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新たな省庁別財務書類への展望

ドキュメント内 01-全体表紙.PDF (ページ 32-36)

  公会計制度の抜本的な改革も含め、現在の省庁別財務書類を全面的に見直すと仮定した場合、

新たな省庁別財務書類の活用方法として次のようなものが考えられる。 

①  財政規律への活用 

  マクロレベルの中長期的な財政規律を設定し、国全体の財政を統制するため、省庁別財務書類 が提供する財務情報を活用することが考えられる。この場合、財務情報として国全体の経常的収 入・経常的支出、資産・負債が必要になる。 

②  省庁の財務目標への活用 

  省庁レベルの単年度の財務目標を設定し、各省庁の行政マネジメントを財務面から統制するた め、省庁別財務書類が提供する財務情報を活用することが考えられる。この場合、財務情報とし て人件費を含めた裁量的経費のコスト内訳が必要になる。 

③  実施庁の財務目標への活用 

  実施庁レベルの単年度の財務目標を設定し、実施庁の行政マネジメントを財務面から統制する ため、省庁別財務書類が提供する財務情報を活用することが考えられる。この場合、財務情報と して人件費を含めた裁量的経費のコスト内訳が必要になる。 

④  政策評価への活用 

  各省庁がより効率性の高い、或いはより費用対効果の高い政策手段により多くの予算を配分す るため、省庁別財務書類が提供する財務情報を活用することが考えられる。この場合、財務情報 として政策別のフルコストが、また、業績情報として政策別のアウトプット・アウトカム業績目 標の達成状況がそれぞれ必要になる。 

⑤  効率的な予算執行インセンティブへの活用 

  各省庁に対して、効率化を図りながら予算を積算通りに執行させるインセンティブを与えるた め、省庁別財務書類が提供する財務情報を活用することが考えられる。この場合、純資産に対し て資本コストを課すため、財務情報として人件費を含めた裁量的経費に係る資産・負債が必要に なる。 

⑥  市場化テストへの活用 

  市場化テストを実施するに当たり、省庁別財務書類が提供する財務情報を活用することが考え られる。この場合、財務情報としてアウトプット単位当たりのフルコストが、また、業績情報と してアウトプットの量・質・タイミングがそれぞれ必要になる。 

 

4. おわりに 

  我が国の厳しい財政状況を考えた場合、省庁レベルでの公会計の充実に向けた取組みは、企業 会計の考え方を活用して取りあえず財務報告を作成するという段階から、財務報告が提供する財 務情報を行政マネジメントに活用するという段階へ移行すべき時期に来ていると考えられる。そ のためには、先ず最初に現行の公会計制度では把握できないが、効率的な行財政活動を行う上で 必要となる財務情報を特定するとともに、その具体的な活用方法を明確にすることが不可欠であ る。これにより、現行の公会計制度の抜本的な改革も含め、必要な財務情報を入手したり、それ を活用するための制度を整備することが可能となる。この場合、各省庁の行財政活動は、財務情

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報だけでは評価できないため、いかに業績情報とリンクさせて活用するかが制度設計上のポイン トとなる。 

地方自治体の IT 調達改革の現状分析

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 庄司昌彦

キーワード:電子自治体、IT調達改革、入札制度改革、システム開発プロセス改革、政策評価  

 

2001年開始のe-Japan戦略に代表されるように、政府・地方自治体等、公共部門の情報化は急

速に進んでいる。公共部門を相手とする情報サービス産業の市場は1.6兆円もの規模がある(2003 年特定サービス産業実態調査)。

こうした中、2001年頃から政府機関や地方自治体の情報システム開発の調達(IT調達)で「安 値落札」問題が頻発した。これは、情報システム開発を数万円などといった安値で受託し、自社 でなければ開発を続けられないようなシステム構成にしたりソフトウェアのブラックボックス化 を進めたりすることで、翌年からは随意契約で継続開発や保守運用などを受託し、長期的に安定 した利益を上げるものである。だが、このような長期的で大規模な資金繰りができるのは大企業 に限られるため、正当な対価を求める中小・ベンチャー企業は市場参入の機会を奪われ、また一 度落札すれば競争が起こらなくなるため、システムの質の低下や高コスト化を招く可能性が高い。

  この問題を契機として政府では経済産業省を中心に研究が始まり、「総合評価方式一般競争入 札」の利用推進や、EA(Enterprise Architecture)の考え方に基づく「業務・プロセス最適化計画」の 導入、外部専門家のCIO補佐官登用などが全省庁で行われるようになった。だが、地方自治体に ついて全国的な状況をまとめた調査や、地方自治体のための改革施策の研究は極めて少ない。そ こで筆者らは2004年6月から「地方自治体IT調達協議会(座長:國領二郎慶應義塾大学教授)」 を組織し、全国の都道府県と市における情報システム開発市場やIT調達改革の実態調査を行った。

  その結果、地方自治体で現在行われているIT調達改革は、中央省庁の改革手法とは異なること が明らかになった。EAやCIO補佐官は浸透しておらず、さまざまな独自の取組みが行われてい た。そこで地方自治体が行っている施策と、それによって解決しようとしている問題、その原因 の関係を分析し、改革施策を2分野・4類型(調達制度改革における「入札制度適正化」「地域産 業振興」、開発プロセス改革における「ガイドブック型」「SI連携型」「自前設計型」「限定改善型」) に整理した。

この整理に対応する形で10項目の評価指標を設け、都道府県と市を対象とする施策の実施状況 調査を行ったところ、すべての評価指標において、都道府県の方が市よりも実施比率が高く、ま た、市のなかでも人口規模が小さい市ほど取り組みが遅れている傾向が高いことが明らかになっ た。また「開発プロセス改革」よりも「入札制度改革」の方が、実施割合が高かった。ただし、

小規模市はそもそも情報システム開発を行う予算や人材を確保して実施するのが困難であり、共 同アウトソーシングや民間ASPサービス、パッケージソフトの利用など、国や都道府県・大規模 市のIT調達改革とは異なる方向性を目指すべきであることも明らかになった。

また、今後はIT調達改革への取組み方によって、情報システム開発のコストやパフォーマンス、

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地域経済活性化といった効果(アウトカム)の面で自治体間に差異が生まれてくると考えられる。

そこで「コスト」「パフォーマンス」「地域経済活性化」の指標を独自に設け、各地方自治体の値 を算出した。コスト・パフォーマンスの総合1位は都道府県では北海道、政令指定都市では札幌 市であった。

「地域経済活性化」とは、地方自治体が発注した事業がどれだけ地元経済に還流し、中小企業 や人材の育成に貢献しているのかというもので、地方自治体特有の論点である。この評価のため に各地方自治体における公募型 IT調達の落札企業の属性を分析したところ、47都道府県の落札 総額においてもっとも多かった企業属性は、ジョイントベンチャーで 25.7%、次いで各都道府県 内にある四大グループ企業(NEC、日立製作所、富士通、NTT)の支店で24.1%、東京の四大グ ループ本店が15.3%であった(四大グループ本支店合計シェアは39.4%)。それに対し、各都道府 県内の小規模企業(従業員300人未満)が落札した金額は、全体の0.9%であった。13政令指定 都市では四大グループ本支店のシェアがさらに大きく、91.6%であった。地域経済活性化指標の 値で最も高かったのは長崎県で、公募型IT調達案件はすべて地元の企業が落札していた。

都道府県レベルではIT調達改革が本格的に始まりつつある。だが、地方自治体のIT調達改革 という問題は中央省庁の問題よりも複雑で、地域経済活性化などの独自の論点もある。特に、地 方自治体の人口規模や投入できる資源に応じてとるべき施策が大きく異なると考えられるので、

地方自治体の規模等に応じた改革施策の有効性などの研究がさらに必要である。

電子申請の個人利用促進の方策

― 企業による電子申請と個人による電子申請の比較 ―

千葉商科大学大学院 政策情報学研究科修士課程

山田善弘

1. はじめに 

日本では、政府主導のもと、電子政府・電子自治体の構築が進んでいる。その一翼を担うサー ビスとして、電子申請がある。電子申請は、年間取扱数の多い申請から電子化が行われており、

現在では全体の申請の96%(約13000 件)の手続きが電子化されている。このように行政手続き の電子化が進んでいるが、その一方で行われている電子申請のほとんどが企業・士業による大口 の申請である。本来、電子申請は企業・士業のためのものではなく、だれでもが利用するもので なければならない。しかし、個人による申請は、全くと言っていいほど行われていないという現 状がある。この原因として、以下の3点が上げられる。

• 企業による申請と個人よる申請では利用方法に大きなひらきがある

• 電子申請の「使い勝手」が悪い

• 電子申請に対する認知度が低い

本研究では、企業による申請と個人による申請を比較し、利用されるための要素を探るもので ある。

ドキュメント内 01-全体表紙.PDF (ページ 32-36)

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