• 検索結果がありません。

2. 継続したゲームプレイからの離脱理由

2.4. 離脱理由定量調査

2.4.2. 離脱理由定量調査結果

2,464 人の回答から、年齢性別の記載がない標本を除いた 2,417 人を有効回答とした。被

験者の属性を表2-4に示す。

表 2-4. 定量調査の被験者属性 年齢 男 女 計

~19歳(20歳未満) 63 33 96

20~29歳(20歳代) 489 281 770

30~39歳(30歳代) 588 255 843

40~49歳(40歳代) 561 95 656

50歳~(50歳以上) 30 22 52

計 1,731 686 2,417

各要素の経験者数を、多い順に並べた上位15 項目について、分類、総合計、母数に対す る離脱経験者数を表す離脱率を表2-5に、全項目についての詳細を付表1に示す。

- 52 -

表 2-5. 要素別離脱総合計上位15項目 要素 分類 総合計 離脱率 ブランク 忘却 1,468 60.7%

生活変化 不可抗力 1,340 55.4%

単純作業 面白くない 1,236 51.1%

違和感 不快 939 38.8%

不十分 面白くない 849 35.1%

高難易度 限界 825 34.1%

課金必須 面白くない 818 33.8%

疲労 無理 764 31.6%

環境喪失 不可抗力 736 30.5%

繰り返し 面倒 736 30.5%

強敵 限界 715 29.6%

ガチ勢 限界 712 29.5%

自己目標 目標達成 680 28.1%

時間管理 面倒 605 25.0%

絶対有利 面白くない 587 24.3%

最も離脱経験が多い上位 2 つは、直接ゲームとは関係のない理由であった。次に性別、年 齢層別の特徴を記述内容の分析も含めて説明する。

(1) 男女差が顕著な項目

男女別の離脱率上位10件を表2-6に示す。

表 2-6. 男女別離脱率上位 男性 順位 女性 離脱率 離脱理由 離脱理由 離脱率

59.0% ブランク 1 ブランク 65.2%

54.3% 生活変化 2 生活変化 58.3%

52.0% 単純作業 3 単純作業 49.0%

41.5% 違和感 4 高難易度 41.4%

37.8% 不十分 5 疲労 36.3%

34.4% 課金必須 6 強敵 34.3%

32.5% 繰り返し 7 環境喪失 32.7%

31.6% 自己目標 8 課金必須 32.4%

31.3% 高難易度 9 違和感 32.1%

30.3% ガチ勢 10 不十分 28.3%

上位で顕著なのは「高難易度」と「不十分」の関係である。これはプレイ技術とフローの関連

- 53 -

から、女性に比べ男性の方が高難易度に挑戦する傾向が強いと分かる。これは女性のみ上位 に「強敵」が入っていることにも繋がる。

男性では「自己目標」の離脱率が高いが、これはやり込みや探求で本来のゲームのゴール を超えてプレイしている傾向を示している。女性では「疲労」、「環境喪失」の離脱率が高いが、

これはプレイに対する執着が弱い傾向を示している。

下位の項目で、男性の離脱率が高いのは「不良 AI」、「ネット過疎」、「パラメータ」、「マッチ ング」であり、思い通りにならないから止めるという自分勝手な傾向が見られた。同様に下位の 項目で、女性の離脱率が高いのは「ショック」、「ボス進化」、「怖過ぎ」であり、強い刺激を不快 と感じる傾向が見られた。

(2) 年齢による全体の傾向

離脱理由項目全体で見た、年齢層別の平均離脱率を表2-7に示す。

表 2-7. 年齢層別の平均離脱率

年齢層 20歳未満 20歳代 30歳代 40歳代 50歳以上 離脱率 17.00% 19.41% 18.72% 19.03% 13.79%

20歳未満の若年層と50歳以上の高年齢層に、全体として離脱率が低い傾向が見られた。

この原因として、若年層では経済的理由によりゲームを途中で止められない、高年齢層では 許容力が加齢により高くなっていることと、新しいゲームに挑戦するより慣れたゲームを遊び続 ける傾向が強いことが挙げられる。

偏りのパターンとして、全体に増加減少の傾向を持つもの、一部の年齢層が突出しているも の、大きな年齢差が見られないものがあった。以下の年齢層間比較は、各セグメントの離脱率 に母集団の平均離脱率の逆数を掛け、最大離脱率であった20歳未満におけるブランクを100 とする指数を用いて行った。相関係数と離脱指数の傾き係数は回帰分析により求めた。

年齢層別の離脱指数上位 10 件を表 2-8 に示す。上段が理由、下段数字が離脱指数であ る。

- 54 -

表 2-8. 年齢層別離脱指数上位10

順位 20歳未満 20歳代 30歳代 40歳代 50歳以上 1 ブランク

100.0

ブランク 87.2

ブランク 87.2

ブランク 87.2

ブランク 87.2 2 生活変化

86.7

単純作業 78.8

生活変化 80.5

生活変化 86.4

生活変化 83.5 3 単純作業

85.0

生活変化 73.3

単純作業 72.5

単純作業 68.1

高難易度 79.7 4 課金必須

70.1

不十分 55.9

違和感 59.2

高難易度 57.3

単純作業 72.0

5 不十分

61.6

違和感 54.8

不十分 49.7

違和感 55.3

違和感 68.3 6 繰り返し

58.4

課金必須 50.6

高難易度 46.9

課金必須 49.9

疲労 64.5 7 高難易度

50.1

疲労 45.1

ガチ勢 44.5

強敵 49.9

長時間 60.8 8 自己目標

50.1

環境喪失 44.3

課金必須 44.2

疲労 48.2

身体限界 56.8 9 環境喪失

50.1

高難易度 43.4

疲労 43.7

環境喪失 45.6

強敵 53.1

10 ガチ勢

48.3

ガチ勢 42.9

繰り返し 43.3

繰り返し 44.9

環境喪失 53.1

(3) 加齢による増加傾向

正の相関係数が高い物の中で、離脱指数の傾き係数が 4.00 以上となった、加齢による増 加傾向の高い項目を表2-9に示す。

表 2-9. 加齢による増加傾向の高い項目

離脱理由 20歳未満 20歳代 30歳代 40歳代 50歳以上 相関係数 傾き係数

諦め 20.0 26.8 27.2 32.3 37.9 0.976 4.13

新ゲーム 6.7 16.5 18.9 26.6 45.6 0.954 8.78 3D酔い 13.3 17.8 29.5 27.5 34.1 0.942 5.14 身体限界 15.0 20.3 23.7 29.5 56.8 0.895 9.27

違和感 38.4 54.8 59.2 55.3 68.3 0.880 6.03

長時間 28.3 23.7 37.2 37.5 60.8 0.871 7.87

疲労 40.0 45.1 43.7 48.2 64.5 0.865 5.21

高難易度 50.1 43.4 46.9 57.3 79.7 0.799 7.32 違世界観 20.0 35.3 38.5 25.9 45.6 0.649 4.17

「諦め」、「高難易度」は、プレイスキルの加齢による低下によると考えられる。ただし高難易 度では、20 歳未満が経済的理由からフリーミアムゲームをプレイする機会が多く、ゲームの序 盤から難易度が高いと、将来課金必須になることを考えて離脱し、別のゲームに移行していた。

これを例外とすると、高難易度による増加傾向はさらに高くなる。

- 55 -

「新ゲーム」、「違和感」、「違世界観」は、既成のゲームへの慣れによると考えられる。加齢 により新しいシステムやデザインに馴染みにくくなると想定できる。

「3D 酔い」、「身体限界」、「長時間」、「疲労」は、加齢による身体能力の衰えによると考えら れる。特に反射と運動が必要となるアクションゲームに顕著で、スポーツとして見たゲームには 年齢による適正があると言える。

(4) 加齢による減少傾向

負の相関係数が高い物の中で、離脱指数の傾き係数が-4.00 以上となった、加齢による減 少傾向の高い項目を表2-10に示す。ただし特例として「不十分」も加えた。

表 2-10. 加齢による減少傾向の高い項目

離脱理由 20歳未満 20歳代 30歳代 40歳代 50歳以上 相関係数 傾き係数

怖過ぎ 23.4 23.0 15.4 8.7 7.5 -0.964 -4.60

低確率 31.7 28.7 26.6 21.2 11.4 -0.954 -4.80 自己目標 50.1 42.0 39.7 39.5 30.4 -0.943 -4.20 見て満足 26.7 28.0 23.0 14.9 7.5 -0.941 -5.16 ガチ勢 48.3 42.9 44.5 39.6 26.6 -0.889 -4.66 誤選択 26.7 25.8 25.3 19.9 7.5 -0.874 -4.44 不十分 61.6 55.9 49.7 44.2 53.1 -0.696 -2.88 課金必須 70.1 50.6 44.2 49.9 49.3 -0.669 -4.22

「怖過ぎ」、「ガチ勢」、「誤選択」は、加齢による耐性向上によると考えられる。これらはプレイ ヤーにストレスとして働くが、コンテンツ内容による場合は高年齢層の離脱は少ない。一方「ガ チ勢」では、若年層が勝てないことを重視しているのに対し、高年齢層は負けることより面白く ないことを重視し、ある程度以上の離脱率になっている。

「低確率」、「見て満足」、「課金必須」は、時間的、経済的コストによると考えられる。「見て満 足」では 20 歳代の離脱指数が高いが、これはゲームプレイ動画を視聴する機会が多いという 世代的特徴による。また「課金必須」では30歳代の離脱指数が低いが、これは時間的コストを 課金でカバーするプレイヤーが多いという世代的特徴による。

「自己目標」、「不十分」は、年齢によるプレイスタイルの違いと考えられる。「自己目標」は若 年層では本来のゲーム目的を超えた、やり込みプレイの結果としての目標達成を、高年齢層 では本来のゲームの目的に到達しない離脱を主としている。自己目標とゲーム本来の目的と の関係で分ければ、さらに高い減少傾向となる。また「不十分」は、50歳以上に80年代のアー ケードゲームを原体験とする、高難易度ゲームの愛好者が多く、これを例外とすると減少傾向 はさらに高くなる。

(5) 世代による傾向

相関係数の絶対値が0.5以上の中で、平均指数より10以上差異のある年代を含む項目と、

相関指数の絶対値が 0.5 未満の中で、最大指数と最小指数の差異が 10 以上ある年代を含 む、世代による特徴を持った項目を表 2-11 に示す。他より特徴的に低いデータは水色で、高

- 56 - いデータは赤色で色分けした。

表 2-11. 世代による特徴を持った項目

離脱理由 20歳未満 20歳代 30歳代 40歳代 50歳以上 相関係数 傾き係数

不具合 15.0 24.8 26.9 30.9 30.4 0.906 3.68

燃え尽き 43.4 34.3 24.7 22.9 30.4 -0.720 -3.74 ブランク 100.0 87.2 87.2 87.2 87.2 -0.705 -2.55 繰り返し 58.4 42.5 43.3 44.9 41.8 -0.701 -3.07 生活変化 86.7 73.3 80.5 86.4 83.5 0.188 0.66 ソロプレイ 23.4 35.5 28.6 27.9 18.9 -0.420 -1.64 絶対有利 43.4 36.7 33.3 33.7 41.8 -0.207 -0.60 環境喪失 50.1 44.3 41.4 45.6 53.1 0.248 0.73 課金無効果 15.0 22.4 26.2 23.3 15.2 0.037 0.12

不良UI 6.7 14.2 15.6 20.0 7.5 0.209 0.74

操作感 20.0 26.1 25.9 31.5 22.7 0.397 1.08

意図的停滞 21.6 23.3 21.7 14.9 7.5 -0.878 -3.66 案内不足 18.4 22.6 14.1 16.7 3.7 -0.788 -3.51 友達離脱 18.4 20.9 21.7 15.0 3.7 -0.763 -3.52 説明不足 38.4 32.4 28.8 39.5 15.2 -0.636 -3.93 人間関係 25.0 30.7 31.5 29.0 15.2 -0.501 -2.12 時間管理 28.3 37.1 39.1 33.3 15.2 -0.498 -3.01 やり残し 16.6 23.0 22.1 19.6 11.4 -0.466 -1.38

理不尽 8.3 15.7 18.5 12.4 26.6 0.765 3.34

20 歳未満は「不具合」が低く、「燃え尽き」、「ブランク」、「繰り返し」が高い。不具合はコンテ ンツに対する疑念を持ちにくい、若さゆえの特徴と想定される。高い項目は、スマホゲームを 主体とするプレイスタイルで、コンテンツを回遊しながら一気にプレイし、新しいゲームに移行 するためと考えられる。

20 歳代は「生活変化」が低く、「ソロプレイ」が高い。生活変化は、独身者が多く可処分時間 を自由にしやすいためと、社会的な立場の変化が少ないためと想定される。ソロプレイは、世 代的にオンラインゲームに抵抗感がなく、新たにプレイを始める機会が多いためと考えられる。

30 歳代は「絶対有利」、「環境喪失」が低く、「課金無効果」が高い。この世代は経済的にゲ ームにコストを掛けられるため、「Pay to Win」8F9を受け入れる傾向があると想定される。また環境 喪失に関しても、新機や代替機の購入や新ゲームへの移行に抵抗がないと考えられる。

40 歳代は「不良 UI」、「操作感」が高く、自分のスキルレベルの低下をコンテンツに責任転 嫁している傾向があると想定される。この項目は 50 歳以上では数値が極端に下がっているの で、加齢によりスキルレベルの低下を認識し、自分のプレイに納得したと考えられる。

9 Pay to Win: フリーミアムゲームで、勝つためには課金が必要な設定のもの。