第五章においては、雑則として、①第一種特定化学物質、第二種特定化学物質に該当する疑いがあ る化学物質に関する勧告(第二十九条 、②監視化学物質又は第二種特定化学物質に関する指導・助) 言(第三十条 、③許可に係る条件(第三十一条 、④事業者が自主的に取得した有害性情報の報告) ) 義務(第三十一条の二 、⑤第一種監視化学物質又は第二種特定化学物質等に関する取扱いの状況に) 関する報告(第三十一条の三 、⑥主務大臣による報告徴収(第三十二条 、立入検査等(第三十三) ) 条〜第三十三条の三 、⑦関係大臣への通知(第三十四条 、⑧環境大臣による要請(第三十四条の) ) 二 、⑨許可の際の手数料(第三十五条 、⑩不利益処分の際の聴聞等の手続(第三十六条、第三十) ) 七条 、⑪経過措置の政令等への委任(第三十八条 、⑫主務大臣、主務省令の整理(第三十九条 、) ) )
⑬他の法令との関係(第四十条 、⑭審議会等の意見聴取(第四十一条)といった規定が置かれてい) る。
○第二十九条(勧告)
(勧告)
第二十九条 主務大臣は、第一種特定化学物質以外の化学物質について第二条第二項各号の一に(1) (2)
該当すると疑うに足りる理由があると認めるときは、当該化学物質による環境の汚染の進行を 防止するため必要な限度において、当該化学物質の製造若しくは輸入の事業を営む者又は業と(3)
して当該化学物質を使用する者に対し、当該化学物質の製造若しくは輸入又は使用の制限に関(4)
し必要な勧告をすることができる。(5)
2 主務大臣は、第二種特定化学物質以外の化学物質について第二条第三項の要件に該当すると(6)
疑うに足りる理由があると認めるときは、当該化学物質による環境の汚染の進行を防止するた め必要な限度において、当該化学物質の製造若しくは輸入の事業を営む者又は業として当該化(7)
学物質を使用する者に対し、当該化学物質の製造若しくは輸入の制限又は使用方法の改善に関(8)
し必要な勧告をすることができる。
(昭六一:本条改正)
【趣 旨】
本条は、第一種特定化学物質又は第二種特定化学物質以外の化学物質のうち、第一種特定化学物 質又は第二種特定化学物質の要件に該当すると疑うに足りる理由があるものについて、三大臣がそ の製造・輸入・使用を業として行う者に対して必要な勧告を行うことができる旨を規定している。
こうした疑いがある物質については、直ちに試験を実施して、第一種特定化学物質又は第二種特
、 、
定化学物質の要件に該当するかどうかの判断をすることが望ましいが 長期毒性試験等を行うには 数年を要する場合があり、その間、試験データが得られないために第一種特定化学物質又は第二種 特定化学物質に指定できない状態が続くと、回復困難な環境汚染が生じるおそれがある。こうした 事態を未然に防止するために、第一種特定化学物質又は第二種特定化学物質と疑うに足りる理由が ある段階において、その化学物質の製造又は輸入の事業を営む者は又は業としてその化学物質を使 用するものに対し、その製造若しくは輸入の制限又は使用の制限若しくは使用方法の改善に関し、
必要な勧告を行うことができることとしたものである。
【改正経緯】
昭和六十一年改正により第二種特定化学物質の制度が設けられたことに伴い、本条第二項が追加さ れた。
【用語解説】
(1 「主務大臣」)
本条の勧告を発する主体である「主務大臣」は、第三十九条第一項第三号に規定されている とおり、厚生労働大臣、経済産業大臣、環境大臣及びその勧告の対象となる者の行う事業を所
管する大臣である。なお、三大臣が主務大臣として加わっている理由は第二十二条の措置命令 と同様である。
(2 「第一種特定化学物質……認めるときは」)
本条第一項の勧告の発動要件は、第一種特定化学物質以外の化学物質が、第一種特定化学物 質の要件に該当すると疑うに足りる理由があると主務大臣が認めるときである。
「疑うに足りる理由」としては、例えば、過去の知見、外国の文献等による情報、第一種監 視化学物質に関して国が実施する予備的な毒性評価の結果などが考えられる。また、外国にお いてある化学物質が本法と同一の観点から規制されはじめたといった情報も含まれうる。これ らの知見、情報等を基にして、ある程度客観的な「疑うに足りる」理由に相当するものが必要 と考えられる。
(3 「当該化学物質……使用する者に対し」)
本条第一項の勧告の発動対象は、第一種特定化学物質に該当すると疑うに足りる理由がある とされた化学物質の製造若しくは輸入の事業を営む者又は業としてその化学物質を使用する者 である。
この勧告は、第一種特定化学物質に該当すると疑われる化学物質について行われるものであ るから、その対象範囲、内容等については、第一種特定化学物質に関する規制よりも緩やかな 措置ないしは同等程度のものとなることが想定されている。
(4 「当該化学物質……使用の制限に関し」)
勧告の内容は、当該化学物質による環境汚染の進行を防止するために必要な限度において、
その製造、輸入又は使用に関し、ケース・バイ・ケースに定められることとなる。当該化学物 質が第一種特定化学物質に指定された際には、第二十二条に規定する措置命令が発動されるこ とがあるので、勧告の内容は、この措置命令の内容との整合性に配慮されなければならない。
具体的には、例えば、開放系用途向けの出荷の停止、開放系用途の使用の停止、販売先の確 認等が考えられる。
(5 「勧告」)
「勧告」とし 「罰則付きの命令」としなかった理由は次のとおりである。、
本条第一項の勧告は「第一種特定化学物質の要件を満たすと疑うに足りる理由のある化学物 質」を対象に行われるものであって、第一種特定化学物質である化学物質を対象とするもので はない。したがって、このようなものに対する措置は当然第一種特定化学物質に関する規制よ り緩いものである必要がある。また、このようなものについて、例えば、命令というような形 式をとるとすれば、罰則を伴うものであるから発動要件、発動の対象、措置内容等について厳 密に規定する必要があり、また、そうなれば第二十二条の措置命令との差が不明確となり、か えってこの制度自体の弾力性が失われてしまうこととなる。そこで罰則付きの「命令」ではな く 「勧告」という形式を取ることとされたものである。、
、 、 、 、
なお この措置は 勧告であるから罰則で担保されていないが 勧告内容の公表等の方法で その実効性をかなりの程度担保することができると考えられる。
(6 「第二種特定化学物質……認めるときは」)
本条第二項の勧告の発動要件は、第二種特定化学物質以外の化学物質が、第二種特定化学物 質の要件に該当すると疑うに足りる理由があると認めるときである。第二種特定化学物質の要 件は、第一種特定化学物質の要件とは異なり、環境中の残留に関する要件(暴露要件)が含ま れるので、ある化学物質が第二条第三項各号の要件を満たしているおそれがあるのみならず、
製造、輸入、使用等の状況から相当の環境放出量があると見込まれること又はそのおそれがあ ることが必要となる。
(7 「当該化学物質の製造……使用する者に対し」)
本条第二項の勧告の発動対象は、第二種特定化学物質に該当すると疑うに足りる理由がある とされた化学物質の製造若しくは輸入の事業を含む者又は業としてその化学物質を使用する者 である。勧告の内容は、製造又は輸入の事業を営む者に対しては製造数量又は輸入数量の抑制 であり、業として使用する者に対しては、使用方法の改善ということになる。
本条においては、前述(3)の項で述べたのと同様の理由から、その対象範囲、内容等につ いて第二種特定化学物質に関する規制よりも緩いものかせいぜい同程度のものでなければなら ないと考えられる。このため、措置の対象としては、第二種特定化学物質を取り扱う事業者の うち環境放出のおそれが高い事業を行う者に対して、罰則付きの「命令」ではなく 「勧告」と、 いう形式を取ることとされたものである。
(8 「当該化学物質……勧告することができる 」) 。
「第一種特定化学物質の要件に該当すると疑うに足りる理由がある」と認められる化学物質 については「使用の制限」と規定される一方 「第二種特定化学物質の要件に該当すると疑うに、 足りる理由がある」と認められる化学物質については「使用方法の改善」と規定されているの は、前者については、第一種特定化学物質の使用に係る規制の内容として用途制限といった使 用そのものの制限があること(第十四条)に対応して用途に着目して使用そのものの制限を勧 告することがあり得るのに対し、後者については、第二種特定化学物質の使用に係る規制とし て使用の際の技術上の指針の遵守(第二十七条)が規定してあるように、当該化学物質の環境 放出量を削減するための使用方法の改善を図ることが求められることとなるからである。
「使用方法の改善」の具体的内容としては、使用している機器に漏出防止のための措置を講 ずること、揮発性の高い化学物質について、保管の際に、密閉性の高い容器を使用すること、
可能な限り回収装置を付すること等が考えられる。