第 I 章
その数値は極の強さの積をそれぞれのあいだの距離の 2 乘で割っ たものに等しい。
374.] もちろん、この法則はそれぞれの極の強さがある単位を使って測ら
れていることを仮定しており、その大きさはその法則をつかって導かれる。
単位の極は北を指す極で、空気中で、もう一つの単位の極から単位の距離 に置かれたとき、単位の力で斥ける。単位の力は6節で定義されている。南 を指す極は負と数えられる。
もしm1 とm2が2つの磁極の強さ、lがそれらのあいだの距離、fが斥力 で、すべてが数として表示されるなら、
f = m1m2
l2 ,
である。しかし、もし[m], [L], [F]が磁極、長さ、力の具体的な単位なら f[F] = [m
L]2m1m2 l2 , である。したがって、
[m2] = [L2F] = [L2M L T2 ], つまり
[m] = [L32T−1M12],
が出てくる。 p. 4
それゆえ、単位の大きさの極の次元は長さにかんして 3
2、時間にかんして
(−1)、質量にかんして12 である。これらの次元は電気の静電単位の次元と同
じであり、41, 42節と同じ方法で厳密に特徴づけられる。
375.] この法則の正確性は捩り秤を使ったクーロンの実験で確立され、ガ
ウスとウェーバーや磁気観測所の観測者たち全員の実験によって確かめられ ていると考えることができる。観測者たちは、日夜、磁気量の測定をしてお り、もし法則を誤って仮定したなら、互いに矛盾する結果を得てしまうから である。
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6 第I章 磁気の初等理論
376.] 私たちがここまで極の強さと呼んできた量は「磁気」量と呼んでも
よい。ただし、磁極で観測される性質以外の性質を「磁気」の性質に帰さな いかぎりにおいて、である。
与えられた「磁気」量のあいだの力の法則の式は同じ数値の「電気」量の あいだの力の法則とまったく同じ数学形式を持っているので、磁気の数学的 な取扱いの多くは電気のそれと似たものでなければならない。しかし、心に 留めておかねばならない磁気の性質が他にもあり、それらは物体の電気的な 性質になにかしらの光を投げかける。
磁極間の関係。
377.] 磁石の一方の極の磁気量はもう一つの極の磁気量とつねに同じ大き
さで反対符号である。より一般には:—–
どの磁石でも、磁気の総量は(代数的に計算して)零である。
したがって、磁石で占められた空間全体で一様で平行な力の場のなかでは、
印のつけられた終端に作用する力は印のつけられていない終端に作用する力 に厳密に同じ大きさで、反対方向で平行であり、したがって合力は静的な偶 力であり、磁石の軸を決まった方向に向けようとするが、全体としてどの方 向にも磁石を動かそうとはしない。
このことは磁石を小さな容器の中に置き、容器を水に浮かべることによっ てたやすく証明できる。磁石の置かれた容器はある方向に回転し、地球の磁 p. 5
力の方向に可能なだけ近くに磁石の軸を持っていくが、全体としてどのよう な方向にも容器の運動はない。したがって、南に向かう力が北に向かう力を 上まわることも、その逆もありえない。また鋼片の磁化がその重さを変えな い事実からもそれを示すことができる。鋼片の磁化はその重心の見かけの位 置を変え、それを、これらの緯度では、北に向けて軸方向を変えさせる。回 転現象から決められた慣性中心は変わらないで維持されている。
378.] もし長く細い磁石の中間部を調べると、磁気の性質を持たないことが
分かるが、もし磁石がその点で割られると、そのそれぞれの破片は割れた場 所に磁極を持ち、この新しい極はその破片の他の極とまったく同じ大きさで 反対符号であることが分かる。磁化によっても、磁石の破断によっても、そ
のほかのどのような手段によっても、極の大きさが同じではない磁石を得る ことはできない。
もし長く細い磁石をいくつかの短い片に割るなら、一連の短い磁石を手に いれ、そのそれぞれはもとの長い磁石の強さとほとんど同じ強さの極を持つ。
この極の増加は必ずしもエネルギーの生成ではない。磁石を破断したあと、
互いの引力の結果として、部分部分を分離するため仕事をしなければならな いことを思い出さなければならないからである。
379.] さて、磁石の全破片を最初と同じ形に集めよう。それぞれの接合点
でまったく同じ大きさで反対の種類の2極があり、接触して置かれると、ど の他極と合わせた作用も零になるであろう。それゆえ、こうして再構成され た磁石は最初と同じ性質を持つ。つまり、それぞれの終端に1つずつ、互い に同じ大きさで反対で、これらの極のあいだの部分は磁気作用を示さない。
この場合、長い磁石は小さな短い磁石からできているから、また、現象は 破断されていない磁石の場合と同じだから、破断される前でさえ、長い磁石 は小さな粒子からできており、そのそれぞれが2つの同じ大きさで反対の極 を持っているとみなすことができる。もしすべての磁石がそのような粒子か らできていると考えると、それぞれの粒子の磁気の代数的な量は零だから、
磁石全体の量も零であり、言いかえれば、その極は同じ強さで反対種類であ
ることは明らかである。 p. 6
「磁気物質」の理論。
380.] 磁気作用の法則の形は電気作用の法則の形と同一であるから、電気
現象を1「流体」または2「流体」の作用に帰すために与えることができる理 由を、1種類の磁気物体の存在の方がよいのか、それとも2種類の磁気物質 がよいのか、流体がよいのか、それとも他のもののほうがよいのか、にも使 うことができる。事実、磁気物質の理論は、もし純粋に数学としてだけ使わ れたなら、新しい法則を現実の事実を説明するために自由に導入すると、ど んな現象も説明できないことはない。
これらの新しい法則の一つは、磁気流体はある磁石分子または粒子から他 の磁石粒子へ移ることができないが、磁化の過程はそれぞれの粒子のなかで
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8 第I章 磁気の初等理論 2流体をあるていど分離することでなければならず、一方の流体を粒子の一 方の端に濃縮し、もう一方の流体を他端に濃縮させるものでなければならな い。これがポアソンの理論である。
ポアソンの理論では、磁化が可能な物体の粒子は電荷を持たない小さな絶 縁された導体の類似物であり、それは、2流体理論では無限に大きいがまっ たく同じ大きさの2つの電気量を含んでいる。駆電力が導体に作用したとき、
駆電力が電気を分離し、電気を導体の反対側に現れるようにさせる。同様に、
この理論にしたがうと、磁力がもともと中性状態にあった2種類の磁気を分 離させ、磁気粒子の反対側に現れさせる。
軟鉄や永久磁化できない磁性体のような、ある種の物質では、この磁気状 態は、導体の帯電と同じように、誘導力が除かれたとき、消える註2。硬鋼 のような、他の物質では、磁気状態は、生成することは困難だが、生成され ると、誘導力が除かれたあとも、維持される。
このことは、後者の場合、保磁力があり、磁化の変化を防ごうとしており、
磁石の力が増加減少するまえに、保磁力に勝たなければならないと述べるこ とで表示される。帯電物体の場合、これはある種の電気抵抗に対応し、金属 p. 7
中で観測される抵抗とはちがって、ある値以下の駆電力にたいしては、完全 な絶縁体であることに等価である。この磁気理論は、対応する電気理論に似 ているが、あきらかに、事実にたいしてあまりにも大きいものであり、人為 的な条件によって制限される必要がある。ある物体が他の物体と、なぜ両流 体をより多く持つと違うかについて、なんの理由を与えないだけではなく、1 磁気流体を余分に含む物体の性質がどのような性質を持っていたかを述べる ことすら可能にしたはずであるからである。なぜそのような物体が存在でき ないかの理由が与えられていることは本当だが、この理由はこの特定の事実 を説明するために、後知恵で導入されたにすぎない。それは理論からは出て こない。
381.] それゆえ、あまりにも多くを表示可能にすることなく、新しい事実
から発展する新しいアイデアを導入する余地を残した表示法を探さなければ ならない。磁気粒子が分極していると述べることから始めると、これが得ら れると、私は思う。
註248ページの脚注参照。
術語「分極」の意味。
物質粒子が物体中のある直線、つまり、方向に関係した性質を持つとき、
そして、物体が、この性質を保ったまま、この方向が逆転するように回され たとき、もし他の物体にかんして粒子のこれらの性質が逆転するなら、粒子 は、これらの性質にかんして、分極していると言われ、その性質は特定の種 類の分極を構成していると言われる註3。
こうして軸のまわりの物体の回転は一種の分極を構成する。なぜなら、も し、回転が続くあいだ、軸の方向が反転されたら、物体は空間にかんして反 対方向にまわるからである。
そのなかで電気が流れている導体粒子は分極していると言うことができる。
なぜなら、もし導体粒子が回されたとして、もし流れがその粒子にかんして 同じ方向に流れ続けるなら、空間中のその方向は逆転するからである。
簡単に言うと、もし数学量や物理量が、11節で定義されたような、ベクト ル性を持つなら註4、この方向のある量、つまり、ベクトルが属する任意の物 体や粒子は分極註5していると言うことができる。なぜなら、それは方向の p. 8 ある量の2つの反対方向、つまり、極で反対の性質を持つからである。
たとえば、地球の極は回転に関係があり、したがって異なる名前を持って いる。
註3訳註: 物体を鏡に映すと、鏡の中の物体の像は前後が逆転しているが、磁気分極の方向は 逆転しない。しかし、電気分極の方向は逆転する。
註4訳註:四元数は、外積が自動的に計算できることから分かるように、私たちが高校で学ぶ空 間のベクトルよりも大きな概念である。単位四元数は球面S3の持つ対称性SU(2)を完全に表 すことができる。
註5polarization (分極,偏り)と言う言葉は光学ではこれと矛盾する意味で使われてきた。光学
では光線がその側面にかんする性質を持つとき、光線は偏っていると言われ、それは光線の反対 側面でも同一である。この種の偏りはもう一つの種類の方向のある量を指しており、双極性の量 と呼ぶことができる。単極性と呼ぶことのできた前の種類とは対立している。
双極性の量が反転されたとき、その量は前と同じまま維持される。固体中の張力や圧力、拡 張、圧縮、歪み、結晶体の光学的、電気的、磁気的な性質のほとんどは双極性の量である。
入射光の偏りの面を捩る透明な物体中の磁気によって生成された性質は、磁気それ自身と同じ ように単極性である。303節で参照された回旋性もまた単極性である。註6
註6訳註:マクスウェルが双極性の量として挙げた例(応力、歪)は、マクスウェルがベクトル の線形関数と呼んでいる、2階対称テンソルで表される量である。マクスウェルが単極性の量と して挙げた例は、マクスウェルがベクトルのベクトル値関数と呼んでいる2階反対称テンソル で表される量で、2階反対称テンソルはベクトルとしても表される。
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