地磁気について。
465.] 地磁気にかんする私たちの知識は、ある任意に選んだ一時の地球表
面上の磁力の分布と、いろいろな時のその分布の変化の研究から導かれたも のである。
任意の場所、時刻での磁力はその3座標が分かれば、分かったと言える。こ れらの座標は力の方位角の偏角、水平にたいする伏角、そして全強度によっ て与えられる。
しかし、地球表面の磁力の一般分布を研究するためにもっとも便利な方法 は力の3成分の大きさ
X =Hcosδ, 真北方向へ, Y =Hsinδ, 真西方向へ, Z=Htanθ, 鉛直下方向へ,
(1)
を考えることである。ここでHは水平分力、δは偏角、θは伏角である。
もしV が地球表面の磁気ポテンシャルなら、そしてもし地球を半径aの球 と考えるなら、
X =−1 a
dV
dl , Y =− 1 acosl
dV
dλ, Z= dV
dr, (2)
である。ここでlは緯度、λは経度、rは地球中心からの距離である。
地球表面上のV の知識は以下のように水平分力の観測だけから得ることが できる。
V0を北極でのV の値とすると、任意の子午線に沿って線積分をとって緯 p. 130
140 第VIII章 度lでの子午線上のポテンシャル値は
V =−a
∫ l
π 2
Xdl+V0, (3)
であることが分かる。
こうしてポテンシャルが、各点での北成分,X,の値と、極でのV の値,V0
が分かっていれば、地球表面の任意の点で見出される。
力はV の絶対的な値ではなく、その微分に依存するので、かならずしも、
V0を特定の値に固定する必要はない。
任意の点、V の値は、もし任意の与えられた子午線に沿ったXの値と全面 にわたるY の値が分かっていれば、確かめられる。
Vl=−a
∫ l
π 2
Xdl+V0, (4)
としよう。ここで積分は極から平行に与えられた子午線に沿って行われる。
このとき、
V =Vl−a
∫ λ λ0
Y cosldλ, (5)
である。ここで積分は与えられた子午線から必要な点まで平行線に沿って行 われる。
これらの方法は地球表面で完全な磁気探査が行われており、したがってX やY やその両方の値が与えられた時点で地球表面の各点で知られていること を含意している。実際に知られているものはある決まった数の測量点での磁 気成分である。地球の文明化した部分では、これらの測量点は比較的数多く ある。他の点ではデータのない地球表面の広大な地域がある。
磁気探査。
註1466.] 最大数百マイル四方程度の大きさの地域で、偏角と水平分力の観測
が地方全体に分布するかなりの数の測量点で行われてきたと考えよう。
註1{読者はR¨ucker とThorpeの論文、‘A Magnetic Survey of the British Isles,’Phil.
Trans., 1890, A, pp. 53-328を読むとよいであろう。}
この地域の中ではV の値は公式 V = const.−a(A1l+A2λ+1
2B1l2+B2lλ+1
2B3λ2+ &c), (6)
によって十分正確に表現できると考える。したがって、 p. 131 X=A1+B1l+B2λ, (7)
Y cosl=A2+B2l+B3λ, (8) である。
緯度がl1, l2,. . . &c. 経度がλ1, λ2, &c.のn測量点があり、XとY がそ れぞれの測量点で見出されているとする。
l0= 1
nΣ(l), λ0= 1
nΣ(λ), (9)
とする。l0 とλ0は中央測量点の緯度、経度と呼ぶことができる。
X0= 1
nΣ(X), Y0cosl0= 1
nΣ(Y cosl), (10) とする。このとき、X0と Y0は仮想の中央測量点のXとY の値であり、
X=X0+B1(l−l0) +B2(λ−λ0), (11) Y cosl=Y0cosl0+B2(l−l0) +B3(λ−λ0), (12) である。
n個の(11)形式の式とn個の(12)形式の式がある。もしXの決定値の確 率誤差をξ、 Y coslの確率誤差をηと表記すると、これらの誤差がH とδ の観測誤差から生じたと考えて、ξとηを計算することができる。
もしHの確率誤差をh、δの確率誤差を∆とすると、
dX = cosδ.dH−Hsinδ.dδ, ξ2=h2cos2δ+ ∆2H2sin2δ, 同様に
η2=h2sin2δ+ ∆2H2cos2δ, 141
142 第VIII章 である。
もし形式(11), (12)の式によって与えられる値からXとY の変動が大き
く観測の確率誤差を越えているなら、それは局所的な引力によると結論でき、
ξのηに対する比に1以外の数値を与える理由がない。
最小二乗法にしたがって形式(11)の式にηを掛け、形式(12)の式にξを 掛け、その確率誤差を同じにする。つぎに、それぞれの式に未知量の一つの 係数B1,またはB2,またはB3を掛け、その結果を加え合わせ、B1,B2,B3
を見出すための3つの方程式
P1=B1b1+B2b2,
η2P2+ξ2Q1=B1η2b2+B2(ξ2b1+η2b3) +B3ξ2b2
Q2=B2b2+B3b3; を得る。ここで、簡単のため、
p. 132
b1= Σ(l2)−nl20, b2= Σ(lλ)−nl0λ0, b3= Σ(λ2)−nλ20, P1= Σ(lX)−nl0X0, Q1= Σ(lY cosl)−nl0Y0cosl0, P2= Σ(λX)−nλ0X0, Q2= Σ(λY cosl)−nλ0Y0cosl0, と書いている。
B1,B2, B3を計算し、(11), (12)式に代入して、探査の範囲内で局所的な 擾乱のない任意の点でのX、Y の値を得ることができる。局所擾乱は、測定 点近くの岩が磁気を帯びているために存在することが分かっている。ほとん どの火成岩は磁気を帯びているのである。
この種の探査は磁気装置を持ち運び、それを非常に多くの測定点に設置で きる地方でのみ行うことができる。世界のその他の場所では互いに非常に離 れたわずかな測定点での値のあいだで内挿を行うことによって磁気要素の分 布を見出すことで満足しなければならない。
467.] この種の過程によって、または、磁気要素の等値線の地図を作成す
る等価な図形的な過程によって、XとY の値と、そこからのポテンシャルV の値が地球に全表面にわたって分かるようになると考えよう。つぎの段階は V を球面調和級数の形に展開することである。
もし地球が、その内部全体で、一様に同じ方向に磁化されているなら、V は1位の調和関数で、磁気子午線はまったく反対の2極をとおる大円であり、
磁気赤道は大円で、水平分力は磁気赤道のすべての部分で同じで、もしH0
がこの定数値なら、他の点での値はH =H0cosl′であろう。ここでl′は磁 気緯度である。任意の点での鉛直分力はZ= 2H0sinl′で、もしθが伏角な ら、tanθは= 2 tanl′であろう。
地球の場合、磁気赤道は伏角が零の線と定義される。それは球の大円では ない。
磁極は水平分力が零の点、または伏角が90◦の点と定義される。そのよう な2点が、一つは北領域に、一つは南領域にあるが、まったく正反対ではな く、それらを結ぶ線は地球の磁軸に平行ではない。
468.] 磁極は地球表面上のV の値が、極大、または極小、または停留であ p. 133
る点である。
ポテンシャルが極小である任意の点で、伏角針の北端は鉛直下方向を指し、
コンパスの針がそのような点の近くに置かれると、北端はその点を指す。
ポテンシャルが極大の点で、伏角針の南端は下を指し、その近傍でコンパ スの針の南端はその点を指す。
もし地球表面にV にp個の極小があれば、他にp−1個の伏角針の北端が 下を指す点がある。しかし、その他点をまわる円周でコンパスを運んだとき、
コンパス針の北端はつねにその点を指すように回わる代わりに、針は反対方 向に回転し、ときにその北端を、ときのその南端をその点に向けてまわる。
もしポテンシャルのある極小点を真の北極と呼ぶと、これらの他の点は偽 の北極と呼ぶことができる。コンパスの針にたいしては北極ではないからで ある。もしp個の真の北極があれば、p−1個の偽北極がなければならず、同 様に、q個の真南極があればq−1個の偽南極がなければならない。同じ名前 の極の数は奇数でなければならず、一時、優勢であった2個の北極と2個の 南極があるとの意見は誤っている。ガウスによれば、事実は、地球表面には ただ1つの真の北極と、ただ1つの真の南極があり、それゆえ、偽極はない。
これらの極を結ぶ直線は地球の直径ではなく、地球の磁軸に平行ではない。
469.] 地磁気の性質の初期の研究は、ほとんどが、その性質を、1つまたは
それ以上の棒磁石の極の位置を決めるべきものとして、それらの作用の結果
143
144 第VIII章 として表示しようとしてきた。ガウスが地磁気の分布をポテンシャルを体調 和関数の級数に展開することによって完全に一般的な形で表示した最初の人 である。彼はその展開係数を最初の4位にまで決定した。係数は24個あり、
1位が3個、2位が5個、3位が7個、4位が9個である。地磁気の実際の状 態の許容できる正確な表現を与えるためには、これらすべての項が必要なこ とが分かっている。
p. 134
観測された磁気のどの部分が外部原因で、どの部分が内部原因 かを見つける。
470.] 地磁気の磁気ポテンシャルの球面調和関数での展開を得たと考えよ
う。展開は地球表面の各点で水平分力の実際の方向と大きさに無矛盾である とする。ガウスは鉛直分力の観測値から、磁力が、磁化や電流のような、地 表面の内部の原因によるものか、それとも、なんらかの部分が地表面の外部 の直接的な原因によるものか、どのように決められるかを示した。
V を球面調和関数の2重級数に展開された実際のポテンシャルとする。
V =A1r
a+ &c.+Ai(r a)i+. . . +B1(r
a)−2+ &c.+Bi(r
a)−(i+1)+. . .
第1の級数は地球の外部原因によるポテンシャル部分を表現し、第2級数 は地球に内部原因による部分を表現している。
水平分力の観測値は地球半径,r=aのとき、これらの級数の和を与える。
位数iの項は
Vi=Ai+Bi, である。
鉛直分力の観測値は
Z= dV dr, を与え、aZの位数iの項は
aZi =iAi−(i+ 1)Bi,
である。
したがって、外部原因による部分は
Ai= (i+ 1)Vi+aZi 2i+ 1 , であり、地球内部の原因による部分は
Bi=iVi−aZi
2i+ 1 , である。
V の展開は、ここまで、ある時点近くでのV の平均値にたいしてのみ計算
されてきた。この平均値のほとんどの部分は地球の外部原因によるようには p. 135 見えない。
471.] 私たちは未だV の変動の太陽や月の影響がどのような形に展開され
るか十分に知らず、これらの変動のなんらかの部分が外部から作用する磁力 から生じているかどうかをこの方法によって決めることができない。しかし、
MM.ストニィとチャンバーの計算が示したように、これらの変動の主要部分 が、太陽や月が磁石であると考えても、それらの直接の磁気作用から生じ得 ないことは明らかである註2。
472.] 注意が向けられてきた磁力の主要な変化はつぎのようである。
I. 規則正しい変動。
(1) 1日の時間スケールや1年の時間スケールに依存する太陽変動。
(2) 月の時角や月のそのほかの位置要素に依存する月変動。
(3)これらの変動は年が変わると繰り返さないが、11年のより長い周期変動 にしたがっているように見える。
註2プラハのホルンスタイン教授は、周期26.33日の磁気要素の周期変化はほとんど正確に太陽 赤道近くの黒点の観測から導かれた太陽自転の会合周期であることを発見した。太陽の目に見え ない硬い物体の回転時間の磁針への効果による発見法は天文学からの借りの磁気による返済の最 初の分割返済である。Anzeiger der k. Akad., Wien, June 15. 1871.Proc. R. S., Nov. 16, 1871参照。
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