第 I 章
電磁力。
475.] 針をとおる放電や針の近くでおこる放電によって針の中で磁気が生
成されたり破壊されたりする場合のあることを多くのいろいろな観測者が気付 いていた。そして、磁気と電気のあいだの関係にかんしていろいろな種類の推 論がなされてきた。しかし、これらの現象の法則、これらの関係の形はエルス テッド(Hans Christian ¨Orsted)註1がコペンハーゲンで数人の進んだ学生に たいして行った私的な講義でボルタ電池の終端を結ぶ導線がその近傍の磁石に 影響を与えることを観測するまで、まったく知られていなかった。この発見を 彼はExperimenta circa effectum Conflictˆus Electrici in Acum Magneticam, 1820年6月21日と題した論文で出版した。
磁石と電気を荷された物体との関係についての実験はエルステッドが電流 によって熱せられた導線の効果を確かめようとするまで、何の結果も得られ ないまま行われてきた。しかし、彼は導線の熱ではなく流れ自身が作用の原 因であり、「電気の衝突は回転的に作用する。」つまり、電流を伝える導線の 近くに置かれた磁石は導線に垂直になり、磁石が導線の周りで動かされたと
き、同じ端は常に前方を指していることを発見した。 p. 139
476.] それゆえ、電流を伝える導線のまわりの空間中で磁石には導線の位
置と電流の強さに依存する力が作用するようにみえる。これらの力が作用す る空間はそれゆえ磁場と考えられ、通常の磁石の近傍の場で既に調べられて いるのと同じように、磁力線の道筋を辿り、各点での力の強さを測ることに よって、調べる事ができる。
註1Bence Jones博士によるファラディの生涯(Vol. ii, p. 395)にあるHansteen教授からの 手紙にあるエルステッドの発見についての他の説明も参照せよ。
152 第I章 電磁力
477.] 電流を運ぶ無限に長いまっすぐな導線の場合から始めよう。もしある
人が、想像上、自分自身を電流が頭から足へ巡る導線の位置に置くなら、彼 の前に自由に吊るされた磁石は、電流の作用のもとで、北を指す端が、右手 の方向を指すようになる。
磁力線はいずれの場所でも導線を含む平面に直角である。それゆえ、磁力 線はそれぞれ導線に垂直な平面内の円である。磁石の北を指す極は、これら の円の一つを左から右へまわって運ばれると、常に運動の方向に作用する力 を感じるであろう。おなじ磁石の他の極は反対方向の力を感じるであろう。
図: 21.
478.] これらの力を比較するために、導線は鉛
直で、電流は下降すると考え、磁石は装置の上 に置かれ、その装置は導線に一致する鉛直軸の まわりに自由に回転するとする。これらの状況 にもとで、導線を軸としてそのまわりに装置全 体の回転を引き起こすような効果は電流にはな いことが分かる。したがって、磁石の2つの極 への鉛直電流の作用は電流を軸とした2つの力 の静的なモーメントが同じ大きさで反対方向で あるようなものである。m1 と m2を2つの極 p. 140
の強さ、r1と r2を導線の軸からのそれらの距 離、T1と T2をそれぞれ、2つの極での電流に よる磁力の強さとすると、m1に働く力はm1T1
であり、力は軸に直角だから、力のモーメント はm1T1r1である。同様にもう一つの極に働く 力のモーメントはm2T2r2であり、運動は観測 されていないから
m1T1r1+m2T2r2= 0.
である。
しかし、すべての磁石で
m1+m2= 0.
であることが分かっている。
したがって
T1r1=T2r2
つまり無限に長い直線電流による電磁力は電流に垂直で、電流からの距離に 反比例して変化する。
479.] 積T rは電流の強さに依存しているから、電流の尺度として採用で
きる。この測定法は静電現象に基づく方法とは異なっており、電流によって 生成された磁気現象に依存しているので、電磁測定系と呼ばれる。電磁系で、
もしiが電流ならT r= 2iである。
480.] もし導線をz軸と取るとT の直交成分は X=−2iy
r2, Y = 2ix
r2, Z= 0.
である。
ここでXdx+Y dy+Zdz は全微分であり、
2itan−1y x+C.
の微分である。
したがって場の磁力は、以前のいくつかの例のように、ポテンシャル関数 から導くことができるが、この場合のポテンシャルは公差4πiの無限列をな す値をもつ関数である。しかし、座標にかんするポテンシャルの微分係数は 確定しており、各点で一価である。
電流近傍の場でのポテンシャル関数の存在はエネルギー保存原理の自明の 結果ではない。現実の電流では、すべて、導線の抵抗に打ち勝つ電池の電気
エネルギーの連続的な消費があり、この消費量が知られていないかぎり、電 p. 141 池のエネルギーの一部分が周期的に動く磁石になされた仕事を引き起こすの
に使われたと疑われるからである。事実、磁極mが導線を囲む閉曲線のまわ りを一周すると現実に4πmiの大きさの仕事がなされる。力の線積分が零に なるのは導線を囲んでいない閉回路にたいしてのみである。それゆえ、いま のところ、力の法則とポテンシャルの存在はすでに記述した実験的な証拠に 支えられていると考えなければならない。
481.] 無限に伸びる直線を囲む空間を考えると、一周回るともとに戻る
ので、サイクリックな空間であることが分かる。直線から始まり、その片方
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154 第I章 電磁力 に無限遠まで拡がる平面か、その他の何らかの面を考えると、それはサイク リックな空間を非サイクリックな空間に戻すダイアフラムとみなすことがで きる。もし任意の固定点から他の点までダイアフラムを横切らないで曲線を 描き、ポテンシャルをこれらの曲線の一つに沿って取られた力の線積分と定 義すると、任意の点のポテンシャルは一価の確定した値をもつであろう。
磁場はこの面に一致する強度がiの板磁石による場とすべての点で同一で ある。この板は一つの縁で無限直線によって境界づけられている。境界の他 の部分は場の考察している部分から無限の距離にある。
482.] 現実の実験では、すべて、電流は有限の大きさの閉じた回路を形成
する。それゆえ、有限回路の磁気作用を回路が境界辺である板磁石の作用と 比較しよう。
アンペールの実験が最初期のもので、ウェーバーの実験がもっとも正確な ものであるが、数多くの実験によって、回路の大きさとくらべて遠い距離に ある小さな平面回路の磁気作用は軸が回路の面の法線である磁気モーメント の作用と同じであり、その磁気モーメントは回路の面積に電流の強さをかけ たものに等しい註2。
p. 142
もし回路が回路を境界とする面によって埋められ、ダイアフラムが形成さ れていると考えたなら、そしてもしこの面と一致する強度iの板磁石が電流 の代りに置き換えられたら、遠くのすべての点で板磁石の作用は電流の作用 と同一であろう。
483.] ここまで回路の大きさは場の検討されている部分から回路の任意の
部分への距離とくらべて小さいと考えてきた。さて回路は任意の形でどんな 大きさでもよいと考えて導線それ自身の中にはない任意の点Pでの作用を検 査しよう。以下の方法はこの目的のためにアンペールによって導入されたが、
重要な幾何学的な応用をもつ。
回路が境界となる、点Pを通らない任意の面Sを考えよう。この面上に互 いに交叉し曲線を要素部分に分割する2系列の曲線列を描く。要素部分の大 きさはPからの距離とくらべて小さく、面の曲率半径とくらべても小さい。
これらの線要素のそれぞれに強さiの電流が流れると考える。循環の方向
註2{Ampere, Th`eorie des ph´enom`enes electrodynamiques, 1826; Weber, Elektrody-namiscke Maasbestimmungen (Abkandlungen der k¨oniglich S¨acks. Geselshaft zu Leipzig, 1850-1852.)}
はすべての要素でもとの回路の中と同じであるとする。
2つの隣接する面要素の間の分割線を形成するすべての曲線に沿って、強 さiの2つの等しい電流が反対方向に流れる。
同じ場所での同じ大きさで反対方向の電流の効果は、いかなる観点で電流 を考えようと、絶対的に零である。このように中性化されない唯一の回路要 素の部分は元の回路と一致する部分だけである。それゆえ、回路要素の全効 果は元の回路の効果に等価である。
484.] さてそれぞれの回路要素はPからの距離がその大きさとくらべて大
きい小さな平面回路であるから、境界辺が回路要素と一致する強さiの板磁 石要素で置き換えることができる。P への板磁石要素の磁気効果は回路要素 の効果と等価である。板要素の全体は強さiの板磁石を構成し、面Sと一致 し、元の回路が境界をなす板全体のPの上への磁気作用は回路の磁気作用と
等価である。 p. 143
回路の作用は面Sの形に独立であることは明白である。面は回路を埋める ようにまったく任意の方法で描かれたのである。このことから板磁石の作用 は板の形にはよらず、板の縁の形にのみ依存することが分かる。この結果は、
以前、410節で得ているが、どのようにして電磁気の考察から導くことがで きるかを見ておくことは教育的である。
任意の点での磁力は、それゆえ、回路が境界をなす、その点を通らない板 磁石による力と大きさも方向も同一である。板の強さは数値的に電流の強さ に等しい。回路中の電流の方向は板の磁化の方向に関係しており、したがっ て、もし人が北を指そうとする正の側面と呼ばれる板磁石の側面に足を置い て立つなら、彼の前の電流は右から左であろう。
485.] 回路の磁気ポテンシャルは、しかしながら、板磁石の物質中にある
これらの点に対する板磁石のポテンシャルとは異なる。
もしωを点Pで板磁石が張る立体角とし、板の正、つまり、austral(南)側 が点Pに隣り合うとき正と数えると、板自体の中にはない任意の点での磁気 ポテンシャルはωϕである。ここでϕは板の強さである。板の物質中の任意 の点で、私たちは板が強さがϕ1とϕ2、ϕ1+ϕ2=ϕの2つの部分に分割さ れており、その点はϕ1の正側にあり、ϕ2の負側にあると考えることができ
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