称
② 金融機関から貸付け又は支払を受けることができることとする額
③ 下請代金債権又は下請代金債務の額に相当する金銭を当該金融機関に支払う期日
①納品
②下請代金債権発生
③債務確定通知
⑥下請代金債権相当額の支払 請求
⑦代金支払
④下請代金債務の引受伺い
⑨下請代金債務相当額を支払
下 請 事 業 者
親 事 業 者 金
融 機 関
⑤下請代金債務の引受承諾
⑧代金支払通知
⑩残金支払
売掛期間 60 日間 手形サイト 120 日(繊維業の場合は 90 日)間 手 形
納品受領 債務確定 手形交付日 下請事業者の手形割引可能期間(現金化可能期間) 手形満期
下請事業者の借入れ期間(現金化可能期間)
債権譲渡担保方式
納品受領 債務確定通知 譲渡承諾
下請事業者の債権譲渡代金受取可能期間
(現金化可能期間)
ファクタリング方式
納品受領 債務確定通知 譲渡承諾 下請代金債権
の決済日 下請代金債権 の決済日
下請事業者の債務引受代金受取可能期間
(現金化可能期間)
併存的債務引受方式
納品受領 債務確定通知 債務引受承諾 下請代金債務
の決済日
一括決済方式の場合の本法第3条の書面への記載事項を現金払の場合又は手形払の場合の記載事項と 対比すると次のとおりである。
現金払の場合 手形払の場合 一括決済方式の場合
下請代金の支払期日 下請代金の支払期日 下請代金の支払期日
下請代金の額 下請代金の額 下請代金の額
― 手形の金額 下請事業者が金融機関から貸付け又は支払を受けるこ とができることとする額
― 手形の満期 下請代金債権又は下請代金債務の額に相当する金銭を 金融機関に支払う期日
― ― 下請事業者が貸付け又は支払を受けることができるこ
ととする金融機関の名称
(本法第5条の書類)
① 金融機関から貸付け又は支払を受けることができることとした額
② 金融機関から貸付け又は支払を受けることができることとした期間の始期
③ 下請代金債権又は下請代金債務の額に相当する金銭を当該金融機関に支払った日
一括決済方式の場合の本法第5条の書類への記載事項を現金払の場合又は手形払の場合の記載事項と 対比すると次のとおりである。
現金払の場合 手形払の場合 一括決済方式の場合
支払った下請代金の額 支払った下請代金の額 支払った下請代金の額 下請代金を支払った日 下請代金を支払った日 下請代金を支払った日
― 手形の金額 下請事業者が金融機関から貸付け又は支払を受けるこ とができることとした額
― 手形を交付した日 下請事業者が金融機関から貸付け又は支払を受けるこ とができることとした期間の始期
― 手形の満期 下請代金債権又は下請代金債務の額に相当する金銭を 金融機関に支払った日
(2) 公正取引委員会では,一括決済方式が下請代金の支払手段として用いられる場合の本法及び独占禁止法 の運用の方針を明らかにしている(昭和 60 年 12 月 25 日付け事務局長通達第 13 号。146ページ,資料9参 照)。
また,一括決済方式はその導入のされ方,運用のされ方いかんによっては,下請事業者の取引先金融機 関の選択の幅が狭められたり,下請代金の支払条件が下請事業者にとって不利に変更されたりする等不利 益を受けるおそれがあるので,一括決済方式を導入する親事業者が遵守すべき事項を示し,これを基に親 事業者を指導している(同日付け取引部長通知。147ページ,資料 10 参照)。
【一括決済方式についてのQ&A】
Q104: 信託方式(親事業者に対する下請事業者の債権を信託銀行に信託譲渡することにより下請事業者 が信託受益権を取得し,下請事業者の要望に応じて信託銀行が当該信託受益権を投資家に販売する ことにより,下請事業者が信託銀行から金銭の支払を受ける方式)による一括決済の方式は,本法 又は独占禁止法上問題ないか。
A: 本問のような信託を用いた一括決済方式は,「下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の記載事
項等に関する規則」にいう「ファクタリング方式」に該当すると考えられるので,制度自体が本法 又は独占禁止法上禁止されるものではないが,「一括決済方式が下請代金の支払手段として用いら れる場合の下請代金支払遅延等防止法及び独占禁止法の運用について」(146ページ,資料9参照)
及び「一括決済方式が下請代金の支払手段として用いられる場合の指導方針について」(147ペー ジ,資料 10 参照)に則った形で実施される必要がある。
第5図 信託を用いた一括決済方式の概要
①納品
②下請代金債権発生
③債務確定通知
⑥信託受益権の譲渡
⑦譲渡代金支払
⑧期日代金支払
下 請 事 業 者
親 事 業 者 信
託 銀 行
④下請代金債権の信託
⑤信託受益権の取得