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雲仙普賢岳の火山災害における交通 の途絶が地域に及ぼした影響調査

高橋和雄

1

・ 藤 井 真

2

1正会員工博長崎大学教授工学問土部再発工学科(〒852長崎市文教町l14)

2学生員長崎大学大学院学生工学部社会開発工学科(〒852長崎市文教町114)

雲仙普賢岳の火山災害による道路・鉄道の被害に伴う交通の溜色は住民の通勤・通学,日常生活およひ物流,

観光などの地域経済活動に大きな間接的ダメージを与えた.これまで,雲仙普賢岳の火山災害における交通の 崩 卸2出或に及ぼした影響調査は行われていない.そこで,木報告では,長期化する火山災害に対して導入さ れた道路およ悶旭の応急復旧およひ緊釦棟費を調査するとともに,代替交通利用による交通コストのt酬 の計測を行った.また,平成36月の水無川断面の通行止め当時の島原市への通勤者l認すするアンケート調 査により交通の湖色が出或住民の生活に及ぼした影響を明らかにした.

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1 .まえがき

雲仙普賢岳の火山災害において,幹線道路である国道 251号や国道57号および島原鉄道が平成36月から水 無川断面で警戒区域に含まれて全面通行止めとなった り,火稲明およひや土石流によって度々通行止めとなった.

これにより,島原半島の拠点都市である島原市の水無川 断面において島原半島の交通が分断された1) (図ー1参 照).火山災害発生以前から道路網の不足が指摘されて いた当地域での交通の途絶は周辺地域への波及効果が 大きく,島原市はもとより島原半島全体の様々な分野に 影響を及ぼした.特に,深江町,布津町,有家町,西有 家町といった島原市と水無川を隔てて南側に位置する 町(南目)は島原市経済圏に含まれ,住民の勤務先や買 物先などの多くを島原市の中心市卸也に依存している.

このため,水無11断面で、の交通の途絶により通勤・通学,

日常生活およひ糎済活動に大きな影響を受けた2) さら に平成5年には中即11流域にも土石流による被害が発生 し.J}::無川および中尾川断面での交通の分断に島原市は 一時孤立し,パニック状態に陥った.

雲仙普賢岳の火山災害による被害額は,約2,300億円 (平成8年3月31日現恋)であり,そのうち1,500億円 が間接被害とされている2) 間接被害額はそのほとんど を観光客および修学旅行の枇少および島原市中Jじ、商官街

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図 ‑1 島原半島道路網図

からの客離れなどによる商工被害が占めているが,この 商工被害の大きな要因のーっとして道路およひ敬道の不 通が挙げられている.

これまで,今回の火山災害による道路およひ敬道の被 害に対して導入された応急・緊急刻策のコスト,交通の 逸絶が地域に及ぼした径済的影響l諒周査されていない.

表‑1 国道251号通行規刷。:経緯

長崎県民事対策本邸

年月日 i繭行規制箔置 通行剛間帯 通行可能車両

H3.6.8  盆面通行止め 終日 見事県令車両のみ

?2 許可車両のみ片側空互通行

(駐停車禁止〉 AMIO同 ........ PM4∞ iな ど 物 車 両 に 隈 る )干可車両1(生活必需品 8.111 [z  向上 AM9:00 ....... PM$加 向上 8.27

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同上 AM7:00........PM6:00  同上

9.22 

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自由対面遇f'r(駐停車祭止} AM7:00 ....... PM6 定期パスを除〈主車両

10.15  同よ AM6:00......PM6:00  主車両 12.20 

空通開放(駐停車祭止〉 終日 同上

しかし,災害に文村ーる事前の道路整備を考えると,交通 の途絶によるコストの増大を調査しておくことが重要と 考えられる.また,著者らがこれまでに実施した島原市 民へのアンケート調査においても「これから充実してほ しい生活基盤J3)  (平成5年), I現在の生活で不便・

不満に思うことJ4)  (平成6年), I災害復興に向けて 重要なことJ5)  (平成7年)といった設問で,いす苛もも 道路・交通関係の項目が最も多く選lおもており,道路網 の整備に対する市民のニーズが高いことがうかがえる.

そこで,本研究では,長期化する火山災害による交通 途絶の影響を明らかにするために,道路・鉄道に導入さ れた応急復旧・緊急対策の費用を調査するとともに,通 行止めおよび通行規制期間の代替交通利用による交通 費用の増加の計測を試みる.

さらに,国道251号,国道57号および島原鉄道が閉 鎖された時期における通勤,買物行動などに対同実態 調査は行われていない.このため,本研究では,平成3 年6月の国道251号通行止め時の南目からの通勤者に対

して,当時の通勤および買物動態,生活への影響などの アンケート調査を期包した.これらの結果をもとに,交 通途絶が地域へ及ぼした影響について得られた結果を 報告する.

2.  道 路 の 応 急 復 旧 対 策 と そ の 費 用6) 

本研究の対象としている島原地域の特性と雲仙普賢 岳噴火における被災の程度および災害対策の経緯につ いては文献7)の図‑1,表 1および表‑2に述べて いるのでこれらを参照してほしい.

(1)国道251号および57号線

平成368日の警戒区域設定に伴い,水無川断面 の国道251号', 57号および島原鉄道が全面通行止めとな った.このため,南目から島原への交通は山越えの迂回 路と国道251号の逆回りの2ノレートのみとなったが,迂 回路が幹線道路でないため大型車両が走行できないこ とや時間の増大が大きな課題となった.通勤・通学に対 しては海上代構能および夏休みの繰り上げが実施さ

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表‑2 国道251号および57号の応急復旧費

資料提供)国道251号 長 崎 県 島 原 振 興 局

年度 H3  H4  H5  H6 

H7  合 計

国道57号・建設省長崎工事事務所 (千円)

国道251号 国道57号 4,289 

16,348  43,557  148,990  24,192  649476 

96,325  819,¥03  164,074 

れたが,商用などの物流の大型車両は道路を迂回するし かなく,コストの増大が著しかった.経済活動の再開に は, トラックなどの商用の車両の通行が不可欠であるた め,被災していない警戒区域内の国道251号の5.6k111区 間の使用が前提となる.最初の警戒区域の設定期間内の 平成3年6月25日に開催された島原市定炉蟻会で「時簡 を区切って通行できるようにならなし、か」との一般質問 があった.また,地元の商工業者を中心[;:t{j1J或住民から も国道251号の早期使用再開の要望が出された目このた め,長崎県は, 7月27日から安全管理システムを作成し て,生活必需品などの物資を運ぶ車両に限り通行を許可 した.さらに,時間帯を順次拡大し通行の許可も通行 毎でなく,一回で済むようにした.この結果,貨物車で あれば自由に通行できるようになった.そして,避難勧 告区域になった後に,一般車両の時間帯通行を許可し,

平成3年12月20日に196日ぶりに全面交通開放を行っ た.これら一連の経緯を表ー1に示す.

国道251号は,平成4年以降,度重なる土石流の発生 によって水無川断面および平成5年には中尾川断面で通 行止めとなった.7)<無川断面では平成56月までは,

土砂が路上に堆積するとその都度土砂を排除して使用 を再開したが,平成5年7月以降は除石を中止し,土砂 を整地した簡易舗装によって通行を再開した.

一方,水無川断面の国道57号は平成368日l 警戒区域に含まれて通行止めとなったが,避難勧告区域 になると平成4年9月18日に通行再開工事が着工され,

10月19日に504日ぶりに全面通行再開となった. しか し 平 成5年6月18日の土石流により水無川橋が流失 するなどの被害が生じ平成7年4月28日までの670

日間再び通托止めとなった.

平成3年から平成8年までの国道251号および57号 の土砂の排除費,舗装費,応急仮橋の設置費および国道 251号の水無川橋の架け替え事業費などをまとめた応急 復旧費を表ー2に示す.国道や河川に堆積した土砂をト ラックに積み込んでふ土砂ヤードまで運搬するための費 用は, 5,∞0円

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であった.

緊急刻策としては,土石流による路上堆積土砂を排除 する聞の交通対策として,平成3年6月30日以来土石

表‑3 国道の通行止め伴う代替道路の工事費 (千円) 路 線 工 事 費 主要地方道国見雲仙線

l 工区 (L~506m) 712950 

2 工区 (L~680m) 212300  待遊所 50,450  国道251

ロックシェッド 1259727  国道57

(1日町道バラバラ松・石札線)

道路拡幅(H4) 250000  交差点改良(H5) 140000 

2625427  流の流路となっている国道251号の北安徳町と鎌田町を 跨ぐ国道251号緊急連絡橋が平成465日に完成し た.さらに平成5年7月4日の中尾川流域への土石流の 有!:;k.:tこ伴い,国道251号の扇回大橋が決壊するおそれが 生じた.このため,中尾川において迂回路の役目を果た す中尾川緊急速絡橋が平成5年10月29日に完成した.

建設費は,国道251号緊急速絡橋が22千万円,中尾 川緊急速絡橋が7億円であった.緊急速絡橋は3年間使 用¢仮設構造物で,建設費には撤去費も含まれてい る.

( 2 )その他の道路

国道251号および国道57号の水無川断面の通行止め 時には,雲仙まわりの県道国見雲仙線(図ー1参照)を 利用する路線が迂回道路として使用され,この路線に交 通が集中し,国道の代替道路となる他の路線も交通量の 増加が見られた.

代替道路を整備するため,県道国見雲仙線のfJ吋兵町吹 越の落石の恐れのある区間(I工区500m2工区680m)

を防災工事した.さらに同国見町魚洗川の2,9kmにおい ては,車両離合のための待避所を 10箇所設置した.岡 県道は,平成541日に国道389号に昇格した.

大型車は,幅員が狭い山間部の国見雲仙線より海岸線 を走る国道251号を逆回りして代替道路とすることが多 く,盤情路として交通を確保するため,異常気象時の 事前通行規制区間(南串山町 加津佐町の約4.0km)に

ロツクシェッド16箇所をー設置した.

さらに,長期間通行止めのままである国道 57号の迂 回路として国道251号と国道57号をつなぐ町道バラバ ラ松・石机線 ι,=2km) を国道に格上げし,倶~ì毒に蓋を しての車道拙幅,国道との交差

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の改良などの整備を実 施した.これらの整備費用をまとめると,表ー3に示す

とおりである.

また,長崎県が昭和 50年度から進めていた広域営農 団地農道割積事業において建設されてし、た広域高萱の

‑4 島原鉄道の災害復旧費および土石流対策費

島原鉄道(練) (平円〉

水 無 川 . 場 淀 堤 節 中 尾 川 部 合 計 年 度 山 富 復 悶 費 土 石'1対策費 災事11侶費 土石I郁子策費 民畜復旧費 土石涜対策費

H.I  132960  112何,O

E8 63490  49.~14 63490  49514 

Hl  ωo  ω

H6  30.141  ~28' 30141  8288  H7  1307623  75,188  1.301623  758180 

"8  1.70398 1.1'5∞, 1703殉,B 1155

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a 3238202  49.'14  ω

1.1468 3238船2 1970982  北部地区(島原市三会 北高来郡愛野町)が,平成61月に雲仙グリーンロードと名付けられ供用を開始した.

この広域農道が国道251号の諌早方面へのノ《イノfス的機 能を果たしている.

3.  鉄 道 の 応 急 復 旧 対 策 費B)

島原鉄道(株)では,平成3年6月3日の火石輔の発 生後,現

1

踊周査を実施し,その結果から南島原 布津間 の運行中止を自主的に決めた.この後,高校の夏休み明 けとなる同年81日から,通学のf更を図るために南島 原 島原外港聞の運転を,また8月 10日から深江 布 津間の運転を再開した.平成3630日の土石流に より被害にあった警戒区域内の軌道については,警戒区 域が過務主勧告地域に規制が緩和された平成3年 II月4

日から災害復旧工事に着手し,平成3年12月27日に全 線復旧した.なお,安全確保のため,島原外港 深江間 を運行する列車内に無線受信機および携帯電話を備え 付け,水無川周辺の3駅は通過するなどの措置をとった.

平成4年も土石流の発生に伴い, 4月に13日間, 8月 に21日間の計34日間,諌早 島原タト港問,深江 加津 佐聞の列車折り返し運転を余儀なくされた.その都度応 急復旧を行い,土石流の発生を警戒した運行基準を作成 して,通行の安全を確保した しかし,平成5年4月28 日の大規模な土石流災害を始め, 4月から7月にかけて 数次にわたる土石流災害により,安徳 瀬野深江間 (1.25km)の軌道が再ひ湛大な被害を被った この後,

安中三角地帯の嵩上げ明幕流堤の建設,71<無)11の拙幅,

嵩上げなどの公共事業との調整もあって,島原タト搭 深 江間 (6.4km)の復旧事業の着手が遅れていた.平成 7 年6月に被災区間の高架化による復旧事業に着手し,平 成9年4月の開通を予定している.

雲仙普賢岳の火山災害による災害復旧費および土石 流対策費を表ー4に示す.平成8年度までに約52億円 を投じているが,これには平成7年および8年の被災区 間の復旧費,約 30億円が含まれている.被災区間の復 旧費については,国,長崎県および島原杭萱が負担する ことになっている.また,度重なる土石流による被害や 運休で収入減などのダメージを受けた島原鉄道に対し