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電子市民会議室における政党の役割:地域固有の政党設立を

ドキュメント内 01-全体表紙.PDF (ページ 39-47)

  筆者は電子市民会議室の議論に政党がかかわることに対しては結論をまだ出すまでに至っては いない。政党がある規模の集団の意見を集約し、指導することは可能であるが、市民の「生」の 声をデジタル・ネットワークに反映させるという本来の目標から外れてバイアスがかからないか、

という疑問が残る。また、政党の究極の目的は議会での多数派形成である。選挙という住民参加 のシステムが現存する限り、政党はどちらを優先課題にするかはおのずと分かる。イアン・バッ ジは直接民主制への展望に関し、楽観的な主張をしているが、政党が政治システムに対する意識 改革を十分に行っていることが大前提となる。日本の既存政党の構図は、度重なる小選挙区制に よる選挙を通じて二大政党制に向かっている。しかし、政党がデジタル・ネットワークを基礎と した市民直接参加型の議論を主導することを目的とするならば、既存の包括政党ではなく、地域 特有の問題を共有化できる程度の規模の少人数政党を認める多党制が適すると考える。イデオロ ギーや特定の政策分野での対立軸を超えた、市民により距離の近い政党の設立が容易に認められ る制度に改正しない限り、イアン・バッジの構想する直接民主制の構図にはなり得ないと考える。

  国政に準じた既存政党が地方議会でも同じ対立構図を持つのではなく、各地域特有の問題を市 民と一体となって議論できる地域固有の政党設立を認め、そのリーダーが電子会議室での議論の モチベーションを高め、政策形成に反映させる。そうした「政治の地方自治」が不可欠である。

参考文献

Ø イアン・バッジ『直接民主政の挑戦』(杉田敦他訳)2000年  他

客観指標を基盤とする政策プロセスの SQS による効率化

千葉商科大学政策情報学部専任講師 久保裕也 キーワード:客観指標,アンケート調査,知識共有,現場起点の改革,政策情報システム

■ 概要 

ベンチマーク・マニフェストなど,客観的指標を用いた経営管理的な発想に基づく政策手法が 普及しつつある.ただしこの導入の際には,意思決定に必要な定量データを調査・集計するため の,費用面・人材面での課題をクリアしてゆく必要がある.

そこで本研究では,無償・自由な利用が可能なソフトウェア(オープンソースソフトウェア)と

して筆者が開発している普通紙マークシート式調査システム,SQS(Shared Questionnaire system)を 提案する.SQSを用いることで,調査に要する金銭的・時間的コストを大幅に縮減できる.また,

調査のプロセス情報を形式知化し,異なる組織間でも共有・再利用しやすい形で記述できる.

■ 解決すべき課題 

  定量的調査を行い,データを収集する際には,次に示すような課題があることが知られている.

1. 調査業務をアウトソースするための手続き的・予算的な困難がある.そのため,特に集計な どの単純作業の部分で,職員など組織内の人的リソースが利用されることが多い.

2. 集計作業の負担が非常に大きい.そのため,年1回程度の調査しか実現できず,関係者への 分析結果のフィードバックが必ずしも十分なものにならない.

3. 調査実施担当者が,調査に関する専門的な訓練を受けているとは限らない.そのため,調査 票作成・結果分析において,無知ないし誤解にもとづく作業が行なわれてしまうことがある.

その結果,意味的に有効でない,質的に信頼性の低いデータとなり,政策形成に役立てられ なくなる.

4. マークシートやWebによるアンケートなどの集計支援システムは高価であり導入が難しい.

そのため,多くの組織現場が,Microsoft Officeなどのワープロソフトで調査票原稿を作成し,

調査票を通常の印刷機で印刷し,回収後にMicrosoft Excelなどでデータを手入力するという ように,システム化が十分でない形で調査業務が行われている.

■ 提案するツール 

筆者が開発している普通紙マークシート式調査システム,SQS(Shared Questionnaire system)を用

いることにより,次のような調査が実施可能となる.

1. PCのデスクトップアプリケーションで調査票原稿の作成をし,通常の白黒プリンタや印刷

機で普通紙に出力できる.これにより,調査結果を利用する現場自身が調査主体となり,

外部業者の手を介さずに調査票を設計できる.

2. 調査票への回答内容の読み取りと集計システムへの転記をする際の単純労働的な負担を,

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マークシート方式の回答用紙・汎用ドキュメントスキャナ・画像解析によるマーク読み取 りソフトウェアで構成されたシステムを用いることで代替できる(調査票1ページを約1秒 で処理できる).

3. 調査票は,第三者が作成した設計内容,以前に作成した設計内容を再利用することで,構 成的・差分的に作成することができる.これにより,複数の関連した調査・繰り返しの調 査を行なう際に,最小限のコストで調査を実施できる.

4. すべてのコンポーネントがフリーソフトウェアによって構成されており,汎用の(他の一 般的なオフィス用途に利用されている)安価な機器環境上にインストールされた,統合的 なシステムとして実現されている.

SQSを用いることで,調査仮説の構築に始まり,調査を実施し,調査結果を集計し,仮説の検

証に至るというような,調査プロセスの一貫した作業を支援することができる.

■ 適用事例 

SQSは,すでに社会的に広範な普及を果たしており,多様な事例で利用されている.以下に一

部を示す.

l 学校自己評価・点検,学生アンケートなどの用途で全学的に利用している事例 :

宮城県教育委員会・宮城県公立高等学校(87)、岩手県教育委員会・岩手県公立高等学校・中学校・小学校合

計(10)、群馬県教育委員会・群馬県公立高等学校・中学校・小学校(20),神奈川県藤沢市教育委員会・中

学校・小学校(5),千葉商科大学

l 自治体との連携により地域住民を対象とした学術調査を行っている事例 :

千葉商科大学(市川市・地震災害への対策のための調査, 1063名が回答),慶應義塾大学(小田原市・地震災害の 対策のための調査, 2976名が回答),

¦ 考察

客観指標を基盤とする政策プロセスを導入し実施する上で,人材面・費用面での課題がネック となる.これに対し,筆者が提案するSQSを用いることで,本来は専門的な知識技能を要する調 査票作成業務を,必ずしもその専門性を有していない現場実務者が担当できる.さらに,膨大な コスト(時間的コストまたは外注や機器購入による金銭的コスト)を要する集計処理について,

安価な汎用機材を用いた自動化が実現されたことで,従来では不可能だったような用途での調査 を行えるようになる.

SQS は,従来は「データ経営」を行う単位にならなかったような,中小規模の部署,中小零細 企業,非営利組織,公的機関,任意団体などでの利用が見込まれる.SQSを核として,客観的な 定量調査を行なう際の調査手法や調査票を,計算可能な形で共有することができる. SQS が学術 コミュニティと実社会の両方で共有されたツールとなることで,調査研究とそれに基づく政策提 言のサイクルを活性化する知的社会基盤を実現することが期待される.

¦ 参考文献

Ø 金子郁容, 玉村雅敏, 久保裕也, 木幡敬史. 学校評価--情報共有のデザインとツール. 筑摩書房, 2005, 196p.(ISBN 4-480-06217-3)

Ø Kubo, H., Ohashi, H., Tamamura, M., Kowata, T., Kaneko, I.. "Shared Questionnaire System for School

Community Management", Proceedings of Symposium on Applications and the Internet.. IEEE Computer Society, IPSJ Information Processing Society of Japan. 2004. pp.439-445.

Ø 久保裕也, 玉村雅敏, 木幡敬史, 金子郁容. カスタマイズ可能な調査スキーマの共有による学校評価支 援,. 情報処理学会論文誌, Vol.46, No.1. 2005. pp.172-186.

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ロシア連邦における社会経済格差と連邦制

慶應義塾大学大学院 法学研究科後期博士課程 長谷直哉

ソ連崩壊後の民族主義や地域主義の高まりを受けて、新生ロシアは国家体制として連邦制を選 択した。連邦制は非集権制を前提とし、連邦政府と構成主体(1)間における主権の分有を制度的基 礎とする。昨今、プーチン政権による中央集権的傾向に注目が集まってはいるが、構成政府の自 律性が奪われているわけではなく、ロシアは連邦制成立から10年余の間、そのシステムを維持し てきた。しかしながら、問題がないわけではない。近年BRICSの一角としてロシアの経済成長に 対する期待感が高まっている。ここ数年GDP成長率は5%を越えて推移しており、生活水準の向 上も著しい。ただし、こうした経済成長の恩恵がロシア全土にあまねく広がっているわけではな いのである。

ロシア連邦制の問題として、権限の非対称性や財政的な水平的不均衡がこれまで指摘されてき た。モスクワ市やサンクト・ペテルブルグ市などの中核都市、工業が盛んなウラル地域、石油や ガスなど天然資源が豊富な地域では生活水準やインフラ形成に顕著な向上がみられるが、それ以 外の地域ではむしろ所得格差の拡大や貧困世帯の増加などが社会問題となっている。昨年注目を 浴びた退役軍人に対する公共交通サービスや医療の無料提供を廃止すること等を目的とした福祉 政策改革(2)は象徴的な事例であった。社会主義時代の名残である手厚い福祉支出の削減は経済発 展重視の政策および政府機能の変化に対応するために必要なことではある。

しかし、貧富の格差拡大を懸念する民衆の反発は非常に強く、改革に反対する約8万人分の署 名がプーチンに手渡され、プーチン政権に対する支持率も大きく落ち込んだ。またこうした改革 は特定補助金の配分を減少させ、財政力が弱い構成主体の歳入を圧迫しかねない。ロシアでは住 居やコミュニティ関連政策、教育や保健衛生などの社会政策を主として構成主体が担っており、

成長格差の拡大が社会政策面における格差の拡大を助長しかねない構造となっている。連邦制導 入以降、教育や医療、社会扶助、年金、交通機関などに関連する多くの分野において構成主体に 業務移管され、構成政府の権限は飛躍的に拡大した。2004年における構成主体の歳出規模は一般 政府歳出の四割以上を占め、また自治体行政や産業インフラの整備、社会扶助などに対する支出 規模は連邦政府に比肩する大きさとなっている。このように構成主体が再配分や経済安定化に強 くコミットするようになった。

本報告ではロシアにおける地域間の社会・経済格差の実態を把握し、連邦制の導入が社会政策 の実施やその結果およびインフラ形成にどのような影響を与えたか分析・検証することを目的と する。この分析が通して、連邦制と経済・社会格差の関係について広く考察してみたい。

ドキュメント内 01-全体表紙.PDF (ページ 39-47)

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