第 I 章
磁石の中心と第 1 主軸、第 2 主軸。
392.] この式は座標の方向と原点を変えると簡単化される。まず、x軸の方
向を磁石の軸に平行にする。これは
l= 1, m= 0, n= 0, (10) とすることと等価である。
もし座標原点を(x′, y′, z′)に変え、軸の方向を変えなければ、体積積分lK, mK,nKは変わらないが、そのほかは次のように変わるであろう:
L′=L−lKx′, M′ =M −mKy′, N′=N−nKz′; (11)
P′ =P−K(mz′+ny′), Q′ =Q−K(nx′+lz′),
R′=R−K(ky′+mx′) (12) もしx軸の方向を磁石の軸に平行にし、
x′= 2L−M−N
2K , y′= R
K, z′ = Q
K, (13)
と置くと、新しい軸にたいしてM,Nはその値を変えず、L′の値は 12(M+N) となる。Pは変わらずに残り、Q,Rは零になる。それゆえ、ポテンシャルを
K ξ r3+
3
2(η2−ζ2)(M −N) + 3P ηζ
r3 +. . . , (14)
のように書くことができる。
こうして、磁石に固定された点で、その点を座標原点にとると、ポテンシャ ルの第2項がもっとも簡単な形になる点を見出した。それゆえ、この点を磁 石の中心と定義し、以前に磁軸の方向として定義した方向に中心をとおって 引いた軸を磁石の主軸と定義することができる。
x軸のまわりに正接が P
M−N である角度の半分だけy,z軸を回転すると、
結果がもう少し簡単になる。これによってPは零になり、ポテンシャルの最 終形は
K ξ r3 +3
2
(η2−ζ2)(M−N)
r5 + &c, (15)
と書くことができる。 p. 20
これが磁石のポテンシャルの最初の2項のもっとも簡単な形である。y軸, z軸がこのように置かれたとき、それらは磁石の第2軸と呼ばれる。
座標原点の位置を見つけることによって磁石の中心も決めることができる。
座標原点にたいして、ポテンシャルの第2項の2乗の単位半径の球にわたる 面積分は極小である。
最小とすべき量は、141節によって
4(L2+M2+N2−M N −N L−LM) + 3(P2+Q2+R2), (16) である。
原点の位置の変化によるこの量の値の変化は (11), (12)式から導かれる。
したがって最小条件は
2l(2L−M −N) + 3nQ+ 3mR= 0, 2m(2M −N−L) + 3lR+ 3nP = 0, 2n(2N−L−M) + 3mP+ 3lQ= 0,
(17) である。もしl= 1,m= 0, n= 0を仮定すると、これらの条件は
2L−M−N = 0, Q= 0, R= 0, (18) となり、それは以前の研究で使われた条件である。
この研究は重力物質系のポテンシャルを展開する研究と比較できる。重力 系の場合、原点として仮定するのにもっとも便利な点は系の重力中心であり、
もっとも便利な軸は重心をとおる慣性主軸である。磁石の場合、重力中心に 対応する点は軸方向の無限遠にあり、磁石の中心と呼んだ点は重力中心の性 質とは異なった性質を持つ。L, N, N は必ずしも正の量ではない点を除い て、量L,M,N は慣性モーメントに対応し、P,Q,R 物体の慣性乗積に対 応する。
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24 第I章 磁気の初等理論 磁石の中心を原点ととると、2次の球面調和関数は扇形であり、その軸を 磁石の軸に一致させるが、これは他の点にはあてはまらない。
磁石は、回転体の場合のように、この軸のすべての側面で対称であり、2次 の調和項を含む項は完全に消える。
393.] 極地域のいくつかの部分を除いて、地表のすべての部分で、磁石の一
p. 21
方の終端は北、または、少なくとも、北向きの方向を指し、他端は南向きの方 向を指す。磁石の終端について話すとき、北を指す終端を磁石の北端と呼ぶ 通俗的な方法を採ることにする。しかし、磁気流体の理論の言葉で話すとき、
Boreal(北) およびAustral(南)という言葉を使う。Boreal(北)磁気は地球 の北の部分でもっとも豊富であると考えられている仮想的な種類の物質であ る。Austral(南)磁気は地球の南の領域でまさる仮想的な磁気物質である。磁 石の北端の磁気はAustral(南)磁気であり、南端の磁気はBoreal(北)磁気で ある。それゆえ、磁石の北端、南端について話すとき、私たちは磁石を巨大 な磁石としての地球と較べたりはせず、たんに磁石が自由に動くとき、磁石 が取ろうとする位置を表示する。他方、仮想的な磁気流体の分布を地球の中 での分布と較べるとき、より大袈裟な言葉、Boreal(北)磁気、Austral(南)磁 気を使う。
394.] 磁力の場について話すとき、コンパスが力の場の中に置かれたとき、
コンパスの針の北端が指す方向を磁北という言葉を使うこととする。
磁力線について話すとき、つねに、磁力線は磁南の方向から磁北の方向へ 辿られると考え、この方向を正と呼ぶこととする。同様に、磁石の磁化の方 向は磁石の南端から北端に向かって描かれた直線によって指し示され、北を 指す磁石の終端は正端と計算される。
私たちは南磁気、つまり、北を指す磁石の終端の磁気を正と考えることに する。もしその数値をmで記述するなら。磁気ホテンシャルは
V =∑ (m
r),
であり、力線の正の方向はV が減少する方向である。